戦略的交渉入門

  • 日経BPマーケティング(日本経済新聞出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (255ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784532112998

作品紹介・あらすじ

本書は、ハーバード・ロースクールで研究されてきた交渉学をベースに、日本人にとって役立つように内容を発展させた実践的な入門書です。立場や利害の違いを前提に、相手といかに議論し、最高の合意に導くか?無理な要求への対処法や、陥りやすい「心理のわな」まで、具体的に解説。

感想・レビュー・書評

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  • 戦術を知ることによって相手からのディフェンスに繋がるということにはなっとく。彼を知り己を知れば百戦殆うからずという言葉があるが敵を知った気になっている可能性がおおいにあるなとおもった。交渉を行う際に徹底した準備と先入観にとらわれず相手の発言を正確に捉えることに重きをおくことが大切だと気づかされた。

  • 交渉プロセスは、相手の機嫌を損ね、雰囲気を壊すこともあるものである


    ■読みながら考えたこと
     交渉相手の表面的な態度に惑わされず、冷静に、相手の言っていることや主張に注目せよ、という意見は分かる。正しいが、感情的にそこまで整理できないときもあるなぁと思う。「社会的役割、所有物、専門知識、個人的魅力」で交渉を進めようとすることを本書では「パワープレー」と呼ぶ。私の仕事の顧客の中にはこのようなパワープレー人間がいて、大変しんどい思いをしている。そのような人間とはそもそも会いたくも話したくもない。交渉が難しいのは、皆人間であり、合理的には動けず、摩擦がしんどく、感情的に辛い思いをするからである。ウェットで双方の思惑や主張が混ざり合う現場では、情的に、「そもそも話したくない」「早く終わらせたい」という気持ちが先に勝つ。
     本書は、そういうアンガーマネジメント手法を解説する本では無い。

    ■交渉の目的
    自分の利益を最大化する

    ■読みながら気になったフレーズ
    ・交渉のゴールは相手との合意を形成すること 
    ・最初から相手の意見に迎合するのは、対話ではない
    ・交渉はストレスである
     交渉前は誰もが不安である
     交渉は相手にとって嫌な気持ちを与えることもあるし、雰囲気が悪くなることもある
     →雰囲気を壊したくないからといって、安易に譲歩してはいけない
     相手の機嫌はとらなくてよい
    ・交渉は準備が大事。何を話すか、何に対してどう反論するか、どこまでは譲れて、どこからが譲れないかを定めておく
    ・相手が建設できない嫌味を言ってくるときには、まともに取り合わないようにする
    ・合意しやすいところから話始める
    ・簡単に譲歩したり、前言を撤回したりしない
    ・合意形成のテクニック
     →人ではなく、ホワイトボードを攻撃させる
    ・対決する勇気を持つ
     「グローバルな交渉では、相手からの理不尽な批判や、事実に反する説明に対しては、矛盾を追求し反論するのが常識です。これに大して、その程度のことで反論するのは「大人げない」と考えてしまう姿勢では、一方的に不利な状況に陥ります。相手がそのような批判をやめるまで反論し続ける、対決する勇気が必要な場合も出てくる

    ■読みながら、考えたこと
    ・営業職の専門スキルは「交渉」なのではないか
     ・価格交渉、顧客からの無茶な要求のはねのけ、前提のすり合わせ
     
    ・交渉でパワープレーを使うと、弊害がある
     →パワープレーを使って、合意を獲得しても、それ以降、相手から復讐を狙われる
     
    ・交渉と対話は違う。普段の人と人とのコミュニケーションが会話であるのに対し、交渉は対話である
     →交渉のコミュニケーションは、通常の会話の常識と異なる論理で進むのが当然である

  • 著者は田村次朗氏と隅田祐司氏。

    感想。今年読んだ本で最も満足度が高い本。

    備忘録。
    •交渉の結果「賢明な合意」ができているかが重要。
    •賢明な合意→当事者双方の正当な要望を可能な限り満足させ、対立する利害を公平に調整し、時間が経っても効力を失わず、また社会全体の利益を考慮に入れた解決。
    •交渉は、相手の表面的な態度ではなく.相手の発言に注目すると良い。
    •交渉は自分の正しさを証明してもしょうがない。
    •アンカリング →根拠なく相手の提示した数値を規定値にして、それに基づいて交渉が進んでしまうこと。
    •二文法のわな→YesNo質問で根拠なく駆け引きに持ち込まれること。唐突な10%の値引き要求とか。根拠を聞きなければ拒否するか、「いや、ご冗談を」とか言って話題を変える。
    •根拠として、○○が難しい、○○は厳しいとか形容詞で説明してきたら、具体的な「程度」の説明を求める。
    •無知を晒すことを恐れない。知ったかぶりは致命傷になりうる。
    •無視することも交渉のうち。
    •パワープレーヤー→立場の違いを背景に、一方的に強硬に自分の主張を押し通しに来る交渉相手。パワープレーには譲歩せず、しかし敵対はせずにまずは相手の主張を理解する。効果的なのは「あなたの提案を受け入れた場合、最終的にどのような合意になるのか教えてください」といった質問。
    •事前準備の方法。
    ①状況把握→利害関係者の状況と外部環境を整理
    ②ミッション整理→何の為に交渉して最終的にどんな問題を解決したいのか。
    ③自分の強みを探す→よくわからなかった
    ④ターゲティング→幅を持たせる
    ⑤BATANA
    •協議事項は主導的に提案。相手に協議事項を決めさせない。
    •協議事項は合意し易いところから話し合う。
    •立場の違いは解消出来ない。利害の一致する点、共通の利益を見つけて、それを掘り下げるのが賢明。
    •good cop bad cop戦略。
    •ドア イン ザ フェイス戦術→高めの球投げて、すぐ引っ込めて譲歩案を提示。
    •フット イン ザ ドア戦術→小さな要求から入り徐々にその要求を引き上げる。
    •最後通牒戦略。
    •戦略を使わず、相手が使って来た時の対処法を理解しておくべし。
    •社会的手抜き→大勢の人が課題に取り組んでいると、そのうちのかなりの人が手を抜く減少。大人数の会議はこの懸念あり。
    •悪魔の代理人→合意案を敢えて否定的に見て検証すること。
    •正論だけでは解決しない。合意には双方の利益が必要。
    •交渉中の感情を自己認識しよう。相手に対する感情を押し殺そうとすると、その感情がやがて確信に変わり、最終的に偏見に変わる。

  • かなり実践的な交渉学の本。交渉学は比較的概念的な話が多い印象だが、この本は例えば、相手が不快な対応をとってきた時の対処法など対策が散りばめられている。

  • 交渉=対立や勝負ではなく、「互いに賢明な合意を目指すための価値創造」と捉える視点は目から鱗だった。一方で、利益の最大化:Great for meを忘れがちなのが人間(特に日本人)。Good for you, Great for meの精神を忘れずにいたい。

  • 交渉における前準備の重要性、目指すべき方針(ミッション)、陥りがちな状況、心境、対応が具体的な事例とともに体系的にまとめられている良書。ビジネス上の交渉でも、日常のやりとり(ただし、会話でなく対話の場面)でも、すぐに実践できることが多く書かれている。

  • 交渉学の概要がわかる良書

  • 交渉学についていろいろな知見を引用して説明されており、今まで気づかなかった自分自身の交渉心理をにあらためて知ることになった。

  • 営業からキャリアが始まらなかったからか、意外と勉強してこなかった交渉関係。
    会社ではなく個人としてキャリアを重ねるならいずれにせよ必要だなということでまずはこのシンプルそうなものを。
    分かりやすくまとまっていた。特に準備部分をまずは模倣してみる。

  • 交渉学と呼ばれる学問について初めて知った。入門書としてとても良かった。交渉の手法、テクニック、言い回しなど、本の中で一度見たことがあるだけでも大きな違いを生むと思った。ただ実戦で生かしていくためには、演習というか実戦を重ねる必要があるだろう。

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著者プロフィール

慶應義塾大学法学部教授、ハーバード大学国際交渉学プログラム・インターナショナル・アカデミック・アドバイザー、ホワイトアンドケース法律事務所特別顧問(弁護士)、日本説得交渉学会会長、交渉学協会理事長、社会実学研究所所長。
1959年生まれ。1981年慶應義塾大学法学部卒業、1985年ハーバード・ロー・スクール修士課程修了(フルブライト奨学金、ハーバード大学奨学生)、1987年慶應義塾大学大学院法学研究科民事法学専攻博士課程。
ブルッキングス研究所研究員、アメリカ上院議員事務所客員研究員、ジョージタウン大学ロー・スクール兼任教授、慶應義塾大学総合政策学部教授を経て、1997年より現職。この間、慶應義塾大学国際センター副所長、同大学産業研究所副所長、同大学外国語学校長を務める。
専門は経済法、国際経済法、交渉学。
主要著作に、『交渉の戦略』(ダイヤモンド社、2004年)、『WTOガイドブック第2版』(弘文堂、2006年)、『企業のコンプライアンスと独占禁止法』(共著、商事法務、2006年)、『法と経済学』(共著、東京大学出版会、2007年)、『ビジュアル解説 交渉学入門』(共著、日本経済新聞出版社、2010年)、『独占禁止法 第4版』(共著、弘文堂、2013年)、『交渉学入門 ハーバード×慶應流』(中公新書ラクレ)(中央公論新社、2014年)、『戦略的交渉入門』(日経文庫)(共著、日本経済新聞出版社、2014年)、『16歳からの交渉力』(実務教育出版、2015年)、『リーダーシップを鍛える「対話学」のすゝめ』(共著、東京書籍、2021年)ほか。

「2021年 『競争法におけるカルテル規制の再構築』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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