金持ちは税率70%でもいいVSみんな10%課税がいい: 1時間でわかる格差社会の増税論
- 東洋経済新報社 (2014年5月23日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (174ページ)
- / ISBN・EAN: 9784492610626
作品紹介・あらすじ
金持ちからもっと税金をとるべきか。
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この、現代社会のきわめて重要なテーマについて、
4人の知性が激論を交わします。
カナダの有名な有名な討論番組、ムンク・ディベートの
書籍化。
クルーグマンとパパンドレウは、金持ち増税に賛成。
・スーパーリッチの税負担をちょっと増やしても経済に悪影響はない。
・平等な社会のほうがいろいろな面で望ましい、
というのがその根拠です。
一方のギングリッチとラッファーは、金持ち増税に反対。
・がんばって成功した人からむしりとってそうでない人に渡すような社会でいいのか。
・増税しても、金持ちは賢い弁護士をやとって抜け道を探し出す。
・増税の前に、政府を改革して効率化するべきだ、
というのがその根拠です。
税の問題は、つきつめれば、誰からとって誰に与えるか、という問題になります。
その問題を考えるときの主要な論点を網羅した本です。
感想・レビュー・書評
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以前に「信長の野望」というゲームをやった時に、むやみに税率を上げると回収率が悪くなったり、民衆が暴動を起きたりしました。そこで、税率には適正なレベルがあると感じたのを覚えています。
ある国が税率を一律に10%程度にしたら、脱税する人が減少したために反って総税収があがったという事実もあったと聞いています。
この本では、税率をどの程度にすべきかについて有名な4名が討論しています。章によっては、1対1の討論もされています。金持ちは税率が上がっても、節税する手法を多く持っているので有利だという考えは納得しました。
以下は気になったポイントです。
・超富裕層は政府に増税分を払う代わりに、会計士や弁護士を雇って節税を図ったり、投資や資本支出を減らして経済活動に悪影響を及ぼしたりするかもしれない(p11、35)
・世界の総資産のおよそ3分の1が、実質的には課税権の及ばない場所にある。2010年でいえば、オフショアカンパニーの稼ぎ出した32兆ドルが課税を免れた(p42)
・上位1%からの税収は、1980-2007年までにGDPの1.6%から3.1%へと伸張している、高額所得者からの税収が増えたから。この時期にはあらゆる人々が減税対象となった(p49)
・真に民主的な政府を作るという夢や目標を達成するには、税率を下げ、課税ベースを広げるが最良の道(p64)
・中国の成長モデルが間違っているのは、1)年金・福祉システムがない、2)新興労働者階級の賃上げ要求に応える必要あり、3)深刻な環境問題、である(p85)
・中国の成長の源泉となったのは、1)減税、2)通貨の国際決済通貨化、3)市場開放(p90)
・ウォーレンバフェットは、700万ドル税金を払ったが、彼の所得の0.06%に過ぎない(p93)
・新たに生まれる富の大半を稼ぐのは第一世代である、新奇なものを創造した人々、他人とは違うことを始めた人(p111)
・法人税、メディケアなどに関わる源泉徴収税、キャピタルゲイン課税、不動産税、関税をすべて廃止しても、12%付加価値税、12%の個人所得税を徴収すれば合計24%のGDPを確保できる(p146)
2014年8月17日作成詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
ディペートの様子をそのまま書き起こした様な文体になっている。内容はアメリカを討論しているので、それぞれの主張、反論に対し、日本はどうだろうと考えながら読むと面白いかも。
私も読む前と読んだ後で若干考えが変わった。 -
金持ちに対しての増税の是非についてのディベートを本にしたもの。論客4名のディベート、必ずしも結論が出るわけでもないが、聴衆の判断は、ディベート前後ではっきり分かれた。
それぞれ一人一人へのインタビューの形式でも補足があるので、それぞれの主張は理解しやすい。
内容以上に、ディベートのあり方の例題として読むのが面白かった。 -
ムンク・ディベートの書籍化。
クルーグマンとパパンドレウは、金持ち増税に賛成。
・スーパーリッチの税負担をちょっと増やしても経済に悪影響はない。
・平等な社会のほうがいろいろな面で望ましい。
ギングリッチとラッファーは、金持ち増税に反対。
・がんばって成功した人からむしりとってそうでない人に渡すような社会でいいのか。
・増税しても、金持ちは賢い弁護士をやとって抜け道を探し出す。
・増税の前に、政府を改革して効率化するべきだ。 -
どちらの陣営も目指すところは似ている気がします
格差が問題ではない。貧困が問題なのだ。
ほう。 -
公共政策という観点からの税制のあるべき姿をノーベル経済学賞を受賞した経済学者等、ギリシャの元首相、元米国下院議員議長、がディベート形式で明らかにする。
というかディベートの書き起こしなので非常に読みやすい。
ただ、一つ不満がある。
争いのない事実を一つずつ確定させていってから議論を進めるべき。例えば、累進課税か一律課税かという税率を定める基本方針の争いと、それぞれの税率をどの程度にすべきかという争いはまったく異なるのに、そこらへんの議論がいまいち噛み合ってなかったりする。
それでもなかなか得られるものは多かった。 -
経済書を読むと、単一の意見のみ紹介されることが多い。そのため、それぞれの経済論の思想の相違点がわかりづらい。
このようなディベート形式だと、そういった思想同士の比較ができる(かつオープンなディベートなので分かりやすい言葉で説明されている)ので助かる。
■主な論点(微妙に各陣営の主張は噛み合ってないけど)
ポール・クルーグマン
ジョージ・パパンドレウ
→政府がちゃんと仕事するためにはお金が足りない。
→じゃあどこから税金をとるか。
→一部の超富裕層の税率を少し上げるだけでも大きな効果がある。
(例:高額納税者の上位1%はキャピタルゲインをのぞいても1兆4000億ドルも稼いでおり、仮にその1%の7分の1だけでも税率上げるだけで、低所得者への食糧支援が可能)
ニュート・ギングリッチ
アーサー・ラッファー
→そもそも政府に無駄な支出が多いため、税率を積極的に上げる必要がない。
→現在の税制度は、所得の種類によって税率が違うことにより合法的な税の抜け穴が発生し、富裕層の節税が可能になっている(=歳入が減る)
→税制度を統一すべき(一括付加価値税/消費税のみとする、等) -
残り99%の人が累進課税に賛成するのは火を見るよりも明らか。貧乏人のひがみ根性。
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1時間のディベートを文字起こししたもの+各論者へのインタビュー。
やはり米国人のディベートレベルは高い。ギングリッチは相変わらず友達なくしそうな論調を推している(笑)
個人的には所得税の増税には賛成派だったが、一律課税派のフラットタックス構想については納得。
「みんな10%課税」という言葉は日本の消費税のような税負担だけでなく、キャピタルゲインや寄付金等の課税所得の対象を広げる意味も含んでいる。実際ウォーレンバフェットはキャピタルゲインも含めた総所得の0.06%しか税を負担していないことが批判されている。