外国語で発想するための日本語レッスン

著者 :
  • 白水社
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  • Amazon.co.jp ・本 (223ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784560027875

作品紹介・あらすじ

どうしてあなたの外国語は通じないのか。

感想・レビュー・書評

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  • 欧米と日本の読書技術の指導、とりわけ国語の授業においての違いは顕著である。
    欧米は、「テクストの分析と解釈、批評」(クリティカルリーディング)に向けて幼児の頃からシステマティックに技術を積み上げていく。根拠に基づく論理的な読解。作家や画家は意味もなく人物を登場させたり場所を設定したり、動物を描いたりすることはない。作品は全て緻密な計算の上に構築されている。
    ドイツの例 ゲーテ『ファウスト』高校生3年 一冊の本を議論しながら分析するための定員は20名が限度。15名以下が理想。教師による矢継ぎ早の畳みかけるような問いかけと生徒達の発言で構成される。90分。生徒は集中が切れることなく、議論に参加し、傾聴し、挙手する一方でメモを取る。教師はキーワードを板書するだけ。その後、3時間に及ぶ記述式の試験。
    生徒はテクストについて自分の考えを根拠に基づいて論理的に論述することが求められる。
    「知識と技能は言葉を超えて理解に繋がる」
    絵の分析『星月夜』ゴッホ

    全体像から細部へ再び全体へ(仮説を立て、分析証明)
    テーマ(主題)
    設定(場所、季節、天気、時間、時代背景など)
    人物(動物、もの)
    象徴
    色彩色調
    タッチ
    構図

    プロットとストーリー
    諸事件の叙述
    プロットはなぜか?因果関係
    作家の仕事は物語中で発生する問題を構成上最も強い緊張感を生み出す順序に配列すること。
    ストーリーはそれからどうした?時間的順序

    ラ・フォンテーヌ『牝獅子の葬式』
    小林秀雄『人形』
    マリールイーゼ『静かな家』
    ビクセル『サンサルバドル』

  •  「読解力」について。
     欧米の学校では、母国語の文学で「テクストの分析と解釈」がみっちり教育される。日本の国語教育とは全く違い、論理的に。


     読解力の本を3冊読んでみて、「要約」・「客観的な視点」・「論理的な根拠」が大事なのだと思った。








     …読書感想文なんか書かせてて大丈夫なのか?

  • 第1章 外国語で発想するために必要な「読書技術」(欧米の「読書技術教育」ってどのようなもの?
    日本の読書教育
    欧米の読書技術教育の実例
    外国語で発想するためになぜ読書技術が必要なの?
    さまざまな教科に応用される読書技術)
    第2章 絵の分析(「絵の分析」とは?
    「絵の分析」の例
    「絵の分析」の方法
    「絵の分析」をやってみよう)
    第3章 本の読み方(物語の構造
    「テクストの分析と解釈・批判」の方法
    「テクストの分析と解釈・批判」をやってみよう)
    テクスト分析の方法論 仮説を立て、それを書かれていることだけで、検証する

  • 遠藤緑先生 おすすめ
    43【教養】810.7-M

    ★ブックリストのコメント
    分析的にテキストを読み、内容に対する自分の意見を述べる、という技術指導が日本の学校教育に欠けているため、外国語学習の成果が表れにくい、という著者の考えを理解してください。英語学習が楽になると思います。

  • 日本の国語教育を振り返るとついこう思ってしまう。「はて、自分は12年間で一体何を学んだんだろう?」

    もちろん何も学ばなかったわけではない。ただ、日本の国語教育(具体的には現代文)はそのやり方が確立されているようでされていない、目標か定まっているようで定まっていない、そんな印象。おそらくこの本の著者は、このことが外国語を話すときにも影響するのだと考えたんだろう(このことも、本当はこの本のどこに書いてあるのか根拠を示さないとダメですね)。

    ◼️p14 対象を分析して解釈し、批判的な考察を踏まえて自分自身の意見が言えなければ、欧米では一人の社会人としては認められないのです。

    対して日本の国語教育は「主観」「曖昧」「道徳的教訓」が幅を効かしている。外国語を使って外国人と渡り合っていくために、まずは欧米人が当たり前のように学んでいる「テクストの分析と解釈・批判」を学びましょうというのが本書の狙い。

    本書ではそれが欧米においていかに教えられているかが示され、その後に絵画や文章を使ってどのように分析していくのかが実践されている。

    外国語を直接扱った本は世の中に溢れているが、こうして外国語を使って外国人と実際に交流することを見据えて書かれた本も珍しいだろう。つまり、長期的目線。そしてこの本で示される考え方は、実際に外国語を習得する際にも役に立つものであろう。

    ただ、、できれば実際の作品を使っての実践は日本の小説を使ってほしかった。正直ドイツのものでは興味が湧きづらいし、これから実際に読むのは日本語の小説が圧倒的に多いだろうから。

  • テクストを読み解く。
    まずは絵で練習する(交通標識でも構わない)。
    文章については超短編小説で練習する(夜のくもざるがちょうどいいか)。

  • 日本の国語教育への批判と欧米(主にドイツ)で行われている母語教育方法「テクストの分析と解釈・批判」の推奨。
    文章の解釈は、かならず文章の記述を根拠にして行わなければならないとの事。
    自分の言語技術を鑑みても、確かに論拠を明確に示すのは苦手であり、頷ける内容が多々あった。特にテクストの分析の前に絵の分析をやるのが面白い。

    ただ、テクストの分析の事例の中ではこじつけのように感じた箇所があった。
    (赤ずきんちゃんをフランス革命と関連付けていたり)

  • 言語技術というものを諸外国では、学校教育として年少時から教えられているとのこと、その日本人の中にあって、自分の表現力の無さを痛感している。もっと早く身につけておく知識であったと思う。また、日本人同士のコミュニケーション能力も日増しに悪くなっているように感じる。その結果、凶悪犯罪も増加しているのではと思う。Jリーグでは、この言語技術を取り入れたことでチーム力があがったとある。ぜひ、日本中にこの言語技術が広まればと思う。

  • 「外国語を身につけるためには欧米式の読書技術が必要」という立場から、世界の多くの国で行われている「テクストの分析と解釈・批判(Critical Reading)」という読書技術教育について紹介した本。

    2006年の本だけど、日本の国語教育(特に、物語や小説の読解の授業)にかなり批判的な印象。「日本の国語は道徳だ」と言ってみたり。筆者は、つくば言語技術教育研究所の所長。言語技術教育や読書技術教育の実践や研究を行っている。

    財団法人日本サッカー協会で言語技術を指導したりもしていたらしい。「瞬間的に状況を分析し、判断するためには、サッカーの場面だけでなく、あらゆる状況において論理的な分析と判断ができることが重要だと考えられている」とのこと。

    高校とかでは、小説でも、ある程度、論理的に解答を導く方法を教えられた気がするけど、問題なのは、定期試験では授業中に教えられた解答を覚えるだけでよかったことと、自分で論理的に考える技術はあくまで受験対策として教育されたということだと思う。ただし、これは私が進学校にいたからかもしれないけど。

    「ひとたびその方法が身につけば、本を読むときばかりでなく、映画を観るときもニュースを見るときも、絵画を見るときも、子どもに絵本を読み聞かせるときもにも、自分の中で対象を分析する機能が自動的に働いて、深く、そして楽しい「読み」ができるようになるでしょう。」

    と書かれているように、この本で紹介されてる読書技術は、「外国語を身につける」という目的に限らず、身につけるべき技術であると思う。むしろ、この技術を身につけることは外国語を身につける上でも重要、くらいの位置づけな気がする。

    「テクストの分析」の基礎力を養うために、「絵の分析」から始めるというところがなるほど!美術館にいっても、「なんとなくこの絵は好き」とかくらいの感想しかもてなかった私にとって、「絵を読む」という発想は目からウロコ。しかも幼児や小学生にもできるというからカルチャーショック。

    ぜひこういう教育の推進に関われるような仕事がしたい。

  • 外国語で発想するための日本語レッスン - 発声練習 http://d.hatena.ne.jp/next49/20070724/p1

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著者プロフィール

つくば言語技術教育研究所所長。日本読書へのアニマシオン協会副会長。財団法人ソニー教育財団評議委員。平成18年度文部科学省言語力育成協力者会議委員。
日本サッカー協会コミュニケーションスキル専任講師、麗澤中学・高校非常勤講師、茨城県立中央看護専門学校非常勤講師、朝日カルチャースクール講師、
東京生まれ、中高4年間をドイツで過ごし、ドイツ式論理トレーニングを学ぶ。上智大学ドイツ語学科卒。丸紅勤務後、1984年にドイツ式作文教室を主宰、1990年言語技術教室開設(現つくば言語技術教育研究所)。
主な著書=『外国語を身につけるための日本語レッスン』『子どものための論理トレーニングプリント』

「2002年 『手のなかのすずめ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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