デジタル経済と税: AI時代の富をめぐる攻防

著者 :
  • 日経BPM(日本経済新聞出版本部)
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感想 : 8
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  • Amazon.co.jp ・本 (285ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784532358167

作品紹介・あらすじ

■20世紀の石油に取って代わるデジタル経済の新たな資源だといわれるビッグデータ。では、これらの無形資産が価値をもつ時代に、税の仕組みはどう変えればいいのか?
■2020年4月からグーグル、フェイスブック、アマゾンなど巨大IT企業に対して売上高2%の「デジタルサービス税」を導入――。英政府発表が衝撃をもって受け止められている。EUも同様に暫定的な措置として3%程度の課税を提案しています。ところが、GAFAの本拠地のある米国は猛反発、この問題をめぐって世界は大きく割れています。「米国vs欧州・その他の国」という構図が明確になる中で、日本企業も大きな影響を受けるこの問題に日本はどう対応すべきなのか? デジタル経済と税をめぐっては、さらに様々な問題が山積しています。
・シェアリングエコノミーが発達する中で、そこで働く人や遊休資産への課税、プラットフォーマーの責任をどう考えればよいのか?
・AI時代にベーシックインカムの導入が必要だといわれるが、それは現実的なのか? 財源は確保できるのか? 広がるといわいれる所得格差の是正に本当に有効なのか?
・ロボットが人間に取って代わる時代には、ロボットに課税すればよいではないか、ともいわれる。それを可能にするには何が必要なのか?――などなど。
■本書は、税制論議の第一人者が、デジタル経済と税の関わりをめぐる問題の論点を整理し、「公平・中立・簡素」という原則のもとで、どのような税の仕組みが必要なのかを提言するもの。欧州では、デジタル課税や多国籍企業への課税をめぐって一般市民も立ち上がるなど、急速に関心が高まっている。経済格差、所得分配など、デジタル経済の重要な側面を理解できます。

感想・レビュー・書評

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  • 専門的な内容のわりに、文章が平易で読みやすかったです。2019年から状況も変わっていると思うので、最新の情報を知りたくなりました。
    グローバルなデジタル企業の租税回避問題、一般的にはあまり知られていないと思いますが、なかなか重大ですね。

  • 税金は素人の身ながら、タイトルを見て面白そうだと思い本書購入しました。結論から言うと、初心者の人間にもわかりやすく解説されていると思います。またGAFAなどの大手デジタル・プラットフォーム企業が大規模な租税回避をしている、というのは新聞等で知ってはいましたが、改めて各社違うスキームを用いているというのがわかり勉強になりました。本書から学んだのは、経済のデジタル化は税制の在り方を根幹から覆そうとしているということです。音楽業界ではデジタル・ディスラプション(デジタルによる破壊的な影響)が起きていると言われていますが、税制の分野にもデジタル・ディスラプションの波が押し寄せているということです。

    税に関して現状何が起こっているのか、についての分析編は大変勉強になったのですが、一点気になったのは、著者が描く未来像がかなり悲観的だということでしょうか。もちろん、そういう悲観的な未来像を描かない限り、ドラスティックな税制改革を提案する意味はないわけですが、恐ろしい未来像を国民に想像させたうえで税金のプレゼンスを今以上に高めようとしているかに見えて、あまり良い気がしませんでした。また本書の最後では、国がロボットに対する直接持ち分を持ち収入を得る、というシナリオも描かれていますが、それこそ「1984年」的なディストピア社会ではないかという気もしました。ただいずれにせよ、こういう議論を国民がしていくことが大事なんだ、というメッセージと受け取りましたので、本書は啓発的であったと思います。

  • IT時代の徴税の課題、税のあり方を解説した書。
    テーマは幅広く、多国籍企業の租税回避、アマゾンやGoogleなどプラットフォーマーへの課税方法、タックスヘイブン、シェアリング、格差が拡大する中での税あり方など。
    旧態依然とした所得の捉え方や徴税の仕組みがあっという間にワークしなくなっているのがよく理解できる。
    今まさにコロナ騒動で個人、小規模企業、個人事業主など、必要な人への支援策が思うとおりに進まなくなっている。デジタル化の遅れが致命的になっていることを痛感した。

  • ●巨大IT企業を始めとする多国籍で活動する企業の、国際的租税回避の問題に対して、世界中で検討を行っていますが、利害の対立が目立ち、議論の進捗状況はよろしくありません。
    ●「膨大な電子カルテのデータから、オレンジジュースとアスピリンの組み合わせでがんが治ることが言えるなら、正確な理由はどうあれ、この組み合わせががんに効くと言う事実のほうがはるかに重要となる」(ビックデータの正体より)
    ●デジタル経済のもとでは、その価値の中核である無形資産を低率国やタックスヘイブンに移転させ、そこに所得を集中させて租税を回避することが可能になります。関連企業間での移転は容易で、開発をもたらした活動と、法的所有権が容易に分離されることになります。こうして価値創造地と納税地の乖離が生じるのです。
    ●エアビーアンドビーを例にとると、本社はアイルランド、日本にある会社はPRやアフターサービスなどを行うサポート機能しかないので、日本が法人税を貸す際の根拠となるPEには当たらず、利益に対する課税券は日本にはありません。
    ●ギグエコノミーの発達により、懸念される無申告、過少申告者の増加。
    ● ITを活用した納税者サービスが代表的なものが「記入済申告制度」です。この制度は、雇用主や金融機関等が提出する法定調書に基づき、税務当局が、雇用主や金融機関等から提出された情報等の所得金額や源泉徴収額等を、あらかじめ申告書に記入し、納税者に送付し、必要に応じて修正することで申告が終了する制度です。スエーデンやノルウェーなどから始まった40カ国ほどの国で導入されているこの制度。

  • 2019/06 丸善
    アマゾンのスキーム
    租税回避
    日本の法改正を行なっても、日米租税条約を改定しないとアマゾンには課税できない

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著者プロフィール

東京財団政策研究所研究主幹、中央大学法科大学院特任教授。(一社)ジャパン・タックス・インスティチュート代表理事、法学博士(租税法)
1950年広島生まれ、73年京都大学法学部卒業、大蔵省入省。証券局調査室長、主税局調査課長、税制第2課長、主税局総務課長、東京税関長、財務総合政策研究所長などを歴任。中央大学法科大学院教授などをへて現職。

「2019年 『デジタル経済と税』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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