自分の頭で考える読書 変化の時代に、道が拓かれる「本の読み方」
- 日本実業出版社 (2022年1月28日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (245ページ)
- / ISBN・EAN: 9784534059017
感想・レビュー・書評
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読んでよかった本です。
「自分の頭で考える読書」「なぜ今、本なのか?」「消費するだけの読書」から抜け出そう。「他人の頭で考える読書」になってはいけない。
という、タイトルとうたい文句の意味が大変わかりやすく書かれていました。
基本は本を読むときは必ず『問い』と『答え』を持つことだと思いました。
第1章なぜ今、本なのか?
○本には五感的にも時間的にも、思考できるだけの「余白」が十分にある。「余白」こそが読書の魅力。
○「経験」という武器を繰り出す前に、「本」という相手の能力を十分に引き出しましょう。そのうえで、自分の経験を最後に乗せていく。この順番が読書を楽しむためには求められている。
○行間を読むからこそ、そこには解釈の余地が生まれ、その解釈はその人オリジナルのものになる。
○できるだけ、その本のメッセージと符合する空間で読んでみる。
○「タイミング」とは、どういう心境のときに読むか。
○本の価値を決めるのはあなた自身。
第2章どんな本を選ぶのか?
○大概の本は「問い」と「答え」の構造を読み取ることができる。
○「問いの発見」の本はそれなりに負荷がかかる。
○「既知の問いと答え」の輪の中だけでループしていると読んだ本の冊数だけは増えて、まったく成長していない可能性がある。
○大切なのは3種類の本のカテゴリーのバランス。
「既知のリマインド」の本。「答えの発見」「問いの発見」
○読んだ冊数よりも、本当に自分にとって大切な「問い」や「答え」を発してくれている本に向かい合うことのほうが大切。
○常々「今の自分」を客観的に見つめながら、そのときに最適なポートフォリオを組んでみる。
第3章本を通して「問い」を育てる
1アウトプットからはじめる
○まずはアウトプットの場を定義する。そして逃げ場がないようなかたちに仕立てる。
○質問者が置かれたシチュエーションと、本のメッセージの「本質的な共通点」を見つける→一見すると異なる事象の間に「航路」を通すこと
○「一見違うけど、じつは同じ」ということを見出す抽象化のスキル→共通項探しゲーム
○本の抽象度を高める前に、自分の「問い」の抽象度を高めておく
○大事なことは抽象化の後に十分「具体化」する→本からもらった抽象的なことを、最後に自分で具体レベルまで落とし込む「読書のラストワンマイル問題」→問いを具体的にして、自分にとっての意味を考え抜く。
2「具体と抽象の三角跳び」にチャレンジしよう
○「本」という道具を活用して抽象の世界にジャンプする→新たな具体に着地する
第4章「読書の病」を治療しよう
1最後まで読まなければいけないと思い込む「完読の病」
○「今が読むべきタイミングではない」本もある→どんなタイミングで出会った本でも、「この本の『問い』と『答え』はどのようなものかを把握しておく
→その本の「問い」と「答え」の位置付けを理解して、ちゃんと自分の図書館ののしかるべき場所に置いておくことが大事
21冊の本に没頭しなければならないと思い込む「コミットメントの病」
○なぜ同時並行で読むか→そのときの自分の気持ちに最適な本を選ぶため
3ダメなことだと思わなくていい「積読の病」
○積読を肯定的にとらえる。自分が自分らしくいられるスペースを作る→常に「ここではないどこかの世界」との比較の参照点を持っていること。積読を悪いことだと思い込まないこと。
4短絡的な学びにつながりかねない「実践の病」
○人間の「感じるもの」と「わかるもの」には大きなギャップがあり、そして「わかるもの」と「実践できるもの」にはさらに大きなギャップがある。
5罹患率10割の「読書時間不足の病」
9割は仮病→本当に自分にとって大事な時間は何か
第5章「読書が役に立つ」とは、どういうことか?
○「読む」と一口にいっても、読み方に二通り、根本的に性格が違う読み方がある。「情報として読む」のと「古典として読む」の二つ。
○自分にフィットしたやり方で脳に「刻み込む」→読みっぱなしにせず、書く、もしくは話す。
○「冷凍保存」する→読んだとき、よくわからないけれど重要そうな気配の漂う言葉というものをそのままの状態でキープしておく。
第6章「本を読む」とは自らを生きるということ
○「本を読む読書」と「本に読まれる読書」の違いは「熱狂と懐疑のバランス」に答えがある→理想的なバランスは「熱狂7割・懐疑3割」詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
読書法の本はなるべく読もうと思っているのですが、今回もその流れで手に取った一冊。著者は前著で知り、興味を持ちました。
この読書本は一風変わった印象があります。「読書法はケースバイケース」「必殺読書法はない」など、本音で語るところは共感します。章の展開としては、読書の必要性、本の選び方、読書の誤解の解消、読書の効果といった感じで、読書法を知りたい読者にとっては、新たな考え方を得られます。
「本は読むべし、読まれるべからず」という文が紹介されていますが、これが本書の本質なのかなと思います。非常に面白い一冊でした。
▼コンポーネント(部品、成分、構成要素等)を示しつつも全体像をあえて余白として残すことで、読者の属人的事情を乗り越えられるのではないか
読者の「考える力」を借りることにより、それぞれの事情にフィットしたケースバイケースの読書法が生み出せるのではないか
▼この変化の時代を生きるために、「抽象化する力」こそが便りになる
▼本の最大の魅力というのは、やや逆説的ですが、「魅力的ではない」という点
本には五感的にも時間的にも、思考できるだけの「余白」が十分にある
▼本を読む「文脈」(コンテスト)を意識する
「コンテクスト」の要素は、本を読む「場所」と「タイミング」
▼「問い」に対する3つの本の選び方
①問いの発見
②答えの発見
③既知のリマインド
▼「既知のリマインド」に偏る人が多い傾向
そのため、3つのカテゴリーのバランスをとったポートフォリオを組む
▼読書の病
・完読の病
・コミットメントの病
・積読の病
・実践の病
・読書時間不足の病
▼「熱狂7割・懐疑3割」が理想的なバランス
<目次>
序章 変化の時代、「終身エンタメチャレンジ」の扉を開けよう
第1章 なぜ今、本なのか?
第2章 どんな本を選ぶのか?
第3章 本を通して「問い」を育てる
第4章 「読書の病」を治療しよう
第5章 「読書が役に立つ」とは、どういうことか?
第6章 「本を読む」とは、自らを生きるということ
付録 自分をつくる読書ーこの本で取り上げた、私をつくる64冊 -
よくある読書本にみえて、実は学び全般に通ずる思考・姿勢を、数々の名著からの筆者自身の学びとともに紹介してくれている1冊。
この本に書かれてある通り、「何かの役に立つのか?」という気持ちで読むよりも、読むこと、学ぶことそのものを楽しむ気持ちでこの本も読むことをおすすめします。
「そのとおりだ!」と本を純粋に受け入れて楽しむ熱狂と、本の内容に疑問を持ちながら批判的に読む懐疑とのバランスを、それぞれの書籍でもっておきたいですね。 -
本の種類は3種類ある。
1️⃣問いの発見
2️⃣答えの発見
3️⃣既知のリマインド
大切なことは抽象化する力。
自分がたてた具体的な問いは、具体から抽象を経て、新たな具体へ進むことで、問いを育てていく。 -
タイトルの「自分の頭で考える読書」とは、「他人の頭で考える読書」をしてしまうことへの警句。
自分の中で「問い」を持ち、読書を通じて自分なりの「答え」にたどり着くのが「自分の頭で考える読書」
また、本にはその著者が掲げた「問い」と「答え」が含まれているが、それが自分にとって新しいのか、既知のものなのかで、本を選ぶ際のポートフォリオを組めるという。読書は往々にして負荷の少ない「既知のリマインド」に偏りがち。それを自分自身の認知行動を変え負荷をかけてでも、「問いの発見」や「答えの発見」につながる読書をすべきであるというのが本書の主張。
また、「問い」に関し、共通項としてグルーピングする「抽象化」を行った上で、その後に十分「具体化」するなど含蓄のある話がたっぶり盛り込まれている。
いわば、読書の哲学といった奥深い内容になっているため、自分にはレベルが高すぎると感じた部分も多々あった。
しかし、できるだけ、その本のメッセージと符号する空間での読書、時時の自分の心身状況にあった本を読む「並行読書」の勧めなど、力みすぎない読書も示されていた。
著書の読書に関する達人ぶり、哲人ぶりを強く実感、読書の意味や自分の成長に向けた活用の仕方を少し学べた感はあった。
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最近読書法の本が多く出されているが、それらの本とは一線を画す読書本
逆説の読書方というべき本
今出されている読書法の本はいかに本を解釈しアウトプットするかという
点に重点が置かれているいわば、ビジネス書的なアプローチをとっている。
それに対して本著書は、あえて遠回りな読み方を推奨している。
本の魅力とは「抽象的で魅力的ではなく余白を残している」点であると。
その点でもビジネス書のような即効性をもとめるのではなく、教養書的な長期的
な効用を求めているところに特徴がある。
一見抽象的な本は即効性がなく、ビジネス書のように具体性がないようにみえるがそれは否という。
そのポイントは以下の2点と思われる
・具体と抽象の往復を行う
・知の沈殿を行う
物事の抽象化を通して一見関係ない物事の共通項を探していく。
また、もやもやした言葉で解決できない言葉があってもあえてその場で解決せず
アウトプットして、何かのきっかけで解凍を待つという態度である。
このアナロジーで思い出したのは「アイデアの方法」である。
なにか分からないモヤモヤしたしたものをそのまま放り込んで、あるきっかけで
アイデアのスパークを待つ。
その意味でも読書の活かし方もアイデアの発露も本質的には同じなのかもしれない。
Voicyのどこかでビジネス書はカロリーメイトのようにすぐに栄養がつけられるが長期的な効用は少ない。一方人文書・教養書は噛み応えがあり、すぐに栄養がつかず、
即効性はないが、長期的な滋養となるものであるともいっていた。
抽象レイヤーでは読書も同様のことがいえる。
即効性のあるものはすぐに役に立たなくなる。即効性のないものは役に立たないというわけでない。むしろ自身の血となり肉となる。
まさに逆説の読書本といっても差し支えないのではなかろうか。
逆説には本質が含まれている。 -
「本とどう向き合うか」という問いに対する荒木マスターの考えがまとめられた本。
いままで短期的に役立つ情報を得るため、HOW TO本を読むことが多かったが、本の問いと答えを読み取り、自分で問いを立てながら解釈していく必要性を学びました。
また「本は読む人が価値を決める事ができ、同じ本を読んでも得られる教訓は異なる」と述べられており、こういった感想を書くことに対する自信を貰いました。
本を読んでも時間が経つと忘れてしまう人、表面的なところだけさらっており学びが身についている気がしない人には、「読書」という行為を見つめ直すことが出来るため、おすすめの本です。 -
読書との向き合い方の指南書である。読書とは肯定的な行為であることが前提にあり、その書籍が投げかける「問い」と「答え」(あるいは新たな「問い」かもしれない)に真摯に向き合うことだと感じた。
著者は冷凍保存という言葉を使っているが、私は基礎研究という言葉で同じようなことを思っていた。読書をすることで短絡的に役に立つことばかり考えていないで、その書籍にあった言葉がいつかの自分に役立つことがあるかもしれないと思って書籍と向き合っている。
最後に著者が本書で紹介している書籍を紹介している。
また、ここから書籍の旅が始まる。 -
「本を読む」「自分の頭で考える」という2つのキーワードに惹かれ、店頭で見かけて即買いしてしまいました。結論としては、購入して良かったと思っています。
この本に書かれている「読書とは著者との対話である」このことは出口治明さんの本をはじめ、読書論を紐解く本では必ずと言ってよいほど述べられている言葉です。自分も本を読むときは、著者に賛成・反対しつつ、自分の意見を持ち思考しながら読み進めることを意識しており、それが読書の楽しみでもあります。このことについて明確に意識できるようになったのはこの本の効能かと思います。
また、それ以外にも自分にとってこの本の大きな価値は二つあると思っています。
価値の1つは、アプローチを「問いの発見」「答えの発見」「既知のリマインド」という3つのラベリングで説明しているところにあります。
今の自分自身の読み方は「答えの発見」「既知のリマインド」が中心になってしまっていることに気づきました。すなわち、すでに自分の中に持っていた答えを確認し、安心感を得るための読み方が中心になってしまっていた、ということです。
今までのアプローチの仕方に満足し「問いの発見」への姿勢が足りていなかったのではないか…? 今後の伸びしろを増やすためには、問いの発見を得るために、興味の幅を広げてみる方が良いのでは? このことに気づかされた点だけでも、本書を読んだ価値があったというものです。
加えて、もう一つの価値として、(今まではあまり意識はしてこなかったが)「複数の要素の共通項を抽出して抽象化してとらえ、そこから得たものを自分の手元の具体論に落とし込んで理解する」という点が言語化されて説明されている、というものでした。
今までの私のアプローチは知識をそのまま本から字面を受け取り当てはめていくのみで、抽象化まで意識はできていなかったように思います。抽象化といっても難しいものではなく、本書では「他に応用するためにその本質を見出し、未知の世界に生かすこと」と説明されていますが、要は気づきと学びを得て他にも生かすことですし、本書を読むことで改めてきちんと意識できるようになったのではないかと思います。
もしかしたら、今後の読書ライフの転換点になるかもしれない。そんなことを思いながら読み終えた一冊でした。
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