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- Amazon.co.jp ・本 (260ページ)
- / ISBN・EAN: 9784560083239
感想・レビュー・書評
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青柳さんが今まで書いたピアニストについての本とはちょっと趣が違う。
グールドや安川加寿子、リヒテルやアルゲリッチのようなある程度評価の定まった名ピアニストは、資料と経験をもとに仕上げるし、存命のピアニストのついてはインタビューも行う。演奏家ならではの分析と歯に衣を着せぬ評価が青柳さんの持ち味。
そういう意味ではこれも同じ手法で行こうとしたのだと思うが、いかんせんバルダという人がペシミスティックで、感情の起伏が激しく、インタビュー自体がうまくいっていない。
かなり葛藤して書いたのが伝わってくる。
それでもバルダの演奏を尊敬し、愛するからこそ書いているのだということは十分に伝わってくるが、バルダの経歴(生い立ち含め)や作曲家や曲に対する思いがいまひとつはっきり見えてこない。
これは青柳さんとバルダの格闘を描いた本だともいえるが、青柳さんがバルダを愛するため、いつもの辛辣さがあまりなく、ちょっともの足りない。
まあ、こういうビジネスに乗れず消えていく演奏家って結構いるのだろうな、と思った。
絵画や彫刻なら作品が残るし、作曲家なら譜面が残るが、演奏家は一番いい演奏がCDに残せるとは限らない。
バルダも、自作のできに納得していない様子。(もともと何事にも満足しなさそうな人物ではあるが。)
そういう意味ではCDと全く同じ完璧な演奏を聴かせる演奏家って、凄いんだと思う。ポリーニとか。
バルダの知名度が低いだけに、青柳節を期待したが、不発だった。詳細をみるコメント0件をすべて表示
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