- Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
- / ISBN・EAN: 9784532316709
作品紹介・あらすじ
人間の仕事を楽にするはずのコンピュータは、爆発的な処理能力の向上により人よりはるかに速く、安く仕事をこなし、私たちの職を脅かしつつある。絶対に人にしかできない仕事とは何か、そしていま私たちは何を学ぶべきか。
感想・レビュー・書評
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kuwatakaさん19年3月現在では、将棋も囲碁もあらゆる完全ゲームは人類では勝てなくなり、五感も『見る』『聞く』については凌駕された。日常業務からコンピュー...19年3月現在では、将棋も囲碁もあらゆる完全ゲームは人類では勝てなくなり、五感も『見る』『聞く』については凌駕された。日常業務からコンピュータが提供するサービスに移行させる事をオススメします。2019/03/25
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帯には、「ホワイトカラーの半数が消える!」と大書されている。この惹句と書名だけを見ると、「コンピュータにはできない独創的な仕事をするスキルがない奴は、早晩失業するぞ。だから、いまのうちに○○のスキルを身につけろ」と煽り立てるような、よくあるビジネス書に見えてしまうだろう。
しかしこれは、そんな薄っぺらい内容ではない。
たしかに、コンピュータが人間の仕事を奪うことに警鐘を鳴らす記述はあるし、「今後、どのようなスキルを身につければコンピュータに仕事を奪われずにすむか?」も示唆されてはいる。その意味で広義のビジネス書ではあるのだが、それは本書の魅力のほんの一面でしかないのだ。
本書は、“そもそもコンピュータとは何か?”を本質次元から解説した一級の科学啓蒙書であり、コンピュータを基礎づける数学がどのように文明を進歩させてきたかをたどった数学史の概説書でもある。そしてまた、これからコンピュータと数学がどのように世界を変えていくかを展望した未来予測の書でもある。さらに、これからの数学教育はどうあるべきかを提言した教育論でさえある。
数学の本でもあるという性格上、数式も少し出てくるのだが、私のような数学オンチにも難なく読みこなせる。正直に言えば数式の中にはちんぷんかんぷんなものもあったが、読み飛ばしても著者(国立情報学研究所教授・社会共有知研究センター長)の主張を理解するのに支障はないのだ。
面白いエピソードや雑学をちりばめ、巧みなたとえ話も自在に用いて、著者は本書を数学オンチにさえ楽しめるものにしている。本書の内容は、理系の人には「何をいまさら」な話がほとんどなのかもしれないが、文系人間の私には目からウロコが落ちまくるものだった。そして、本書を読んで初めて「ああ、そういうことか」と得心のいった話が山ほどあった。
たとえば、第1章の冒頭で、著者はIBM社のコンピュータ「ディープ・ブルー」がチェスの世界チャンピオンを打ち破った事件(1997)を、コンピュータ史の大画期として取り上げる。そして、この事件の意味を解説することを通して、コンピュータに人間の真似をさせるための手順が平易に説明され、コンピュータは何が得意で何が苦手なのかも読者に理解させてしまう。見事な導入部である。
その後も蒙を啓かれる記述の連続で、最初から最後まで知的興奮に満ちている。理系の人よりも、むしろ私のような数学嫌いこそ読むべき本だと思う。数学についてのイメージが覆ること請け合いである。「もっとしっかり数学を勉強しておくんだった」と、私はしみじみ後悔した。 -
「数学は言葉」等の著作をもつNIIの新井教授の本。本書では、数学史、科学技術史、コンピュータ史を紐解きつつ、人工知能の主な分野における技術解説をしている。さらにコンピュータが発達した場合、現在のホワイトカラーの半数近くが職を失うと主張し、そうならないために一般人はどのような能力を鍛えればいいのか、ということについて持論を述べている。著者の結論は、一言で言うと、「もっと演繹の能力をつけるべく訓練しましょう」ということ。これにより、数学者やコンピュータ科学者と会話ができるようになり、自分のアイデアを実現することができるようになるとしている。
著者は、米国の大学院で数学と論理学を専攻していたこともあり、日常生活や数学、科学などの各分野における「演繹推論」と「帰納推論」の役割分担についての洞察が非常に鋭い。私が長年モヤモヤしていたところの大部分を解決してくれた点で、私にとっては大変素晴らしい本であった。私が確率・統計をどうしても好きになれないのは、数学のほとんどの分野が「演繹」による世界の理解を目指すのに対して、確率・統計だけは「帰納」による世界の理解を目指しているからだと納得できたことは大きい。 -
表題通り。
コンピュータが進歩してきて、
人間が取って代わられる、という危機について、
具体的な近況を紹介している。
さらに、
コンピュータに代わられる仕事とそうでないものの違いを分析するために、
コンピュータの特徴とは何か、という展開から、
省みて「人間らしさとは何か」の追求に帰着するところが、
アンドロイド研究と共通していて興味深い。
やや数学寄りだけど、
物事を厳密に記述する数学ならではの、
論旨をぼやけさせない文体がよい。
帰納と演繹、という両アプローチについても、
面白い議論が沸き出している。
さらに、数学や科学技術全般について、
「暗記と計算で追いついた日本」を取り上げている。
「なぜ」その論理や学問が生まれたのか、という、
必然性を伴わない学問の弊害と、
今後望まれるイノベーションにも言及している。
「まだ言語化されていない『何か』を言語化する」
これが、コンピュータにはできない、
人間の目指すべきイノベーションだ。 -
・コンピュータによって代替可能とは
・コンピュータに何かさせる人はコンピュータは何が得意で何が不得意かをざっくちとでも知る必要がある
・不得意な分野
※計算量が指数爆発をおこすもの
巡回セールスマン・ナッシュ平衡・素因数分解
※解決しつつある計算
形態素解析(言語処理)
・人間がやるべきこと
誰でも知っている暗黙知をわかりやすく表現すること -
科学エッセイという感じで読める本だが、内容はとても深い。
猫と犬を区別するには、何を比較したら良いか。毛は生えているし、目も口もある。人が見間違えることはないが、コンピュータはかつてうまく区別できなかった。それがなぜ区別できるようになったのか。帰納と演繹のうち、帰納はコンピュータが得意だが、演繹はできない。人間は演繹の部分を磨くべきだ。そのためには数学を第二の言語にすべきだ。とても明解な論理展開でわかりやすいないようである。
先日ビッグデータの専門家に、今困っていることはなにかと聞いたら、何を分析するかだと聞いた。手法も計算技術もあるらしいのだが、何をという部分がないのだそうだ。
答えは書いていないがヒントは書いてありそうな本デスね。おすすめです。 -
図書館で借りた。
コンピュータができる仕事、できるようになっていくであろうと考えられる仕事はなにか、また仕組みの上でできないことは何かを説明している。
犬と猫を見分ける、という仕事をコンピュータにやらせる場合、事前にこの写真は犬、これは猫、と人間が判断した大量の写真を用意し、それをコンピュータに学習させる。次にまだ使っていない写真をコンピュータに渡して判断させ、結果を人が評価する。
大量の写真を用意すればこの程度の仕事はできるらしい。ただ、写真が豚の場合は、必ず犬か猫に分けてしまうため、見分けられないとのこと。
大量の写真を事前に人間が判断するのは時間も人も大勢使うが、今はクラウドソーシングという、外注を利用できる。単純労働なので1件判断した金額が数セントと安い。
何ができるのかを具体的に言ったあと、その限界を説明するため読みやすく分かりやすい。
コンピュータは数学で表現できることしか実行できないため、実行する内容が高度になればなるほど数学の知識が必要になってくる、とも書いてあった。 -
すでに10年以上前の本ですが、今読んでも、まったく古さ感じませんでした。
この本が出たころは、「東ロボくん」のプロジェクトが始まる前ですし、今ほどAIの技術が進んでいないころだと思いますが、現在の状況を見越したような内容でした。
本の内容は、タイトルの通り、といってよいと思います。
コンピュータができることがどんどん増えていて、その結果、人間の代替(人間を超越する場面もしばしば)として仕事をするケースも増えています。
とはいえ、コンピュータは万能ではなく、創造的な仕事や、仕事の設定を行うことなどは、コンピュータが苦手とするところ。
今後、人間が行う仕事は、コンピュータが苦手な部分にどんどんシフトしていき、コンピュータが苦手で、希少性の高い創造的な仕事は、給与が高く、コンピュータは苦手でも、人間は得意なケースが多い仕事については、給与が抑えられる、という状況になる、と書かれていますが、まさに社会はそのように動いていると思います。
この本には、「コンピュータは、意味を理解することができないので、コンピュータに勝つ、あるいは、コンピュータとよい形で共存していくには、様々な事象を見て、意味を理解できる能力を身に付けることが大切」といったことが書かれていますが、おそらくその通りだと思います。
学校教育では、これまでもそういった能力の育成には力を入れてきたと思いますが、ますます重要になるものと思われます。 -
「AIに負けない子どもを育てる」の著者の新井紀子氏の2010年に書かれた本 コンピュータに負けない力は、論理力だとこの頃から主張している。AIが出てくる前だからか今でもそう考えるのか分からないが、データにより教育方法をコンピュータが示すと言うことは難しいと言っている。ビックデータからAIが個別最適化された教育を示すことはできないという。最後に、「耳を澄ませて」聞き考えることが大事だとしめられていた。
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労働人口構成が第一次労働、第二次労働を経て、第三次労働へて移行しているのは、本質的に人口の増加と機械化と計算機化が原因。既に私たちは、機械や計算機に仕事を奪われていることは経験済み、その結果として、数十年前ならば想像もできないような、快適で生活を楽しくしてくれるサービスを提供し、享受している。コンピュータを憎む必要はないし、悲観して「自分は未来で生きていけない」と思う必要はない。
人間が行うほどではない、計算機でこなせるようなつまらない作業は計算機に任せて、私たちはより楽しく、面白い作業や遊びにいそしむことができるわけなので。
目次
はじめに—消えていく人間の仕事
第1章 コンピュータに仕事をさせるには
第2章 人間に追いつくコンピュータ
第3章 数学が文明を築いた
第4章 数学で読み解く未来
第5章 私たちは何を学ぶべきか
おわりに—計算とともに生きる