資本主義の再構築: 公正で持続可能な世界をどう実現するか

  • 日経BP日本経済新聞出版本部
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  • Amazon.co.jp ・本 (363ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784532358693

作品紹介・あらすじ

〇資本主義は歴史上、最も成功した経済システムです。だが、いまやそれが、資本主義そのもの、そして世界を破壊する危機に直面しています。大規模な環境破壊、経済格差、信頼できる社会的な仕組みの崩壊という現代社会の大問題の解決のために、企業や個人はどのような役割を果たせるのか。
〇著者は、株主価値最大化のみを追求することそのものが問題を生み出していると指摘、共有価値の創造、共通の価値観に根差した目的・存在意義(パーパス)主導によるマネジメント、会計・金融・投資の仕組みの変革、個々の企業の枠を越えた業界横断的な自主規制、政府や国との協力が必要不可欠であることを説き、こうした行動には企業に利益をもたらす経済合理性があることを明らかにします。また、政府と市場は互いを必要とし、企業は民主的で自由な社会を支える包摂的な仕組みを強化するために積極的な役割を果たすべきだと提唱します。
〇15年にわたり強い危機感をもって問題解決に取り組んできた著者が、資本主義を創り直すための体系的な枠組みを提示します。

感想・レビュー・書評

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  • 地球環境が劇的に変化する現代において資本主義はどうなっていくべきかを論じた本。会社などの組織のみならず一人一人が考えて行動を起こすことが極めて重要であり、単純であり当たり前のことでもあり頭では解っているつもりのことであるが、結局はそこに行き着くのだと感じた。

  • これまで日本企業は欧米発の経営思想や主義を盲目的に輸入して消化・導入しようとしてきました。その最たる例が、株主価値最大化を目的にした経営であり、日本の経営学者やコンサルタントは、ステークホルダー経営ではなくROE(株主資本)最大化をいかにして実践するかについてここ20年間ほど喧伝してきたわけです。その背後には、欧米発の思想を無批判に優れていると考える「知識層」の風潮があったのかもしれません。

    翻って米国では、2019年にビジネス界の重要団体であるビジネス・ラウンドテーブルが、企業は「株主価値最大化」ではなく「ステークホルダー重視経営」に舵を切るべきだと述べて大きなニュースになりました。本書の著者であるヘンダーソン氏も同様の主張をずいぶん前から展開してきた方で、最初はあまり見向きもされていなかったのかもしれませんが、ようやく彼女の主張が大きく世界で取り上げられるようになったのだと思います。著者は資本主義自体を終わらせようとは考えていません。本書を読むとわかるように、きわめてバランスの取れた主張が多く、悪く言えば中途半端という印象もありますが、黄金律(アリストテレス)としての中庸を重視されていると感じました。そして本書のなかには日本企業の事例もいくつか登場するように、彼女は「資本主義の再構築」にあたって日本的な価値観を重視しています。従業員を価値創造の重要なプレイヤーとしてみなすこと、社会にとって良いことをしなければ両親、祖父母に顔向けできない、あるいは次世代の人類(子孫)によりよい社会を提供する義務がある、というような感覚です。本書の最後に、著者は仏教徒であることが書かれていましたが、このあたりも著者の主張内容に影響を及ぼしているのかもしれません。

    人口が70億人を超えて、地球の資源制約に直面している人類にとっては、GDP(あるいは財務指標のルールで計算される利益)を最大化することが社会の目標であってはなりません。そしてもう1つ重要なのは、資本主義自体が問題なのではなく、資本主義が向かっている方向を変えよということなのです。もう少し言えば、異なる経済社会指標(そこには社会価値や地球環境などへの影響も考慮されている)が近いうちに導入されるであろうこと、それに準拠できない企業は淘汰されるわけですが、実は日本企業にとってはチャンスでもあり、世界に範を示すチャンスではないかとも本書を読んで感じました。

  • 『#資本主義の再構築』

    ほぼ日書評 Day657

    株主資本主義の限界を越えるために…とか、色々言ってるんだが、こんな上手く行った例もある、というのをくどくどと列挙するだけで、本質的な解決策の提示には程遠い。
    ただ、事例自体は、学びの多いものもあるので、評価の分かれる/難しい本。

    取り上げられる上手く行った例のひとつとして、紅茶のティーバッグの安売り競争が止まらない。で、とあるメーカーが、当社は「フェアトレード」で紅茶の原料を仕入れていますということを大々的にアピールすることで値崩れを防ぐことに成功したことが語られる。そうした取り組みを行う企業の製品を次も買いたいと思う人が49%もいるのだそうだ。
    いや、ちょっと待ってくれ。49%って半数未満、明らかに縮小再生産ではないか?
    ま、そんな話。

    以下、Amazonより転載。こういう話に興味のある方は是非!

    【内容紹介】
    〇資本主義は歴史上、最も成功した経済システムです。だが、いまやそれが、資本主義そのもの、そして世界を破壊する危機に直面しています。大規模な環境破壊、経済格差、信頼できる社会的な仕組みの崩壊という現代社会の大問題の解決のために、企業や個人はどのような役割を果たせるのか。
    〇著者は、株主価値最大化のみを追求することそのものが問題を生み出していると指摘、共有価値の創造、共通の価値観に根差した目的・存在意義(パーパス)主導によるマネジメント、会計・金融・投資の仕組みの変革、個々の企業の枠を越えた業界横断的な自主規制、政府や国との協力が必要不可欠であることを説き、こうした行動には企業に利益をもたらす経済合理性があることを明らかにします。また、政府と市場は互いを必要とし、企業は民主的で自由な社会を支える包摂的な仕組みを強化するために積極的な役割を果たすべきだと提唱します。
    〇15年にわたり強い危機感をもって問題解決に取り組んできた著者が、資本主義を創り直すための体系的な枠組みを提示します。

    https://amzn.to/3mtPyVK

  • 資本主義経済体制の改革論
    「株主価値最大化」至上主義の誤り
    外部経済・不経済への対応が大きな課題
     環境破壊・経済格差・社会基盤の崩壊
    ハーバードのNo1講義「資本主義の再構築」
    本書の頭では切れが伺えない 残念

  • 翻訳が原因な気がするが、自分には読みにくかったなあ。でも色んな示唆があった。特に、企業の利益にはその企業が与えている環境への負荷/ダメージが含まれていない、といった考えは納得感あった。良い意味でも悪い意味でも、環境への影響を数字にする枠組み作りが今後求められることなんだろうなと思った。

  • ■資本主義は効率的な経済を創造し、人類に豊かさをもたらした。
    ■今、その資本主義の行き過ぎが指摘されている。気候変動も、患者の足元を見て薬の価格をべらぼうに値上げをする輩の存在も、その帰結だ。
    ■その主因は、ミルトン・フリードマンの「企業の唯一の社会的責任は、その資源を活用して、利益を増やす活動に従事することである」という考え方である。
    ■本の題名は、資本主義の行き過ぎをどう修正、再構築するか、という意味である。
    ■内容としては理想的だ。でも、共有価値の創造、目的・存在意義(パーパス)主導型の組織など、今流行のキーワードが出てくる。しかも、その事例も記載している。これに興味のある人は一読の価値があるだろう。
    ■全般に読みにくいと感じた。最後の最後で、とても読みやすいところがあって星4つ。

  • 気候変動による社会生活の影響が顕在化し、持続可能な社会への変革が迫られている今、必読なんじゃないですかね。いち早く変革を行った企業には、プラスのレピュテーションのみならず、実利的な利益も伴っているというのは興味深い。100年前だったら、こうはいかなかったかもしれないけど、今なら可能。っていうか、やらないと、世界が持続しないという事なんだと思うけどね。

  • 環境保護と経済の(質の)成長による公平な社会の確立、を両立させる思考と方法、課題がさまざまな事例とともに著者の思いも併せて紹介されている。

    経済学やスキームが主題のようにも思えるが、一人一人が思考→思想→信念→行動へと移していくと、やがて人々の総意は全体へ伝播していくことを伝えたかったのではないかと、巻末の家族への想いから感じた。

    事例と専門用語(ググれば分かる)が多いので、途中少し心が折れそうになりますが、ベットサイドに置いて自分が1日した事などを振り返りながらチマチマ読むスタイルがマッチした本でした。

  • 株式会社に属する中で、株主利益の最大化を命題とする働き方に違和感を覚え、担当レベルの一社員として何ができるのか勉強したいと手にとった本。日本の大企業はすでに重要性はわかっていつつも実践に落とせてないことが書かれているなあという印象。主張には同意。

    目的主導型事業が利益を生み生産性をあげる、企業だけの頑張りでは不足だが民間セクタへの期待値は大きい等の主張がふんだんな事例をもって約300ページ説明されている。
    急いで要点だけ把握したい私にとっては、途中で何の話がしたいのかわからないほど事例紹介が多かったので星4だが、経営者にとっては事例から学ぶものが多いと思う。

  • 大規模な環境破壊、経済格差、社会の仕組みの崩壊といった現代の主要な課題解決には、企業が株主価値の最大化ばかり考えていてはダメで、資本主義を再構築しないといけないということ。単純に資本主義を諦めたり、脱成長を掲げていないところに共感できる。著者は実現可能と信じているが、再構築には5つのピースが必要で相当大変だなと感じる。それでも、今なにかをやる気にさせてくれる良本。

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著者プロフィール

ハーバード大学ジョン&ナッティ・マッカーサー・ユニバーシティ・プロフェッサー。ハーバード・ビジネススクールでも経営論、戦略論の教鞭を執る。ハーバード大学の中でもごくわずかな教授にしか授与されない最高位の名誉称号「ハーバード・ユニバーシティ・プロフェッサー」をもつ。ハーバード・ビジネススクールで高い評価を得ている講義「資本主義の再構築」を受け持つ(同スクールのMBAコースでは最近5年間で最も成功を収めている)。
NBERリサーチフェロー、英国学士院および米国芸術科学アカデミーのフェロー。マサチューセッツ工科大学(MIT)スローン・スクールで21年にわたりキャリアを積む。同スクールで「年間最優秀教員」の栄誉を受け、イノベーションの経済学、大組織の自己変革について重点的に研究を行う。
アカデミックなキャリアを重ねるとともに、企業のマネジメントにも深く関わる。アムジェン、アイデックスの取締役をそれぞれ8年間、15年間にわたり務める。2019年にフィナンシャル・タイムズ紙が選ぶ「傑出した取締役」3人のうちの1人に選ばれる。

「2020年 『資本主義の再構築』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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