ソニーは甦るか

制作 : 日経産業新聞 
  • 日経BPマーケティング(日本経済新聞出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784532314170

作品紹介・あらすじ

ブルーレイ、有機ELの未来は?ゲーム事業は巻き返せるのか?ストリンガー‐中鉢の「次の担い手」は?-復活に挑む巨大コングロマリットのいまとこれからを描く。

感想・レビュー・書評

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  • タイトルの通り、難しい話題である。本書の発刊されたのが2009年であり、5年の月日が経っている。
    本書の時点でも、事業の見通しがうまくできておらず「どうなるんだ、ソニー!?」という内容であった。月日が経ち、現状もソニーが厳しい状況であるのは変わりはない。
    おそらく、本書で記した課題が今も引きづらているのではないかと思われる。本書では出井氏、中鉢氏、ハワード・ストリンガー氏の社長時代を色濃く載せているが、ソニーの多角化している事業がうまく活かしきれていないという点はいまも変わらないだろう。
    まだまだタイトルの内容が今のソニーへのメッセージでもあるような皮肉さを感じてしまう。

  • ソニーは3つの問題点を含んでいると私は考えている。

    1.戦略のない技術革新
    2.マネジメントの欠落
    3.ソニーらしい事業展開の失敗


    1については「未来を描き切れていない」ことと「夢を上手く提示できていない」ことが原因ではないだろうか。
    ロードマップを思い浮かべ、この製品が普及した後は次のこんな製品を売り始め、それらを合わせた環境にまた違う製品を売れば一連のビジネスができるはずだと私は考えている。
    それができずして、有機ELのような新たな技術を生み出しても、それはイノベーションには成り得ない。
    さらに市場を意識しているだけで、徹底的に把握し切れていないために、市場のスピードに合わせた開発もできていないし、顧客の要望に合った製品を提供できていない気がする。
    (とは言っても、消費者を振り回すような技術をしっかりと提供することは忘れてはいけない)


    2に関して。ソニーには優秀な工学屋が集まるイメージはあるが、文系の優秀な人材はそろっているのだろうか。とても疑問に感じる。
    事業体制(水平分業or垂直開発)を考える必要もあるし、いつ・どこで・誰に対して・何を売るべきか、それをいくつ売って・いくら設けるのか、そういったことも疎かになっているような気もする。
    グローバルビジネスを意識しつつ、市場を展開していく必要があるのではないだろうか。
    それには、短期的な視点ではなく、長期的かつ広い視野で考える必要がある。


    3については、ソニーのイメージとはという質問について、ある程度一致した答えが得ることができないのが問題だと思う。
    ソニーが盛んな頃は、ソニー=ウォークマン というイメージがあった。しかし、現在はない。
    そう考えれば、何か得意製品に力を注いで、グッとソニーのイメージを広げる必要もあるのではないだろうか。
    そうすることで、ソニーの市場が定着して戦略も生まれてくる気がする。


    本書を読んで、日本の電子分野が今後どうなるかということについて深く考えることができたので有用であった。
    この本から感じた点を箇条書きで示す。

    ・独自の規格は排除すべきではないか?(消費者視点、Win-Win思考)

    ・市場に合ったものを作れ!(安さ重視?機能重視?)

    ・改善ではいけない。真のイノベーションを生み出せ。

    ・どこの国へ行っても活躍できる人材になる必要がある気がした。

    ・バーチャルリアリティーの分野も面白い気がする。

    ・マスメディアを積極的に活用して夢を語る。

    ・コンテンツがないとハードは売れない。

    ・部品を売るだけの国にしてはいけない。

    ・時代を先取りして金を取ってくる意欲が必要。

    ・人の役に立つということは、人に認められるということと同じなのでは?

    ・トップは現場との対話を重視しないと駄目だ!

    ・将来性が高いと感じる分野を見つければ、思い切って舵を切ることって大切。

    ・面白くなかったらソニーじゃない。

    ・限られた条件で、いかに開発するかという姿勢。

    ・会社という土壌を生かして、自分の目標とする夢・分野のビジネス化を実現するというような、大きな・国、世界規模の夢を持ち、実現させようとする野心を持った人材になろう!

  • 逗子図書館で読む。多分、無理でしょう。何の根拠もありません。ただし、この本を読む限り、それを感じる人はいないでしょう。PS3は失敗でした。ゲーム機ではありません。では、何なのか。明確に定義できないのです。それでは売れるはずありません。それは、この本にも言えます。さおれだけです。

  • 2006年から2008年にかけて、日経新聞が連載したソニー特集を単行本かして出版(2009年)したもの。

    今や社長も交代し、状況は変わったが、根本的にエレキの会社がなかなかエレキの存在感を出せていないことが問題だと思う。ソニーらしさは、社長の井深さんが「もうちょっと」と言われることに答えている間に製品ができて、それをソニーらしさと言っていた事実をみると、アップルにおけるスティーブ・ジョブスのお眼鏡にかなった製品がアップルらしさになったように創業者のDNAというのは本当に大切なんだと感じた。ホンダは組織的にも、脱・本田宗一郎ができたが、ソニーはその点はうまくいかず、技術畑出身ではない社長が続いたことも原因にあると思う。

    何はともあれ、まだまだ苦境が続くソニーだが、今一度見直して、ソニーらしさを取り戻して欲しいものだと思う。

  • ①ゲーム部門の低迷、久多良木氏から平井氏へ

    SCE前代表取締役の久多良木氏と後任の平井氏の間にはゲームハードに関するスタンスに明確な違いがある。久多良木氏は「PSはゲーム機ではない」と明言し、デバイスとしてネットとの融合を推し進めたのに対して、平井氏はPSはゲーム機に他ならないと明言している。当時ソニー副社長にも就任していた久多良木が構想していたのはネットの海に溶け込んだPS3を介してコンシューマーエレクトロニクスの世界を統合し、様々なハードとコンテンツを展開することであった。この構想は消費者の面からみれば、PS3が作り提供するユーザーそのものの生活と不可分になる、というと大げさであるが、そのようなビジョンと一体であった。現在のappleの成功を振り返れば、非現実的にも思えない構想であるが、事は思うように運ばなかった。久多良木氏の思うように事が運ばなかった理由としてまず人事面の問題がある。エレクトロニクス部門との確執に加えてSCE内での役員の交代、SMEの会長の退任により肥大化したSCEでリーダーシップをとる事は困難であった。
    SONY本社のストリンガー&中鉢体制への移行後、平井氏が後任としてSCE社長となった。ゲーム部門は赤字を抱えていた中心部門であることと、魅力的なサービス提供以前にハードの普及が進んでいなかった事が前述した平井氏の指針の背景であろう。
    現在は赤字の解消が進み大きなビジョンを描く事が可能になってきた。その結果平井氏は「今後はノンゲームサービスにも注力していかなければならない」と語っている。また久多良木氏個人の中には既にPS4、5、6・・・と続く構想があると語っており、「デバイスは性能よりもそれが提供できるUXが消費者にとって重要である」という大きな流れの中で最終的には久多良木氏の構想が実現されるのではないか。

    ②音楽、映画におけるコンテンツ分野の先例

    SONYの音楽、映画分野においては既にソフト・ハード融合へ(とそれに基づく企業の体制変革へと)舵を取っている。映画分野ではかつてコロンビアを買収して得た有力なコンテンツ群の権利を保有している。それによる興業実績からの収入のみならず、大手映画配給会社がいっせいにデジタル配信へと流れる中で、ハードとの連携を活かし他社に先んじることができた。これは当然他の映画配給会社への競争優位であると同時にサムスン、アップル、パナソニックなどのデバイス産業の競合に対する比較優位でもある。しかし一方で映画配給大手メトロ・ゴールドウィン・メイヤーを買収したものの、経営権を十分に掌握できずソフト資産の十分な活用がなされなかったためにDVDの販売契約を解消するといったことも起きている。音楽面における同様の問題は更に大きくソニーBMGの株を独メディア大手ベルテルスマンから買収し合弁を解消するにいたっている。そもそもこの合弁はソフト・ハードの融合を念頭にしたものであったが、人材面組織面での分断化でこのような結果に至り、先に融合を成し遂げたアップルに大きく水をあけられてしまったのである。


    ③ストリンガー&中鉢体制

    現SONY本社は2005年以降ストリンガー氏をトップに据えているが、彼はゲーム部門をはじめとした赤字を解消するために選出された調整型のCEOという側面が強い。彼は赤字整理に際して「夢を語ることを禁じた」。短期的に利益の回収が困難な商品・サービスの開発を凍結させたのである。その代表的な例がAIBOなどである。またストリンガーは「空飛ぶCEO」とも呼ばれ、世界各地のSONY支社を訪れ社内における対話と断絶解消に努めた。その結果ある程度の水準まで赤字は削減され、組織面でもSONY全体が垂直型へと変化を遂げようとしている。こうしてストリンガー氏は次のステップへの土台を築いたことを評価される一方で、その後のビジョンを描く構想力わ疑問視する声も一方には存在する。

  • 私ソニー大好きです!

    私の父は大手(になるのかな?)電機メーカーに勤めていました。その影響か小さいころから電化製品に囲まれていましたが、他社メーカーに触れたのは、大学時代のソニー製品が初めてでした。

    今でも我が家の基本的なクロもの電化製品はソニー製品が大多数を占めています。パソコンはバイオ、PS3、ウォークマン、携帯電話、テレビ、ビデオなどなど・・・。

    こだわりもあってひと癖ある感じが好きです。

    何と言われようとも基本的にはソニーを使い続けるんだろうなと本を読みながら考えています。

    どんな企業にもピンチはあるものです。それが大手企業になれば、責任も大きくなるでしょう。私はソニーには全く関係はないですが、ソニーの企業風土“チャレンジスピリット”を尊敬しています。

    改めて企業の経営の難しさ、奥深さを感じられる1冊でした。

    弊社もチャレンジ精神をしっかり持って頑張っていきたいですね!

  • セル、PS3失敗
    カメラ強い
    映画も

  • 蘇らないでしょう。潰れることはなくても普通の会社であり続け、アップルを超えるようなクリエイティヴィティは生まれてこないでしょう。
    サムスンですらクールなイメージがついてきて、アップルはクリエイティブ、技術力はあっても、ソニーの存在意義は薄れてきている。
    ウォークマン世代はソニーというブランドへの期待はあっても、iPod世代にとっては単なるいち企業。企業ブランドという概念は衰退していく気がする。
    技術の方を向くでもなく、会社の方を向くでもなく、消費者の方を向いた企業が生き残っていくのではないでしょうか。

  • 書店にて。
    読むのに丸1年かかってしまった(もちろん内容が難しい訳ではなく、さぼっていた)。
    感じたことは二点。
    一点はソニークラスの大企業になると、会社としての方針は、他の大企業と似たものになるということ。
    もう一点は、国内電機メーカーと比べたらともかく、世界的に見れば報酬の少ないソニーの CEOにストリンガーが就任し続けているのには、それだけ魅力的な何かがソニーにはあるのだろうということだ。

  • 内容はソニーの現状分析+α(オマケ程度の今後の予想、あるべき姿)。

    深い洞察、本としてのまとまりには欠けるものの、経営者、事業、工場等ソニーの様々な側面を扱っており、ソニーのビジネス全体を俯瞰するには適している。入門書レベルは高い。







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著者プロフィール

1973年に創刊した総合ビジネス情報紙。企業情報を中心に、毎日約400本のニュースを掲載。
『日本経済新聞』とは異なる切り口でニュースを分析、中堅・ベンチャー企業の動向も手厚く報じている。
あらゆるモノがネットにつながる「IoT」の最新事情をはじめ、医薬品分野のイノベーション、
ものづくりの最先端に焦点を当てた企画記事は好評で、ビジネス感度の高い読者の支持を得ている。

「2017年 『スゴい営業 そこまでやるか』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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