異次元緩和の真実

著者 :
  • 日経BPマーケティング(日本経済新聞出版
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感想 : 5
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  • Amazon.co.jp ・本 (335ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784532357566

作品紹介・あらすじ

●一貫して反対票を投じてきたその根拠
著者の木内氏は、2012年より日銀審議委員を務めてきた。当初は白川総裁のもと、「日銀は過度に金融緩和に慎重」と言われ、木内氏はむしろ積極派とみられていた。
しかし、翌年に黒田総裁に代わると、日銀は「超金融緩和」路線に向かうことに。その中で、積極派を自認していた著者も、相対的には「慎重派」へと変化することになった。
「少数意見を通すには常に自分で考え方やロジックを整理し、議論に臨まなければいけない。それが大変だった」と木内氏は述べているが、この本にはその論理が詰まっている。報道等で伝わっている考えはごく一部であり、この本は5年間の審議委員を全うした男のまさに集大成といえる。

●副作用を上回る効果を最大化せよ
金融政策は難しい。財政政策のように「財源」などのコストがみえにくく、すぐに効果がみえないからである。それでも目先のことではなく、中長期的に、その効果と、特に「副作用」について考えなければならない。そういう意味では、「何が何でも2%の物価上昇目標」「大量の国債買い」は副作用が大きいと木内氏は言う。異次元緩和においてどのくらい効果を生んでいるかを示す物差しの一つが実質金利だが、14年で底入れしていて、追加的な策は意味をなしていないという。
では木内氏が描く出口戦略とは。(1)長期金利目標の廃止、(2)階層型当座預金制度を廃止したうえで付利金利を+0.1%に、(3)国債買い入れ増加ペースに目標を設定し、それを段階的に縮小。

感想・レビュー・書評

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  • 黒田日銀で、一環して異次元緩和に懐疑的な見方を示してきた著者。必要なのはインフレ期待より「成長期待」と訴える。信頼性の高い政策ー例えば将来の人口増に貢献する可能性が高い政策ーが打ち出されれば、企業が日本経済が成長するとの期待を高め、設備投資を積極化し、生産性も向上する。それで一段と成長期待が高まる。金融政策の使命とは、潜在成長率が高まるよう、政府を側面から支援することにある。

  • 日本銀行の元審議委員の著書。当時の審議委員の中では佐藤氏と並んで黒田総裁・岩田副総裁に真っ向から対立していたが、その背景となる理論的根拠が丁寧に解説されている。翁所長、早川局長、木内審議委員とOBにこれだけ支持されない政策とは…

  • タイトルは、〜真実とあるが、内容は前日本銀行政策委員会審議委員としての意見。日銀の政策に対して批判的に自論を述べている。日銀は破綻のリスクを抱えており、非常に舵取りが難しい状況にある。異次元緩和の前に戻るには(それは何ら国民にとってのベストではないが)、市場と長期的な信頼関係を構築し、十数年かかる状況。

  • 元日銀政策委員で万年野党のようだった木内氏。現行政策の問題点、出口の困難さ、あり得る出口戦略を丁寧に解説する。
    今の金融政策は気合いや信念の政策で自らがんじがらめになっているようだ。氏の主張は理を得ているように思えるが、合議制の意思決定の中で、日銀内でどのように生かされたのだろうか。

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著者プロフィール

木内 登英(キウチ タカヒデ)
野村総合研究所エグゼクティブ・エコノミスト
野村総合研究所エグゼクティブ・エコノミスト。
1963年生まれ。1987年早稲田大学政治経済学部卒業、同年野村総合研究所入社。一貫して経済調査畑を歩む。1990年野村総合研究所ドイツ(フランクフルト)、1996年野村総合研究所アメリカ(ニューヨーク)で欧米の経済分析を担当。2004年野村證券に転籍し、2007年経済調査部長。2012年7月~2017年7月、日本銀行政策委員会審議委員。主な著書に『異次元緩和の真実』(日本経済新聞出版社、2017年)、『決定版 銀行デジタル革命』(2018年)、『決定版 リブラ』(いずれも東洋経済新報社、2019年)など。

「2021年 『決定版 デジタル人民元』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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