企業不祥事を防ぐ

著者 :
  • 日本経済新聞出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (324ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784532323035

作品紹介・あらすじ

「コンプラ疲れ」を脱するためのノウハウを解説

企業不祥事が後を絶ちません。2018年だけでも、神戸製鋼所、三菱マテリアル、KYBなどのデータ偽装、スルガ銀行の不正融資事件、日産自動車ゴーン会長の不正支出事件などが起き、いっこうに減る気配がありません。経営を揺るがしかねない不祥事対策は、企業にとって、重要かつ喫緊の課題となっています。

不祥事が起きる度にコンプライアンスの重要性が叫ばれますが、企業現場ではむしろ過剰規制による「コンプラ疲れ」が生じており、不祥事防止に役立っていません。
本書は、コンプライアンスを企業内で正しく機能させ、不祥事を防ぐために必要な対策を解説するもの。規制を重視するチェックリスト型から、ルール違反でなくても危ない兆候を見つけるリスクベースアプローチ型に転換する必要性や、社外取締役が真に経営のチェック機能を果たすコーポレート・ガバナンスのあり方などを説いています。また、第三者委員会の設置といった事件が起きた後の対策も詳述します。

感想・レビュー・書評

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  • すき家のものがたりの事例は興味深かったです。

  • 建前や形式ではなく、常識や実質に基づいた実に示唆に富む一冊。

  • 弁護士として胸熱な1冊でした。
    細かい法律知識ではなく弁護士としての感性(正義感・バランス感覚・スピリット)をきちんと仕事にしている。ひとつのロールモデルである。

    ものがたり(ストーリー)のあるコンプライアンス
    ※楠木健『ストーリーとしての競争戦略-優れた戦略の条件』

    「赤信号みんなで渡れば怖くない」

    性善説/性悪説ではなく性弱説

    安全の「制度的保障」
    制度に抜け穴ができると,制度全体の信用性を失わせる。データの流用や偽装は安全を確保するための制度に対する信頼性を根本から突き崩す。

    日本企業は属人的な摺り合わせ型の発想から脱却できず,客観的データによる「見える化」をベースにした品質保証に移行できなかった。

    「盗む不正」と「ごまかしの不正」

    ノー・トレランス

    企業不祥事の本質はレピュテーション・リスク
    「負のスパイラル」により企業価値が毀損した状態。
    企業価値を創り出しているのは,株主・投資家・消費者・取引先・従業員・監督官庁・マスコミといったステークホルダーの企業に対するレピュテーションである。
    レピュテーションは,「企業の行為やそれに言及する情報をもとに与えられる,あらゆるステークホルダーによる評価の集積」である。

    「法令遵守」という発想でレピュテーション・リスク管理はできない。

    コンダクトリスク
    ・明確な法令違反の事案は比較的少数だが「全体・集団」として見ると不当性が明らかになり,ステークホルダーの強い怒りを招く。
    ・「業界の常識」が「世間の非常識」となっている。
    ・顧客本位ではなく,会社本位である。
    ・行き過ぎた収益重視が背景にある。

    ルールベースとプリンシプルベース

    リスクベース・アプローチ

    「厳密にやってまちがえるより,おおむね正しいほうがよい。」(マーヴィン・キング 元イングランド銀行総裁)

    フォワードルッキングな想像力

    3つの防衛線
    ①事業部門による自律的管理
    ②リスク管理部門による支援と牽制
    ③内部監査部門による検証

    小さな不正には動かぬ証拠があるが,大きな不正には兆候しかない

    インテグリティ
    「経営管理者にとって決定的に重要なものは,教育やスキルではない。それは真摯さ(インテグリティ)である。」(ドラッカー『現代の経営 下』P.262)
    「真摯さ(インテグリティ)に欠ける者は,いかに知識があり,才気があり,仕事ができようとも,組織を腐敗させる」(上Pp.218-219)

    定義は難しいが,
    ①企業が急激に変化するビジネス環境に対応するための「羅針盤」となり,企業の持続的成長の基礎となるもので,
    ②「何のために企業はあるのか」「企業としてどうありたいのか」という「働く意味」と密接に関係し,
    ③「結果として」企業のコンプライアンス・リスク管理につながる。

    寺師正俊「レピュテーションリスク(評判リスク)ー概念整理とマネジメントの方向性」SJRMリスクレビュー6

    ガバナンスの基本はチェック&バランスによる規律

    空気読まない力
    社外役員の役割は,いざというときに社長に「ノー」を突きつけることにある。

    Bad News First/Fast

    危機管理の本質
    ①正確な状況把握
    ②明快な決断
    ③ブレることのない断固とした対応

    今の時代,不祥事を隠し通すことは不可能だ。
    「企業という組織の中で不祥事を「なかったこと」にするのは,「部屋の中にいるゾウを見るな」というに等しい。」

    「報道を防されないこと」ではなく「報道を1回で終わらせ,連続報道を防ぐこと」

    ステークホルダーは,「経営幹部が不都合な事実を認識していたにもかかわらず開示しなかった」という「不作為」を「隠蔽」と評価する。

    ステークホルダーの信頼回復のために必要なこと
    ①不祥事の事実関係を明らかにし,
    ②不祥事をもたらした原因(root cause)を解明し,
    ③その原因を除去するための再発防止策を実行する
    ④①~③のプロセスをきちんと説明する

    「ボヤで騒げ!」
    ボヤでどんなに騒いでも大火事になることはない。

    NGOが求めているのは,満点の答案ではない。対話とそれに基づく改善行動,つまり「対話をしながら考え,行動していく姿勢」と「PDAでの対応」というダイナミックなプロセスである。
    「概ね正しい」ことを良しとする(百点主義ではない)七十点対応。

  • 最後の『企業不祥事を防ぐにはお仕着せの規則や制度ではなく、一人一人の働く意識しかない』という最後の言葉が印象的で、過去に実際に起きた不祥事や実例もとても面白かった。

    コンプライアンスというと当然守らなければいけないものだが、形骸化したり「ごまかしの不正」のように明確な意思なくリスクを犯してしまうような事例が度々報道される。

    日本独特の文化や空気感に流されたり、過度な規則や制度で形骸化してしまい、自分でも気が付かないうちにレピュテーション・リスクを犯してしまうことのないように、コンプライアンスに対する意識を変えていかなければいけないと感じた。

    山一證券を題材にした「しんがり」は読んでみたいので、早速購入した。

  • 世の中のコンプライアンス論を一掃する「現実感」と「希望」
    日頃聞く法律家の論とは全く違う、人間の血の通った法社会論 
    さすが著名弁護士 ヒトの動機 ①正義 ②カネ
    日本の組織は責任者不在 
    同質性と空気(無責任の体系東大政治学者)
    決断に基づく悪事より性質が悪い→反省なしヒトラーと太平洋戦争
    コンプラ疲れ コンプラのためのコンプラ 
    広く世のためヒトのための仕組み化
    危機管理には「決断する胆力」70点でも決断を優先 不作為は✕
    ←ダメなのは①隠蔽②都合の良い情報③不決断

  • 「会社の財産を奪って私腹を肥やす」タイプの不祥事に比べても「忖度する・見てみぬふりをする」タイプの不祥事の方が往々にして多大なダメージを企業に与えるのにもかかわらず、後者に対する懲罰は軽いのが通常というのは、確かに言われてみれば不思議な話だと思う。日本企業に多いとされる後者のタイプについて重点を置いて書かれており、興味深かった。

  • この本の最後に書かれていた「企業不祥事を防ぐには一人ひとりの働く意識しかない」という言葉が心に残った。企業は他種多様な外部のステークホルダーに囲まれた存在で、企業価値はレピュテーションの集積で形成されている。だからこそ、働く一人ひとりが倫理観を持ち、その総和として誠実な組織を創り上げることが大切なんだと思う。

  • 日本において、先ずは同調圧力が無くならない限り、企業不祥事は無くならないのだろうなと本を読んで感じた。

  • 現場を疲弊させるだけのコンプライアンスを止めること
    ほんとそれ

  • 「我々は学徒出陣」、綺麗事では済まないはずのFCPA対応、新興国赴任社員向けの研修で、十分な訓練も補給もなく南方戦線に送られた兵に自らを重ねるシーンは心に刺さる。
    あとがきで触れられる「主犯」が不明確な企業不祥事、これはまさに「失敗の本質」で語られた空気そのもの。
    対策…100点でなく55点でも改善してるなら良しとする開き直りが大切なようだ!

    いくつか示唆に富むフレーズを。
    思考停止を避ける…チェックリストの効用、項目数を半分にして敗訴確率が高まるコストと生産性向上を秤にかける。
    社外役員に最も求められる力は「空気を読まない」力。
    新聞社会部長曰く、企業が自主開示すると「新しい情報」がないので続報の書きようがない、隠してくれれば「真実は…」的な記事が書けるので助かる。

    「#企業不祥事を防ぐ」日本経済新聞出版社、國廣正著
    Day67

    https://amzn.to/38yVccs

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著者プロフィール

弁護士・国広総合法律事務所 1955年大分県生まれ。東京大学法学部卒業。 専門分野は、危機管理、コーポレートガバナンス、コンプライアンス、会社法など。多くの大型企業不祥事の危機管理、第三者委員会調査や会社法関係訴訟などを手がける。 日本経済新聞社の「2018年 企業が選ぶ弁護士ランキング」の「危機管理分野」で第1位。 東京海上日動火災保険㈱社外取締役、三菱商事㈱社外監査役、LINE㈱社外取締役、オムロン㈱社外監査役。 公的職務として、内閣府顧問、消費者庁顧問、「内閣府・内閣官房・内閣法制局入札監視委員会」委員長のほか、警察庁の「監察業務の高度化等に関する検討会」、経済産業省の「外国公務員贈賄の防止に関する研究会」、金融庁の「監査法人のガバナンス・コードに関する有識者検討会」などの委員を務める。 著書に、『修羅場の経営責任―今、明かされる「山一・長銀破綻」の真実』(文春新書)、『それでも企業不祥事が起こる理由』、『内部統制とは、こういうことだったのか』(共著)、『なぜ企業不祥事は、なくならないのか』(共著)(以上、日本経済新聞出版社)など。

「2019年 『企業不祥事を防ぐ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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