NEXT GENERATION GOVERNMENT 次世代ガバメント 小さくて大きい政府のつくり方 (日経MOOK)

制作 : 若林 恵 
  • 日本経済新聞出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (192ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784532182977

作品紹介・あらすじ

全国の「戦う公務員」に贈る!
D.I.Y.でオルタナティブな「行政府論」――


小さい政府/大きい政府の二項対立を超えていく、小さいけれども、誰も排除されない大きな社会を実現する、「小さくて大きい行政府」はありえないのか?

人口減少によって社会が疲弊し「公共」が痩せ細っていくなか、デジタルテクノロジーの可能性を正しく想像することで、新しい公共のありかた、新しい行政府の輪郭を見いだすことができないか。

テクノロジーと社会の関係に常に斜めから斬り込んできた『WIRED』日本版元編集長、『さよなら未来』の若林恵が、行政府のデジタルトランスフォーメーション(ガバメントDX)に託された希望を追いかけたオルタナティブな「行政府論」。

eガバメント、データエコノミー、SDGs、地方創生、スマートシティ、循環経済、インディアスタック、キャッシュレス、地産地消、AI、クラウドファンディング、ライドシェアから……

働き方改革、マイナンバー、ふるさと納税、高齢ドライバー、「身の丈」発言、〇〇ファースト、災害、国土強靭化、N国党、Uber・WeWork問題、プラットフォーム規制、リバタリアニズム……

さらにはデヴィッド・グレーバー、暴れん坊将軍、ジョーカー、ヒラリー・クリントン、メタリカ、カニエ・ウエストまで……

縦横無尽・四方八方・融通無碍に「次世代ガバメント」を論じた7万字に及ぶ「自作自演対談」に加え、序論、あとがき、コラム32本を一挙書き下ろし! 企画・編集・執筆、全部ひとり!現場で戦う公務員のみなさんにお届けしたい、D.I.Y.なパンクムック!


黒鸟雑志 第2卷

次世代ガバメント
小さくて大きい政府のつくり方

責任編集=若林恵

感想・レビュー・書評

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  • 衝撃の良書。これまで感じてきた数々の点がつながる。
    社会の価値が個別・多様化する一方、かけられるコストが縮小する。
    最低限のコストで最大限のニーズに応えることのできる「小さくて大きい政府」をつくる。鍵となるのはデジタルテクノロジー、分散主義と循環経済。
    「公共」がいったいどのように守られ、どのように管理・運営されていくことになるのか、「行政府」と「民間企業」「市民」の「公共」への関わり方がどのように変わっていくのか。

    <マインドセット>
    ・「民間(小さい政府)」か「行政(大きい政府)」かではなく、「サービスの画一性」を問題にすべき。
    ・人口減少により既存サービスを引き続き提供するコストが上がる
     cf. インフラによる国土強靭化は現実的には不可能
    耐用年数を迎えた構造物を同一機能で更新すると仮定した場合、現在ある国土基盤ストックの維持管理・更新費は今後とも急増し、2030年頃には2010年頃に比べて約2倍になる。
    維持管理を支える人材が高齢化、2050年には2010年頃に比べて半数に減少する。
    ・社会の動き方(アプリケーション)が変わっているのに、社会を形づくるシステム(O S)がそのままの状況。官僚機構は画一的なサービスをくまなく配給する上で機能したが、現在の社会のニーズに応えることは難しい。
     cf. キャッシュレス化の本質:「現金を動かす前提でつくられていた社会」が変わること

    →脱中心的なネットワーク化が必要?

    <これからの時代の公共>
    ・供給側の論理から、当事者を中心に物事を考える=主語はオマエじゃない
     ○給食を通じてクラスのみんなが仲良くなる
     ×クラスのみんなが仲良くなる給食を提供する …提供することが目的化する
    ・よりきめ細やかなラストワンマイルは現場で行う
    ・共感とシェアのエコノミクス→スモールビジネスの展開
    ○ヒラリー・クリントンのスモールビジネス振興策
    ・開業資金の調達をしやすくするためにコミュニティバンクや信託組合などに働きかける
    ・起業する学生の学生ローンの返済延期や無利子化
    ・起業プロセスを簡略化するために地方政府に働きかける
    ・決済や納税手続きの簡略化、税優遇
    ・ヘルスケアや福利厚生をカバーする
    ・参入障壁を下げる
    ・大企業による搾取や不当な取引を規制する
    ・スモールビジネス起業家の支援(メンタリング・インキュベーション・トレーニング)
    ・スモールビジネスに対してオープンな行政府になる

    ○シビックエコノミー:8つの行動ガイド
    1. 市民起業家を見つける
    2. コンサルではなく参加―市民に共創を呼びかける
    3. 共に出資・投資を担う―資金調達を多様化させる
    4. すでにある資産を再活用する
    5. 場所の体験―物理的・社会的な条件を設定する
    6. ゴールを決めないアプローチ―自然発生を促す枠組み
    7. ネットワークの力で変化を起こす―スケールさせる
    8. 「変化」を指標化する

    ・地方行政のSNS活用の可能性

    ・複雑なネットワークの中に何かを投げ込んでみる。そこで起こる動きを細かく検証する
    ・実験を重ねていった中で修正を加え、法的にも問題のない形にしていくプロセスが必要がだが、予算確保のためのエビデンス集めにも実験が必要
     →行政府と近いながらも、それとは関係のないところで、「勝手にやっている」ような組織体が必要になってくる
     cf. ロンドン市で公的な事業に対するクラウドファンディングを支援
    ・公と民を結びつけるための中立的なテーブルが必要

    ・「孤独」が今後の重要な社会課題となる

    <行政の役割の変化>
    ・デジタルトランスフォーメーションのためのプラットフォーム(インフラ)を整備
     =私道しかないインターネットの世界に公道をつくる
     ・通信インフラ:光ファイバー
     ・リアルとバーチャルをつなぐインフラ:生体認証ID、銀行口座、スマートフォン
     ・バーチャルなデジタルインフラ:決済・デジタル本人確認
     ・度量衡API
     ・データなどに関する規格やルール
    ・「配給」のための組織からの脱却
    ・直接支援するのではなく、何が必要な支援かを現場に聞きに行き、それを実現できるプラットフォームをつくる
    ・「共感」を軸として機能する
    ・最初のアクションとプログラムの設計は行政府がやるが、最後のラストワンマイルを市民、企業に協力してもらい現場にもっともに近いところできめ細かいサービスを実現する
    ・プログラムの最終ゴールやKPIを設定し、具体的なプログラムの内容は現場に任せる
    ・中央政府は地方行政のためのプラットフォームをつくっていく、地方行政府は市民により近いところでラストワンマイルのサービスを生み出すプラットフォームになっていく
    ・コネクティッド・カウンシルによる公共空間、設備、労働力をシェアできるネットワークをつくりあげる
    ・実現のための早急なバックエンドのデジタルテクノロジー導入による効率化・自動化
    cf. イノベーションラボ「NESTA」のリサーチによる行政府が今すぐやるべきこと
    ・バックオフィスのデジタル化を2020年までに完遂する
    ・行政データのオープンスタンダードを策定する
    ・行政サービスに利用可能なデジタルプロダクトのマーケットを創出する
    ・地域内にデータアナリティクスを行うための組織を設置する
    ・デジタルサービスへの全市民のアクセシビリティを実現するために投資する
    ・データシェアやアルゴリズムを用いた意思決定の倫理ガイドラインを策定・公開する

    ○DECODE: Decentralized Citizens Owned Data Ecosystem「スマートシティを再考する」分散的なデータエコシステムのあり方を構想・研究する

    <世界の事例>
    インド:インディアスタック
    ・8桁の国民ID「Ada-haar(アーダール)」を13億人に振り終え、それぞれの番号と個人とを顔面、指紋、虹彩の3つの認証システムを用いて紐付け
    ・オープンAPIにより、会社や個人が「公的なデジタル実印=電子署名(e-sign)」をつくることができる
    エストニア:
    フィンランド:

  • 小さくて大きい行政府。国のトランスフォーメーション先。

  • 大きな政府小さな政府の次に来る政府の提言.デンマークやインドなどの例など詳しく述べて,わかりやすく説明しようとする意図はよくわかったが,やたらとカタカナ文字が多く日本語にしてほしかった.将来はこのようなデジタル化データ化になるとしてもまだ管理される恐れがぬぐいきれない.

  • インフラをできるだけ国有化し、国の経済と国民を丸っと面倒を見る、いわゆる大きな政府。しかし、公共サービスを増やせば増やすほど人員もコストも大きくなり、逆にサービスの質は低下していった。効率も悪くなり、国民からは無駄なところに税金が使われていると不満も出てくる。組織が大きくなると目が届かない所も出てきて腐敗も起きる。その中で出てきたのが規制緩和や民営化によって小さな政府を作り、公的なサービスを市場に委ねる考え方で、価格と質の競争によってより低価格で高品質なサービスが提供されるというもの。しかし、ビジネスにならない不採算サービスは提供されなくなり、元々は公的なインフラだったものが消滅してしまうということも起きてしまう。

    国民のニーズが多様化し、自治体職員の数も減らされている中、考えるべきなのはコストのかからない小さな政府でありながら大きな成果をテクノロジーを通じて達成する次世代政府なのである...という話を、事例や識者の言葉を使いながら解説している。

  • 人口減少によっていろいろなサービスが消えていくという話。コンビニも消えたり病院も遠くにしかなかったり。そう考えると、過疎化する地方から出て東京一極集中した方が良いみたいな流れになったりするんだろうか。
    小さい政府と大きい政府という二つの視点は大事だなあと思った。テクノロジーによって小さくて大きい政府がつくれるのか、何かしらそこに自分も寄与していきたいなと思う。

  • 公共と民のあいだの境界を引き直す、というのが実感に沿っていた。政府は小さくなっていくべきだが、サービスは大きくしていく、というのを民とのパートナーシップで達成できるか

  • DXとかSociety 5.0とか言うけど、その先にある行政はどんな姿をしているの?という問いに対して、考え方の取っ掛かりとしてはすごく良い本だと思います。(T.I)

  • 次世代の行政とはどうあるべきか、について、
    デジタル化やデザイン思考、そして過去からの行政発展の経緯を踏まえ、いろいろな視点から述べている。
    テックに寄り過ぎず、「行政学」の古い敷居も出て、
    ちょうどよいバランスの視点で、
    今後へ向けた展望が書かれている。

    ○NPMからNG(ネットワークガバナンス)へ
     市場という視点を盛り込んだNPMから、横のつながりが重要となるNGへ。

    ○行政の10のサボタージュ
     1.知識の欠如
     2.無関心
     3.実行力(の欠如)
     4.自動化による権限のシフト(への抵抗)
     5.新規プレイヤーの参入(への抵抗)
     6.調整(をせずに上下関係や縄張りを重視)
     7.プライバシーとセキュリティ(の失敗を過度に恐れる)
     8.戦略よりも戦術(を優先)
     9.変化への恐れ
     10.否定的結合
    これらのサボりが、テクノロジーによる発展を妨げている。確かに。
    →であれば、この逆をすればよいのだ。

    ○これからの公務員
     テクノロジーの導入で浮いた時間を、地域に入り込んで
     課題を探しに行くために使う。
     市民の生活の中で何が起きていて何が課題になっているか、
     そのインサイトを取り出していくことが重要。

     確かに、定型的な事務をすることが自分たちの仕事、と
     決め込んで日々ロボットとして過ごしている行政職員が多い。
     彼ら・彼女らは、まさにロボットに置換され、職を
     失うだろう。

  • OSとしての行政を変える。

    公と民の間の存在から実験を行う。

  • (途中メモ)

    若林さんの本のすごいところは、内容と装丁を含めて、わくわくさせてくれるところ。(それがビジネス書には不要でWIREDノリであると言われるのだとしても、私はその未来にワクワクするノリの誌面が好き。)
    けっこう根底ではロマンチストな部分がありそう

    こんにちは未来の言葉を借りると『自動運転』で仕事をしない、ってこういうことなんだなと

    日本の未来に希望の持てない就活生とかにも読んでほしい

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