ぼくのともだち

  • 白水社
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  • Amazon.co.jp ・本 (211ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784560027370

感想・レビュー・書評

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  • 3.58/150
    『「孤独がぼくを押し潰す。ともだちが欲しい。本当のともだちが!」職ナシ、家族ナシ、恋人ナシ。都会で孤立し無為に過ごす青年の、とびきり切なくとびきり笑えるともだち探し。』(「白水社」サイトより▽)
    https://www.hakusuisha.co.jp/book/b205630.html

    冒頭
    『目覚めるといつもぼくの口は開いている。なんだか歯がねっとりしている。夜、寝る前に歯を磨けばよいのだろう。でも、そんな元気のあったたしめがない。目尻には涙の乾いた跡がある。』


    原書名:『Mes amis』(英語版『My Friends』)
    著者:エマニュエル・ボーヴ (Emmanuel Bove)
    訳者:渋谷 豊
    出版社 ‏: ‎白水社
    単行本 ‏: ‎211ページ

  • 自分の面倒くさい繊細な部分と、妄想癖の主人公がリンクしていた。
    スッキリはしない、でもどこか愛らしい。
    フランスらしい作品。

  • 第一次世界大戦後のフランスが舞台。主人公は従軍して壊した身体を、必要以上にいたわって憐れんでいる孤独な男。
    エマニュエル・ボーブの長編処女作。この小説を発表した時、まだ26歳だったそうだ。26歳の青年が、どうやってこれほど人間を理解できるようになったのだろう

    こいつは一体何を言っているんだの見本市。軽蔑されることを恐れるあまりに、他人のあら探しをせずにいられない。

    下心を持つ相手とは友だちになれないな。だって、お互いのことを知り合えないもの。

    リュシー・デュノワ
     ぼくは、彼女の欲望を満たした。ぼくらは、互いの欲望を満たした。
     彼女は、ぼくにコーヒーも出さなかった。彼女がぼくに出す皿の中身は、前と後とで変わらない。それがぼくらの関係のすべて。

    アンリ・ビヤール
     ぼくは、ぼくをわかってほしい。どうか、ぼくに親身になって、同情して、ぼくを特別な人間にしてくれ!ぼくと一緒に傷をなめあおう!

    船乗りのヌヴー
     自殺志願者のふりをしていたら、見知らぬ水夫と心中する羽目になった。ああ怖かった。
     彼をぼくの取り巻…ともだちにしてやろうと思ったが、ぼくの親切には値しない男だった。彼は一文無しで、ぼくの金で飲み食いしているんだから、もっとぼくをあがめないといけなかったんだ。
     今頃、溺死してるかな。せっかくのチャンスをふいにしたね。

    ムッシュー・ラカーズ
     大勢の人が昼となく夜となく行き交う駅で、孤独に浸っていたら、立派な紳士に荷物持ち扱いされた。恥ずかしかった。
     彼のチップを断ると、ぼくに興味を持ってくれたんだ!家に招待してくれた。特別な人間への第一歩だ!
     彼は僕に金と仕事をくれた。それでぼくは、ロマンスを期待して彼の娘に会いに行ったんだ。傷つけるためじゃない。愛されるチャンスが欲しかっただけなんだ。
     そして……何もかもおじゃんだ。

    ブランシュ
     一晩だけのぼくの恋人。あんまり理想通りじゃなかったんだ。

    アペリティフ 食前酒。食欲をそそるために、食前に軽く飲む。お酒って、食欲を増すの?

    ベネディクチン 1510年にベネディクト修道院で開発されたリキュール。薬草や香草がたくさん入ってる。どっしりした甘みのある味わいが特徴。それってどんな味?

  • 第一次世界大戦に従軍し、軍人年金をもらって働かずに暮らす若者、ヴィクトール・バトンのともだち探しの物語。小説の舞台は100年前のフランスだが、ニートはやっぱり存在していた。ただ、頼るものが一方は年金、現代の日本では同居する親のサイフという違いはあるけれど。

    出世も仕事もお金もいらない。バトンが欲しいのはともだちだけ。しかし、その欲望が強すぎるうえ、もともとの不器用さと過剰な自意識が重なって、誰と接しても空回り。深い人間関係を構築できない。しかも、自分勝手な妄想が実現しないと不愉快になる。おかげで周囲は親しくなる前に彼のそばから離れてしまうし、バトンの方から離れてしまうことも。浅く付き合うなら都合の良い人間だ。

    と、100年前のニートを主人公にした陰気な物語。しかし、翻訳の文章にテンポがあり、ともだちを失っても、また次なるともだちを探す主人公のガッツにも救われ、楽しく一気読み。ひらがなのタイトルとキモカワな表紙にも惹かれる。

  • 表紙の絵に惹かれて購入。
    暗い内容なのだがどんどんと引き込まれる。
    主人公はっきりいって嫌いでイライラするのだけれど。
    誰にでもある一部分なのかもしれない。
    1928年フィギエール賞受賞

  • 読んでみると想像とは全く違って大変におかしみ溢れる
    独特なユーモア小説でした。面白い。
    ただし読むタイミングによっては駄目な人は駄目かもしれません。

    一言でいえば、「1920年代のパリに住む福満しげゆき」です。
    訳者の渋谷豊さんのセンスもあって、古典とはとても思えない!
    とにかく度々主人公をどつきたくなりますが、愛さずにはいられない。
    ぜひ「僕の小規模な〜」シリーズの横に平積みして頂きたいです。
    駄目萌え。

  • しょぼくさい表紙絵とひらがなのタイトルでナルシスティックな若者が書いた本かと敬遠していたのだけど、読んでみたら、結構良かった。
    作者は1898年生まれで、もう死んでるし。書いた時は確かに若者で、ナルシスティックでもあるし、自意識過剰でもあって、「友達がほしい」といいつつ、本気で自分を曝け出したり、相手のために行動することはない。
    でも若いころの孤独感ってこんな感じよね。客観的に見れば非常に身勝手ながら、その寂しさは本物。
    若い時に読めばもっと共感したかもしれない。
    永遠の若者の書。

  • 豊崎由美さんの推薦により。

    第一次世界大戦後のパリ。働きもせず、わずかな傷痍軍人年金でをもらいながら孤独に暮らす若い男がともだちを求めて町をさまよう姿を描く苦い味わいユーモア溢れた一人称小説です。

    主人公は心がすぐ折れるし、繊細なようで図々しいところもあり、結局他人のことより自分が大事な、結構どうしようもない男です。

    たとえば、ある四十男と知り合い、一度食事を共にしただけでもう親友になったと思い込みますが、その四十男に若い恋人がいると知った途端、嫉妬に狂って裏切られたという思いに囚われます。四十男が女と同棲するアパートに招待された主人公は、彼女はブスだ彼女はブスだ彼女はブスだ、とマントラを唱えながら階段を登り部屋の扉を開けますがそこにいるのは若く美しい女で、なんであんな四十男に若い恋人がいるのにもっと若くて背も高い俺には恋人がいないのかと落胆しすぐに帰ろうとします。しかし、女がビッコであることに気付くと、なーんだビッコの女かーとホッとして、四十男の肩を叩かんばかりにテンションが上がって陽気に酒を飲み出します。ほんとに最低な男で、色々やらかしますが、最終的にはそのダメさ含めて愛おしくなるのは、行動は愚かにせよ一途にともだちを求めている純真なところが感じられるから。ダメさと純真さの絶妙なバランスで読者にぎりぎりのところで主人公に共感をもたせるやり方がうまいなぁと思いました。

    貧乏と孤独がいかに人の心を苛んでいくかを、笑いにくるんで提示する芸風は、町田康の初期作品や古谷実のヒミズ以降の一連のマンガと通じるところがあり、およそ百年前の小説とは思えないフレッシュさ。主人公のキャラクターを的確に表現している表紙のしょぼくれた犬の絵が素敵です。

    まあ、でもともだちにはなりたくないかな。

  • 読者なので冷静に「違うんだよ、ヴィク(って呼んでくれた人、いなかったよね…)」って言えるんだけど、でも、よくわかる。

  • わたしはこれを大好きです。
    繊細で不器用でどこかかわいらしい男。ユーモアがあってちょっぴり切ない。
    チャップリンや、ライ麦のホールデンをおもいだした。
    たぶん、ずっと憶えている本。

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著者プロフィール

1898~1945年。フランスの作家。コレットに見いだされ、『ぼくのともだち』『のけ者』でフィギエール賞を受賞。代表作は他に『きみのいもうと』、『あるかなしかの町』など。いかなるイデオロギーとも無縁なその作品は、戦後、アンガージュマン(政治・社会参加)文学の隆盛の陰に隠れ、次第に忘れられていったが、1970年代後半に復権を果たした。

「2013年 『ぼくのともだち』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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