ヤルタからヒロシマへ: 終戦と冷戦の覇権争い

  • 白水社
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  • Amazon.co.jp ・本 (530ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784560083000

感想・レビュー・書評

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  • 第二次大戦の特に戦後処理をめぐる一連の経緯を考えていくと、やはり日本の今後の在り方を真剣に考え直す必要がある。具体的には、憲法9条については改正しなくていけないのではないだろうか?

  • ヤルタ会談やポツダム宣言などこれまで教科書的な事項でしかなかったものの知的肉付けができる本。著者は、第二次世界大戦の同盟国から冷戦の敵同士への変質が、ちょうどこの六ヶ月の期間で完成され、冷戦の始まりを賠償とベルリンへの物資供給をめぐる食い違いなど、ドイツ戦後処理をめぐる対立にみる。確かに会談は、一方で自国の兵士の死傷者を減らしたい国と、人的損失を歯牙にもかけず領土的要求にこだわる国との間のものだったので、スターリンの部下によって盗聴されながらソ連の思惑通りに進んでいったが、戦後の再建に米国の経済援助も当てにしていたので、軍事的対立は避け付かず離れずの関係を望んでいたため、異なる冷戦の歴史も有り得たのだとわかった。

    偏執的で、人間的感情の欠けたスターリンにとっては、第二次世界大戦でさえ、軍事的な戦争ではなく、どこまで行っても政治的闘争だったのだろう。だからこそ、米英とは不均衡なほどの圧倒的な死傷者を出しながらも平気でいられたし、無慈悲な進撃を続けることができた。原爆が完成するまでは、米英にとってソ連が戦争に加わることでしか、枢軸国に勝つことは難しいとわかっていたのである。

    ソ連軍によるドイツに対する情け容赦のない略奪と強姦は、破壊に対する賠償の意味もあったが、むしろ多くは貧しいソ連兵が個々に感じたドイツの豊かさへの嫉みが怒りに転化したものだった。だからこそ、ドイツ人に対する残虐行為を「弁明する必要はない」と。「今は法と真実を語る時ではない。善悪の彼岸への道を最初に踏み出したのはドイツ人だ。同じように仕返ししてやろうではないか、百倍にして」

    笑ってしまったのは、あまりにも残虐で人命軽視の無慈悲な進軍で、略奪や強姦を繰り返してきたために、ドイツ軍が米英軍には投降するのにソ連軍には頑強に抵抗するようになってしまい、スターリンが彼らはヒトラーと取引をしているのではないかと疑うところ。「スターリンは二つの間違いを犯した。彼はヨーロッパにロシア人を、ロシア人にヨーロッパを見せてしまった」というジョークも生まれたらしい。

    会談初期には、ルーズベルトはスターリンを説得できると考え、チャーチルでさえスターリンを手なずけることができると考えていたし、スターリンの背後で彼を操る黒幕がいると考えていたのは驚きだった。カティンの森での虐殺とその後の主張で、スターリンのやり口が明らかにされるのは、もう少しの時間が必要だった。

  • ヤルタ会談は、歴史の教科書では第二次世界大戦後の国際秩序を決めた会議として学んだが、この本ではその実態を余すところなく伝えている。教科書でしかヤルタ密約を知らないと、このギャップに驚くだろう。
    大英帝国崩壊寸前のチャーチル、体調を崩し生きることが精一杯のルーズベルト、意気揚々のスターリンというとり合えわせでは、勝負はやる前から決まっていた。ヤルタという地の利を生かし、スターリンは入念に盗聴器を仕掛け、事前の諜報活動によって万全の準備をしていた。また、大戦での戦死者、ソ連軍800万、米英合わせて80万という不均衡を重く感じ、戦後処理を有利に進めなければならない状況もスターリンを強く後押しした。この半年後には、チャーチルは退陣し、ルーズベルトは死去していたことを考えると、スターリンは絶好のタイミングで物事を動かしたと言える。ソ連に極端に有利に動いたために、原爆を急がなければならなかった米の状況がひしひしと伝わる。登場人物も多く、記述が詳細なため、読むのに骨が折れるが戦争という現実を体験することが出来る本である。
    しかし、俺のものは俺のもの、相手のものは取った者勝ちといいう戦争の実態は、今も昔も変わらないと感じさせられる。国とか民族とかの境目が亡くならない限り、この状況は続くのだろうか。

  • ヤルタ会談からルーズベルトの死、ナチスドイツ降伏、
    ポツダム会談を経て原爆投下、ソ連参戦までを描く骨太な一冊。
    非常に描写が丁寧かつ生き生きとしており読んでいて全く飽きさせない。
    特にヤルタ会談の描写では、スターリンやルーズベルトの息遣いが
    そのまま聞こえてくるようだった。
    内容としてもヤルタ会談やポツダム会談の詳細や経緯を知ることができ、
    とても勉強になった。
    世界は日本を知らなかったが、
    日本はそれ以上に世界を知らなさすぎたと感じる。

  • 登場人物のキャラクター描写が多くて退屈する。原爆投下の報告を受けたトルーマンが祝杯をあげる‥戦争のやりきれない本質の一面を物語っている。

  • 人物描写に力を入れたドキュメンタリー。

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著者プロフィール

元『ワシントン・ポスト』のジャーナリスト。「冷戦3部作」と称した邦訳『核時計零時1分前 キューバ危機 13日間のカウントダウン』(NHK出版)で高い評価を受け、世界的なベストセラーを記録した。本書はその3作目。

「2013年 『ヤルタからヒロシマへ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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