夢見鳥

  • 日経BPマーケティング(日本経済新聞出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (279ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784532176709

作品紹介・あらすじ

テレビ時代劇「鬼平犯科帳」の主人公、長谷川平蔵役でお茶の間でも幅広い人気を誇った歌舞伎界の重鎮が、75年の半生を「です・ます」調の丁寧なやわらかい筆致で真摯に綴る自伝的エッセイ集。
著者自身が書名につけた「夢見鳥」は「蝶」の異名であり、吉右衛門の屋号「播磨屋」の家紋は「揚羽蝶」。この書名が著者の人生を象徴していると言っても過言ではありません。一代で名優にのぼりつめた初代の名跡を継ぐ宿命のもとに生まれ、その重圧に押しつぶされそうになりながら、先達に学び精進して芸を磨き上げてきた俳優人生は、日本の伝統芸能である歌舞伎を、真の世界遺産である舞台芸術にすべく、高みを目指す闘いでもあったことが、本書の端々から伝わってきます。人間国宝に指定された、そのいぶし銀の演技が育まれてきた半生を綴る言葉は、歌舞伎ファンのみならず、舞台芸術、ひいては絵画やクラシック音楽の愛好者まで魅了することでしょう。

第一章と第二章は2018年7月に著者が日経新聞朝刊に連載した「私の履歴書」を元に加筆、第三章はインタビューを元に構成された本書オリジナルです。
4歳の初舞台から、75歳の令和の舞台まで、歌舞伎公演、舞踊公演、テレビドラマ、映画まで一挙網羅した上演記録を巻末に付し、当たり役の舞台写真も豊富に収録しています。

感想・レビュー・書評

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  • 吉右衛門の自伝的な随想録と、代表的な演目についてのコメント。どちらも簡潔だが味わい深い。ゆっくりしみじみ読むのがいいと思います。この人らしい屈託と、おそらく孫ができたが故の明るさがないまぜになって、これまでの播磨屋さんの文章とちょっと違う趣も楽しめます。
    後半1/3くらいは吉右衛門の今までの公演記録。これはこれで貴重。

  • 星の数は、吉右衛門という役者さんの全てに対する感謝の気持ちで、本当は満点。

    コロナ禍の中、最期に舞台を見ることができませんでした。
    役への解釈、対し方について、こうした形で僅かでも窺えることは慰めですが、やはり、もう実際の舞台で拝見できない、実感できない、それがなんとももどかしいところです。
    ひとつ付いていない星は、逝かれてしまった吉右衛門丈。

  • 吉右衛門らしい謙虚な姿勢。
    好きな人には堪らん。
    兄貴よりはええな。

  • 夢見鳥

    著者:中村吉右衛門
    発行:2019年8月1日
       日本経済新聞出版社

    今日、図書館予約の順番が来たので喜んで開くと、去年の夏に日経に連載された私の履歴書の書籍版であることがわかり、がっくり。それなら読んでるし。まあ、書籍化にあたり修正、加筆しました、という常套句は書いてあるけど・・・とジムで自転車をこぎながら読み進むと、うーん、もうすっかり忘れているなあ、へーえ、そうなんだ、みたいに感じ、自らの記憶力の乏しさを嘆きながら、読み切った。

    で、自宅パソコンに保存してあった私の履歴書のファイルを見ると、おや、数が違う。修正、加筆なんて売らんがためにアリバイ的に少ししているだけだろうと思っていたが、かなり加筆している。新聞にはなかったまったく新しいトピックがいくつもあった。

    ちょっと驚いた。
    連載日以降に起きたことも書かれていた。
    スポーツ観戦を好み、団体より個人競技が好きなこと、「スピード狂」でA級ライセンスが取りたかったが諦めたものの、今も自宅と劇場は自らの運転で往復していること、能の「藤戸」を題材に自ら台本を書いた「昇龍哀別瀬戸内・藤戸」(厳島神社で初演)理由は、反戦のメッセージを込めたかったから、など、新聞では明かしていなかったことも知ることができた。

    ところで、これは新聞でもあったが、思春期、舞台の台詞の途中で声変わりが始まったとのこと。女形だったらしい。しかし、声が出なくても無理にださなくてはいけなかった。
    それで思ったが、歌舞伎役者は悪声の持ち主が多い(吉右衛門は悪声ではない)。それは、もしかすると変声期に無理をして芝居を続けるからかもしれない。

  • 「歌舞伎美があって、心を表す型によって魂をお客様に届けること。様式だけではない、気持ちを共有してもらえるのが歌舞伎だと思っています」

    第一章『宿命』では、誕生から幼少期の戦争と疎開の経験、いつも一緒にいたばあやのこと。実父(初代松本白鸚)・実母がいながら、母方の祖父母を養父(初代中村吉右衛門)・養母として舞台に上がった4歳の日の記憶などを。第二章『二代目』では、絵画や語学にも造詣を深めた青春時代から、落語や講談へと歌舞伎との親和性について等の考察。かつて初代松本白鸚が演じていた長谷川平蔵役を引き継いで演じたドラマ、平成版の『鬼平犯科帳』の思い出など。昭和、戦後から平成と移り変わっていく時代のなかで、歌舞伎界も大きく変化を遂げていく。その渦の最中から見える風景、思う事などが二代目吉右衛門さん自身により綴られ、第三章の『芝居への想いを語る』では、日本経済新聞社の記者による二代目吉右衛門さんへのインタビューという形式をとりながら、70数年間演じてきた数々の演目、役柄について語る。巻末には上演記録も掲載。

    生まれる前から決まっていた、一代で名優へとのぼりつめた初代「中村吉右衛門」の名跡を継ぐという運命。
    4歳で初舞台を踏み、多くの役に向き合うこと70余年。迷いながら、悩みながら芸を磨き上げる修行の日々と、今なお至高の演技を目指す、二代目中村吉右衛門さんの半生記。

    二代目吉右衛門さんの演目は今のところ『引窓』の濡髪長五郎と『平家女護島』の俊寛しか見たことがないのですが、ありえない詭弁を弄して危機を切り抜ける、不思議な説得力の『引窓』という物語の奥深さ。妻の待つ都へ帰りたいという強い望郷の念に悶え、しかし最後には若い夫婦のためにひとり島に残り、去ってゆく船を一心に見つめる切ない眼差しに涙を絞る終幕が印象的な『平家女護島』の俊寛。どちらも吉右衛門さんだからこその名演技でした。
    もっともっとたくさん二代目吉右衛門さんの舞台を観たいと思っています。今年もできるだけ歌舞伎座、国立劇場へ足を運びたい。

    書籍タイトルの『夢見鳥(ゆめみどり)』とは、蝶の異名。吉右衛門の屋号「 播磨屋」の家紋「揚羽蝶」のことでもある。

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著者プロフィール

歌舞伎俳優
1944年、東京生まれ。八代目松本幸四郎(松本白鸚)の次男。祖父の初代中村吉右衛門の養子となる。48年6月、中村萬之助を名のり初舞台。66年10月、二代目中村吉右衛門を襲名。2002年、日本芸術院会員。11年、重要無形文化財(人間国宝)。17年、文化功労者

「2019年 『夢見鳥』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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