恋ちゃんはじめての看取り―おおばあちゃんの死と向きあう (いのちつぐ「みとりびと」)

著者 :
  • 農山漁村文化協会
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本棚登録 : 112
感想 : 30
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  • Amazon.co.jp ・本 (32ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784540112652

作品紹介・あらすじ

琵琶湖の東側に開けた滋賀県東近江市。その山沿いにある甲津畑という集落に、小学5年の恋ちゃんが、大好きなおおばあちゃん、竹子さんと住んでいました。おおばあちゃんは92歳。90歳を過ぎても毎日のように畑仕事をしてきたおおばあちゃんも、急にからだが弱くなり、一週間ほど前からはふとんから出られなくなってしまいました。元気になってほしいと恋ちゃんは毎日おおばあちゃんの手をにぎり、うれしかったこと、悲しかったこと、いろんなことを話しかけました。もっと、もっといっしょにいたかったけど…。

感想・レビュー・書評

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  • 前の夜おそく、小学5年生の恋(れん)さんの“おおばあちゃん”(曾祖母)は静かに息を引き取った。翌朝そのことを知らされた恋さんは、目を閉じたおおばあちゃんと対面する-

    この写真集では、無言のおおばあちゃんに向き合う恋さんの言葉にならない表情が、実に豊かで多くを物語っているのが読み取れる。
    しかし大人である私はもう1つの点に注目した。それは恋さんの両親やおばあちゃんといった大人も、彼女に並ぶくらいに豊かな感情を表出しておおばあちゃんに接しているのが写されていることだ。
    私はそれらを見て、恋さんがなぜ臨終を迎えたおおばあちゃんにあんなに落ち着いて、優しく、初めての看取りにも臆することなく接していたのかが理解できた。

    恋さんが自然な看取りを身につけるための心の栄養のもとになっていたのは、まわりの大人たちだと思う。言い換えると、両親やおばあちゃんやおおばあちゃんが彼女の成長をみんなで暖かく感情豊かに見守ってきたおかげだ。
    だからこの写真集は看取りの1日だけしか記録されていないけれども、それまでのこの大家族の歩みが凝縮されて写し出されている。

    また、まわりの大人たちが普段から恋さんを一人の個性をもつ人間として尊重していたのだろうな、とも思った。夜中のおおばあちゃんの今わの際に、あえて寝ている恋さんを起こさず、朝起きてから看取りをさせたのは、おおばあちゃんだけでなく彼女の日常も大切にする家族の思いやりだと感じた。

    つまり、子どもの心の成長を願うならば、看取りが近づいてから考えるのでは遅く、日常から大人自身が心豊かに、そして言外の思いやりを伝える力を身につけていなければいけないってこと。
    その大人の姿勢が普段の生活の積み重ねの中で少しずつだけど自然に子どもに伝わることで、恋さんのように、はじめての看取りでも物故者に礼儀と愛情と尊敬をもって向き合うことができるようになるのだろう。
    子どもがリアルな死に対して無理解なのは、ゲームの影響だけではない。まわりの大人が日常から心豊かで、かつ言外の思いやりを子どもに伝えられる生活をせず、子どもの心の成長の栄養となりえていないからだ。

  • 人はいつか死ぬ。
    分かっていても、分かりたくない。
    誰かが亡くなるときに、残された人はどんな表情をしてるのかな。
    笑顔で見看るって、いちばんの孝行なんじゃないかな…
    全ての年代の方に読んで欲しい一冊。

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「笑顔で見看るって」
      今でも出来ない軟弱者です。
      でも故人が一生を全うした方だと、知っている人には一番の餞だろうなぁ~心掛けよう。。。
      「笑顔で見看るって」
      今でも出来ない軟弱者です。
      でも故人が一生を全うした方だと、知っている人には一番の餞だろうなぁ~心掛けよう。。。
      2012/07/26
  • 小学5年生の恋(れん)ちゃんが、大好きなおおばあちゃんの死を見つめ、受け入れるまでを写真で綴る

    恋ちゃんのおおばあちゃんは、しばらく前から病気で寝たきりである。
    ある日の夜遅く、おおばあちゃんは息を引き取る。朝、いつものようにおばあちゃんにおはようを言いに来た恋ちゃん。おかあさんは「おおばあちゃんにあいさつをしてあげて」と言う。

    簡単な説明とともに、淡々と臨終前後を見つめる、静かな写真集である。
    おおばあちゃんの穏やかな死に顔。
    ぽろりと涙をこぼす恋ちゃんの横顔。
    おおばあちゃんの手や足にそっと触れる恋ちゃんの手。
    元気だった頃、さらに若かった頃の大おばあちゃんの写真。
    最後の恋ちゃんの笑顔。

    1枚1枚の写真に見入ってしまう。

    人が人を見送る。
    もう40年近く前だが、曾祖母は家で亡くなったなぁ。いつからだろう、病院で亡くなる人の方が増えたのは。在宅看護に伴う大変さは、もちろんあるのだとは思うが。

    作者は写真家・ジャーナリストで、紛争地帯や貧困地帯の写真、また東日本大震災の取材を続けてきた。近年は、在宅医療や看取りの撮影に力を入れ、医師らに同行取材しているという。

  • こうやってみんなで旅立ちを見送るのが理想的だな。生まれて死ぬこと。人の一生とは何か。死に立ち会うことは残された生きる人に大きなものを投げかける。旅立つ人からの最後の贈り物なのかもしれないな。死に向き合った恋ちゃんをきっとこれからもおおおばあちゃんが支えてくれる。

  • 心の中に生きてます。

  • 20141027読了
    自宅で最期を迎えるということ。それは真夜中だったから、小学5年生が曾祖母の死を知らされたのは翌朝。ちゃんと対面して、触れて、語りかけて。大人がタブー視してひた隠すのではなく、忌み嫌って話さないのでもなく。理解力に合わせた声掛けで見守りつつ、身近な死と向き合うのは子どもにとって貴重な機会だと思った。命を受け継いだ側が最期のバトンをしっかり受け取らなきゃ、逝く人にも失礼だよね。

  • 村口孝子先生、出石幸子先生  おすすめ
    2【一般】J114-クニモ-1

    ★ブックリストのコメント
    (村口孝子先生)おおばあちゃんの死と向きあう恋ちゃん(小5)の想いをたどりながら、あたたかな看取りの世界を臨場感あふれる写真と文で描かれ、見ていると心が穏やかになり、優しい気持ちが溢れてくる本です。

  • 看取ることがどういうことか感じることができる絵本。

  • おばあちゃんを看取る小学生、故郷の自宅で最期を迎えたおばあちゃん、在宅医療を支える医師の営みなどを通して看取りの現場の写真集です。
    あふれんばかりの生命力と愛情―「いのちのバトン」をしっかりとリレーした、あたたかな看取りの世界、人の絆を臨場感豊かに描かれ、話し声や笑い声が聞こえてきそうな気がします。生と死は切り離されたものではなく、死は日常の延長にあるものだということに気が付きます。そして死はけして終わりではなく、私たちはみんな誰かの「いのちのバトン」を受け取り、いずれはそのバトンを誰かに渡していくのだと思います。

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著者プロフィール

写真家、ジャーナリスト

1974年生まれ。京都大経済学研究科修士号、英カーディフ大ジャーナリズム学部修士号。新聞記者を経てイラク戦争を機に独立。紛争地や経済困窮地域を回り、国内では戦争体験者や野宿労働者、東日本大震災被災者たちの取材を重ねてきた。命の有限性と継承性がテーマ。近年では看取り、在宅医療、地域包括ケアの撮影にも力を入れている。

最新刊に『写真と言葉で刻む 生老病死 そして生 〜 限りがあるから みんなでつなぐ』(農文協、2020年)。
写真絵本シリーズ『いのちつぐ「みとりびと」』(農文協、全12巻)の第1巻で2012年度けんぶち絵本の里大賞。他の著書に『ご飯が食べられなくなったらどうしますか? ~ 永源寺の地域まるごとケア』(農文協、共著、2017年生協総研賞受賞)、『アンネのバラ~40年間つないできた平和のバトン』(講談社)、『家族を看取る』(平凡社)、『証言 沖縄戦の日本兵』(岩波書店)、『3・11 メルトダウン』(凱風社、共著)、『TSUNAMI3・11: 東日本大震災記録写真集』(第三書館、共著)、『子ども・平和・未来 21 世紀の紛争』(岩崎書店、共著全5巻)など。
2011 年度上野彦馬賞グランプリ、コニカミノルタ・フォトプレミオ2010、ナショナルジオグラフィック国際写真コンテスト2009 日本版優秀賞など受賞。
NHKの「おはよう日本」「ハートネットTV」「ラジオ深夜便」、TBS「Nスタ」などに出演。放送倫理・番組向上機構(BPO)放送人権委員会委員。

「2021年 『写真でつづる森のお家と仲間たちの成長 笑顔をありがとう』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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