ハーバードはなぜ日本の「基本」を大事にするのか

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  • 日経BP日本経済新聞出版本部
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  • Amazon.co.jp ・本 (311ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784532264253

作品紹介・あらすじ

ハーバードの学生が絶対に行きたい国・日本。
「経済大国」としての興味は薄れても、文化や歴史への関心は強まるばかりだ。
本書では、自らもMBAホルダーである著者が、ハーバード大学経営大学院の教授陣を直撃取材。その肉声から「ハーバードはなぜ日本に学ぶのか」の核心を描く。
1980年代、ハーバードでは数多くの日本企業の事例が教えられていたが、今はその役割を中国やインドが担っている。ハーバードでもインド系、中国系企業が寄付したビルが次々に建設され、「経済大国」としてのプレゼンスを増す中で、日本は独自のポジションを築きつつある。
たとえば、「日本企業は変わらなければ生き残れない」と悲観的に言う人も多いが、ハーバードではトヨタ生産方式やサステイナビリティを重視した経営など、伝統ある日本企業の「変わらない価値」が評価されているのだ。
ハーバードの学生が卒業までの2年間で学ぶ約500本の事例の必修科目の中、2019年時点で教えられているのが、JR東日本テクノハートTESSEI、トヨタ自動車、楽天、良品計画、DeNAの事例だ。

「日本では、多くのイノベーションが伝統的な大企業から生まれており、特に日本の鉄鋼、自動車、通信などの業界における技術革新はめざましい。日本企業の歴史を見てみると、『イノベーションを起こすにはスタートアップ企業が起業(ENTRY)と売却(EXIT)を繰り返すしかない』というのはアメリカ中心の偏った見方なのかもしれない、と思うようになりました。大企業でもイノベーションを起こしつづける方法があるのではないかと」

課題もあるけれども、いいところもたくさんある―――。
ソフトパワーから先端技術まで独自の発想でイノベーションを起こす企業を紹介。
日本はこれからどこに向かい、何を強みとすべきなのか。

感想・レビュー・書評

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  • あまり表には出ませんが、日本のブランド力について認識しました。これからも大切にしてゆきたい。

  • 近年は日本の文化に着目。

  • ケースワークって無理矢理MBAの公式にはめるからあんまり 基本学ぶくらいに考えて

  • ■「ダントツ経営」本質は人と同じことをしないこと。今後もコマツが競合優位性を保って行けるかどうかは、イノベーションの創出継続できるかどうかにかかっている。競合優位性は永遠に保てるものではない。優れた製品を開発し、それがヒットしてもすぐに他のメーカーがに多様な製品を製造し、価格競争になる。特許が切れたり競合が類似技術を開発したりすれば製品のコモディティ化も進む。
    ■ダントツ経営の本質は人と同じことをしないこと。人の真似をして、人と同じレベルのことをやっていたならば、我々は生き残れない。国の違いはあろうと「効率的に土を掘りたい」「効率的に土を運びたい」というニーズは変わらない。このニーズに応えていくだけ。
    ■競合優位性を保つにはイノベーションを起こし続けるしかない。
    ・イノベーションの本質は顧客の視点から発想し、人と同じことをしないこと
    ■リーダーとして何よりも大切なのは自らの経営哲学を確立すること。哲学がなければ組織も構築できない。そして、その哲学を具現化する組織ができるまで実験し続けること。思考と実験はハーバードの校是でもある。
    ■なぜ日本はこれほどの成長を実現できたのか。その要因として「政府主導による経済復興システム」が挙げられる。政府が主導して特定の産業や企業に対して低利融資を行ったり補助金を付与したりすることによって産業政策を推進していくシステムが日本の場合は非常にうまく機能した。
    ・通産省は軽工業ではなく、あえて重厚長大産業に投資していくことを決めた
    ・政府主導による経済復興システムを他の国にそのまま導入しても成功するとは限らない
    ■一般的に国を成長させるには、
    ①リソース(ヒト、モノ、カネ等の資源)
    ⓶そのリソースを今後リターンが見込める重点産業に集中的に分配し、
    ③その産業の中でさらに効率的にリソースを使う
    という3段階が必要となる。
    ・日本の場合は戦前からこの3つがうまくいく土壌が国内に整っていた
    ■国内要因、国外要因に加え日本人の国民性も高度経済成長の原動力になった。
    ①高い倫理観を持っていること
    ⓶国民が基本的には政府を信頼していること
    ③教育水準が高いこと
    ④地域、社会、国に対する責任感が強いこと
    ■会社の本当の成功要因は目に見えないところにある。そこには企業文化、人脈など目に見えない資産が複雑に絡んでいて簡単にまねなどできない。
    ■心理的安全性の定義(エイミーエドモンドソン)
    チームメンバーがお互いに「このチームでは対人リスクをとっても大丈夫だ」と信じている状態。かみ砕いていえば「上司にも部下にも思ったことを忌憚なく言える雰囲気」のこと。
    ・忖度が蔓延るような職場の生産性は著しく低い
    ■恐れには二つの種類がある。
    ①健全な恐れ
    ・納期を守れるだろうか、競合に勝てるだろうか
    ⓶不健全な恐れ
    ・人間関係にかかわる恐れ
    ・不健全な恐れが蔓延した組織では社員は委縮し新しいことを提案したりリスクを取ったりすることができなくなる
    ■ウィリアム・エドワーズ・デミングは「結果を出す組織を作るための14のポイント」提言しているが、その8番目に「組織から恐れを取り除く」ことを挙げている。
    ・人は不健全な恐れを抱くと学習できないし成長もできない。日本流に負いうならばカイゼンもできない
    ・同じ会社の中でも生産性の高いチームと低いチームがあるがその違いはいかにリーダーが「言いたいことを言っても罰せられない雰囲気」「失敗を報告しても減点されない雰囲気」を作っているかどうか
    ■エドモンドソン教授は著書「チームが機能するとはどういうことか」の中で「心理的安全性を高めるためのリーダーの正しい行動」として8点を挙げている。
    ①直接話をしやすい雰囲気をつくる
    ⓶自分が今持っている知識の限界を認める
    ③自分もよく間違うことを積極的に示す
    ④メンバーの意見を尊重する
    ⑤失敗を罰せずに学習する機会であることを強調する
    ⑥具体的ですぐに行動に移せる言葉を使う
    ⑦「やっていいこと」と「やってはいけないこと」の境界線をはっきりさせる
    ⑧「やってはいけないこと」をやってしまったメンバーには公正に対処する
    ■日本企業の中には組織の深部にまで「探索と深化」を推進する企業文化が浸透していて一般社員や中間管理職であってもボトムアップで変革を起こせる企業もある。トヨタ自動車は格好の事例。
    ・「トヨタウェイ」とは全世界のトヨタで働く人々が共有すべき価値観や手法を示したもの
    ・その二つの柱は「知恵と改善」と「人間性尊重」
    ・「知恵と改善」とは常に現状に満足することなくより高い付加価値を求めて知恵を絞り続けること。その具体的な手法として「チャレンジ」「改善」「現地現物」という3点を定めている
    ・「人間性尊重」とはあらゆるステークホルダーを尊重し従業員の成長を会社の成果に結びつけること。「リスペクト」「チームワーク」の2点がそれを実現するための基本概念

  • 率直に感じたのは、結論の捉え方を間違うと危険な思想を読み手に植え付けてしまうということ。たしかに日本の「基本」を大事にしてくれるのは嬉しい。同じ日本人としてどういうところが学びのポイントになるかが再発見できてありがたい。だからといってハーバードが日本から「学んでいる」と理解したら大間違い。相手は学んでいるのではなく研究しているのだ。だからこそ逆に日本も他国のいいところを研究し、グローバルステージでのプレゼンスをあげていかなければならない。これを読んでただ喜んでいたら、褒め殺しされるだけで後には何も残らない。

  • 東2法経図・6F開架:B1/9/425/K

  • AKB48のアジア展開の事例が「国際競争戦略論」の教材として使われていることに驚いた。一部の天才の勝負勘による成功を研究され尽くしてビジネスモデルとして利用されるのは恐ろしい。日本は勝てるのだろうか。

  • ・例えばあなたにお子さんがいるとして、お子さんが大学に進学したいという。大学に活かせれば年分の学費がかかる。生かせなければその4年間、あなたの家庭の収支はよくなる。けれどもそういう基準だけで子供に投資するかしないかを決めますか(ホンダジェットへの30年間の投資について)
    ・ホンダジェットの成功要因は、国内国外にかかわらず、情報をできるだけオープンに取り入れようとしたところにあると思います。
    ・限定合理性:人間は限られた時間、限られた情報の中でしか状況を破断することしかできないので、特に複雑な状況においては、必ずしも最高の決定をするわけではない
    ・モノを作るだけではなく、それをフル活用してもらって初めてそのものがいきるのです
    ・目の前の課題は根本から治療する
    ・一般的に国を成長させるには①リソース(ヒト・モノ・カネ等の資源)を確保し、②そのリソースを今後、リターンが見込める重点産業に集中的に分配し、③その産業の中でさらに効率的にリソースを使う
    ・消費財のマーケティングにおいては「起業家がどういう思いでこの製品を完成させたか」「この製品はどのように世界を変えるか」といったストーリーは絶大な効果を発揮します。消費者がストーリーに共感すれば、喜んで商品を買ってくれるからです
    ・アメリカ人は日常的に面を食べる習慣がないが、スープは飲む。だからアメリカではカップヌードルをスープとして再定義して売り出した
    ・コモンズの悲劇:だれでも自由に利用できる共有資源が、管理者が不在であるがゆえに、過剰に摂取され、資源の劣化が起きること
    ・「価値創造」とは、進出先の国の人々が魅力的に思ってくれるような製品やサービスを提供すること、「価値獲得」とは、創造した価値から企業が利益を得ることを意味する。シャンパンは価値獲得に至っているが、オクトーバーフェストは価値創造で止まっている。
    ・規模を追わず、違いを追う(ソニー)
    ・健全な恐れ:納期を守れるだろうか、競合に勝てるだろうか、このレベルの製品を実現できるだろうか、などチームが学習し、成長するためにも必要な恐れのこと。
    ・不健全な恐れ:人間関係にかかわる恐れ。「他人からどう思われているだろうか」を過剰に心配することから生じるもの
    ・心理的安全を高めるためのリーダーの正しい行動
    1) 直接話しやすい雰囲気を作る
    2) 自分が今持っている知識の限界を認める
    3) 自分もよく間違うことを積極的に示す
    4) メンバーの意見を尊重する
    5) 失敗を罰せずに学習する機会であることを強調する
    6) 具体的ですぐに行動に移せる言葉を使う
    7) 「やっていいこと」と「やってはいけないこと」の境界線をはっきりさせる
    8) 「やってはいけないこと」をやってしまったメンバーには公正に対処する
    ・トヨタの人間中心はどうやったら本当の意味で人々の人生をよりよくできるのかを考えることにある(ただ、料理をしなくてもいいようにするということではない)
    ・人を大切にするリーダーシップこそ日本の強み

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著者プロフィール

1998年3月 一橋大学法学部卒業
1999年8月 マールブルク大学(ドイツ)法学部公法・国際法専攻(LL. M)修了
2000年3月 一橋大学大学院法学研究科公法・国際関係専攻修士課程修了
2003年8月 マールブルク大学法学部公法・国際法専攻博士課程修了(Dr. jur)
外務省勤務,明治大学法学部専任講師・准教授等を経て,
2021年10月 明治大学法学部教授(現在に至る)

「2021年 『EU海洋環境法』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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