経営戦略原論

著者 :
  • 東洋経済新報社
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  • Amazon.co.jp ・本 (499ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784492534021

作品紹介・あらすじ

有史以前からまだ見ぬ近未来まで――
経営戦略の系譜をたどり、実践と理論の叡智を再編する

経営戦略論は何を探究し、科学として、実務として、どのような発展と進化を遂げてきたのか。本書は、有史以前からAI時代まで、戦略論の議論を俯瞰する壮大なストーリーである。最初に、経営戦略の定義を多面的に議論したうえで、経営戦略の歴史を紐解く。さらに、経営戦略をめぐる学術的な議論を、その原点から最新の議論に至るまでを紹介する。個々を断片的に解説するのではなく、それらの議論の変遷、流れを詳細に記述する。そして、経営戦略の未来として、IoTやAI、ビックデータなどが彩る未来の世界が、今後の経営戦略のあり方に対してどのような意味合いを持ち、それらを経営戦略立案の実務にどう落とし込んでいくべきかを考える。

実学としての経営戦略は「最適な処方箋」を、社会科学としての経営戦略は「普遍的な法則性」をそれぞれめざしてきた。本書では、この2つの異なる方向性をそれぞれ概観することで、経営戦略を理解し、実践するために必要となる根源的な知見を幅広く提供する。この両者を1つの筋道に収めたことこそが、本書の挑戦である。

感想・レビュー・書評

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  • 経営戦略のケース毎の定石と、それを実践する際の視点と課題を体系的に纏めた一冊。
    まずは経営戦略を時系列で紐解き、その成り立ちを追う。その後、前章で見た時系列に乗せて事業の外、中からの視点を展開する。さいごに、現代経営の3つのケースを取り上げ、経営戦略の各理論が新規事業、多国籍企業、情報技術それぞれにどう対応するかを確認する。

    いきなり読むにはやや重いが、経営戦略論をひと通り学習した後では各論の関連とその時代背景が掴めることで理解度が格段に深まる。

  • 「経営学とは、実学と社会科学(理論)という2つの側面を持つ学問であるが、この間には大きな断絶がある。」

    これは従来の経営学における議論でも度々指摘されてきた事実であるが、この断絶を埋める方法について言及した書物は多くなかった。本書の目的は、この両者の橋渡しをすることであり、実務家、研究者の両者にとって示唆に富むものである。

    本書の内容は、そもそも「経営学とは何か」という問いから始まり、理論としての経営学の変遷、実学としての経営学の変化、そして最後に未来の経営がどのように変化するのか、著者による主張がなされている。

    個人的に本書の価値であると考えるのは、理論変遷、実学の関心の変化などを読み解く際に、それがなぜ変化したのか、当時の社会変化をもとにその変遷のプロセスまで言及されていることである。

    個々のフレームワーク、理論に関して詳述している書物は多いものの、それらがどのように結びついているのかという部分まで踏み込んでいるものは少ない。この点においても、本書は何度も読み返したくなる一冊であると言える。

    両者の議論をカバーするため、本書は約500ページに渡る。
    やや長いという印象を受けるかもしれないが、明快な語り口で議論をされているため、冗長であるとは感じない。

    特にビジネスパーソン、研究を志す学生などにとって、両者の考え方、関心、議論の変遷を理解し、自身の立場から経営に携わる際の思考の軸となるだろう。

  • グロービスでおなじみのフレームワークを歴史的文脈の中で評価する著書。PPMなどが時代遅れであることなど、相対化できるのは非常によかった。
    とは言え、2000年以降の学説紹介が少なく、実務で使えるフレームワークは一体なんなのかが不明でモヤモヤは残った。

  • 世の中の「経営戦略」を網羅できる便利で読み応えのある一冊。辞書的にも使えてオフィスに一冊は必携。例えて言うなら経営戦略に関するサピエンス全史で過去からの大きな流れを整然とつかめるし、なぜそんな考え方が生まれそして廃れたのかについても理解できる。ところどころに入っている著者のコメントが気が利いていて勉強になる。この本を書き上げるのに5年かかったと言うが、これだけ多数の論文や書籍、学会発表を参照して分析するなら、それくらいはかかるだろうと思える大作。

  • 経営戦略学史。実務との乖離が指摘される経営学だが、事例を統合史一般化する作業には時間が必要で、実際は企業経営の環境の変化に合わせ、経営学も大いに変化している。
    ここでは、戦争の戦略における予算と目的遂行から始まり、テイラーなどの大量生産技術をどのように生かすかということで、安定した需要環境の中で経験曲線をどれだけ先に進めるかというBCGマトリックスが生まれた。オイルショックを経て単純な大量生産による業績拡張が難しくなってくると産業間の利益率の差異から、外部環境を詳細に分析するポーターのファイブフォーシズは生まれ、差別化/コストリーダーシップ/フォーカス戦略が誕生する。情報技術や国際化で
    外部環境も大きく変化して分析が間に合わなくなってくると、内部環境にフォーカスがあたり、企業内資源の異質性・固着生に注目した資源ベースの理論が台頭してくる。また同時に企業の成長段階に合わせ、多角化をどう評価運営していくかという事業戦略を超えた全社戦略も同様に発展していく、そこでバランスとスコアカードによる自社評価がされ、人事、財務、といった機能別の戦略も同様。また実行の度合いを担保することも当然求められており、KPI管理などで対応するが、この対応は戦略と従業員の意識のアラインメントが重要である。
    現在では、新興企業に対し、外部内部の詳細な分析をしている余裕はないので、はしりながら,A/Bテストのような実験をしつつ戦術の完成度を高めていく仮説思考計画法が出てきた。

  • 戦略の理論と実践の橋渡しをしてくれる一冊。
    さまざまな戦略フレームワークが生まれた背景と文脈を理解しながら、それぞれの活用法と限界を知れる。

    また、実践においては、大企業からベンチャー、そして、グローバル展開に渡るまで、その局面におうじて使うべき考え方がまったく違うことを体系的に学ぶことができる。

  • 経営とその周辺領域との関係性にも注意しながら、古典的理論・実践から現在の複雑化した理論・実践まで触れて説明されている。マネジメントや数字の管理においては自動化・最適化は可能。だが、結局戦略面の最高の選択は分からないので、トップがビジョンを語ってメンバーの士気を上げて組織全体で頑張るみたいなことかなと。その頑張り方のパターンももちろんたくさん触れられている。

  • 経営戦略について、社会科学としての普遍的な法則性の面と、実学としての最適な処方箋の面と両面で書かれている。経営戦略が作られてきた、変わってきた歴史から学べる点が勉強になる。
    戦略策定においては、商品や業界のニーズの変化の歴史を追っていくことが大事であるが、その中で作られてきた経営戦略の歴史も理解できるという点で有効であると考える。

    学びメモ
    ・現代の戦略は必ずしも人間の完全合理的な判断を前提にすることもなく、外部要因と内部要因の論理的な検討のみで編み出されるものではない。人間的な要素が盛り込まれ、感情などの不確定性の高い要因が影響を与えることもある。
    ・戦略は、実行される前に計画立案されるものであるとも限らず、実行の中から次第に形作られるものでもある。創発的戦略。
    ・プロイとは戦略を目の前に直面する競争相手とのやり取りの中から決定していく戦略策定のあり方、読み合いのゲームにおいて意思決定者のバックグラウンドや突発的な要因だ方向性が左右されることもある。
    ・一つの産業内にも、その行動特性ごとに異なる企業の集団があり、そのグループは別の競争構造に置かれる。同じ産業構造の中でも企業のポジショニングによってパフォーマンスは変わる。特定のポジションを選択し移動障壁を作ることで優位性を見出すことが大事。
    ・参入を試みる企業が産業内やグループ内の企業と同じ戦略を実行することができない状態を作る必要がある。
    ・BSCは、財務、顧客、業務プロセス、学習と組織の視点に注目し、その作成の過程を通じて戦略の方向性を伝達する、戦略は連続した手続の一つのステップである、戦略が財務の視点のみならず、顧客の視点、内部ビジネスプロセスの視点、学習と成長の視点と論理的に因果関係が接続される。
    ・リーンスタートアップの三つの要点、事業モデルに紐づくし仮定や前提条件を構造化して理解する、創業期においてはその検証へ中略する、顧客を巻き込み市場で行う。ビジネスモデルキャンパスという戦略フレームワークを活用すると、前提条件を設定しなければならない要因について整理できる。
    ・ビジネスモデルの探索の段階が目指すものとしてプロダクトマーケットフィットを目指すのが大事だが、その構造を発見するために、プロブレムソリューションフィットを見出すのが定石。

  • <シラバス掲載参考図書一覧は、図書館HPから確認できます>https://libipu.iwate-pu.ac.jp/drupal/ja/node/190

  • そもそもが難しいテーマで、内容を全て理解し切るには、私の能力が足りてないところがあったが、重い内容の割りには、比較的平易な文章表現で構成されていたので、読み切ることができた。
    経営戦略の立案も実行も(今のところ)人間が行うものであり、人間の持つ不確実性、非合理性の下で経営戦略を如何に実践していくべきか?というところが印象的であった。

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著者プロフィール

琴坂 将広(コトサカ マサヒロ)
慶應義塾大学総合政策学部准教授
慶應義塾大学環境情報学部卒業。博士(経営学・オックスフォード大学)。小売・ITの領域における3社の起業を経験後、マッキンゼー・アンド・カンパニーの東京およびフランクフルト支社に勤務。北欧、西欧、中東、アジアの9カ国において新規事業、経営戦略策定にかかわる。オックスフォード大学サイード・ビジネススクール、立命館大学経営学部を経て、2016年より現職。上場企業を含む数社の社外役員・顧問を兼務。専門は国際経営と経営戦略。主な著作に『経営戦略原論』(東洋経済新報社)、『領域を超える経営学』(ダイヤモンド社)、共同執筆にJapanese Management in Evolution New Directions, Breaks, and Emerging Practices(Routledge)、East Asian Capitalism: Diversity, Continuity, and Change(Oxford University Press)、『STARTUP』(NewsPicksパブリッシング)など。

「2020年 『VUCA時代のグローバル戦略』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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