治療では遅すぎる。: ひとびとの生活をデザインする「新しい医療」の再定義

著者 :
  • 日経BP日本経済新聞出版本部
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  • Amazon.co.jp ・本 (241ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784532176891

作品紹介・あらすじ

100年人生のカギ――それは健康でいられる社会を構築することだ。
   いかに病状を表面化させずに長生きするか?
     そのために医療は何ができるのか?
「ストリート・メディカル」という方法によって医療を再定義し、誰もがよりよい人生を獲得できる世界を創るための若き現役医師の挑戦。

 減塩が大事と言われても、普段、自分がどれくらい摂取しているか意識することは少ない。しかし、もしも目の前のフライドポテトの塩がカラフルな青色や赤色だったら、「こんなにかかっていたのか!」と驚くだろう。あるいは、上るほどに景色が変わる階段があったら、エスカレーターを使わずについついそこを上ってしまうかもしれない……。
 普段の生活のなかで、簡単に、継続的に健康を意識し、運動量を増やすことができれば、人々が健康でいられる社会が実現、医療のあり方も劇的に変わる。今までの医学は顕在化された症状に対する治療行為に主眼が置かれていたが、人々の健康が重視されるようになった現代では、予防医療に加えて、未病段階における適切な診断と指導に重きが置かれるようになってきた。

 本書は、こうした流れの魁として、2011年から医師とクリエーターという異色のコンビが始めた「広告医学プロジェクト」を活写。その活動を通じて得られた知見と具体化されつつある事例を紹介することで、新しい医療と社会のあり方を提示するもの。
 著者の武部氏は、2013年にiPS細胞から血管構造をもつ機能的なヒト臓器を世界で初めて創り出すことに成功、その研究成果は国際的に高く評価され、米スタンフォード大学、シンシナティ小児病院など米国でも活躍している。2018年春には、最年少で横浜市立大学教授に就任し話題を呼んだが、さらに2019年には東京医科歯科大学から教授として招聘され話題になった今、最も注目される日本人医師のひとり。

感想・レビュー・書評

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  • 治療から予防というキーワードはヘルスケアの領域では以前から言われていることですが、
    お医者さんや製薬業界にとってはまだまだ様子見の人も多いはず。

    著者のことは知りませんでしたが、お医者さんの中でもイノベーター的存在の方なのでしょう。
    医者として研究をつづけながらも、デザイン思考に近い考え方をベースに、
    予防分野でもご自身のできる取り組みを色々とされている方のようです。

    著者は、「ストリートメディカル」という言葉を使われていましたが、
    サイエンスだけでなく様々な分野の知見を掛け合わせ、
    患者さんのためになるソリューションを見いだしていく営み、
    そんな風に自分なりには解釈しました。

    治療以外の分野のソリューションが幅広く紹介されている書籍は、
    そんなにたくさんある訳ではないと思いますので、
    この領域に興味のある方は、読んでみると面白いのではないかと思います。

  • 『病を診る医療』から『人を診る医療』へ。

    医療とテクノロジー、ナッジの取り組みにとても興味があったので既に社会実装されている取り組みの多さに驚きつつ、新鮮味を持ちながら楽しむことができました。

    西洋医学だけではなく、ホリスティックに様々な医療やセラピーを組み合わせることに加えて、さらには新しい技術や発想も医療に掛け合わせることの意義を腹落ち感をもって学ぶことができました。

    【本書からの主な学び】
    ① 次世代の医療は『病を診る医療』から『人を診る高次元の医療体系』へ。
    → 患者の生命の危機のみならず、人々の生活や人生をも対象とした新たな医療への変貌。

    ② 人と人との接点となる生活の場での接点『タッチポイント』のすべてが、実践の対象となり得る。薬だけではない、あらゆる媒体が新時代の医療の武器となる。
    → 新しい医療とは、学問と実践領域の大幅な拡張である。

    ③ POCを目指す研究において、最も重要なことは、『仮説』の設計。この仮設設計が、いかに緻密に練られたものであって、かつ、正しかった場合に重要な課題解決につながるか、という点が全てであると言っても過言ではない。

  • 治療では、遅すぎる
    対処療法ではなく、行動変容、未然防止で。

    コロナがまさにそうだ。日頃からマスク、手洗い、十分な睡眠、色んなことを普通にして、そしてワクチンで、もしもの時に備える。

    そこには、ヒトそれぞれの良心や主義、性格が影響する。

    よりよい人生へ、クリエイティブの力でアップデートする。
    そのとおりだ。

  • 著者の講演を聞いたけどめっちゃ賢い人。
    病視点ではなく患者視点で考えるストリートメディカルの考え方が面白い。実用化して普及させるのが大変やけどナッジを応用した斬新なアイデアがこれからもっと出てきそう。医療の場を「病める場」から「生きる場」に変えるという提言。

  • ◾️概要
    ストリートメディカルとは何か知るため、読みました。IoTの登場とともに、社会からの要請は、モノづくりからコトづくりに力点が移っています。薬や手術だけではない、あらゆる媒体が新時代の医療の武器となります。この拡張される領域をストリートメディカルと呼びます。

    ◾️所感
    この概念、著者の試みに多大な感銘を受けた。こういう考え方が浸透してほしい。

  • 著者の武部貴則先生は「ストリート・メディカル」という考え方を提唱されている。
    今後の新しい「医療」について、またそこでデザインがどんな貢献ができるのか、たいへん示唆に富んでいる。
    そして、第5章の梅田悟司氏(元電通コピーライター・コンセプター)との対談「社会に健康をインストールする」がすごい。この分野のいまと未来が語られているのだが、対談相手の梅田氏の現状認識と課題感がリアルで、武部先生もここまで話すのかというくらい話がどんどん深くなっていく(すごい)。
    医療の分野と関わるようになって見聞きし体験したことについて、共感する部分がたくさんあった。

  • ストリート・メディカル
    人を診る医療へ

    見える塩や病児服の例などいろんな事例が
    たくさん書いてあって、新発見だったな。

    患者だけでなく、その家族をケアする視点

    セカンドオピニオンやサードオピニオンについて
    1回の検査で3人の医師が診るって
    カルテのクラウド化が進めばできる時代が来るか?
    みたいな話がチラッと出ていて、
    そんなこと考えたこともなかったけど、
    技術革新が進めば、そういう未来もあるのかな。

  • 丸善で平積みされてて目に留まり、購入。

    この本は病気ではなく、人を見るというコンセプトの元、ストリートメディカルという概念を提唱してくる。本を開いてすぐに目に飛び込む事例を示した写真で、まず惹きつけられた。

    医療の世界に関わってるが、正直このようなやり方が出てきてることを知らず、本文を読んでてとても刺激的だった。 この分野へのアプローチも、やりがいがありそうだと個人的に思えた。

  • ナッジの考え方を使って治療に行かないように健康をより親しみやすいものにしていく。登りたくなる階段、見える塩の量、ゾウさんのMRI、色付きの糖尿病注射など、病気と付き合っていく上で親しみやすさがある世界となるように、色々な工夫があることを教えてくれる。

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著者プロフィール

横浜市立大学 先端医科学研究センター コミュニケーション・デザイン・センター長/特別教授
東京医科歯科大学教授
シンシナティ小児病院オルガノイドセンター副センター長
1986年生まれ。横浜市立大学医学部卒。
2013年にiPS細胞から血管構造を持つヒト肝臓原基(ミニ肝臓)を作り出すことに世界で初めて成功。ミニ肝臓の大量製造にも成功。デザインや広告の手法で医療情報を伝え、健康行動を促す「ストリート・メディカル」という考え方の普及にも力を入れている。

「2020年 『治療では 遅すぎる。』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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