巨大システム 失敗の本質: 「組織の壊滅的失敗」を防ぐたった一つの方法
- 東洋経済新報社 (2018年11月30日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (352ページ)
- / ISBN・EAN: 9784492534069
作品紹介・あらすじ
あらゆる破滅に通じるヒューマンエラーと
その解決策を導き出す
企業存続のバイブルが誕生!
フィナンシャル・タイムズとマッキンゼーが選び、35歳以下の俊英に贈る
「ブラッケン・バウアー賞」受賞作、待望の邦訳。
<本書でとりあげた「メルトダウン(組織の壊滅的失敗)」事例>
・ハッシュタグで炎上したスターバックス
・原油流出よりコーヒー流出対策を優先したBP
・フォルクスワーゲンのディーゼル排出量偽装
・スティーブ・ジョブズの「なにがなんでも着きたい病」
・ウィーン総合病院第一病棟の異常な妊産婦死亡率
・福島第一原発防波堤の高さ設定判断方法
・アカデミー賞のクレイジーな誤発表
・複雑性を悪用したエンロン
・ワシントン州矯正局の「ヤバすぎる」瞬間
・『ニューヨーク・タイムズ』のフェイクニュース
・多様性をむしろ低下させるダイバーシティ施策
・準郵便局長を破産・投獄に追い込んだシステム
・勝手に止まるジープチェロキー
・フリント市の「茶色い」水道水
・逸脱が標準化したチャレンジャーとコロンビア …etc.
<内容紹介>
●21世紀を生きるためには、電力網から浄水場、交通システム、通信ネットワーク、医療制度、法律まで、私たちの暮らしに重大な影響をおよぼす無数のシステムに頼るしかない。だがときにシステムは期待を裏切ることがある。これらの失敗や、メキシコ湾原油流出事故、福島の原子力災害、世界金融危機などの大規模なメルトダウン(組織の壊滅的失敗)でさえ、まったく違う問題に端を発したように見えて、じつはその根本原因は驚くほどよく似ている。
●本書では物語的語り口を楽しみながら、社会学、心理学、認知学、経済学の何百もの学術的研究や行動学的実験を背景とした分析のほか、重要な顧客の指示に逆らっても安全を最優先したパイロットなど、多くの魅力的な人物も紹介されている。
●複雑で結合されたシステムを運営するには、直感や自信を称え、よい知らせを聞きたがり、自分と見た目や考え方の似た人たちと過ごすことを好むといった「人間の本能や直感」に“逆らう”ことが、有効な対策を導き、問題解決のアイデアをもたらすことを示す。
●『LIFE SHIFT』のリンダ・グラットンも審査員を務めた、フィナンシャル・タイムズとマッキンゼーが選ぶ、35歳以下の俊英に贈られる「ブラッケン・バウアー賞」受賞作。
感想・レビュー・書評
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本書では交通(鉄道の運行管理、航空機の管制など)や金融、原発、巨大プラントなどの巨大システムの組織的崩壊に至るトラブル全般を「メルトダウン」と呼び、それが起きやすい状況を整理して、どう防ぐのかを様々な事例を紹介しつつ説明しています。
例に挙げた巨大システムは、効率化を追求すればするほどより巨大に、複雑、過密になっています。数多くの要素が複雑に関係しあう「複雑系」であり、かつそれぞれの要素間の繋がりに時間的余裕の少ない「密結合」である事が、メルトダウンを起こしやすいシステムの特徴であると述べています。
システムが巨大になってもオペレーター一人が把握できる視野、領域には上限があるためにシステムの運営に数多くの人が関与することになった結果、誰一人としてシステムの全体状況を正確に把握できないケースが最も危険であるとしています。
確かに航空機の管制では遥か数百㎞先の航空機の状況をモニターで監視しますが、巨大空港周辺の空域は管制官毎に細分化されていますし、管制官も自分の担当空域に関しても直接目視はできません。
原発の運転では高温・高圧・放射能で炉心の状況は各種センサーの数値を読み取ることでしか情報が得られません。この様なシステムの運営で、いかに「複雑系」をより「単純化」させ、「密結合」を「ゆるい結合」にするかというのが本書のテーマです。
「小さな兆候を見逃さない」、「多様性(ダイバーシティ)のある組織作り」、「円滑なコミュニケーション」等、システムが崩壊する前に必ず発する兆候を確実に掬い取るための組織作りの指針が具体的な例をもとに説明されています。
技術的な切り口というよりは、組織論に軸足を置いた内容です。著者の考えはオーソドックスで目新しい部分はありませんが、昨今の巨大システムのトラブルを目にして漠然と感じていた危なっかしさを的確に描き出している印象でした。 -
様々な事例から失敗の内容・原因・解決策をいろいろな観点から紹介されていて、かなり具体的に説明されているので自分が実際何かを実行するイメージがかなりつきやすかった。
参考にできそうなことが多かったので、もっと精読して1つずつ仕事や生活に取り入れたい。
ただ「たった一つの方法」ではなかったかな。 -
組織の壊滅的失敗を防ぐたった一つの方法は
・壊滅的失敗の前に必ず現れる何かしらのサインに気が付き、アクションをとる(とれる)こと
である。
そりゃそうだ。と思うかもしれないが、現実は難しい。
何かしたら前兆を発見して、
・この報告したらプロジェクトが遅延してしまうかもしれない。
・いつもとちょっと違うだけで全体はうまく動いているから報告するほどのものでもないな。
・これを報告すると上司から叱責されるかもしれない。
はたまた報告したいけれど忙しくてそんな時間がないよとか。
・そもそもどこに報告したらよいのか。などなど。
現在、システムが複雑化・高度化され全体が見極めにくくなっており、かつそのようなシステムは壊滅的失敗に陥る潜在的な欠陥を有する(そして誰も複雑さゆえに把握できない)。 -
システムが複雑になり、密度が濃くなればなるほどその失敗したときの被害は甚大になる。
本作はスターバックス、原発事故、航空機事故などの事例から巨大システムが齟齬、エラーを起こしたときに、その被害を最小限に食い止めるための方策を述べている。
それは、多様性・警告(違和感、?)を受け止めるためのマネジメント対応部署など、コストは思った以上に小さい。
また、IOTやAI全能の世界になるだろうが、全てを効率化した方がよいのか、それも改めて考えた方が良いような気がする。 -
原子力発電、航空機の運用、金融、ネットでつながった社会など、どんどん複雑になって、もはや全貌を理解できず、小さな不具合が思いもよらぬ連鎖反応をもたらし、大災害にもたらす。現代社会はそんな事例に満ちている。
本書のサブタイトルのように「たった一つの方法」とはいかないが、多様な意見をくみ取ったり、情報の流れや仕組みをシンプルにしたり、 -
☆TMI事故などに関する社会学者 Perrowの著作、Normal Accidents
○リスクを下げる「悪魔の代弁者」
Clearfieldはガーディアン、フォーブスなどに寄稿。Tilcsikはトロン大学で、専門は経営戦略論。「組織的失敗」に関するビジネススクールでのコースを持つ。