熱海の奇跡

著者 :
  • 東洋経済新報社
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  • Amazon.co.jp ・本 (221ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784492503010

作品紹介・あらすじ

大前研一氏、木下斉氏推薦!

「衰退した観光地」の代名詞となっていた熱海はなぜ再生できたのか

Uターンしゼロから街の再生に取り組んだ著者を通して見えてくる、人口減少時代の魅力ある地域づくりのあり方。


◆推薦の言葉

大前研一

「単年度予算で動く行政を民間が補完して町の魅力作りを長期的に推進する格好のモデル。著者が代表を務め、熱海を活性化しているNPO法人atamistaの実績から多くのヒントが得られる」

木下 斉

「この本は地元に戻り、仲間と小さな事業を立ち上げ、成長させることが、まちの再生に繋がることを教えてくれる。読み終えたら、多くの人が挑戦したくてウズウズするだろう刺激に満ちた一冊だ」


◆著者の言葉

この本では、熱海で私たちが培った経験を、可能な限りお話ししました。
ビジネスの手法でまちづくりをすることは、熱海だけに使えるやり方というのではなく、日本全国どこの地域でも使えると思うのです。
なぜなら、かつての熱海の衰退は、日本全国の地方の衰退と同じ構造で起こったからです。(プロローグより)
                                                 

感想・レビュー・書評

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  • かつて日帰り温泉地や社員旅行(あるいは企業保養所)のメッカとして栄えた熱海だが、今の熱海のイメージは、少ない土地に寂れた温泉旅館や土産物屋、くすんだ夜の飲み屋が密集し、以外と割高で満足度は低い、こんなところではないだろうか。

    そんな衰退の町、熱海で生まれた新しい動き、「リノベーションまちづくり」を紹介したのが本書。木下斉氏の「稼ぐまちが地方を変える」にも通じる内容。2018刊行。

    著者によれば、熱海は人口減少と高齢化が全国平均より50年は進んだ町というから驚きだ(別荘も含めると、実質の空き家率は50%を超えるという)。放置すれば、早晩町は消滅してしまう勢いだ。

    著者は、行政に頼らずビジネスの手法で熱海を再生させようと、様々な取り組みを行ってきた。地元の人が地元を知るための「あたみナビ」、農業体験イベント「チーム里庭」、地元の人が地元を楽しむツアー「オンたま」、エリア一体型ファシリティ・マネジメント、空き店舗をリノベーションしたカフェ、リノベーションした空き店舗のサブリース業、ゲストハウス(交流型の素泊まり宿)「MARUYA」、熱海銀座を歩行者天国にして定期開催する「海辺のあたみマルシェ」、コワーキングスペース「naedoco」、シェア店舗、シェアハウスの計画等だ。これらの事業から、著者の熱海に対する熱い想いが伝わってくる。

    一つ一つの事業は必ずしも成功していないようだが、熱海の住人の多くが、著者らの活動をきっかけとして自ら変わろうという意識を持ち始めた、というのは大きいんだろうなあ。地元民が地元の良さを知るための取り組み(「あたみナビ」や「オンたま」)が、特に素晴らしい企画だと思った。

    コロナ禍でどの観光地も甚大な被害を被っていると思うが、今は我慢の時。アフターコロナで熱海が再生し、成功モデルになることを期待したい。

  • 街の再生、というと官や行政の仕事?と思いがち、でもそれでは長続きしない、民間の力で自ら経済的に回せる力を持って街が活性化し、それをバックアップする官によって生きてくるのだ。
    その都市に対する熱い想い、若年層の行動など面白く読めた。同時にそれを支えてくれる年輩者の動き。
    日本人、つい、自虐的に、うちには何にもないですよ、と言いがち、でもそれがいかに魅力を失う行為であるか、ということも印象的。

  • 民間からの地方創生に関心があった読んだ。参考になる点が多かった

  • 単発的なものではなく、ビジネスとして利益をあげて持続可能なまちづくりをしようとする観点には共感できました。
    街の歴史と現状を知り、本質的な問題をつかむ
    街にとってのお客さんの変化を知る
    旅行で何が体験できるかを問われる時代
    人々を集める重要な要素は、街そのものの魅力であると認識する
    団体客による宴会歓待型から個人や家族による体験・交流型に変化した流れをつかむ
    これからの地方における観光は観光客数よりも観光消費総額を重視すべき
    民家からのまちづくりはビジネスの手法を使って社会を変える手段
    民間からのまちづくりの熱海を変えようと決意
    違和感や問題意識を大切にする
    自らが没頭できることを仕事にする
    民間が利益をあげてこそ持続可能なまちづくりになる
    何が街の課題なのか、何が原因なのか、常に考えて仕事をする
    まちづくりは「街のファンをつくること」から始まる
    地元の人の満足度を上げることで、観光客の満足度を向上させる
    まずすぐできること、やれることから始めると次の打ち手が見えてくる
    チーム里庭により、アクション起こすと顧客や仲間と出会えた
    地元の人が地元を楽しむツアー「オンたま」により熱海ファンが生まれた
    意識改革によって街のイメージは確実にアップした
    オンたまに参加した人の満足度の高さが熱海のイメージアップに連動している
    街を再生するには「何かにチャレンジしたいと思える場所」になること
    チャレンジを支える、ゆるやかなつながりをつくることで、チャレンジは連鎖する
    問題解決と稼ぐことの両輪あってこそ民間によるまちづくりは成り立つ
    江戸時代の矢守の現代版として、エリアを変える点を打つ
    再開発よりもスピードも速く費用対効果も高い、リノベーションまちづくり
    新しいプレーヤーが新しい使い方をするエリアリノベーションで街を再生
    街全体を会社と見立てて、まずはコストカットにより、街の投資原資を確保する
    まちづくりの目的はエリア価値の向上。それはすなわち不動産価値の向上
    街を活性化して最終的に利益を受け取るのは不動産オーナー。だからこそ、まちづくりとは不動産オーナーこそがすべき仕事
    補助金には悪循環のリスクがある
    変化の兆しをつかみ取り街に新しいコンテンツを生み出し、新しい使い手を呼び込む
    志ある不動産オーナーとの出会い
    街なかに面白い人たちが集まる拠点をつくる
    事業を成功させるためには、初期投資を適切にできるだけ下げる
    成功のためには使えるネットワークは徹底活用する
    商売は顧客と向き合い、数字と向き合い、スタッフと向き合い経営する
    面白いと思えるお店が一軒あると街に変化が生まれる
    利益の出ない事業は失敗と認めて潔くやめる
    街に足りない機能を見出し、それを事業化する
    ゲストハウスのファンよりも街のファンをつくる
    ゲストハウスのお客さんが自然と街との接点をもつよう企画する
    クラウドファンディング、DIY、出資、事業に参加する人を増やし巻き込む
    事業のコンセプトと顧客像を明確に描く
    街にいる人たちが楽しそうにしている姿こそが街のディスプレイ
    街に企業が生まれるために、企業のゼロ次ステップを用意する
    街を変えるためには、合意形成よりも、見て、感じてから変わってもらうこと
    持続可能な事業をつくるには行政のハコモノよりも民間主導の事業化が有効
    本当に街の再生を実現するには、多くの企業の誕生が必要
    スモールエリアを設定し、そのエリアのエリアビジョンを描く
    エリア内外の巻き込みたい人とビジョンを共有する場をつくる
    ビジョンを実現するための民間自立のプロジェクトを次々とエリアに投入する
    街の変化を観察し、自らの役割を変化させる
    自ら仕事や暮らしをつくっていくことで街を変えていく中心はクリエイティブな30代
    地域と起業家をつなぐ役割の現代版家守がいてこそWin-Winの関係となる
    リノベーションスクールで街の不動産オーナーがリスクを取って動き出した
    民間マインドのある行政とパブリックマインドをもった民間が連携し変化が加速
    起業家が生まれ育つ環境があってこそ、企業の連鎖は起こる
    熱海市の財政危機宣言による危機の共有と、戦略の共有があって変化は始まった
    熱海再生の裏にはプレーヤーの世代交代と自らを改革してきた街の人たちの努力があった
    上の世代が新しい世代への世代交代を後押しした
    まちづくりに成功やゴールはない。常に先を見据えて今とれる打ち手を打つ

  • 熱海だけではなくいろんな場所で参考になりそうな知恵がたっぷり詰まった本でした。1つ1つの事業が成功したら、その成功に満足することなくより熱海の役にたつ事業は何なのかを考え続ける姿はすごいと思いました。
    熱海銀座のMARUYAさんには是非泊まりに行ってみたいです。

  • ビジネスの手法を用いて、民間NPO法人が中心になって街が活性化し、V字回復したと言われる熱海。その中心となった人物による著。街の中心部をコアに区切って、リノベーションまちづくりの手法で取り組んだのがミソ。

  • いろんな地域に応用できる知見がたくさんありました!

  • 以下3点が勉強になった点。

    ①現代版家守
    有給資産=古い家など
    大地主がいない
    土地が細分化
    複数の土地保有者にまたぎり、エリアを意識し、エリアマネジメントしていくことが必要。

    現代版家守と言うだけで、少し惹かれてしまった。
    これはマーケティング的にも面白い。
    歴史との関連も有り、ただ意欲ある若者をリノベーションで出店してくださいとか言って集めるより、刺さる層が広そう。

    ②補助金にたよっていると、まちづくりは悪循環に陥る危険がある。
    補助金を使うと、行政が決めた制約の中でしか事業ができない。制約があると発想が縛られて面白みのない事業になりやすい、上手くいかなかったときに臨機応変にヒトモノカネを集めることができないので対応もしづらい。すると、ますます補助金頼みになって、事業の制約がもっときびしくなっていく。

    補助金頼みがなぜ悪循環を生み出すのか。
    この文章はそれを的確に表現していると思い、メモ。

    ③手元にある資源で事業に取り組み利益を出して、さらに投資し続けるというサイクルを作るのが地域活性化の基本

    ②と関連有りですね。
    クラファンとかで資金調達やっちゃえばとか思ってたんですが、自分の思想反映が徹底できなくなる可能性がある。という点を考えていなかった。
    成功事例を作り、自分の方法で稼ぐことが出来ると周りに証明できれば、有利な条件で資金調達可能になる。このSTEPは重要。


    この手の本の著者は、タイプが似ている。
    スモールスタートの原則がエピローグにまた書いてあり笑ってしまった。
    ただ、その思考はとても大切なので、自分に向けられた言葉だと思って受け止めたい。

  • <目次>
    プロローグ
    第1章 廃墟のようになった熱海
    第2章 民間からのまちづくりで熱海を再生しよう
    第3章 まちづくりは「街のファンをつくること」から
    第4章 街を再生するリノベーションまちづくり
    第5章 一つのプロジェクトで変化は起き始める
    第6章 街のファンはビジネスからも生まれる
    第7章 事業が次々と生まれ育つ環境をつくる
    第8章 ビジョンを描き「街」を変える
    第9章 多様なプレイヤーがこれからの熱海をつくる
    エピローグ

    <メモ>
    (コンサルティング経験で)人の意識を直にカエルことは難しいけれど、ハードを変えることで、人の行動を変え、行動が変わることで人々の意識が変わることを、学ばせてもらいました。(47)
    エリア一体型ファシリティ・マネジメント(97)
    補助金には悪循環のリスクがある(101)
    CAFE RoCAは成功事例でもなんでもないです。失敗事例です。これを認めることはすんなりとは受け入れられなかったけど、そして、関わる人たち、スタッフたちのことを思うと本当はこんなこと書きたくない。でも、失敗は失敗。そこを見つめないと次にいけない。何が失敗だったかというと、CAFE RoCAは利益を出せなかった。黒字にできなかった。(127)
    これまでの里庭、オンたま、CAFE RoCA、後述する海辺のあたみマルシェの取り組みを通して一貫してやってきたことは、熱海の外から人を呼び込むことではありませんでした。まずは、既に熱海に住んでいる人たちが地元のファンになり、地元活性化の熱を上げていこうというものでした。(132)
    海外からのお客さんが少ない最大の理由は、外国人の方への認知度の低さと、海外の方が泊まれるような施設が少ないことがあります。一人で宿泊できる施設も少なく、特にバックパッカーなどが安く気軽に宿泊できる施設は、熱海には少ないということでした。(147)
    街にいる人たちが楽しそうにしている姿こそが、街のディスプレイ、そう思いました。(153)
    道路という普段活用されていない公共空間を、人の過ごす場所として活用すること(157)
    「あたみマルシェ」への参加の条件は、主に、「手づくり」、「ローカル」、「商売としてのチャレンジ」の三つでした。(158)(中古や趣味はお断り)
    何かやりたい人にとってはまだまだ余白も多い、面白い街だと感じます。(172)
    熱海では、上の世代が新しい世代を邪魔するのではなく、むしろバックアップする方向へ力を貸してくれた方々がいたことで、世代交代が上手くいったわけです。(208)
    一般社団法人日本まちやど協会も発足させました。(212)
    2030年、熱海は独立する。(中略)日本の各地もまた独立を果たし、江戸の頃の藩のように自立した存在として、互いに高めあっていくようになればいいというイメージを持っています。

    2020.02.17 朝活読書サロン
    http://naokis.doorblog.jp/archives/reading_salon_150.html
    2020.02.27 読書開始
    2020.03.01 読了
    2020.03.18 品川読書会
    http://naokis.doorblog.jp/archives/shinagawa_reading_comm_31.html

  • 近年の熱海の盛り上がりを見てどのようにしてそのようになったのか気になったためこの本を手にした。
    町おこしはその町への愛や核のあるコンセプトがとても重要であると感じた。大きな目標とちいさな一歩着実に成果を出しながら成功してきたことがわかった。時系列で書かれていて一歩一歩の歩みがわかった。
    この本で紹介されていた綺麗な施設に今度行ってみたい思った。

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著者プロフィール

市来 広一郎(イチキ コウイチロウ)
株式会社machimori代表取締役。NPO法人atamista代表理事。一般社団法人熱海市観光協会理事。一般社団法人ジャパン・オンパク理事。一般社団法人日本まちやど協会理事。1979年静岡県熱海市生まれ。東京都立大学(現首都大学東京)大学院理学研究科(物理学)修了後、IBMビジネスコンサルティングサービス(現日本IBM)に勤務。2007年熱海にUターンし、ゼロから地域づくりに取り組み始める。遊休農地再生のための活動「チーム里庭」、地域資源を活用した体験交流プログラムを集めた「熱海温泉玉手箱(オンたま)」を熱海市観光協会、熱海市と協働で開始、プロデュース。2011年民間まちづくり会社machimoriを設立、2012年カフェ「CAFE RoCA」、2015年ゲストハウス「guest house MARUYA」をオープンし運営。2013年より静岡県、熱海市などと協働でリノベーションスクール@熱海も開催している。2016年からは熱海市と協働で「ATAMI2030会議」や、創業支援プログラム「99℃」なども企画運営している。


「2018年 『熱海の奇跡』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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