郊外へ (白水Uブックス 1047 エッセイの小径)

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  • 白水社
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  • Amazon.co.jp ・本 (190ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784560073476

作品紹介・あらすじ

パリを一歩離れるといつも新しい発見があった。卓抜した仕掛けによって、パリ郊外を語りつくした魅惑の書。ドワノーやモディアノなど郊外を愛した写真家や作家に寄り添いつつ、ときに幸福な夢想に身をゆだね、ときに苦い思索にふける、「壁の外」をめぐる物語の数々。三島賞作家鮮烈のデビュー作。

感想・レビュー・書評

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  • 題名の「郊外」は、一般名詞ではない。
    「パリ郊外」という、ある特定された地域のことだ。

    記憶が正確であれば、パリには5回行ったことがある。
    本書のテーマは、しかし、パリではなく、「パリ郊外」だ。

    あらためて地図を調べてみると、シャルルドゴール空港は、パリの北東方向にある。シャルルドゴール空港からフランスに入国した際には、そこからパリ市内までは、バスを使うことが多かった。1時間くらいの道のりだったと思う。
    シャルルドゴール空港からパリ市内に向かう場合、市内に入る前に、大きなサッカースタジアムの近くを通る。スタッド・ド・フランスというのがスタジアムの名称である。日本代表が初出場を果たしたフランスでのサッカーW杯のメインスタジアムだった。
    サンドニは、パリ市内ではない。サンドニ県という、別の自治体だ。パリの北方に位置する。それは、日韓W杯の時の日本でのメインスタジアムが、隣県の横浜スタジアムであったような感じだ。こういった場所が、本書でのパリ郊外だ。
    しかし、この本を読むと、それでは、というのは、都内に対しての横浜スタジアム近辺を東京郊外と呼ぶことと、サンドニをパリ郊外と呼ぶこととは、かなり感覚が違うようだ。都内と横浜スタジアム近辺では、勿論、賑やかさなど違うことも多いが、スタジアム近辺から都内に通勤している人も多いだろうし、少なくとも経済圏的には、首都圏という大きな括りで呼べる。しかし、パリ市内とパリ郊外では、明確に世界が違う、それは、壁の内と外だ、というのが、本書の「パリ郊外」の前提である。移民、貧困、治安の悪さ、救いのなさ。そういう話は、読み物として読んだことはあるが、全く実感をもって感じることは出来ない、分からない。
    本書で、主人公は、パリではなく、パリ郊外に興味を持つ自分を、パリから、あるいは、物事の本質から逃げているのではないかと考えたり、また、パリ郊外を描いた他の人が書いた著作を読み、その中身の濃さに打ちひしがれたりする。
    パリ郊外の何かが筆者を引きつけている。


  • どこにもない「パリ」へ。

  • 3時間

  • 去年根津の古本屋さんにて購入。読みたくなるまで寝かしておいた。雑誌連載もので尚且つ堀江氏デビュー作という一冊。最後の一篇を除きパリに留学中の「私」が出合う人々や出来事や風景から「郊外」をキーワードとして小説や絵画、映画について思い巡らす、というエッセイ風の小説。どうしても「私」を堀江氏と思ってしまうけれどそれでもいいと思う(断言)。取り上げている映画や小説を検索しても出てこないものもあるから全て虚構?と思う瞬間があり、知らなかったパリ郊外に対する畏怖と重なった。アラン・ドロンの生い立ち(トリュフォーも!)や黒い事件も知らなかった。ロベール・ドワノーも懐かしい!例のポスター持ってたし。
    パリか…やっとちょっと興味出た。

  • パリ郊外の都市論についてのエッセイ
    の形をとった作品
    構成要素に縁がなさ過ぎてさっぱりわからん
    ベビーフット=テーブルフット

  • 美しい活字に引かれて買ってしまった。パリにちょっとだけ行ったばかりでもあるし。エッセイ仕立ての小説といったところか。気取った感じもするが、いいリズムがある。

    地名や人名に馴染みがないが、それなりに読める。ドワノーって写真家は有名らしいが、最近どこかで名前を見たような。

    パリの郊外というのは割と剣呑なところなようだ。東京の郊外とはイメージが違うな。

    大衆小説好きがいいね。「首のない木馬」でカフェの掃除を見学するところも良い。アラン・ドロンの話も知らなかった。

  • 詩を嗜む人はけっこう格好良いのかもしれない。自分は詩は苦手だからね、郊外を散歩してカフェでコーヒー飲みながら詩を読むのは厳しい。

    とか言ってると、パリ?カフェ?ポエム?ありえんわーってなりそうだけど、詩は添え物で、割と現実的な話で迫ってくる。パリがオサレなのは金持ちスポットだけで、ていうか金をかければオサレで貧乏ならどこも一緒さね。という現実。

    でもサッカーのメンバーといい、この移民の溢れ具合は、意外と外国人も住み心地良いのかも、パリの郊外。まぁ地元民の迫害っぷりもぱねぇらしいけどもねぇ。

  • 2015/7/21

  • Always drawn to the unconventional, Horie wrote a series of essay-like fictions, in wich a first-person narrator promenades through the suburbs of Paris, taking readers on a comfortably paced and meditative stroll through the French arts, including the poetry and prose of Jacques Reda, the novels of Francois Maspero, and the photographs of Robert Doisneau. A winning combination of fiction, essay, literary criticism, and travel writing, Horie's ruminative pieces marked the arrival of something totally new in Japanese writing.

  • 優れた紀行文というのはこういうもの。パリ、パリ、郊外、郊外。何度か口の中でつぶやいてみるとイメージが先行し、そこに行ったことがないのに、いつしか行ったことがあるかのように思うことがある。

    パリ郊外の雰囲気が手に取るように伝わってきて、自分がそこにいて、あたかも散歩してるように感じる。

    現実世界の匂いがしない、完結した汚れない世界のエッセイ。

    ー「郊外について」の語りを担っているのではなく、「郊外的」な立ち位置の代弁者にすぎない。もし実体験を語っていたならば、それは既視感の反復に終わり、なにかに「ついて」言葉を綴ろうとしていたら、郊外「論」になってしまっていただろう。

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著者プロフィール

作家

「2023年 『ベスト・エッセイ2023』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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