Measure What Matters: 伝説のベンチャー投資家がGoogleに教えた成功手法OKR

  • 日経BPM(日本経済新聞出版本部)
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  • Amazon.co.jp ・本 (398ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784532322403

作品紹介・あらすじ

「この本と19年前、グーグルを創業したときに出会えていたらよかった」――ラリー・ペイジ(グーグル共同創業者)

アイデアを思いつくのは簡単。
実行がすべてだ!

Google、Amazon、Uber、Slack、Twitter
大成功の種を見抜いてきた
シリコンバレーの伝説の投資家が
投資先のベンチャー企業に教えてきた
シンプルで確実な成功手法。

「OKRは僕らが10倍成長を遂げ、しかもそれを何度も繰り返すうえで重要な役割を果たしてきた。「世界中の情報を整理する」というとんでもなく大それたミッションが、もしかすると手の届くものになったのもOKRがあったからだ。本当に重要な局面で、僕をはじめ会社全体がやるべきときに、やるべきことに集中できたのはOKRのおかげだ」――ラリー・ペイジ

感想・レビュー・書評

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  • 組織に所属するメンバー全員が、目標に向かって前進するために有効な手法の一つであるOKRを紹介している書籍。
    Objectives Key Results 目標と主要な結果 を意味する頭文字がOKRだ。
    目標管理制度と似たものだが、人事処遇とは切り離して運用する点が大きく違う。とはいえ、目標管理制度のまま本書の手法を活用することもできると感じた。
    もう一つの特徴は、全従業員のOKRは公開されており、従業員であれば誰のOKRでも見ることができること。
    企業での導入実績が紹介され、後半でOKR活用時の留意事項や陥りやすい失敗事例が学べる。
    このOKRを運用する上で、車の両輪ともいえるものがCFRだ。
    Conversation Feedback Recognition 対話 フィードバック 承認の頭文字をとったもの。
    OKRとCFRを組み合わせることで組織がより機能的になる。
    KPIととても似ているが、OKRの方がわかりやすいと感じた。
    私の組織でも、目標の設定、1on1ミーティングを重ね、成果の確認と処遇のフィードバック等を年間通じて実施している。OKRそのものでは無いが、本書から得られる学びはあり、とても参考になった。

    目標設定にあたり、コミットするレベルのものなのか、挑戦的なレベルのものなのかの見極めについてや、主要な結果を定める時の、測定可能なものを決める際のヒントなど本書から学んだことになる。

    この手法を導入することで、企業文化を構築することにもつながるものだし、隣の部門で何をやっているのかも知ることができるのも良い効果がありそうだ。

  • ジョン・ドーアは、OKRの伝道師を自任する人物である。著者は、そのキャリアのはじめにおいてOKR発祥の地とも言えるIntelで働いており、そのときにOKRの父とも言えるアンディ・グローブの薫陶を受けた。著者はその後、クライナー・パーキンスでスタートアップ企業にグローブの教えであるOKRを広めてきた。サン・マイクロシステムズでデスクトップ部門の長になったときにも、OKRを十全に活用した。中でもジョン・ドーアが、まだ30人程度しか社員がいない初期のGoogleでOKRの話をし、その後Googleでの管理手法として採用されたことで、ジョン・ドーアおよびOKRはその名声を高めた。

    Intelを成功に導いたアンディ・グローブは、その著者『HIGH OUTPUT MANAGEMENT』でも詳しくその自身のマネジメントスタイルを言語化している。そのベースはMBO (目標による管理制度)である。OKRは目標による管理というベースにしているが、高い目標を設定するなど、一般的な目標管理と比べてその力点には微妙な(だが本質的な)違いがある。もっとも大きな違いは、目標管理と給与や評価を連動させない、というところかもしれない。その根底には「アイデアを思いつくのは簡単。実行がすべてだ」というものがある。いかに組織として実行し、望む結果を出して出していくのか。その答えのひとつが目標による管理であり、より効果的な方法論であるOKRである。

    OKRとは何なのか。本書で書かれている次の定義が適切かもしれない。
    「目標(O)とは「何を」達成すべきかである。それ以上でもそれ以下でもない」
    「主要な結果(KR)とは、目標を「どのように」達成しつつあるかをモニタリングする基準だ。有効なKRは具体的で時間軸がはっきりしており、意欲的であると同時に現実的だ。何より重要なこととして、測定可能で検証可能でなければならない」
    そして、目標(O)と主要な結果(KR)の関係は、「KRがすべて達成されれば、目標は必ず達成される」というものだ。

    端的にいうと、OKRは、「みなさんの最も重要な目標を明確にする。全員の努力のベクトルを合わせ、協力させる。組織全体に目的意識と連帯感をもたらし、多様な活動を結びつける」ものなのである。チームをまとめ上げるための明確な目標が、そこに至るまでの方法の明確化が、効率的なアウトプットには絶対に必要なのである。それがOKRの意義となっている。

    OKRによって実現されることを本書に沿って体系的に解説すると次のようになる。
    ①フォーカス: 優先事項にフォーカスして、全体をコミットすること
    ②アラインメント: 組織内で目標をアラインメントして、チーム間で連携すること
    ③トラッキング: 進捗をトラッキングして、責任を明確にすること
    ④ストレッチ: 高い目標に向けてストレッチして、より大きな成果を得ること

    またOKR運用上の重要なポイントとして、著者は頻繁にかつ適切なフォローの場を設けることを挙げる。著者はこれをCFR: 対話(Conversation)、フィードバック(Feedback)、承認(Recognition)とまとめて表現する。「きちんとコミュニケーションを行うこと」というのは当たり前のことだが、「CFR」というように行動につながるわかりやすい表現に翻訳することは重要だ。個人を単純に数字には置き換えられないことを認識して、柔軟な相互フィードバックを行うことがOKRの運用には重要である。

    OKRによる管理は、一般的に考えられているのとは反対に、マイクロマネジメントを不要にする。「健全なOKR環境では、アラインメントと自律性、共通の目標と独創の自由のバランスが取れている」という。そのためには文化として根付くことが必要だという。Googleには完全にOKRが文化として根付いた。アンディ・グローブも『HIGH OUTPUT MANAGEMENT』の中で「簡単に言えば、文化とは価値観と信念であり、企業内での仕事の仕方、その正しい姿についての知識である。要するに強固で前向きな企業文化は絶対に必要である」と書いた。おそらくポイントは、OKRとCFR文化の最大の特徴は透明性の高さなのである。

    上に挙げたような基本をもとに、実行にあったってはいくつかの実際的なポイントがあるので、挙げてみたい。
    ・常にアウトプットを測定すること(例えば週次で)
    ・日々の活動を組織のビジョンと結びつけること
    ・目標は何度も繰り返して浸透させること
    ・目標や主要な結果を給与や賞与と連動させないこと
    ・主要な結果は数字で達成できたか否かが判断できること
    ・主要な結果は多くても5つ以内であること
    ・主要な結果は「数値目標」と「品質目標」がセットとなっていること
    ・評価は達成度ではなく、CFRによってパフォーマンスによって行うこと
    ・サイクルの途中であってもOKRの見直し、追加、削除は行って構わない
    ・サイクルの始まる時点で、100%達成しないといけない目標(コミットするOKR)と、社運を賭けた大胆な目標(野心的なOKR)をはっきりと区別すること
    ・承認は頻繁に、具体的に、目立つかたちで行うこと
    ・OKRにグループとして取り組む場合、「主要な結果」を個人に割り当て、責任を持って取り組ませること

    実態として、うまく行くかどうかは、こういった細部とメンバーがどこまでそのことを納得しているかに依存するのだろう。

    なお、目標については一般的に「SMARTの法則」というものがある。

    ・Specific:あいまいではない具体的な目標であること
    ・Measurable:測定可能な目標であること
    ・Achievable:頑張れば何とか達成可能な目標であること
    ・Relevant:目標が組織全体にとって重要であること
    ・Time-bound:時間軸が明確な目標であること

    OKRの目標設定にも共通するものがある。目標による管理は組織運営の基本である、と思える。「OKR」という名前を使うかどうかは別として、組織管理のフィロソフィとして理解をしておきたい概念である。


    なお、ジョン・ドーアのOKRに関するサイトが以下にある。こちらの方も参考にしていきたい。わかりやすいTED TALKのスピーチへのリンクも含まれている(2019/5時点)。
    whatmatters.com


    やや話がずれるが、本書の中で「ダメ会社は危機で潰れる。良い会社は危機を乗り切る。最高の会社は危機を糧にする」と書いてある箇所で、Huaweiのことを少し考えた。Huaweiは「Huaweiの冬」を乗り切ることができるのだろうか。


    ---
    『OKR(オーケーアール) シリコンバレー式で大胆な目標を達成する方法』のレビュー
    https://booklog.jp/users/sawataku/archives/1/4822255646
    『HIGH OUTPUT MANAGEMENT』(アンディ・グローブ)のレビュー
    https://booklog.jp/users/sawataku/archives/1/4822255018

  • Objective 目標
    Key Results 目標達成を構成する主要な結果

    OKRの4つの威力
    ・3つ程度の重要なことに集中
    ・全社目標達成のための部門目標や個人目標
    ・指標を選定して定量的に振り返りできる
    ・成功率60%の野心的な目標も取り入れる

    運用上のヒント
    ・OKRの成果と報酬を結びつけると保守的な目標しか立てられなくなる。
    ・数値目標に固執して品質を下げてはいけない。
    ・トップがコミットしなければ誰もついてこない。
    ・目標を誰でも見れるようにすると相互研鑽になるほか、批判も健全でオープンに行われる。
    ・一度決めた目標も変更可能。目標設定時には本当に重要なことが見えてないこともある。
    ・自ら目標を決めるとやる気になるので、ボトムアップで目標を決めてもいい。
    ・KR達成のために依存する部署と連携する。
    ・当たり外れの商売の場合は不確実な売上やユーザー数ではなく納期をKRとし、早くPDCAを回す。
    ・野心的すぎる目標を立てると社員は実現可能な保守的なKRを設定してしまうことがある。
    ・目標が公開されていても閲覧に手間がかかるなら透明性があるとは言えない。(Word管理など)
    ・OKRの番人が口酸っぱく目標設定や振り返りを催促する。
    ・人は進歩を目で見たい。仕事が進むことは大きな喜び。
    ・OKR面談での対応の選択肢は4つ。計画通りなら継続。軌道修正が必要なら更新。必要に応じて新たな目標を開始。不要な目標は廃止。
    ・KRが達成できたか振り返る。当然達成できないこともある。達成できるように辻褄を合わせるのは違う。
    ・野心的目標を掲げていれば70%で合格ライン。全部100%達成は目標が低すぎる。ただし販売目標やリリース期限などのコミット目標は100%以外は失敗である。
    ・客観的数値結果だけでなく自己評価による情状酌量があってもいい。達成数は足りないが大当たりした時など。
    ・方向性であるミッションと具体的ステップである目標を混同しない。実現不可の目標は信頼性を失う。
    ・ストレッチ目標は押し付けるのではなく、リーダーから成果の重要性と達成可能であることを伝える。
    ・その組織が許容できる無謀な挑戦の範囲は失敗時にそれを受け止められるリソース量に依存する。
    ・もっと良い指標を選ぶ。YouTubeの場合は視聴回数ではなく視聴時間(=満足度)だった。
    ・ストレッチ目標の目安として他の数字と相対的に比べる。YouTubeの1日の世界視聴時間合計を10億時間にするは当時の10倍の数値だが、テレビの視聴時間の20%に満たないと思えば実現できそう。
    ・目標を達成できないこともあるが、OKRの利点は目標への進捗をトラッキングできること。特にスケジュールから遅れている時はそうだ。
    ・平社員のうちからOKRに取り組むと、マネージャーになった時にマネージャー思考(何が組織にとって重要か意思決定する)が既に身についている。
    ・「さっさと仕事してくれ」と言うより、「僕のKRの達成が危うくなっている」と共通言語があるほうが穏やかになる。
    ・面談はこの言葉から始める。「君は何をしてる時が楽しい?」「何をしていると消耗する?」「君の理想の仕事を説明してくれないか?」「1つめに常に本当のことを言ってほしい。2つめに常に正しいことをしてほしい。それだけ守ってくれれば、無条件に会社は君をサポートする。そしてこれからの3ねんで個人的な目標と仕事の目標を達成することを僕自身が保証する」
    ・組織のスナップショットを定期的にとるパルシング。
    ・ビジョナリーカンパニー2で書かれている通り、良い文化のためには適切な人材が必要。不適切な人材は入れ替える。
    ・社員は何か大きなものと繋がりたい、自分が意味のあることをしてると認めてほしい。
    ・OKRの下では賢く早く失敗できる。失敗は恥ずかしいことではない。
    ・達成できないリスクありのOKRを抱える仲間を周りが助ける。組織で働くのではなく組織のために働く。
    ・エベレストと同じようにエイズ撲滅も達成不可能な目標に思える。まずはそのどこが難しいのかを説明する。そうすれば必ず登れる。
    ・そのOKRは顧客にとって価値があるか。今できることベースで目標を立ててないか。

    シリコンバレーの合言葉
    ・問題を解決せよ
    ・シンプルなプロダクトを作れ
    ・ユーザーと対話せよ

  • 飛躍的な成果を出すための目標設定の考え方。体系的に学べる構成で、日々の参考書としても非常にわかりやすい。上から下まで、チームの全員がこの考え方をマスターしたら、圧倒的に成果のレベルが変わると思う。

  • アイデアを思いつくのは簡単、実行がすべてだ。

    会社が飛躍的な成長を実現するにはそれを明文化する必要があるが、評価と紐づいていると社員は思い切ったことを言わなくなる。MBOでもOKRでも、それを明文化し実行に向けて一歩でもいいから前進させることがキモなんだろう。

    そのために、我々は以下の『主要な結果』を尺度として、この『結果』を達成する、と心理的安全性をもって皆が言える体制をつくることで、『危機を糧にする』最高の会社になれるのだろう。

  • Intel元CEOアンディ・グローブ氏が生み出し、Googleのムーンショット的成長に貢献したOKR解説本。ORKは「フォーカスとコミットメント」「アラインメントと連携」「トラッキングとストレッチ」機能があり、それらをCFRで回すことにその優位性がある。OKRは非常に意欲的な枠組みである一方、社員のモチベーションや能力の高さが求められる部分はあり、評価・報酬との位置付けをどうするかは課題に思える。常にNo.1だった天才揃いのGoogleではKPIや相対評価よりチャレンジングなOKRのほうが機能したのが窺える。KPIと混同しがちだが、達成率の赤・青・黄のなかで赤色と青色が多すぎてはBadでほぼ黄色がGoodという感覚が持てるかがポイントに思える。

  • 常に挑戦を続けたい組織にとって必要不可欠な目標管理ツールについて、事例も交えて具体的に解説されている。

  • OKRが話題になっていたので気になり読んでみた。手法としては非常にシンプルだが、OKRの決め方や運用の仕方、関係する評価の話など、事例を交え踏み込んで解説しており、よく理解出来た。Googleでの実践マニュアル、まとめまであり、活用し易い。早速、SMARTなKRは、目標を立てるのに取り入れた。

    OKRとは、目標管理(MBO)を進化させたもので、目標と主要な成果を用いる。
    目標にはコミットする目標と野心的な目標がある。
    目標にはトップから落ちてくるものと、ボトムアップで決めるものがある。
    主要な成果は、SMARTで記載するもので、すべて達成したら目標を実現可能となる。

    4つの威力 優先事項にフォーカスし、コミットする / アラインメントと連携がテームワークを生む / 進捗をトラッキングし、責任を明確にする / 驚異的成果に向けてストレッチする

    目標に関する話は評価と関係しがちだが、継続的パフォーマンス管理CFR(Conversion, Feedback and Recognition)で評価から切り離す。

    もう少し丁寧にまとめたいが、一旦ここまで。

  • 名著。
    バックボーン、システム、プロセス、アクションプランがまとまっている。
    あとはどう運用するか。
    利用者にかかっているが、自身としてもあらためて今までやってきたことの体系化に繋がった。

  • OKRによって、フォーカス、アラインメント、トラッキング、そしてストレッチが可能になる。運用にはとても絶妙なバランスや前提となるルールが必要だが、それよりも根本的にどうしても実現したいビジョンとそれを信じて止まないコントリビューターの文化があって、ことツールが大きな効果が発揮される。

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著者プロフィール

世界的ベンチャー・キャピタル、クライナー・パーキンスの会長。40年以上にわたり、その楽観主義とアイデアで起業家たちを励まし、彼らが強力なチームと革新的な企業を築き上げる手助けをしてきた。GoogleとAmazonの最初期の投資家、取締役でもあり、両社の成長を通じて100万人規模の雇用を生み出した。シリコンバレーにおけるクリーンテック投資の先駆けであり、2006年からゼロエミッション技術に対して投資している。クライナー・パーキンスにおける職責以外では、気候変動、保健、公教育といった問題に関心を寄せる社会起業家と共に活動している。

「2022年 『SPEED & SCALE(スピード・アンド・スケール)』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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