- Amazon.co.jp ・本 (440ページ)
- / ISBN・EAN: 9784497219169
作品紹介・あらすじ
1867年、台湾南端の沖合でアメリカ船ローバー号が座礁し、上陸した船長以下13名が原住民族によって殺害された。本書はこの「ローバー号事件」の顚末を、台湾原住民族「生番」、アメリカ人やイギリス人などの「異人」、清朝の役人、中国からの移民である「福佬人」「客家」、福佬人と原住民族の混血「土生仔」など、さまざまな視点から、また、移民の歴史、台湾の風土なども盛り込みつつ描いたものである。
感想・レビュー・書評
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2021年 51冊目
今年の目標を半分越えて、いまのところ今年一番に面白かった。
先月から台湾で始まったドラマ『斯卡羅』の原作本です。
台湾初?の本格大河ドラマとして前評判も高く、放送が始まってからも中々話題のドラマみたいで観るのを楽しみにしてましたが、原作本が邦訳されているとのことでドラマより先に読みました。
専門用語が殆どないからか、400ページ以上のうえに上下に分かれている表記のボリュームに最初尻込みしたけれど、読み始めるのと思いの外読みやすかったです。
内容は1867年に台湾南岬沖でアメリカ帆船「ローバー号」が座礁し乗っていた14人が南湾の海岸に上陸したけれど、クアール社に住む台湾原住民族に一人を残して殺害されてしまう、「ローバー号事件」に端を発する歴史の一部を元にした小説です。
史実に基づいた歴史小説らしいのですが、この「ローバー号事件」のことは台湾の教科書にはもちろん、台湾の人も知る人が少ない事件だったらしい。
でも、そこから台湾の近代史が変わっていく重要な事件の一つだったようです。
歴史小説ではあるけれど、架空の人物「蝶妹(ティアモエ)」を主役に置くことで、様々な人々の立場や気持ちがよくわかり伝わって来て、とても壮大な素敵な物語になってます。
台湾に興味がないと中々手に取らない本かもしれないけれど、台湾好きでなくても楽しめる本だと思います。
ドラマも楽しみ!詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
九州産業大学図書館 蔵書検索(OPAC)へ↓
https://leaf.kyusan-u.ac.jp/opac/volume/1376068 -
やっと、あと何日かでドラマが始まる…!一生懸命読んだ本だからそんなに面白くないと思ったけど思い入れがある。そして私もいつのまにか、憧れの地フォルモサにいる。ここに出てきたたくさんの地名や歴史のできごとを思い出しながら車で走っていると胸がいっぱいになる。
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TEA-OPACへのリンクはこちら↓
https://opac.tenri-u.ac.jp/opac/opac_details/?bibid=BB00546429 -
『東方』誌の、下村作次郎氏の紹介がなければ、400頁もある本を読んでみようという気にはならなかっただろう。最初は複雑な民族の名称や人名が出てきて、少し読むのがつらいときもあったが、それを超えると一気に最後まで読んでしまった。近頃読んだものの中では出色の本であった。
明治初年の年に台湾の墾丁でアメリカ船ローバー号が座礁し、上陸した船長以下13名が原住民に首を刈られるという事件が起こった。本来なら、力の上回るアメリカが、一気に原住民を滅ぼしてそれで終わりとなるところだが、逆に最初に攻め入ったアメリカ人たちは、地形の複雑さと頭領の聡明さによって、原住民に振り回され、その副官が殺され引き上げざるをえなくなった。それに対し、厦門領事をしていたルジャンドルが解決に乗り込んだ。かれは南北戦争で片目を失った勇猛な軍人であったが、また政治家でもあり、清朝の軍隊を動かし、先住民たちを攻めようとしたが、一方で、先住民の若き英雄たちによって説得され、だれをも犠牲にせず、両者の間に、遭難に際しての取り決めを結ばさせた。
これはこれだけですばらしことであるが、本書はそれに一部のフィクションを入れることで、物語を生き生きとしたものにした。それは、複雑な民族間同士の結婚を描くことで、民族の融和の糸口にするだけでなく、不幸にして亡くなった両親の子どもたちを主役にすることで、民族融和をより高次に高めた。ここで大きな役割を果たすのが、その姉娘の蝶妹(ティアモエ)と弟の文杰である。蝶妹は親をけがで亡くしたことから医者を目指し、高雄の西洋人病院で医術を学ぶ。その彼女を見初めたのが、妻に不貞を働かれたルジャンドルで、蝶妹は戦争を避けることをお願いするためルジャンドルに近づこうとするし、ルジャンドルの方は、聡明な蝶妹に女を感じ、条約の結ばれる前夜に彼女を無理矢理犯してしまう。そのとき、ルジャンドルは本気であったようだが、蝶妹は好意は持ちつつも、もてあそばれたような気になり、ルジャンドルから離れて行く。そこへ現れたのが、小さいときからいっしょだったソアで、一時は買春をし、博打におぼれたソアを蝶妹は軽蔑するが、だんだんソアに気持ちを許し、やがて二人は結ばれ、子どももできる。
この物語には後日談があって、ルジャンドルは日本の台湾統治をそそのかした人物で、かれ自身日本人の妻を迎え、その子孫もたくさんいるのである。
本書では、原住民の気高さが十分に描かれると同時に、なかなか動かない清朝の官僚、軍隊の腐敗さも描かれている。こういうのは、いつも変わらないのだと思う。