- Amazon.co.jp ・本 (313ページ)
- / ISBN・EAN: 9784532358037
作品紹介・あらすじ
■安倍政権の政策の目玉になった「生産性革命」。生産性は「働き方改革」の焦点でもある。それだけに生産性については、世の中の関心は高まる一方だ。だが、実は生産性についての巷間の論議には多くの誤解があり、俗説もまかり通っている。
たとえば、「企業収益が高まれば生産性が上がる」「生産性向上には価格引き上げが必要」「高いサービスに見合った価格付けがされていないのが低生産性の原因」「設備投資を促進すれば生産性は上がる」「日本の生産性は欧米と比べて低い」等々。
しかも企業経営者や政策担当者も俗説を受け入れているのが実態だ。安倍政権の教育費用無償化も「生産性革命」論の一環だが、その費用対効果は明確でない。これでは、本当に効果のある政策が実行されるのか怪しい。
■本書は、日本経済、サービス産業の生産性分析で定評のある著者が、生産性に関する正しい理解を解説するともに、生産性を上昇させるために真に有効な処方箋を考察する経済書。
生産性についての正しい理解を解説するとともに、「イノベーション」「教育・人的投資」「働き方改革」「企業経営」「規制改革」「グローバル化」「都市・地域経済」「財政・社会保障政策」「エビデンスにもとづく政策」といった政策と生産性がかかわる論点を整理し、有効な処方箋の考え方を提示する。全体として、1)経済・社会全体の仕組みの見直し、2)生産性向上策と同時に、生産性を抑制する政策の改善、3)相反する効果や副作用をもつ政策の組み合わせの工夫、4)政策の予測可能性を高めること――の重要性を明らかにする。
感想・レビュー・書評
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生産性の向上は、賃上げなくして達成できない。生産性が低いから賃上げ出来ないのではなく、賃上げしないから生産性が上がらないのだと考えた方がいい。
最低賃金ももっと引き上げるべきだし、それに耐えられない中小企業は淘汰されて然るべきである。
生産性向上を謳いながら、生産性の低い中小企業を保護する政策を行い続ける政府のやり方は大いに矛盾している。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
生産性について勉強したいと思い本書を購入しました。その意味では当初の目的は十分果たせました。本書は生産性がどのような要因で上がる/下がるのかを通説ではなく実証研究をもとにしたエビデンスをベースに網羅的に解説しています。過去の論文を総ざらいする手法を「メタ分析」と呼びますが、その意味では生産性に関するメタ分析書だと言えるでしょう。冒頭に書かれているように、テーマごとに大事な学術論文を多数参照していますので、より詳しく知りたい人は巻末の論文を見ることで理解が深まるという位置づけです。
リファレンスとしてはほぼ完ぺきだとは思いますが、読み物としては正直後半からきつくなってきました。淡々とした記述が続くため、面白さ、ワクワクさなどを期待すると裏切られると思います。イメージとしては〇〇白書を延々と読んでいるようなイメージです。情報量や内容は完璧だが、読み通すのはかなりの労力がいる、という類の読み物です。ただ繰り返しになりますが、生産性についての辞書のようなものと考えて近くにおいて置く分には十二分の内容かと思います。 -
点検読書1
興味があって読んだが、いつも読んでいる技術書とはフォーマットが違うので、文章をパラフレーズして、自分の理解に落として込んでいかないと、直感的に違う気がする。というだけで終わってしまいそう。とくに内容が多岐にわたっているのと、著者の事前に出していると書いていた、文書群も読まないとなんとも。
著者のポジショントークも入っているだろうし、ちょっと私はこの本を読むのには準備不足だった。 -
【目次】
目次 [003-005]
序章 注目される生産性 007
第1章 生産性をめぐる誤解 017
1 生産性とは何か? 017
2 長期停滞論:日本だけが特殊なのか? 025
3 設備投資拡大は生産性を高めるか? 027
4 「稼ぐ力」と生産性 030
5 サービスはタダという日本人の意識が生産性に影響? 032
6 日本のサービス産業の生産性は低い? 035
第2章 イノベーションと生産性:第四次産業革命の光と影 043
1 技術革新と生産性・経済成長 043
2 第四次産業革命の経済効果 049
3 人工知能・ロボットの雇用・賃金への影響 057
第3章 重要性を増す人的資本投資:教育訓練と生産性 065
1 人的資本と生産性・経済成長 065
2 学校教育・就学前教育の経済効果 072
3 就職後の人的資本投資 082
第4章 働き方と生産性 093
1 働き方改革の進展 093
2 非正規雇用と生産性 099
3 労働時間・柔軟な働き方と生産性 109
4 就労スケジュールの不確実性 118
5 通勤時間とテレワーク 122
第5章 変化する日本的経営と生産性 127
1 生産性の企業間格差 127
2 「経営の質」と生産性 129
3 経営者と本社ホワイトカラーの役割 132
4 日本的経営は変化しているか? 135
5 取締役会の構造変化 143
第6章 競争・規制改革と生産性:新陳代謝の円滑化 153
1 市場競争・新陳代謝と生産性 153
2 規制改革と生産性 162
3 規制・ルールの不確実性 172
第7章 グローバル化と生産性:不確実性が高まる世界貿易体制 179
1 グローバル競争と生産性 179
2 重要性を増すサービスのグローバル化 187
3 懸念される世界経済の不確実性 193
第8章 生産性の地域間格差と人口移動 197
1 東京集中と地方経済の衰退 197
2 地域人口見通しの不確実性 203
3 都市集積と生産性 208
4 地方経済をどうするか? 213
5 大都市圏の課題:集積の弊害の緩和 223
第9章 生産性とマクロ経済政策:深刻化する財政リスク 227
1 生産性上昇に期待する財政健全化 227
2 財政・マクロ経済政策と生産性 239
3 マクロ経済運営への示唆 243
第10章 生産性の重要性と限界:エビデンスに基づく政策選択 251
1 生産性向上政策の展開と特徴 251
2 エビデンスに基づく生産性向上政策 255
3 生産性が捉えていないもの 265
終章 生産性向上のための選択 275
おわりに(2018年10月 森川正之) [279-281]
参照文献 [282-306]
索引 [307-313]
著者紹介 [314] -
TFPについてとことん論じている。話し手によって意味が大きく異なりがちな生産性について、多面的に説明されており、非常に勉強になった。
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本書は、「生産性をキーワードにした日本経済論ないし経済政策論」、生産性を切り口に日本の経済政策が論じられている。
論点は様々。イノベーション、人的資本投資、設備投資、経営の質、グローバル化、マクロ経済政策などと生産性の関係。
論じられ方は、筆者の考えを主張する、ということではなく、上記の論点と生産性の関係に関する学術論文を丁寧に整理して紹介するというものである。
すごい労作。半端ない数の論文の調査と、ご自身の独自調査がベースとなっている。
いわば、調査論文とでも言うべきものであるが、読み物としても、非常に面白い。
経済政策について筆者ご自身の考えも、最後に述べられている。
ただ、メインは個々の経済政策についてではなく、政策を立案、実行する際には、「エビデンスベースに考えるべきこと」「新しい政策など、まだエビデンスが十分でない場合には、事後的にきちんと政策評価を行うこと」ということ。
この主張は、当たり前のように思えるが、実際には、このようには政策は決まっていない。また、企業内の意思決定も、そのようには行われていないこともあるのではないか?
マクロ経済学の面白さも感じさせてくれる。 -
経済産業研究所副所長。
エビデンスベースの議論 -
イノベーションと人的資本の質の向上
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東2法経図・6F開架:331.81A/Mo51s//K