トラウマインフォームドケア :“問題行動"を捉えなおす援助の視点
- 日本評論社 (2019年12月24日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (192ページ)
- / ISBN・EAN: 9784535563827
作品紹介・あらすじ
非難・叱責」を「理解・ケア」に変える,対人援助の新しい視点
児童福祉,教育,医療,矯正などのさまざまな現場で援助職がしばしば出会う,支援対象者の“困った”言動。自他を傷つけ,周囲を悩ませるそうした“問題行動”の背景には,トラウマという「こころのケガ」が隠れているかもしれません。
トラウマインフォームドケア(TIC)は,対象者の言動をトラウマの「メガネ」で見ることから始めるアプローチです。
暴言や暴力,怠惰や無気力,嘘やごまかしなどを“問題行動”と捉えると,支援者は相手を叱責したり,拘束したり,追い立てたり,非難したりしてしまいます。支援者自身も,傷つけられたり,裏切られたと感じたりして,無力感を抱きやすくなります。
しかし,そうした言動が表れた状況を探っていくと,何らかのきっかけ(リマインダー)によるトラウマ反応である可能性が見えてく
るかもしれません。
トラウマの「メガネ」をかけることで,ケースの見え方が変わり,安心・安全の提供へとケアがありかたが変わっていきます。臨床現場で新たな傷つきが生じることを防ぐために,すべての対人援助職が身に着けておくべき公衆衛生的アプローチがTICです。
感想・レビュー・書評
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TICの中で、支援者自身のケアの重要性が謳われているのがとても良い。支援者としての自分も守られるべき存在であると知れて、安心することができた。
トラウマは公衆衛生。その言葉を胸に、少しでも身近なところでTICを実践していきたいと思う。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
トラウマインフォームドケアに関する入門書。文章は非常に読みやすく、実際の臨床例も豊富に書かれているので内容がすっと頭にはいってきてとても分かり易い。
本書の最後の一文は心に染み渡る
「トラウマインフォームドケアとは、トラウマを信じない社会、トラウマによる影響を否認する社会への挑戦である。自分自身の感情を否認しない勇気をもつこと、そして一緒に取り組む仲間を作ること。それが、私たち自身の成長と社会の変化につながるはずだ。」 -
トラウマインフォームドケア入門書。
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P80
「安心≠安全」のジレンマ
トラウマを体験した人に見えているのは,
「安全」が反転した世界である。
安全な場であっても安心を感じられず,
安全であることに安心できない。
…トラウマからの回復とは「安心・安全」を獲得する過程にほかならないが,支援の基盤となるはずの「安心・安全」が失われた状態で支援をしていかなければならないという難しさがある。
つまり,トラウマ臨床において,対象者の「安心・安全」は回復の土台として必要不可欠なものでありながら,それは回復を経なければ獲得されないという矛盾をはらんでいる。 -
”PTSDに特化した新しい心理療法”だとばかり思っていたが違った。トラウマが影響を与える可能性について知った上でそれを考慮しながら支援すること。批判や教育ではなく、理解可能だとすること。いってしまえば、トラウマの視座を強調した共感的理解のすすめだ。支援側のトラウマの影響も扱っている。ただ万能の魔法の杖ではない。そんなものはきっとないんだろう。
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医学部分館2階心理学 : 146.8/NOS : https://opac.lib.kagawa-u.ac.jp/opac/search?barcode=3410169473
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対象者だけでなく支援者も組織もトラウマの影響を受ける。だからこそ対応できるチームを作っていくことが大切。繰り返し読む。
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もう少し、具体的に何をどうするのか、というところに食い込んでほしかった。TICとはいったい何かということについては理解できるけれど、そのケアの部分の具体例が知りたいなと思うのだ。