オープンダイアローグ

  • 日本評論社
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感想 : 9
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  • Amazon.co.jp ・本 (231ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784535984219

感想・レビュー・書評

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  •  斎藤環先生が人の褌でビジネスをしているように感じて『~とは何か』は意地でも買うかと思いつつ興味はあるのでこちらを購入。思想的な違和感がなければあっちの方が解説が充実していて読みやすい。こっちは内容以前に非常に読みづらかった。多分翻訳のせいではない。
     印象としてはクライエントをファンタジーで安定させようというロジックを徹底して実践している形(勿論そんな書かれ方はしていない)。したがって脳の病変を背景にした精神病圏のクライエント(の少なくとも急性期症状)にはオープンダイアローグ単独では十分ではない思われる。なんだかんだ統合失調症などの治療に薬物は欠かせないわけで、じゃあオープンダイアローグで良くなったとされる統合失調症などの患者は何者なんだって話なんだけど、この本では統合失調症とかはっきり言ってる箇所は少なくて、精神病という言われ方をしている。脳の病変を背景としない精神病様症状は稀ならずあって、このあたり原著者も含めて宣伝の(意図的な?)ミスリーディング感は否めない。あんまりちゃんと同定していないのかな?そんな雑な研究ではないと思うのだけれど。
     全員が同じ立場というのも言わば外部向けのexcuseで、少なくともファシリテータの働きは全然立場が違う。参加者があらゆる不安材料を語り尽くした先に希望を見いだせるようにファシリテータが徹底してセッションをコントロールする仕組みで、この辺は思想的というより技術的。
     別に全てが駄目というわけではなくて非常に夢のある技法だと思うけど、宣伝されているほどRevisionalな話じゃなくて、割と過去の研究や実践と地続きだと思う。

  • 【貸出状況・配架場所はこちらから確認できます】
    https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/676258

  • 理論さえ知っていれば簡単に実践できるものではない、と圧倒的に教えてくれる。人としての生き方、世界観、日々の態度、愛についての深い理解とたゆまぬ実践、支援者がこの方法でサポートしていくことは生き方を変え日々問われ続けること(それを楽しむこと)だと思わせてくれる。長めの訳者後書きに惚れる。例えばたまたま開いたところを再読してみる、みたいなことを何度もしたい一冊。

  • 30頁:
    個人は伝統的支えの喪失という代償を支払いながら、伝統的な束縛から解放される。それと同時に、専門化(まま)システムはよりいっそう深く専門化していく。なぜならば、専門家の各々の領域は、人々が伝統的な結びつきから独立して生活を助けるからである。クライエントと専門家システムの出会いは、このような社会的変化の最中に行われる。多様な機関・クライエント・家族らがつくる錯綜した組み合わせはこのようなところに生じる。

  • 51

    ・ダイアローグは治療の場で使われ始めたのが、きっかけでビジネスにも応用されている。
    ・普段使いの言葉で、行動者達が、自分たちの体験をベースに話すことに意味がある。
    ・新しい概念や言語を生み出し、新しいコミュニティを作り出す。

  • 野口さんの「ナラティヴと共同性」を読んで、「オープン・ダイアログ」がすごいらしいということで、読んでみた。

    ナラティヴ系の本で以前から気になってはいたものの、オープン・ダイアログをベースとした井庭さんの「対話のことば」を読んで、組織開発でやっているダイアログのファシリテーションと大きく違う感じでもないので、先送りしていた。

    読んでみると、これは想像をはるかに超えた世界だな〜。

    オープンダイアログは、フィンランドで生まれたセラピー。統合失調症による問題で要請があれば、24時間以内に関係する家族や職場のメンバーと専門家のチームがダイアログを開催する。治療方針が専門家だけで決まることはなく、ダイアログのなかで話されていくという。

    と言われても、あまりピンと来なかったのだが、対話の内容としては、統合失調症の妄想、幻聴的な発言がでても、「それは現実とは違うよ」ということを暗示するレスポンスはせずに、場におけるいろいろな声の一つの声として受け止めていくという。

    え〜、そういうことだったのか!そうすることで、統合失調症の人の居場所が自分のネットワークのなかでできる。初期の段階でそうやって声を聞くことができると、薬をあまり使わなくとも、自然とおさまったり、再発も低かったりするということ。

    あと、オープンダイアログ(OD)にあわせて、「未来がたりのダイアログ」(AD)というのも紹介してあって、こちらはちょっとアプリシエイティブ・インクワイアリーに似ている感じかな?

    なるほどね〜、このあたりのアイディアは、組織開発にも応用しやすそうだな、と思った。本のなかには、野中郁次郎さんの研究への言及もあるし。

    ちなみに、これらのアプローチの理論的な背景には、バフチンがいるらしい。

    う〜ん、フーコーだけじゃなくて、バフチンも読まなきゃいけないわけね。

    読書リストは増えるばかり。

  • 「オープンダイアローグ(OD)」と「未来語りのダイアローグ」という2つのフィンランドで生まれた精神医療のアプローチについての本である。ODのWSの予習のつもりで読み始めたが、結局、復習になってしまった。WSでは著者二人の話を聞くことができ、今も読みながら二人の姿がよみがえってくる。簡単に言うと、ODはフィンランドの西ラップランドのケロプダス病院を発祥とする、精神病クライシスに対して24時間以内に組織されるチームによって患者の生活の場での治療的ミーティングを、各種の社会的ネットワークをまじえて継続して行うシステム、であるので、日本でこれを行うには「社会」システムも違うので、困難な部分も多いが、エッセンスは臨床で活かせるものだと思う。理論的基礎としているロシアのバフチンについては、名前も初めて聞いたのもあり、理論を理解するには時間がかかりそうだが、じっくり取り組んでいきたい。

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