「民族」で読み解く世界史

著者 :
  • 日本実業出版社
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感想 : 37
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  • Amazon.co.jp ・本 (312ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784534055583

感想・レビュー・書評

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  • 「民族」を軸に世界各地の歴史を幅広く解説している。世界史のヨコの繋がりが分かる。(あくまでひとつの説としても)勉強になる。

    こう考えると、大陸は特に民族の入れ替わりや統合が多く複雑な歴史を辿っている。現在の内紛や国際問題につながっているものも多い。平和を願うばかりだけど、それぞれの民族の事情で考えたとき、そう簡単に解決できるものでもないんだろうなと思ってしまう。

  •  サクサクと読めて面白い。
     世界史を専攻してなかったので、とっつきにくいパートもあるが、「民族」「語族」というくくりで世界史を概観していく視点が面白い。

     とはいえ、装丁が生真面目な雰囲気のわりに、内容がやや不謹慎なところもあり、また出典も不明で、正しく検証されたのだろうかと思うよな説がサラリと提示されていたり、トンデも本とは言わないが、眉に唾しながら読み進めたほうが良さそうだ。
     冒頭に、中国人が「ガーガー、ペッ」とタン吐きをする、と言い放っているところで気づけたかな。この書き出しは、本書のスタンスを読者にさりげなく提示した著者としての親切心だったのかもしれない。よう知らんけど。

     そんな点を差っ引けば、面白く読者の興味を引きながら、さまざまな時代における「民族」の変遷を興味深く解説していて読みやすい。
    どんなところが興味を引くかといえば、真面目な解説の合間に、どの民族には美女が多いとか、文字を持たない民族は野蛮であったとか、まぁその民族をキャラ立ちさせるには格好のネタではあるが、飲みの席の話題のような、きわめて主観的な話を、さも歴史的事実や民族に根差した根拠あるものかのように開陳している点。
     こちらも、オヤジなので、ついつい「ほほぅ」と読み進むが、民族という極めてデリカシーを要する主題を扱うにしては、配慮に欠ける内容が多いことは、まず意識して読むべき著作だとは思う。

     そんな下世話な話もあるが、個人的には、各民族による他民族の呼称や、各語族に残る言葉から民族の特性や、その当時その民族が置かれた立場などを説明している箇所は、面白かった。一例を挙げると、

    「ギリシア人がスラヴ人に「おまえたちの話している言葉は何だ?」と問うと、「言葉(スラヴ)だ」と答えます。スラヴというのは本来、言葉という意味です。「スラヴ」と聞いたギリシア人は「では、おまえたちをスラヴ人と呼ぼう」ということになりました。そしてギリシア人はスラヴ人を奴隷にしたことで、ギリシア語でスラヴは奴隷の意味となります。 」

     まぁ、この手の話も、言ってみれば、宴席の話題に役立つ程度のネタではあるのだけど(苦笑)

    「民族」の話を、ホモ・サピエンスの出アフリカの頃から説き明かしていく努力も、なかなか頑張っているなと思うところ。その分、最後は、とくにまとめといったふうもなく、第8部 Chapter24 白人優位主義の歴史を語ってブツンと終わっているのは残念。
     なんだかなぁ。

     予備校の世界史の講師だったという著者。特に専門的に歴史を研究している方ではなく、「テレビ、ラジオ、雑誌など各メディアで時事問題を歴史の視点から解説」しているという略歴から、ある程度、エッヂを利かせた論調で勝負しているのだろうなとは思うところ。
     いわゆる”民族主義者“ということはないとは思うが、本書の内容は鵜呑みにせず、ひとつの説としてうけたまわっておきましょうか、と。

  •  民族という視点から歴史を視る事で、現在、各国が抱える政治、宗教、領土問題を理解することが出来た。今後、世界情勢を読み解く上での知識になった。

  • 島国日本では中々実感できない民族という概念だが、歴史はこの民族の変遷そのものと言って良いのだろう。民族を軸に世界史を眺めてみることで、新たな視点が加わりこれまでの理解に深みが増す、逆にこの視点を欠くと、現代の世界情勢を正しく理解することはできないのだと再認識した。

  • 民族という視点から世界史の流れを見ていくので、それぞれの地域の人々のルーツなどが分かって興味深かった。
    人類の移動が、民族というものを形作ったのだと思う。

  • ソ連が崩壊して冷戦が終わり、世界が平和になると思ったら、今度は世界中で民族紛争が始まった。民族紛争が始まったのか、それとも前からあったけれど冷戦にまぎれて目立たなかったのかはともかく、なんで民族紛争は尽きないんだろう、だいたい民族ってなんだ? と思っていたので、タイトルをみてこれはよさそうだ、と読んでみた。

    期待はずれだった。
    「民族」を定義することもなく、〇〇民族があっちからやってきて、△△に国を作って、□□民族と喧嘩をした、といった話が延々と続く。○○民族は美人が多い、といったしょうもない私見を別にすれば、著者なりの主張や分析は特にない。年表的な情報量だけは豊富で、こういうの昔さんざん読まされた気がするな、と思ったら教科書だった。相当量の参考文献が上げられているけれど、「まとめ本」という感じか。

  • 世界各地の民族史の修正。中国の歴代王朝で漢人が成立した王朝は半数に満たず、他民族支配中の混血政策により今となっては純粋な漢人は存在しない、など刺激的ではあるが納得できる内容。日本も朝鮮人との混血が行われており、現日本人は沖縄、アイヌに残っているなど、こちらも刺激的。そもそも純粋な民族性の保持など完全隔離された地域でもない限り無理な話なのに、民族国家、国民国家への憧れなの高まるのは、まさにそれが幻想の国家であるからこその憧れなのかも知れない。

  • 血統や血脈をベースに言語、文化、慣習等を同じくする「民族」がその誕生から現在までいかに勃興し、衰退していったかを膨大な知識で解説した本。著者の知識量に脱帽&感服。ロヒンギャ問題、クルド族問題、中東問題等々、現在の民族問題についてもその根本から解説してくれている。
    本書を読んでいると、結局、民族ベースであろうと人種ベースであろうと、人間の歴史とは、今更ではあるが、殺し合いの歴史であるということをあらためて認識させられ、人間の愚かさにちょっと悲しくなるものがある。

  • h10-図書館2018.10.28 期限11/11 読了11/7 返却11/8

  • 高校時代、「得意」だと誤認していた世界史・・単に暗鬼が得意だったからと改めて認識し、その時代の教科書のお粗末さに笑えた。

    時が名晴れ過ぎての今、40歳代以上の方が持つ知識と現在の世界史抗議にかなり異なりが出来ていることに気付けた。
    視野狭窄、偏愛・偏狭、国粋主義、感情論・・などなど日頃陥ってはいけない事態に安易になってしまう事への啓蒙たる一冊。

    20世紀、戦争の世紀・・で21世紀はその後に高まった民族主義による交戦地区が深刻化している・・グローバリズムとともに。

    こういった一冊を読んでいると国営放送の味のない「金をかけた取材とドラマ、ドキュメンタリーのむなしい中身」が改めてバカらしさが増した。

    感情だけではいかんとも解決策に繋がらない民族。
    住んでいる地域性、気候変動、パンデミック、病虫害・・地球に人類が生まれてどれだけ起こって消えて人を苦しめ、喜ばせ、今日に至ったか。宇宙論の雄大な様とも異なる悠久の歴史を想いいることができた時間となった。

    特に面白かったのは
    *コーカロイドの中アングロサクソンが今日突出して優位に世界を牛耳たらんとしてきた経緯。
    短頭長頭の優位度の比較、WASP有能説、英露に分かれたノルマン人、更にローマ教皇が十字軍の勝利を異として呼び寄せた事情etc

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著者プロフィール

1975年、大阪生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業。代々木ゼミナール世界史科講師を務め、著作家となる。テレビ、ラジオ、 雑誌、ネットなど各メディアで、時事問題を歴史の視点でわかりやすく解説。
主な著書に『民族と文明で読み解く大アジア史』(講談社)、『「民族」で読み解く世界史』『「王室」で読み解く世界史』『「宗教」で読み解く世界史』『世界「民族」全史』(以上、日本実業出版社)、『経済で読み解く世界史』『朝鮮属国史』(以上、扶桑社)、『世界史で読み解く天皇ブランド』(悟空出版)などがある。

「2023年 『知らないとヤバい民主主義の歴史』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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