イノベーションの再現性を高める 新規事業開発マネジメント ――不確実性をコントロールする戦略・組織・実行

著者 :
  • 日本経済新聞出版
3.85
  • (12)
  • (14)
  • (12)
  • (3)
  • (0)
本棚登録 : 323
感想 : 14
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784532323684

作品紹介・あらすじ

“意義ある失敗”の先に、成功がある

「事業を創る組織」を創り、継続的に成果を生むための変革とは──。
2,500社、12,000の事業開発から得られた実践的な知見と手法を体系的に解説。

 ここ数年、日本ではこれまでにないほど、企業における「新規事業」や「イノベーション」の必要性が声高に叫ばれ、各社の意欲・関心が高まっています。企業は新たな事業の開発や創出に取り組み、次の柱を生み出すことができなければ、継続的な成長はもちろんのこと、現状維持すらも厳しい環境に立たされると言われています。

 本書は、これまでに約2,500社、12,000の新規事業のプロジェクトやプラン・アイデアに携わり、業界トップクラスの新規事業開発支援の実績を持つ企業を率いる著者が、「事業を創る人や組織」をいかにして創り、継続的に成果を生み出すために必要な変革やマネジメントについて解説。数多くの事業の成長と成功、また失敗からも得られた実践的な知見と手法を、余すところなく紹介します。

 著者は、「どの企業の、どのような状況にも当てはまる新規事業の成功法則や手法論は、存在しない」とした上で、「イノベーションは狙って起こすのではなく、それを阻害する要因を排除することで、中長期的にイノベーションが起きやすい環境や条件を整えることでしか、再現性を高めることはできない」と説きます。
 中長期的な視点に立ち、このようなポテンシャルを備えた企業へと変革していくことでしか、「VUCA時代」とも言われる先行き不透明な状況で生き残ることができる経営を実現することは困難です。そのために企業はどうあるべきか、どうするべきかを考察し、その解決策を提示します。

 企業経営者をはじめとして経営企画担当などのマネジメント層や、これから新たな事業を創出しようとするビジネスパーソンにとって、極めて示唆に富む一冊です。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 新規事業を進める上での具体的な方法論や経験知が詰め込まれていて、納得する部分が多かった。
    すぐにも使える考え方も多く、実践的

  • 構造化のレベルが非常に高い。
    入門書というよりは、事業開発経験者向けの思考の整理・発展に使う方が良さそう。

  • 基本的なフレームワークが多く紹介されており便利。フォーカスは企画のフェーズにある

  • 仕事に関連する本として読書

    メモ
    ・どの企業のどのような状況にも当てはまる新規事業の成功法則や手法論といったものは存在しない。
    ・日本企業における新規事業成功率を高めるために
     ・新規事業開発の全体像を網羅的に俯瞰する
     ・新規事業の成否に影響を与える要素や変数を理解する
     ・不確実性をコントロールするための抽象化された理論や法則を活用する
     ・理論や法則を具体化して実践につなげるための論点について思考する
     ・新規事業を実践する量を増やし、試行錯誤しながら質を高める
     ☆実践から得た学びや知見を蓄積し、利活用できる仕組みや風土を創る
     ☆仕組みや風土が継続する組織文化や組織構造を構築し、定着させる

    ・企業の新規事業開発がうまくいかない3つの理由
     1ビジョンや新規事業開発に関する方針・戦略がない
     2良質な多産多死を実現するための組織になってない
     3自社の性質や事業の不確実性に応じた事業開発プロセスを実行していない

    ・方針、戦略について
     なぜ新規に取り組むのか。自社に必要な新規事業とは。どう取り組んでいくべきか。全社的な方針。これがないと判断軸がなく、機会や原資に繋がらない

    ☆再現性高い新規事業開発のために
     経営トップの強いコミットメント
     中長期の時間軸で健全な多産多死に取り組み続けること

    ・インキュベーション戦略STEP
     1全社ビジョン明確化
     2新規事業に取り組む意義を整理
     3既存の干渉を受けない新規事業投資原資確保
     4テーマ領域を定義
     5いつまでにどの程度の目標を狙うか目線合わせ
     6誰がどのように新規事業開発を行なっていくか
     7何に対していくら投資するか。投資ポートフォリオを構築

    ・魅力的なビジョン策定論点
     1有意義性 定性意義・価値の明示
     2貢献性 未来社会創造・社会課題解決への貢献
     3具体性・独自性 イメージしやすく、らしさがあるか 
     4実現性 実現に向けた時間軸ロードマップの設計
     5透明性・公平性 プロセスは透明でオープンか

    ☆新規事業投資領域検討マトリックス
     
    ☆新規事業アプローチ6パターン

    ・オープンイノベーションとは組織内部のイノベーションを促進するために意図的かつ積極的に内部と外部のアイデアなど資源の流出入を活用し、その結果組織内で創出したイノベーションを組織外に展開する市場機会を増やすこと

    ・オープンイノベーションで期待できる副産物
     事業開発のスピードアップ
     コストの大幅削減
     取り組みを通じた今後の経営戦略・成長戦略構築へのフィードバック

    ・そもそも大きな事業構想を描いていない状態で取り組んでも意義のあるオープンイノベーションにつなげることは極めて困難

    ・マッキンゼー事業成長を決める真の要因
     戦略・実行力・リーダー・市場
     7割以上は市場による。

    ・新規事業開発の再現性高い組織に必要なステップ
     1組織人材に対する考え方や軸、根底にある思想や価値観の醸成
     2新規事業のリーダーに適した人材、イノベーター人材の発掘支援
     3イノベーター人材やチームの能力成果を最大化する育成支援
     4健全な多産多死を構造的に実現する組織文化や仕組みの構築定着

    ☆社内のイノベーター人材の志向性タイプと事業開発アプローチ適性の判断軸
     自身のビジョンor社会的ミッション
     ×
     成果業績重視orプロセス成長重視

    ・撤退基準に影響を与える要因
     内部 全社、事業、組織

    ・新規事業開発における3cフェーズ
     concept事業構想フェーズ
     creation事業創出・事業化フェーズ
     complete成長拡大・完成フェーズ

    ・7つの検証項目
     A顧客と課題
     B提供価値と解決策
     C製品と市場
     D事業性・収益性
     E成長拡大可能性
     F持続可能性
     G戦略との親和性

    ・新規事業開発10プロセス
     insight 深い洞察による課題発見
     define 課題仮説検証による課題定義
     ideation 課題解決アイデア検討
     prototyping アイデア試作品による有効性検証
     development 検証結果を踏まえたプロダクトとビジネスモデル開発
     launch プロダクトを世に出して良質な初期顧客獲得
     monetize プロダクト提供販売による収益化
     growth 投資による事業成長拡大
     exit 持続的に成長可能な構造構築
     core 中核領域事業として貢献性高める


    1.Concept事業構想フェーズ
    A顧客と課題
    ・多角的洞察に向けた4つの調査手法
      デスクリサーチ 広く浅くスピード重視
      エキスパートインタビュー 適切な接点構築が重要
      顧客インタビュー 新規における必須手法 
       聞ける人でなく聞くべき人に聞く
       仮説意見を押し付けず、誘導尋問をしない
       オープンクエスチョンを中心に
      顧客の行動観察 顧客自身が言語化できない課題からの仮説構築可能性

    ・質が高い課題定義を評価する視点
      課題の広さ 同課題は世の中にどれくらい存在するか
      課題の発生頻度 
      課題の深さ どの程度深刻に悩んでいるか
      課題の発生構造 一過性のものでなく構造的に存在・拡大続けるか

    B提供価値と解決策
    ・提供価値の検討
      提供価値の方向性を決める(前提条件・方向性整理)
      提供価値実現ソリューションの幅だし(発散)
      自社の取り組み意義、独自性優位性を生むアセット観点での絞り込み(集約収束)
      継続収益の仕組み=ビジネスモデル仮説構築(昇華)

    ・IDEATIONのヒント
      アイデア発送の基になる情報や知識、知見を蓄積する
      アイデア発想のための手法やフレームワークを活用する
      集合知を活用する

    ・PROTOTYPINGにおける重要論点
     優先して検証すべき機能仮説は何か
     顧客受容性と解決策有効性を検証する最適手法は
     結果、顧客反応、データを正しく評価検証できているか
     検証結果を踏まえてプロダクト化に必要な対応は

    ・次フェーズに進む基準
     ソリューションに対する顧客需要性がある
     解決策としての有効性がある
     ビジネスモデル成立しうるプロダクト要件が明確になっている

    2.Creation事業創出事業化フェーズ
    C製品と市場
    ・Development重要論点
     BMを回す少数精鋭チーム体制があるか
     事業特性に最適な開発アプローチを採択できているか
     必要最低限を作り、段階的投資で改善や修正を重ねていけるか

    ・LAUNCH重要論点
     網羅的なチャネル活用や情報発信により効率良い顧客獲得アプローチが発見できるか
     顧客が満足するプロダクト提供と良質な初期顧客の発見が実現できるか
     発見した良質な顧客は継続して獲得続けて顧客基盤拡大できるか

    3.Complete成長拡大完成フェーズ
    E成長拡大可能性
    ・EXIT持続的に成長可能な構造を作る
      中長期的に安定した事業運営と競争力維持が可能な体制か
      自律的な投資による成長で成長率を維持できるか
      ガバナンスやコンプライアンス観点での致命的なリスクはないか

  • 非常に素晴らしい新規事業開発に関する考え方・フレームワークが記載された一冊です。

    起業家、事業家、新規事業開発に携わった者が通過するであろうステップを見える化し、各ステップにおいてなにをどのように考えると良いのか、具体的に記載しています。
    もちろん、自分が手を動かす中でしか分からないような課題も非常に多いですが、新規事業開発を行う方にとっては手元にあると安心な一冊ではないでしょうか。

  • 社内企業の方法について、具体的かつ順序だてて記載してあり、分かりやすかった!
    ちょうど新規事業立ち上げプロジェクトに参加することになったため参考にしようと思う

    それにしても300回顧客訪問とは…私にできるか心配

  • 新規事業開発関連で3冊目。著者はコンサル5年・2社をへて、DeNAで2年間新規事業開発をやり、2015年に独立して本書を出版するまで約5年間新規事業開発の支援事業をやられてきた方。北嶋貴朗氏。


    感想。
    よく整理されている。特に図表がわかりやすい。チェックポイント表とかもとても使いやすそう。参考文献も使いやすい。


    備忘録。
    ・どの企業のどのような状況にも当てはまる新規事業の成功法則や手法論は存在しない。

    ・「先ずは新規事業開発の全体像を網羅的に俯瞰しよう」。それができる本になっている。

    ・2016年に日本に存在する540万の法人のうち、スタートアップは1%に満たない1万6千社(スタートアップの定義をどうしたのかはわかりません)

    ・既存事業と新規事業の相違点を理解しよう。不確実性が高く、データや情報がなく、多産多死なのが新規事業だよ。相違点を認識しておかないとマネジメント方法を誤る。

    ・同様に、企業内新規事業とスタートアップの相違点も理解しよう。資本、アセット、意思決定のスピード、求められる規模感、経営の柔軟性とかが異なる。企業内新規事業では健全な多産多死が有効で、客観的で納得感のある撤退基準を作っておきたい。

    ・企業内新規事業において。カニバル場合「他社にやられてもいいのか。他社にやられて困る事業ならその程度の事業ではないか」と言ってみたらいかがでしょうか、と。

    ・イノベーションは意図的に戦略的に起こすものではなく、いろいろ挑戦し続けた結果として、偶発的に起こるもの。

    ・事業成長を決めるのは、戦略、実行力、リーダー、市場の、4つ(byマッキンゼー)。

    ・調査や分析重視のアプローチは新規事業では落とし穴。確実性が高い=不確実性が低い=既に機会が顕在化している。調査や分析ではなく、顧客と課題を起点にして考えよう。

    ・課題は、課題の質が重要。課題の広さ、発生頻度、深さ、発生構造などを見極めたい。

    ・社内新規事業の場合、自社のアセット発のアイデア検討もあるだろうが、これだとプロダクトアウトで顧客不存在になりがち。気をつけたい。

    ・アイデアの検証フローはわかりやすかった。他社と異なる課題か、解決策か、または他社より優れた解決策か。どれも該当しなければボツ。

    ・事業プラン全体のチェックポイント表。こういう図表がとても良い。

    ・プロダクト開発前に、A4で1枚で概要をまとめてみよう(Amazonの手法)。

    ・事業構想段階で手厚く資金や人材を投入するのは危険。

    ・プロジェクトに共感していない人はアサインさせない方が良い。能力が高くても。

  • 新規事業を開発するためのノウハウ本。
    事業構想から事業化、成長拡大から完成までの一連のフェーズを分かりやすくまとめている。
    初めて新規事業立ち上げに関わる人には必読の本だと思います。

  • タイトル通り新規事業開発の各フェーズに対するマネジメント観点が明確に示されている。個人的によかったのは事業の源泉である上流のアイデア化を厚めに詳しく書かれていたのでよく理解できた。自分自身、顧客と課題と提供価値とソリューションのどこから始めてもプロダクトマーケットフィットに持っていく観点が吸収できたと思う。
    恐らく、新事業開発に触れた人が読むと間違いなく有益な本である。

  • 第1章 なぜ今、新規事業やイノベーションが必要なのか?/第2章 新規事業開発は、なぜうまくいかないのか/第3章 いかにしてビジョンを描き、新規事業開発の方針や戦略を策定するか/第4章 良質な新規事業への挑戦を量産できる組織を作る/第5章 不確実性をコントロールする新規事業開発プロセスとマネジメントとは/第6章 新規事業を構造的にグロースさせるための理論と実行/第7章 先進的企業の「イノベーション・エコシステム」と「インキュベーションの民主化」が創る日本経済の未来

全14件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

株式会社Relic代表取締役CEO | Founder
1986年、東京生まれ。埼玉県立川越高等学校を経て、2008年に慶應義塾大学を卒業後、組織/人事系コンサルティングファーム、新規事業に特化した経営コンサルティングファームにて中小・ベンチャー企業から大企業まで幅広い企業の新規事業開発や組織変革を支援。その後2013年、ITメガベンチャーであるDeNAに入社。新規事業開発や事業戦略/事業企画の立案、大企業とのオープンイノベーションのマネジャーとして数々の事業の創出から成長までを担う責任者を歴任。2015年に株式会社Relicを創業し、現職。5年間で約2,500社・12,000の新規事業開発を支援するなど、業界トップクラスのシェアと実績を持つ企業への急成長を牽引する一方で、ITスタートアップ企業としても国内シェアNo.1のプロダクトを複数立ち上げる。企業の新規事業創出プログラムやアクセラレーションプログラム等でのアドバイザー・メンター・審査員としての活動や、有望なベンチャー・スタートアップ企業への出資・経営支援も行うなど多方面で活動。

「2021年 『イノベーションの再現性を高める 新規事業開発マネジメント』 で使われていた紹介文から引用しています。」

北嶋貴朗の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×