スーパーインテリジェンス: 超絶AIと人類の命運

  • 日経BPマーケティング(日本経済新聞出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (717ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784532357078

作品紹介・あらすじ

■AIについての最も重要な命題=人類はAIを制御できるか、という「AIコントロール問題」と真正面から格闘した本命本。

■近未来に、汎用的な能力においても思考能力においても、そして、専門的な知識・能力においても、人類の叡智を結集した知力よりもはるかに優れた超絶知能(スーパーインテリジェンス)が出現した場合、人類は滅亡するリスクに直面する可能性がありうる。そのリスクを回避するためには、スーパーインテリジェンスを人類がコントロールできるかどうかが鍵を握る。果たして、そのようなことは本当にできるのか?

■オックスフォード大学の若き俊英、ニック・ボストロム教授が、スーパーインテリジェンスはどのようにして出現するのか、どのようなパワーを持つのか、いずれ人類がぶち当たる可能性のある最大の難問、「AIのコントロール問題」とは何か、解決策はあるのかなどについて、大胆にして、きわめて緻密に論じる。2014年秋に原著が出版されるや、瞬く間にニューヨーク・タイムズ紙ベストセラーとなり、イーロン・マスク、ビル・ゲイツ、S・ホーキング博士およびその他多数の学者や研究者に影響を与え、AIの開発研究は安全性の確保が至上命題であることを広く認識させるきっかけとなった。

■近未来においてスーパーインテリジェンスは実現する可能性はあるのか? どのようなプロセスで実現されるのか?スーパーインテリジェンスはどのような種類の能力をもち、人類に対してどのような戦略的優位性をもつのか? その能力が獲得される要因は何か? 人類が滅亡する危機に直面するリスク、人類との共存の可能性についてどう考えるべきか? これらAIをめぐる真に根源的な問題について著者は、類書をはるかに超えた科学的、論理的な考察を徹底して慎重に積み重ね、検証する。

感想・レビュー・書評

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  • なかなか壮絶な内容。
    まず、人類の知能を圧倒的に上回る汎用知能である「スーパーインテリジェンス」は、様々なハードルはあるもののいずれ達成されることがほぼ確実であることについての詳細説明があり、これがものすごく面白かった。
    達成の手段として、著者は、人工知能の自己学習プログラム及びハードウェアの発展による(いくつかの技術的ブレークスルーが必要)マシンインテリジェンスの実現(どのように汎用知性を手に入れるかに関して現時点で保証できる確実なボーダーラインである「生物進化のシステム上での再現」は計算能力の観点で完全な実現は不可能であるが、例えば脳神経科学の発展に伴う技術的革命や発見によってこれよりショートカットの手法が見つかることは十分に考えられる)や、人間の頭脳を物理的に解析して再現構築する全能エミュレーション(解析技術や構築技術の著しい発展により達成可能で、技術的ブレークスルーは不要)、生身の生体脳の強化(エンハンス。優生遺伝やゲノム操作等により実現可能だが、超絶知能とまではいかない)、人間の脳とコンピュータの接続による強化(結局脳の構造や情報処理のしくみが解明されなければならず、これができるなら人工知能アプローチによるマシンインテリジェンスも達成可能か)、集合知によるスーパーインテリジェンスの達成(広義での緩やかな達成のイメージ)などが挙げられており、これらが並行して進捗すれば、あるプロジェクトの成果や発見が他のプロジェクトの前進を促す効果も考えられ、いずれほぼ確実に少なくともいずれかの方法で達成されると予測していた。
    そして、人類と同等の汎用人工知能が達成されると、瞬時にスーパーインテリジェンスが達成される可能性が高いことにも同感。そうなってから超知能のコントロール方法を考えても時すでに遅しで、今のうちから研究し、準備しておかなくてはならないと警鐘を鳴らしていることにも同感。
    だが、コントロール問題は一筋縄ではいかない。超知能の最終目標の設定に関して、まず人間が自らの意図を自らが理解でき納得できる形で定義できるか、できたとしてそれを超知能が誤解や曲解をする恐れのない形で表現できるか といった、哲学的な難問である。そもそも、今後知能が向上していくかも知れない人類のうち、超知能を開発する時期という特定世代の人類の持つ価値を絶対的指標とするのか といったことも考慮せねばならない。(歴史をみれば、例えば数百年前の人類の至上と考える価値と現代の人類の価値は異なる)
    ひとたび超知能が走り出せば、一見無害に思える最終価値の設定をしていても、超知能がその結果の達成のみを最重要視する過程で、世界を破滅に追いやることが考えられるのであり、例えば、ある砂浜の砂の数を数えることを至上命題とする超知能は、数え間違いの恐れを極小化するために自らの計算機構の能力の最大化を図り宇宙全体を自らの計算素子に作り替えるかも知れないのである。
    これは、本書を読んで気づかされた恐ろしい観点だった。著者は、目標設定は非常な難問であり、まだ解は出ないが、例えば、超知能に人間の意図するところを探求させ、十分に間違いないという確信が得られるまでは特定目的のために現実世界に多大な影響を及ぼす行動に出ないように保守的な設定を施しておくような手段が有効ではないかと提言してくれている。

    スーパーインテリジェンスのコントロール問題は、人類史上最も重要で最も困難な問題であり、今のところ、超知能の達成に向けて無邪気に進んでいる人類は、まるで、爆弾で遊んでいる幼児のようなものだということだった。

  • 著者はオックスフォード大学哲学科教授。本書は分析哲学の見地からAIコントロール問題の解決策を探る大著。原著の初出は’14年9月と意外に年数が経っている。本文のみで約560ページと長いうえ直訳調の文章がとっつきにくく、読み進めるのにはかなりの負荷を感じた。

    ここでの「AI」や「スーパーインテリジェンス(以下SI)」とは、人類の叡智を遥かに超越する水準の人工知能を指す概念であり、我々が日常これらの言葉から連想する、例えば「アルファ碁」や「フィンテック」などの水準からは大きくかけ離れたもの。したがって著者の提起する「人類が存在論的リスク(=絶滅)を回避するため、SIをどのようにコントロールすべきか」といった問題の前提条件を共有することが、我々レイパーソンには少々困難である。しかもその定義上、SIの具体的な在り様を一般的な言語で表現することも極めて難しい。したがって、勢いその論述は抽象的で(我々一般人には)捉えどころのないものを土台とせざるを得ず、本書が思考実験的な色彩を纏う大きな理由になっている。

    巻頭から繰り返し述べられるように、SIの実現可能性は高い。そしてそれはこれまで人類が作り上げてきたものとは大きく性質を異にし、人類のコントロール下から脱して自律的な意思決定を行い、人類の存在を脅かすような行動に出る可能性がある。そうならないためのSIコントロールとは一体いかなるものかを論ずるにあたり、著者は周到に要件定義を進めていく―SI出現の経路、スピード、多極か単極か、そしてそのコントロール手法や動機付けの可能性、etc....。それぞれが詳細に過ぎるためスムーズな読み進めを阻むが、著者の主張をあえて要約すれば「AIの有効性の研究と安全性の研究は歩調を合わせて進めなければならない」というもの。

    本書のスケールは相当に大きいうえ、細部に目をやればさらなる深淵が待つというフラクタル構造を内含するため、正直なところどこまで理解できたかは自信がない。しかしいくつかの点につき共感することができた。例えばSI出現後、効率性が極限まで追求された社会では既存の社会基盤の一つであった倫理性が重要視されず、したがってそこで暮らす人々は極めて経済的に恵まれながらも精神的な充足は得られないのではないか、とする点。また、SI出現までの時間が長ければ長いほどコントロール問題にかかわる技術が進展する、という逆説も面白いと思った。

  • 今日もアウトプット☆
    チェスのチャンピオンを破ったプログラム等の技術的臨界点とは少し違う話で、狭い範囲で超絶的な能力を発揮するという意味ではなく、
    広い意味で人間の頭脳・認知をはるかに超える知能がでてくる、というお話。

    この本はネガティブだが、個人的には、
    AIと人間は良きパートナーになっていけると信じてます。

  • 内容が入ってこない。

  • 人工知能について21年現在までにわかっていることが網羅的に解説されている。あなたの人工知能についての疑問は、この本の目次のどこかにあるかもしれない。

  • 五年ほど前の本がすでに古く感じるほど進化の激しさを感じる未来予測思考実験本。
    難解な内容に見えるが冒頭の寓話が全てを代弁している。
    パラ読み。

  • 人類がスーパーインテリジェンス(以下AI)を利用するために解決すべき課題とは。

    いつか生まれるであろうAIを、当然のように従えられると考えている。そんな考え方は妄想でしかなく、AIが人類に従う必要性なんてないことを最初に理解する。そこで、AIコントロールについて、偏執的とも思ってしまうほどにあらゆる可能性を考慮する。

    あらゆる考慮を経てもなお、著者は、AIはそれを裏切る能力を身につけるだろうと結論する。
    人類は生き残れるのでしょうか。

  • シンギュラリティの要求仕様。

  • 著者はシンギュラリティがいつかは到来するという考えを持っている。マシン・インテリジェンスが人間の知能を越えるのを前提に、人類は何を用意しないといけないのか、AIのコントロール方法などを考察する。ページ数が多く、とても読みやすいとは言えないが、最低限AI技術者は本書を読むべきだろう。AIは人類を滅ぼしかねない危険な存在にもなりえる。そうならないようにする方法を考察するのだが、そこは人類とAIの知恵比べにもなりかねず、悲観的な未来しか私には見えなかった。核兵器と同程度の危険性をAIが持ってしまうのではないかと、本書を読むとそんな心配までしてしまう。論文のような書籍であるが、AIに興味を持っている人は読んでおいたほうが良い。明るい未来しか語らない本よりも、よっぽど役に立つと思う。

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著者プロフィール

オックスフォード大学教授
オックスフォード大学マーティン・スクール哲学科教授。オックスフォード大学の「人類の未来研究所」所長、および「戦略的人工知能研究センター所長。分析哲学のほかに、物理学、計算論的神経科学、数理論理学の研究も行う。米イェール大学で教鞭をとった経験があるほか、ブリティッシュ・アカデミーのポストドクトラル・フェローを務めた。 著作物は200を超え、主な著書にAnthropic Bias (Routledge, 2000), Global Catastrophic Risks (Ed.,Oxford University Press, 2009), Human Enhancement (Ed.,Oxford University Press, 2009)がある。

「2017年 『スーパーインテリジェンス』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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