日本財政「最後の選択」: 健全化と成長の両立は成るか
- 日経BPマーケティング(日本経済新聞出版 (2015年1月1日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (267ページ)
- / ISBN・EAN: 9784532356224
作品紹介・あらすじ
「財政規律正常化」をルール化せよ!消費税再増税の延期によって、ますます遠のいた財政再建の道。このままで国家は破綻しないのか?瀬戸際に追い込まれた状態からどう脱出するかを、日本経済論のエキスパートが緊急指南!
感想・レビュー・書評
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後の世代にツケ廻しをしないためには、否が応でも財政再建が必要になる、という本。
ここでいう「財政再建」とは、財政破綻を回避することであり、この本でいう「財政破綻」とは、「国内の民間貯蓄(家計貯蓄+企業貯蓄)だけでは国債残高を持ち切れなくなった時」と定義されている。
要するに、家計貯蓄と企業貯蓄で国債残高(すなわち政府債務)をカバーし切れなくなる前に、政府債務を何とか減らさねば、という話。
個人的には、本書で主張する消費税の早期税率アップには大賛成である。
軽減税率などという朝三暮四なものは論ずるに値せず。
低所得者の生活を守るには、消費税率を20〜25%まで上げた上で、低所得者向けの給付を充実させるのが王道である。
そういう意味で、日本の多くの低所得者は『だまされている』(笑)。
余談だが、かつて中曽根元首相が提唱した『売上税』の導入検討時に、建築家の黒川紀章氏が、「この種の付加価値税を導入して所得税・法人税を減税するのは、普通のサラリーマンにとっては得になることなのに、何で反対するんだか」と嘆息していたのを思い出す。
全くもって同感である。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
日本の財政について、現状と課題、簡単なシュミレーションがコンパクトに記され、頭の整理になった。
デフレを脱却して経済成長を取り戻せば財政再建などできるのだ、という議論が粗雑であるか理解できる。
しかし本書は15%への増税ありき、で書かれてるように感じられ、少し物足りない。 -
150516 中央図書館
財政破綻の可能性を指摘する学者と、「大丈夫だ」とのたまう学者を比較すると、誰が見ても、危機を指摘する学者の著作のほうが、正統で詳細で理論的でデータが具体的なのだ。「大丈夫だ」系の著作がことごとく品のないものであることは、見たらわかるではないか。政治家と日経だけが、このことにわざと触れず、「大丈夫だあ」の集団社会幻想の維持に手練手管を尽くしている。それは立場上しかたないかもしれないが、結局、破断点を過ぎた後で、東条英機や朝日新聞のように弁解するのであろう、「わかっていても、そうするしか仕方がなかった」と。
システムがカタストロフを起こす時期は、理論的に求めるのは無理。しかし、どこかで不安定に転じることは絶対確実だと、まともに勉強してきた大人なら絶対わかるはずなのに。 -
日本の巨大な国家負債について、それが永遠に持続可能ではなく、早期に財政再建に取り組まなければ大変な事態に陥ると警告する論はよく耳にしますし、それについて書かれた本もいろいろ読みましたが、現実には国債の金利は低いままですし、どうも「危機」に対する実感が湧きにくいというのが正直なところです。
ただ、「永遠に持続可能ではない」ことは理解できても、「では、いつ、どういう条件下で破綻が起きるのか」については、これまで十分に説得的と言える説明を聞いたことはありませんでした。
が、この本では、いくつかの十分合理的と言える仮定を置いたシミュレーションで、消費税を10%までしか上げなければ、2020年代半ばには民間の貯蓄総額が跛行された国債購入に必要な総資金を上回って国内消化できなくなること、その場合海外投資家に残りを買ってもらわなければならなくなるが、そこまで財政が悪化し、しかもさらに悪化を続けることが予想される以上金利に大きなプレミアムをつかなければならず、それによってさらに急激に財政が悪化することになるのでまもなく「財政危機」に陥るであろうことが、実にリアルに説明されていました。
また、今後成長率を高めることができても、たしかにそれで税収は増えるものの、その分金利も上昇することとなるので、増税や歳出削減をせずに財政危機を免れることは結局できないこと、したがって、消費税の増税と社会保障費の削減は結局絶対に避けては通れないことが、初めて心から納得できました。
増税と福祉のカットが政治的に難しいことはよくわかりますが、残された時間があとたった10年しかないのであれば、それを国民に十二分に説明して必要な措置を講じることは、政治の責任ではないのかと強く思わされました。
これまでなんとかなってきたから、これからもなんとかなる、ものでないことは、どうやら間違いないようです。消費税率15%~20%、年金支給開始年齢68歳などは、今から覚悟しておいた方が良さそうです。