医療イノベーションの本質―破壊的創造の処方箋 (碩学舎ビジネス双書)

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  • Amazon.co.jp ・本 (536ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784502125911

感想・レビュー・書評

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  • クリステンセンさん読むの2冊目ですが、今回はジョブ理論と比べて読むのに難儀した。細かい例とか言い換えが多くて意識してないと骨子を見失いかねないからかと思う。

    それはさておき、内容としては、医療サービスの質を向上させることとコストを下げることを進めるにはどうすべきかというのがメインのテーマで、参考になったのは、医療の捉え方について自分が持てていなかった視点を授けてもらえたところだと思います。

    自分なりの理解ですが、医療をフェーズで区分すると、疾病のメカニズムの解明および診断のフェーズ、診断後の治療のフェーズ、予防とか未病とか日常の健康管理のフェーズの3つがあって、現状はこれが整理できていないがために無駄なコストがかかっているばかりかサービスの質もいまいち。だからこれらを機能的に再構築することで課題が解決できる という話だと理解した。

    また、医師の養成においては、現状(本著が書かれた時点のアメリカ?)は研修する分野が個人の希望などに応じてばらばらであるがために持ってるスキルや習熟度もばらばらなのが問題でここを整理する必要があるということかと理解した。
    これは日本の薬剤師についても当てはまることなのか、ちょっと課題は異なる気もするが参考にしながら考えたい。

    あと、製薬ビジネスにおいて水平分業が進むだろうということかと理解したが、それは的を得ていると感じた。

    読み終わった今やはり思うのは、これからの日本でプライマリケアの重要性は大きいし増していくのではないかということです。
    うちの学生がどこまでそのことを意識しているのか、あんまり意識している人いない気がする。示唆できるよう努める。

  • 『総合病院は存続可能なビジネスモデルではない。あらゆる人のあらゆる疾患に対して診断と治療の門戸を開くと言う総合病院が訴求する価値によって、3つの異なる種類のビジネスモデル*を1つの屋根の下に抱えることになっている。
    *ソリューションショップ型事業
    *価値付加プロセス型事業
    *ネットワーク促進型事業』

  • 破壊的イノベーションのジレンマはバイブルとして通読していますが、最近医療関係の仕事をしていてそこの社長さんから勧められたのがこの本です。
    なるほどこれは医療の50年先を破壊的イノベーションと同じロジックで予言しているなと感じた次第です。
    たくさんの問題を抱える米国の医療費問題は日本の医療改革を考えるうえでも非常に参考になることが多いように思います。
    医療を儲けるためのモノにする事なく、効率的な病院経営を実現するためには、分業とコモディティ化を進めることと患者同士のネットワークによる相互扶助が欠かせないのかなぁという気がしました。
    総合医療提供による高コスト体質はどこか自己満足のようにも思え、医療費の負担を医学の進歩に還元できていないように思えました。
    日本においても、コンパニオン診断やリスク診断は今後の医療改革の重要な礎になるでしょう。

  • 破壊的イノベーションは、技術、ビジネスモデル、破壊的なバリューネットワークの3つの要素で構成される。

    第一章
    ・用途に特化した「ビジネスモデル」として、ソリューションショップ型、価値付加プロセス型、ネットワーク促進型がある

    第二章
    ・「技術」の事例として、感染症の原因となる病原菌の特定が感染症を精密医療で対応可能にし、さらにゲノム解析技術が癌を精密医療で治療可能にしようとしている
    ・精密医療化した疾患は医師ではなくNurse PractitionerやPhysician Assistantでも対応できるようになり、普及が進む

    第三章
    ・総合病院は、診断のソリューションショップ型、治療の価値付加プロセス型の2つのまったく異なる価値を訴求しようとし、各々のビジネスモデルに必要とされるものが異なるために、大きな自己矛盾を抱える(P112)
    ・機能分化し、ソリューションショップ型として「可能な限り素早く低コストで最適な診断を行うために潜在的に関連のある臓器ごとに設備や治療手順、専門職を終結させる」か、価値付加プロセス型として「手術の入院の準備段階から退院に向けたリハビリテーションまで全体のプロセスを最適に統合し低コスト高品質な医療を提供する」のどちらか(P116、118)
    ・件数が多く標準化され利益率の高い治療(間接費を多く負担できる治療)は特化型として切り出すのではなく総合病院内に留めておくことで、件数が少なく標準的ではない難解な治療の間接費を補助することはもはや不可能である。難解な治療の価格は自らの間接費負担を背負うことになり、かなり価格は高騰するが、これらが医療費のコストドライバーであれば、それを支え続けても問題は解決しない(P133、139)

    第四章
    ・簡易診療所で診察するNurse Practitioner、Physician Assistantが診療所の精密医療の分野に破壊を起こすべき
    ・生活習慣病の経過観察がネットワーク促進型ビジネスモデルの事業者へと移行する
    ・プライマリケア医は現場での安価な検査や画像診断、大量の研究成果の蓄積により高度な診断能力をもつ人工知能などのガイドによって専門医のソリューションショップ型事業を破壊する

    第五章
    ・「治療効果のわかりやすさ」と「行動変容の必要度」によって慢性疾患を分類した際に、治療効果のわかりにくい疾患は、保険者が医療提供者でもある統合型のシステムにおいて、健康維持に対して報酬が払われる場合にしか機能しない(P194)
    ・健康スコアを算出し、それを医療保険の価格設定に活用し、雇用主は健康直口座の残高予測を従業員に示す(P202)

    第六章
    ・健康維持や多数の慢性疾患の管理によって患者や医療提供者が利益を得られるような患者ネットワークや疾患管理のネットワークに頼る(P208)
    ・破壊的イノベーションは個別のビジネスではなく、バリューネットワーク(VC or SC)の次元で発生する
    ・医療の破壊的バリューネットワークの統合者は、事業統合業者、統合型定額医療提供者、雇用主のいずれか

    第七章
    ・あるべき償還制度は、「統合型医療提供者で実践される人頭払い」か、「高免責額保険と健康貯蓄口座の組み合わせ」
    ・前者は、予防サービスを提供するインセンティブが働きやすく、またNurse Practitioner、Physician Assistantの活用につながりやすい(P253)
    ・後者は保険会社における間接費の方が高くなる軽症な疾患を健康貯蓄口座からの支払いで済ませるようにすることでコストカットと軽症疾患の抑制インセンティブを与えることができ、また、健康貯蓄口座ではカバーできない高額な支払いが必要となる疾患に罹患した際は高免責額保険でのカバーが可能(P263-264)

    第八章
    ・製薬企業の解体の推進力はアウトソーシングであり、バリューチェーンの破壊をもたらす
    ・バリューチェーンの中でかつて利益を生み出していた領域(治療)に集中すると、将来、利益を生み出す領域(診断)で負ける
    ・将来、利益を生み出すのは精密医療の根源となる診断
    ・臨床試験は研究課程の一部分へ織り込まれる枠組みで構築される(よく効く患者と効かない患者の原因を探り、その解明がより精密医療を推し進める)

    第九章
    ・医療機器・診断装置は、集約化された後の分散化により、破壊的イノベーションをもたらす
    ・阻害要因は、技術が未熟、用途の読み違え、規制である
    ・破壊的な機器を現在の診療報酬に当てはめようとすると、多くは競争優位性や破壊力を喪失してしまう

    第十章
    ・専門医は協業型ソリューションショップという複数の専門領域からなるチーム環境で直感的医療を実現できるように教育される必要がある(P365)
    ・必要とされる専門医の数はより少なくなり、プライマリケア医はより多く必要とされるようになる(P365)
    ・医学教育が統合型医療提供者によって内製化される

    第十一章
    ・規制スキームは三段階を経て発展する:①業界の基盤を築くために助成する、②製品やサービスへの公平で平等なアクセスの確保と、安全性や有効性の保障のために業界内の企業を安定化させ強化する、③価格を下げるような競争を促進する(P376)
    ・①:特定の研究分野の専門家は、研究計画が既知の領域をより深く拡張するものについて好意的に評価しがちであり、研究計画が別方向へと知を広げようとしたり異なる領域へと境界線を越えるものである場合、好意的に評価しようとしない傾向にある(P378)
    ・②:安定や保証に対する公共のニーズが技術の進展によって満たされた後もルールが残り続けると、医療機関の経済的利益の保護に使用される(P389)
    ・③:規制撤廃や反トラスト訴訟によって新規参入者が規制時代の業界リーダーへ持続的な競争フィールドで対峙する場合、参入者は資金力の差から成功できず、価格低下への影響力は小さい。価格を劇的に低下させ、アクセスを改善するのは破壊的イノベーションの競争である(P400)

  • 2015年10月に実施した学生選書企画で学生の皆さんによって選ばれ購入した本です。
    通常の配架場所: 開架図書(3階)
    請求記号: 498.13//C58

    【選書理由・おすすめコメント】
    今、薬剤師業界は危機的状況にある。薬剤師は変わらなければならない。そのための知恵がこの本には詰まっている
    (薬学科)

  • クリステンセン。イノベーションのジレンマを医療業界に当てはめたもの。米国の医療業界を研究し、今後、起こるであろう変化を予言し、将来への対応策を提案する。正直、いろいろな障害があって、筆者らが予言するであろう変化は、速やかには起こらないだろう。しかし、業界を守る立場ではなく攻める立場であるなら、また、利用者の利益を考えるのであれば、予言を実現するための行動を取るべきであるし、そのために、本書から学べることは多い。
    勤務先の図書室での購入だが、職場の人がこの本を読むことはあるのだろうか、仮に読んだとして、ふーん、以上の反応で何かを学んで行動の役に立てることがあるのだろうか。

  • クリステンセン氏のイノベーション論の医療分野への適確なあてはめ、豊富な事例、非常に勉強になった。

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