- Amazon.co.jp ・本 (235ページ)
- / ISBN・EAN: 9784535563452
感想・レビュー・書評
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オランダの先進的な教育を研究しているリヒテルズ直子さんと、
教育哲学者苫野さんの共著を読んでいる。
随分前のことだけれども、
リヒテルズさんの番組を見て、大いに感動して、学んだことを
学校教育現場で生かそうとしたら、すぐに周りの教員から呼び出しを食らった。
子どもを人格的自由な尊厳を持って見てる人は少ない。
学校はまるで全体主義国家の牢獄みたいだ。
対話が成立しない。
何でも上から押さえつけて、何を言っても否定される。
大学生が教職課程で学ぶ全ての教育論は現場では通用しないばかりかそれを実践しようとすると、クビが危うくなる。
物事をゆっくり考えたり感じたりする余地がなくて、
「そんな余裕はないよ」という洗脳状態が当たり前になっている。
塾も輪をかけて、この「学校教」の洗脳に加担している。
正直、両者で勤務している時は、息苦しさと虚しさしか感じなかったし、
子どもたちの芽をぎゅうぎゅう詰めの畑で悪質な化学肥料漬けにしてそれに合わない者は外に放り出すという流れにしか思えなかった。
十二年間の教育がそのようなものであるなら、日本という国が、根っこから腐っていく以外にない。
力なき思想、力なき理想は無能、を実感させられた。
本を読んで、たくさん考えるのだが、少し光が見えては閉ざされて、憂鬱な日々。
外に出て行って、志のある人と交流していくうちに世界が広がった。
教育に対する根本的な考え方、そして構造自体を変えていかないといけない。
オランダの教育改革で興味深かったのが、
市民革命期に生まれた宗教的政治的なものを排除した中立的な公教育に対するプロテスタンティズム保守派の運動がきっかけで、
「教育の自由」を巡って、九十年間国会で闘争してきた歴史が、
オランダの公教育無償と自由という文化を形成してきたのだということ。
また、オルタナティブ教育は、産業化や都市化によって伝統的共同体が崩壊し、共同体の持つ教育力の低下に危機を覚えた教育者たちがはじめたものである。
自由に反対する保守派が教育の自由を生み出し、
教育の均一化から自由で創造的な教育が生み出される。
歴史の逆説である。
ヘーゲルは、歴史は自由の実現の過程であると述べたが、
ひょっとしたら自由が花咲く一つ手前には、強烈に自由を制限するアンチテーゼが必要悪として存在しているのかもしれない。
「悲しむ者は幸いである」。
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0歳児の母です。学習ボランティアで小学生とペア学習をしていて、学校教育について関心があり読み始めました。
本書は、現代がどういう時代・社会なのか抑えたうえで公教育の目的を定義しながら、今の課題をあげて解決策を示唆しています。分かりやすい文章なので、学校教育について疑問を感じている人に、おすすめの良書です。
以下、印象に残った箇所です。
*明治期の公教育は、富国強兵と殖産興業が目的。方法として学校は画一一斉授業で、人を選別する受験システムがつくられた。「決められたことを決められた通りに」「言われたことを言われた通りに」勉強させることが中心の教育。
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*現代は学び続けなければならない社会。自分の力で幸せをつかみ取るために、「学ぶ力」「考える力」「考え合う力」を、すべての子どもたちに育み、保障しなければならない
*1学級30人も40人もいる子どもたち一人ひとりの個別の学びを、一人の教師が全部サポートするなんて不可能だといわれる方もいらっしゃるかもしれません。 しかしこれは、学びの「協同化」を取り入れれば実は十分に対応可能なことなのです。
⇒(意見)とはいえ、学校や学級の状況、生徒一人ひとりの家庭内でのしつけの有無などによって、それができる教師もいれば、そうでないこともある。親として、また、学校の外から子供たちに関わる大人としては、変えにくい公教育のシステムに期待せず、家庭やボランティアなどで自分が良いなぁと思う環境をつくることが大事なのではなかろうか。 -
2人それぞれの立場から話させる内容に、説得力があり、よかった。他の作品も読んでみたいと思った。今の学校教育をわりとざっくり切り、こうなるべきだ!みたいな方向性が書いてある。
切り方が気持ちがいい。そういう意味で、勉強を積み重ねていきたいと思った。 -
オランダの教育はとても進んでるんだな、と感心するが、オランダも最初からすごかった訳でもないし、日本もできるところから日本に合う部分を模索して取り入れていってほしい。サークル対話など良い取り組みだと思う。
現場の教師がやりやすいようにはもちろんだが、とにもかくにも教育にもっと予算をつけるべき。 -
オランダの歴史的背景からオランダの教育の在り方が理解できただけでなく、どういう教育がどういった理由で必要なのかをロジカルに説明してくれる本でした。日本でも教育についての議論をオープンにして、実行していきたいです。
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答えのないものを考え、共通了解を見つけることがこれから大切。
これからの教育はもう教えるのではなく、教師がコーチングしていくのが主流になると思う。
オランダのやり方をそのまま日本にも置き換えることは難しいが、オランダから教育のやり方を学び、それを活かせば何か日本も変わるかもしれない。 -
今後20年でなくなる職業に教師が挙げられている。教師がいらないということは学校がいらないということだ。本当にそれでいいのだろうか。
公教育をイチから考えると言うことは、取りも直さず、学校の存在意義をイチから考えると言うことだ。
現在の学年制画一一斉型の授業は、これからの真のグローバル化に対応できない上に、ITに取って代わられる。
しかし、学校が学校としてあるべきは知識の教授だけではなく、今後発展させなければならないのは自由の感度の育成にある。
コンテンツからコンピテンシーへ。
学校はその存在意義を大きく問われてはいるが、やはり大切な公共財であることを再認識させてくれる。 -
学習する学校
オランダの教育が100パーセント良いわけではないが、地域も連携して作っていく。意識を変えていくのが重要。公教育をもう一度考えなおそうという題名がよく中身を表している。教員の研修に金をかけるべき。 -
アクティブラーニングの文脈においてもオランダの教育制度を参考にしながら非常に示唆のある内容が記載されていた。これから人口が減少して中での教育として、「個別化」を目指した教育は重要視されるのではないかと感じた。これに応じて、大学教育がどのようにあるべきか考える重要なきっかけとなった。