- Amazon.co.jp ・本 (332ページ)
- / ISBN・EAN: 9784532167073
作品紹介・あらすじ
特別の配慮が日常化した沖縄には、愚直にがんばることがバカらしくなるような状況がたくさん生まれている-この島を覆う危機の本質。
感想・レビュー・書評
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私は、観光地としての沖縄が本当に好きで、その文化や成り立ち、習俗にも強い関心を持っている。
何度行ったか思い出せないほどに。
その上で。
基地が補助金獲得の材料となり、本土の沖縄への「配慮」を推し量るリトマス試験紙となっている現実。
族議員による利益配分政治の終焉、政府の財政難とともに本土と沖縄の亀裂が深まる構図。
それを「戦争を始めたい自民と、平和を愛する市民」の対立に置き換える革新勢力と、ある意味それと癒着しながら補助を引き出す保守勢力。
こうしたゴネる政治は、沖縄から「まっとうな努力が報われる」という基本的な活力さえも奪い、学力や一人当たり所得などの都道府県内圧倒的最下位の地位を固定化していく。
米軍基地の75%が沖縄、という表現の本当の意味。
保守政治家も、基地問題が全国に飛び火しないように基地イコール沖縄の思い込みを利用する。
基地が生み出す経済効果に依存しているのは貧しい労働者。こうした容認派の声は、組織化された反対派の声にかき消され報道されない。
美しい海を埋め立てているのは辺野古だけではない。むしろ、沖縄は突出した埋立経済。地元の事業者ほど埋め立てに熱心。その土地は使われることもない。
県民所得の平均は最下位なのに、高額所得者ランキングでは上位。理由は一部の地主の基地からの地代。貧富は基地によって肥大化。
では要するに沖縄市民が悪いのか。いや、やはりそこに基地があるのが悪いのだ。安全保障の観点で見ても、少なくとも海兵隊は不要。基地と補助の絡み合いを断ち切れば、大人の中央地方の関係になれる、と著者は説く。
きっと似たような構図が、震災の復興の現場などでも起きてくる、あるいは起きている。
ささやかな暮らしを守りたい弱者とそれを圧迫する行政、という構図はどこにでも実際絶対にあるが、それをいつでも当てはめて語ることの危険性を本書は痛感させてくれる。
既得権益は権力者だけのものではない。誰のものであれ、なくすべき既得権益はなくす。
その方向に舵を切れるかに日本の運命はかかっている。
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姉が住んでいる沖縄。著者は日本経済新聞沖縄支社に二年前まで勤めていた人で、沖縄の裏の表も知っている、という感じの内容。
第一章~第六章までが負の部分、第七章が「自立に向けて」という正の部分なので、前半を読んでいると気持ちが暗くなってくる。(現実だけれど)
私は姉や義理の兄から、いろいろと話を聞いているので、納得できるものが多かった。「癒しの島」「スローライフ」などのイメージが通っているけれど、他にもれず、問題山積み。しかも、「基地にたよった生活」が当たり前になっていて、官高民低、低賃金、高い失業率・低い職業意識、など根が深い。
それでも、私は7章の自立への道を読んで、希望を持っている。
5K、観光(沖縄でしか味わえないもの)、環境(なるべく手を加えない、自然を生かす)、健康(最新医療が整いつつあり、医療メーカーが育っている)、金融、研究に力を入れること。
そして「人」(高い出生率、地域で育つ)を生かす。
問題があるときは逆にチャンス、という考え方をもって、ぜひ良い方に進んでほしいです。 -
2005年から2008年まで日本経済新聞の那覇支局長を務めた著者(現在は社会部デスク)が、本土人として沖縄に暮らし記者生活を送る中で見聞き知ることとなった、一般に信じられているイメージとは異なる沖縄の現実。
これを読めば、今まさに問題となっている普天間基地の移設問題も、まったく違うものに見えてきます。
何より、衝撃的に沖縄への見方を変えられたのは、沖縄における「革新」と「保守」の在り様。
「格差社会」である沖縄において、相対的に所得の高い公務員や学者、マスコミなどの知識層が革新系を支持し、建設・土木や観光・サービス業などの低所得の民間が保守系を支持する構図があるとのこと。
しかし、彼らの間にイデオロギー面での対立があるわけではない。
本の中で紹介されている、元沖縄大衆党書記長・比嘉良彦氏による解説が簡潔にまとまっています(以下引用、74頁−75頁)。
<span style="color:#6633cc;"><i>「本来、沖縄の保守と革新の間にイデオロギー対立はありません。何が違うかというと、革新は理想論を主張し、保守が現実論を言う。そして沖縄全体で政府から振興策を引き出す役割分担が続いてきました。1972年の本土復帰も、運動を主導したのは教員ら官公労です。『本土並み』を目指して公務員の給料は、ほぼ本土並みになりました。復帰で一番恵まれたのが公務員だったのです。公務員は県内の勝ち組になり、同時に革新勢力の担い手でもありました。」</i></span>
さらにショッキングなのは、著者が実際に取材するなかで体験した以下のエピソード。
沖縄における革新と保守がイデオロギーではなく、役割分担だということがよくわかります(以下引用、193頁−194頁)。
<span style="color:#6633cc;"><i>沖縄に赴任して驚いたことはたくさんありますが、その一つはあまりにもセレモニー然とした反基地の抗議行動です。例えば、普天間基地の県内移設に抗議するため、市民団体が県庁を訪ねる、といったことがよくあります。私も赴任した当初は、こうした日常的な抗議行動も取材に行っていました。ところが、何回か行くとわかるのですが、だいたい抗議するメンバーは同じ顔ぶれで、対応する職員も顔なじみです。お互い談笑したりして緊張感はまるでありません。
ところが、いざ抗議文を手渡す場面になり、テレビカメラが回りだすと「あんたねえ、沖縄の心がわかっているのかあ」みたいなことを大声で言い出し、職員サイドも神妙な顔つきに変わり「米軍にしっかり伝えます」などとうやうやしく受け取るのです。
お互いに決められたセリフをしゃべっている感じで、ドラマの撮影現場に居合わせているような錯覚にとらわれ、私は思わず「カーット」と言って茶化したい衝動に耐える努力が必要でした。わずか数分の抗議が終わると、市民団体の代表者は「あんなんでよかったかね」とか照れくさそうに言い、職員の方も「いい感じでしたよ」などと応じています。そして、抗議する方とされる方の緊張感のなさ以上に私が驚いたのは、それを取材しているマスコミの様子です。反対派にも当局にも質問することもなく、毎度おなじみのセリフのようなやり取りをメモし、抗議場面が撮れたらさっさと引き上げてしまうのです。</i></span>
結局、沖縄における反基地運動とは、普遍的な平和や反戦を求めるものではなく、被害者沖縄を理解せよと、加害者たる日本政府に対して抗議する性質のものであるとのこと。
ただ、これを茶番だと切って捨てればよいかといえばそういうものでもない。
沖縄における米軍基地の駐留負担が突出しているのは事実だし、過去において日本政府が沖縄を捨て石としてきた歴史があるのも確か。
そのような負い目があるからこそ、それを振興策という形で日本政府は沖縄に対して償ってきた。
一方で、その手厚い振興策に頼り切ってきた沖縄は、援助漬けで自立心を失い、それが沖縄の経済社会における様々な面で悪影響を生ぜしめている。
著者は、沖縄から米軍基地は無くしていくべきだ、それと引き換えに日本政府からの援助も減らして、沖縄は自立していくべきだ、と主張しています。
現在の在沖縄米軍の主力は海兵隊だそうです。
地上戦部隊である海兵隊が沖縄にいる強い理由はない。
また、普天間移設問題にしても、米国の極東における軍事戦略的な意味や、安全保障上の意義があるわけでもない、と。
今現在の普天間問題は、いったん日米間で合意され、米軍の再編成計画にすでに組み込まれた移転先を、民主党政権がこの期に及んでご破算にしようとしているかのような動きをしている点についての米側の不信感という形で現れているわけですが、上記のような視点でみるとまた見え方が違ってくる。
そのあたりのことも小沢一郎は分かった上で動いているのかもしれません(鳩山首相や福島みずほは分かっちゃいないでしょうが)。
この辺はこの本の守備範囲ではないですが、別の機会に勉強してみたいと思います。
沖縄の抱えるあらゆる問題を、沖縄の人の「気質」や、援助漬けによる自立心の欠如に結び付け過ぎのような気もします(特に、経済にかかわる問題は地理的条件とか、もっと他の要素も考慮すべきじゃないかと思う)が、沖縄に対して我々が一般的に抱いているイメージに虚構の部分が多いことを知ることができる、目から鱗の一冊であります。 -
読了!
しかし、暫くしたら内容忘れた。 -
逗子図書館で読む。期待はずれでした。面白くないわけではありません。僕の期待値が高かっただけです。それだけです。
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沖縄の現状が詳しくかか書かれた本です。
補助金付けの経済、馴れ合いの政治、自立心の欠ける県民性などなど。
沖縄の実態を知りたいなら読むべきです。 -
沖縄の問題点について学ぶには、なかなかよい本ではないかと思う。
もう少し突っ込んだ話が聞ければなおよかったかと。 -
依存体質になっている沖縄の現状。「アメとムチ」のアメ(国からのお金)を自ら断らなければならない。沖縄の魅力を活かせ。東京は目指すな。