図書館 愛書家の楽園

  • 白水社
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  • Amazon.co.jp ・本 (340ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784560026373

作品紹介・あらすじ

アレクサンドリア図書館、ラブレーやボルヘスによる想像の書物、パニッツィの図書館改革、アビ・ヴァールブルクの図書館、ネモ船長の蔵書、強制収容所の図書室…。古今東西、現実と架空の図書館の歴史をたどり、書物と人の物語を縦横無尽に語る。

感想・レビュー・書評

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  • もし政府が国民が図書館で借り出した本のリストを断りなく見ることができるようになったら、恐ろしいなと思っていたが、アメリカでは既にそうらしい。ああ、やだやだ。現政権もそういうこと言い出しそうだもん。いつまでも老若男女好きな本を好きな時に読める社会でありますように。の人間には良書だけでなく、悪書やくだらない本を読む権利だってあるんだもん。

  • 最近発売された新装版の広告を見て、読みたくなったので、図書館から借りてきて読む。白水社さん、ごめんなさい。

    原題は "The Library at Night"。蔵書三万冊を誇り、視力を失なったボルヘスのために朗読係として雇われた経験もある稀代の読書家アルベルト・マングェルが伝説のアレクサンドリア図書館から架空の図書館まで、「図書館」をテーマに放縦に想像をめぐらした一冊。引用、参照される本は古今硬軟取りまぜて、まさに博覧強記、月並な文言ではあるが、この本が「図書館」だ。

  • 面白かったです。図書館本リサイクルからタイトルが気になって発掘してきたのですが良いことをしました。
    様々な国や時代や規模の図書館(書斎とかも図書館)について論じているのですが堅苦しくなく、わくわく読みました。
    後半の、幻想的な図書館についてのところが好きです。
    「失ったものは壊されたり傷つけられたりすることがない」、名言です。

    新居でも、本棚は充実させたいなと決意を新たにしました。

  • 長岡絵里佳先生 おすすめ
    3【専門】010.2-M

    ★ブックリストのコメント
    神話、秩序、空間、権力など、様々な側面から、図書館の歴史が語られます。熱心な読書家である著者の知識欲はすさまじく、本や歴史についてある程度の知識がないと難しいですが、辞書を引きながらぜひ読んでほしい本。

  • ふむ

  • 書評
    本の本

  • 図書館と本の話が延々と続くので、読んでいる間じゅう幸福に包まれていた。アレクサンドリア図書館をはじめ古今東西の図書館や著名人の書斎が写真付きで紹介されていたり、書誌分類学や焚書や司書の話だったり。読みたい本が増えるという点でも好ましい本。世界に目を向ければ、まだまだ知らない本が山ほどあると思った。ホルヘ・ルイス・ボルヘスの『バベルの図書館』とバルザック、H.G.ウェルズ、メルヴィル、ギリシア神話は近いうちに読もう。

    ロバート・バートン『憂鬱症の解剖』
    ジョージ・エリオット『ミドル・マーチ』
    フローベル『ブヴァールとペキュシェ』
    ローゼンベルク特捜隊
    焚書
    インターポール
    ハンムラビ法典
    ペトラルカ『自分自身の無知について』
    バルザック『骨董屋』
    モーセの十戒
    ホルヘ・ルイス・ボルヘス『バベルの図書館』
    オデュッセイア

    p22
    バベルの塔の物語は、聖書の創世記十一章にある。ノアの大洪水が引いたあと、生き残った人びとは東に向かい、シナルの地に至った。彼らはそこに都市を築き、天まで届く塔を建てることにした。「主は降って来て、人の子らが建てた、塔のあるこの町を見て、いわらた。『彼らは一つの民で、皆一つの言葉を話しているから、このようなことを始めたのだ。これでは、彼らが何を企てても、妨げることはできない。降って行って、ただちに彼らの言葉を混乱させ、たがいの言葉が聞き分けられないようにしてしまおう』」。人類が団結して大事業を成し遂げたら、その結果として、勢力を伸ばしすぎることになる。それを妨げるため、神は言語を多様にしたのだと伝説はいう。

    アレクサンドリア図書館は、紀元前三世紀末に、アリストテレスの教えを守るものとして、プトレマイオス朝の王によって建てられた学術センターだった。

    p24
    小アジアの北西にあったペルガモン王国のアッタロス朝の王たちは、アレクサンドリアに対抗して自分たちの図書館を建設しようとしたが、アレクサンドリア図書館の規模にはかなわなかった。プトレマイオス朝は、ライバルが図書館のために写本を作るのを妨害しようとしてパピルスの輸出を禁じた。これに対して、ペルガモンの図書館員たちは、自分たちの都市の名前をつけた新しい素材を発明した。「ペルガモンの」を意味するペルガメノン、すなわちパーチモン(羊皮紙)である。

    p27
    アレクサンドリア図書館について最初に言及しているのは、紀元前三世紀後半に活動したコス(またはミレトス)の詩人ヘロンダスである。ヘロンダスは、ある文章でムセイオン、すなわちムーサの神殿と呼ばれる建物について書いており、これが有名な図書館をさしているのはほぼまちがいない。

    p29
    世界の記憶の保管所になろうとした図書館は、それ自身の記憶を後世まで確実に残すことができなかった。

    p31
    すなわち、どんな本であれ、一冊の本はこの世界を抽出し、要約したものであり、そこにはほかのすべての本が包含されていなければいけないのだ。そこから、ある種の本は後世に書かれる本の予兆だという考えにつながった。『オデュッセイア』はホールデン・コールフィールドの放浪の先駆けであり、カルタゴの女王ディドーの物語はボヴァリー夫人を予兆していた。あるいは前者が後者のページに反響しているといってもいい。フォークナーの大河小説は、さながらアトレウス王家の宿命を見るようだ。ジャン・モリスの波乱にみちた生涯は、イブン・ハルドゥーンの航海へのオマージュといえるかもしれない。

    p32
    記憶とは全体像ではなく、正確な細部からなる。たとえそう願っても、スポットライトは舞台全体を照らしださない。

    p47
    三世紀初頭の中国では、帝国図書館の書物は、有能な宮廷学者たちが認めたわずか四つのジャンル、すなわち正統の、あるいは古典的な名著、歴史書、哲学書、その他の文学作品に分類され、それぞれを象徴する特定の色で分けられていた。順番に、緑、赤、青、灰色である(おもしろいことに、この色分けは初期のペンギン・ブックスやスペインのコレクシオン・アウストラルと同じである)。これらの分類のもとで、書物は文字の部首別または読みの順番で書架に並べられた。部首別の場合は、何千とある漢字をいくつかの基本要素、たとえば大地や水をあらわす表意文字に分解し、中国の宇宙観に見られる階層の伝統的な秩序によって配置する。読みの場合、タイトルに用いられた言葉の最後の音節の韻(脚韻)をもとに配列する。アルファベットの体系では二十六(英語)から二十八(スペイン語)の文字が使われるが、中国語で使われる韻は七十六から二百六と多彩である。

    p50
    本をアルファベット順に並べる分類法を最初に用いたのは、いまからおよそ二千二百年前、アレクサンドリアの最も有名な司書カリマコスだった。

    カリマコスが私の書斎にやってきたら、と想像してみる。カリマコスは他人の著作を分類するために考案した方法によって、現代のローブ古典叢書に入っている彼自身の著作二冊を見つけるだろう。そんな情景を思い描くと胸が熱くなる。

    p52
    図書館が宇宙を映す鏡だとすれば、目録はその鏡を映す鏡といえるだろう。

    p60
    さらに、デューイは公共図書館の重要性を感じてもいた。図書館は「すべての人」が簡単に利用できるものでなければならないというのである。そして、教育の基礎は、文字を読む能力にではなく「印刷されたページから意味を読みとる」手段を知っているかどうかにある、と断言した。

    p89
    本を読む人の美点は、情報収集力にあるのではない。また、秩序だて、分類する能力にあるわけでもない。読書を通じて知ったことを、解釈し、関連づけ、変貌させる才能にこそある。

    p93
    ルネサンス時代、ヨーロッパの図書館は一般に公開されるようになり(その端緒は一六〇九年に設立されたミラノのアンブロジアーナ図書館である)、図書館への資金提供、寄付、建設などの威信は、地域社会への恩恵よりも、まず寄贈者自身にとっての利益が大きかった。

    p94
    たとえばイギリスでは「公共図書館は地域社会の福利に欠かせないものだ」という意見が公に認められるようになったのは一八五〇年になってからだった。この年、ダンフリーズ選出の下院議員ウィリアム・ユーアートが、すべての町に公共図書館を設立すべしという法案をやっとのことで通過させたのだった。

    p107
    アリストファネスはホメロスとヘシオドスの作品を編纂し、さらにヘシオドスの作品集には短い解説をつけ、同じテーマについて書いた他の著作家たちのリストまで付けていた。『ヒポテシス』と呼ばれるこの解説は、いわば注釈付きの図書目録であり、読者がある主題に関して、てっとり早く正確な概観を得られるよう助けるものだった。

    p120
    二〇〇一年九月十一日以降、アメリカ議会は米国愛国者法第二百十五条を通過させた。これは、人が公共図書館で借りた本、また書店で買った本の記録を連邦職員が取得できるとしたものである。「これまでの捜査令状とは違って、連邦政府は犯罪の証拠がなくても、また当該人物が容疑者だという法廷に出せる証拠がなくてもこの新たな力を行使できる。しかも、図書館員は、捜査がなされているということを当人に知らせてはいけない」のだ。

    p153
    モーリタニア中部、アドラル高地の砂漠にある隊商都市シンゲッティとウアダンにはいまでも、香辛料や巡礼や塩や本を運んでそこを通過した隊商の気まぐれから生じた年代物の図書館がいくつもある。十五から十八世紀にかけて、これらの都市はメッカへの経路でかならず通過する地点だった。

    p162
    ウェルギリウスのいう「無音の月の親しみのある沈黙」のなかで、反響する自分の声に耳を傾けるのもいいだろう。有名な人文主義者グァリーノ・ヴェロネーゼの息子で、高名な人文学者だったバッティスタ・グァリーノは、声を出さずに、あるいは「息をひそめたつぶやき声とともに」本を読むべきではないといった。「なぜなら、自分の声を聞かずに本を読む者は、心が上の空になって、文章をいくつも読み飛ばしてしまうことが多い」からだった。「理解力を高めるためには声を出して読んだほうがよい。外から音が聞こえてくるのと、私たちの耳は、もっと注意を傾けるよう、心に拍車をかけるのである」。

    p176
    南仏のアルビのサント・セシル大聖堂には、最後の審判の場面を描いた十五世紀末のフレスコ画がある。広がった巻物のもとで、運命の裁きを受けるために復活した人びとが行進してゆく。みな裸で、胸元にページを開いた一冊の本を掲げている。黙示録にあるとおり、よみがえった死者たちは、ばらばらに分割された「生命の書」を与えられる。人びとは「この本に記されている行為に従って裁かれる」のだった。

    p178
    中世イスラム世界では、一人で勉強するよりも、読み上げられる本の文章を耳で聴いて学ぶことのほうがずっと重要だと思われていた。なぜなら、目で見るだけではなく耳から入れてこそ、文章は心が通じて体にしみこむからである。

    p182
    ふりかえって思うに、私たちは、最初に手にした本の内容が後年の興味をいかに暗示していたか、かなりあとになって気づいて驚くことがままある。自分の興味を言葉で表現できるようになるずっと前から、明らかに気持ちをかきたてる何かがあるらしい。

    p218
    一九三八年、ナチス理論を支えていた重鎮アルフレート・ローゼンベルクはある提案をした。「ユダヤ人問題」研究所を設け、世俗的なものと宗教的なものとにかかわらず、ユダヤ関連の本を保管すべきだというのだった。二年後、そのユダヤ人問題研究所がフランクフルト・アム・マインに設立された。必要な資料を確保するために、ヒトラーみずからローゼンベルクを責任者に据え、ドイツ人の有能な司書たちからなる特別な組織を作らせた。これが悪名高いERR、すなわちローゼンベルク特捜隊である。

    p220
    閉鎖される前、三十一号棟には五百人ほどの子供たちと「指導員」に指名された数人の囚人たちが寝起きしており、厳しく監視されていたものの、なんとこっそり児童図書室まで作られていた。この図書室はごくささやかなものだった。本は、H・G・ウェルズの『世界史概観』と、ロシア語の教本、解析幾何学の教科書など、全部で八冊である。一度か二度、別の収容所の囚人が苦労して新しい本をひそかにもちこんだので、蔵書の数は九冊か十冊に増えた。一日が終わると、本は薬やわずかな食べ物などの貴重品と一緒に年かさの少女に預けられ、彼女が責任をもって夜ごと別の場所に隠した。皮肉にも、ドイツ帝国全土で禁書とされていた本(たとえばH・G・ウェルズの作品)を強制収容所の図書室で読むことができたわけだ。

    p240
    十世紀のイラクに生きた書籍商イブン・アン=ナディームが、つまらない娯楽本を読むために日中の時間を無駄にしてはいけないという理由で夕べの物語と呼んだ『千夜一夜物語』(後略)

    p242
    記憶を守り伝えること、他者の経験を通じて学ぶこと、世界や私たち自身に関する知識を分かちあうことは、本が人びとにもたらす力(それに危険)の一部であり、だからこそ人は本を尊び、同時に恐れもするのだ。

    p264
    人は、心のなかの希望や悪夢の性質を蔵書に投影する。

    p267
    イタリアには一つだけでなく八つもの国立図書館があり、そのうち二つ(フィレンツェとローマにある)が提携し、中央図書館として機能しているのだ。

    p280
    人はこの世界を異国か故郷かのどちらかとして認識しており、その結果として、図書館にもまた、この対立する二つの認識が反映されている。自分の蔵書のあいだをさまよい、気まぐれに棚から一冊選び、ぱらぱらとめくってみる。そのページに書かれている内容が自分の体験からあまりにもかけ離れているのに驚くこともあれば、思い当たって心安らぐこともある。(中略)読書をする人は誰もが、驚きのあまり息をのむ放浪の人か、または帰還する旅人か、そのどちらかを体験することになる。

    p289
    一六四二年、サー・トマス・ブラウンは次のように書いている。「輪廻転生というものが存在し、ある人の魂が別の人に受け継がれるように、思考や意見も、多少の変革をへたあとで、初めの唱導者に似た人間や精神に受け継がれる。(中略)人はくりかえし生かされ、いまの世界は遠い昔の世界と同じである。大昔には存在しなかったとしても、やがて同じような人があらわれ、いまも、いわばその人のよみがえりとして存在している」。ブラウンによれば、人間が本を読み、考えることによって、過去は現在となる。過去は誰にでも利用できる書架であり、有益な使い方をすれば、私たちのものとなる無尽蔵の源泉なのだ。

  • 『アウシュヴィッツの図書係』の著者が
    本書を読んで、アウシュヴィッツ収容所に図書館があったことを知り、書くきっかけになった本ということを知り読んでみました
    図書館についていろんなことをすごいボリュームたっぷり書かれてある
    これが愛書家!!!
    読むのに少し時間がかかったけど面白かった
    私はただの読書好き(笑)

  • 「アウシュヴィッツの図書係」のきっかけとなった本とのこと。
    そりゃもうふがふがしながら読んだ。関連本も読んでいこう。

  • 古今東西の色んな図書館、
    豪華絢爛だったりハイテクだったり、
    一方では強制収用所の中の8冊しかない図書館、
    中南米の山岳地帯を回るロバの図書館。
    焚書や戦禍に遭った本たち、理想の図書館、架空の書物。

    「読書はパラパラとページをめくる音や本棚の間の逍遥も含む」と断言する著者に限りない共感を覚えました。

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著者プロフィール

1948年ブエノスアイレス生まれ。著書に『世界文学にみる架空地名大事典』『読書の歴史――あるいは読者の歴史』『図書館 愛書家の楽園』『奇想の美術館』など。エッセイや戯曲、翻訳、ラジオドラマへの翻案なども手がけている。リエージュ大学(ベルギー)から名誉博士号を贈られ、フランスの芸術文化勲章オフィシエを受章。

「2014年 『読書礼讃』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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