「追われる国」の経済学: ポスト・グローバリズムの処方箋

  • 東洋経済新報社
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  • Amazon.co.jp ・本 (656ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784492444511

作品紹介・あらすじ

なぜ長期停滞を余儀なくされるのか。なぜ経済学の理論が通用しないのか。
縮小する日本、停滞する世界を救う全く新しい経済理論。

バーナンキやサマーズらが激賞、世界的エコノミストによる緊急提言書。


【絶賛の声、続々!】

「リチャード・クー氏は過去20年間の景気循環に対して最もすぐれたアイデアを持っている。本書はその視点を様々な経済分野の長期的な課題へ応用したものだ。先進国がこれからも持続的な力強い経済成長を達成できるかどうか不安に感じる人々にとって、大いに参考になる」
――ローレンス・サマーズ(元米財務長官)

「リチャード・クー氏は、グローバル経済の危機を正確に解明する画期的な枠組みを発見したという点で、現代の最も注目されるエコノミストである。彼の発見が革命的であるのは、これまでの経済理論を根底から覆しただけでなく、それを完成させたからである。政策立案者がこの傑出した本のエッセンスを理解し、直ちに行動に移るならば、私たちの生活は直ちに安定し安心できるものになるだろう」
――リチャード・ダンカン(『ドルの危機』の著者)

「本書は、今世紀に入ってから現在までの経済学の優れた書籍として、ピケティの『21世紀の資本』と並び称される存在になるだろう」
――エドワード・フルブルック(世界経済学会の創設者)

「グローバル化に強い興味を持つ人なら誰でも一読して欲しい本だ。洞察力、分析力、独創性、政策論争の醍醐味、それに著者の人間的魅力を同時に味わうことができる」
――ジェフリー・ガーテン(イェール大学経営大学院学部長兼名誉教授)

感想・レビュー・書評

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  • 合成の誤謬、バランスシート不況、資本移動の自由化、極右派の台頭要因、など勉強になる考え方が沢山あった。

  • 個人的に全面賛成というわけではありませんが、積極的財政政策の中にはちょっと無理がありすぎる主張の人も多い中で、バランスシート不況論は説得力があると思いました。
    600ページを超える大作ではありますが、丁寧にわかりやすく解説していてオススメしたい本です。
    公共事業に関しては日本やアメリカでインフラの老朽化が問題になりつつあるので、それなりに有効ではないかと思います。近年の自然災害の多さを考えると整備は必要でしょう。
    とはいえ旧来の公共事業的なものが今後有効なのかという視点も持つ必要があるかなと。
    投資と国の金融政策は切っても切れない関係ですので、マクロ経済とかの面も含めて知識を高めてくれる良書だと思います。

  • 『#「追われる国」の経済学』

    ほぼ日書評 Day306

    昨日アップの『ルーズベルト…』に続き、こらも600頁に及ぶ大著である。全編を精緻に理解できた自信は全くないが、自分が理解した要点を列挙してみる。比喩の大半は評者によるもので、それが妥当性を欠くものである場合は、すべて評者の責任によるものであることを最初ならお断りする。

    本書のタイトル「追われる国」の意味。国家の発展を謳歌できる "経済の青春" とでも言うべき時期を過ぎた国家は「追われる国(本文中では略して被追国)」という体力の衰えを感ずる "中高年" の地位に追いやられる。それはある意味、構造的なものであり、成長期に上手くいった政策を成熟から衰退期に適用しようとしても、若き日に戻ることはできないという前提からスタートする。
    ※この後戻りできない分水嶺を本書ではルイスの転換点(LTP)と呼び、再頻出単語と思われる。

    バランスシート不況(バランスシートを毀損してしまっているから追加投資のための借入ができない)ことに加えて、国内に支払利息に見合うだけの投資案件が存在しないことが先進国に共通する不況の要因。従来の経済学ではカバーできない領域であるが、それはこれまでの理論が誤っているわけではなく、きれいなバランスシートかつ魅力的な国内投資案件にあふれる市場という前提でのみ成り立つ理論だったということ。

    かつて経済の波は、国家や地域によって時差が生ずることが多かったが、昨今ではそれが一瞬にして全世界に波及する。ほんの数年、いや数ヶ月の先行や遅れによって、致命的な影響受ける国が発生してしまう。それが近年の経済変動の特徴だ。複数国家で通過を統一するという壮大な実験をおこなったユーロ圏では、複数の国がこの悲惨なトラップにひっかかった。

    歴史を振り返るに、中高年化した国が若さを取り戻すきっかけは、戦争によることが多かった。政府という「最後の借り手」がなりふり構わず、生産力増強策(そこで作られるものの大半が武器・兵器であり、きわめて短期的に破壊されてしまうものであっても)を採択することで、いわば血管の詰まりを取り、細胞を再活性化させることができるからだ。心理的に拒絶したくなる指摘だが、そうした大規模な財政出動なく、ヘリコプターマネーに代表される単なる量的緩和策は、早晩、その意味するところを国民に見限られる、いわば薬漬けのような状況に陥る。

    この財政出動を最も効果的に実行した例のひとつがヒトラーだ。第一次大戦からの復興という "青春期" 的な背景もあるが、それに先行する政権ではなし得なかったアウトバーン建設に代表される政策遂行が大きな成果をあげ、結果として再軍備余力を蓄積することとなった。
    無論、ホロコーストをはじめとするヒトラーの蛮行は改めて非難されるべきだが、同政権の経済政策は同時代の欧州各国の停滞と比較すると、その著しい成功に着目すべきであるとする。
    ただ、現代の「平和な」時代で戦争に変わるモチベータをどこに求めるべきかは難しい問いだ。武器商人のみが栄える代理戦争の繰り返しは避けねばならない。

    p.428から語られる「繰延税金資産」問題、その時々の報道に大きな違和感を感じていたが、なるほどこういうことだったのか(一言でいえば竹中金融大臣が素人だった)と、大変腑に落ちた。一方では不良債権償却(貸倒引当)を求めつつ、他方では税務当局がこれを否認するという矛盾の妥協点としての日本特有の繰延資産勘定の背景を同大臣が知らなかったという解説である。

    最後に一点注文をつけるならば、銀行システムに関する章は、(本書が2018年刊であることを考慮するとやや高望みかもしれないが)ブロックチェーン技術に基づく従来型金融機関を介さない新たな金融市場の展望に触れて欲しかった気もする。

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  • 経済学の読み物としても面白かった。
    本書の要旨は明快で
    ① 今日はバランスシート不況に陥っている
    ② 先進国は資本収支率が発展途上国より低いため、「追われる国」という追い上げを受けている(これを実現したのはIT技術で日本をかわしたアメリカ)
    ③ 民間部門・家計部門で貯蓄超過している以上、政府部門がその貯蓄を使う(端的に言えば財政出動)しないと、経済は収縮のスパイラルに陥る。

  • 経済を専門としてるわけではないので、難しいところもありましたが、被追国の問題点や対処方法がロジカルに説明されてとても面白く読めました。
    政治家の方には、桜問題などやっていないで、しっかり読んでもらいたいと思います。

    しかし、本書で述べられているケース3・4のフェーズから、1・2に戻るのは、いろんな意味でかなりパワーが必要となりそうです。

  • MMT現代貨幣理論入門を読んでいたので、本書はとても興味深い内容が盛りだくさんでした。、

    どこかのお偉いさんが構築した学派・技術というのが、必ずしも世の真理ではなりということ。
    特に経済学のように「人間の心理行動に影響を受ける」若い学派は、完全に信じきってはいけない。常に新しい学びと改善が必要だということが判った。

    例えば経済学の基本として、民間企業は利益の最大化を目指して行動する。
    だから金融正確で金利を下げれば、民間は資金調達(債務)して利益の最大化を測るという考えが根底にあります。しかし、先進国のほとんどがゼロ金利&量的緩和を行っても、資金調達は増えなかった。

    なぜなら既存の経済学の対応方法は資本収益の向上とバランスシート不況を区別されておらず、金融政策は後者には効かないというのが著者の主張である。

    日本や欧州はバランスシート不況なので、金融政策では財政政策が必要とされています。

    つまり借金に苦しんだ民間は、どれだけ低金利で金を貸してくれるといっても借りようとしないということ。

    米国が過去20年に大きな経済成長を成し遂げたのも、民間努力以上に適切な国家政策が功を成したと考えるのが正しく、その国家の舵取りがいつまでも続くかは不明っぽいですね。

    追われる側となった立場の国がとるべく政策に関しては、著者の問題提起・分析は腑に落ちるものの、対応案がはたして正しいのかは判らなかった。

    しかし既存の経済学では説明できない資本自由化の流れから発生した保護主義誕生の仕組みも、幅広く網羅された一冊でした。

    かなり殴り書きのレビューになってしまった(笑)

  • 伝統的なマクロ経済学の基礎から始まり、それを含んだ形で著者の理論を展開しているため非常にわかりやすい。
    この理論を用いると現在の国際経済を簡潔に説明することができる。著者はその上で、日米欧の不況の解決策とその効果を実施例と共に提示している。

    FRBはこの理論のもとで経済政策を行なっているようで、現にアメリカの経済は日欧よりも順調である。

    この点で根拠も十分であり、少なくとも現状成果を上げていない伝統的な経済理論と比べれば信頼に足ると思われる。

    おそらく現在最も有力な経済理論をわかりやすく解説している。とても良い本。

  • 600ページ超の大著だけど、それを感じさせない読みやすさだった。一読を進めたい良書。

    【以下ネタバレあり】

    民間部門が利潤最大化を目指していることを前提とした今の経済分析・政策論議は誤りであり、人々が債務最小化を行なっている現状を踏まえた議論が必要だ。

    本書の主張を一言に要約すると、以上のようになる。

    2008年の世界金融危機(GFC)や、日本におけるバブル崩壊よりも前の経済は、資金の借り手が豊富で、物価面ではインフレ体質だったので、金融政策が有効だった。
    しかし、GFC・バブル崩壊以後はバランスシート不況になっており、政府が「最後の借り手」として減少した民間部門の資金需要を補わなければならない。

    また、先進国では、自国よりも新興国の資本収益率が高い状態となっているため、企業は国内ではなく海外での投資を小なうようになっていることも、国内での資金需要減少に拍車をかけている。

    「追われる国」が直面する、バランスシート不況と資本収益率の低迷という問題に対しては、財政政策で前者に対処しながら、構造改革で後者を解決するのが望ましい政策だ。しかし、日欧では財政健全化のプレッシャーが財政政策を困難位にしている。


    本書のこうした主張は、既存の経済学や、今の政策のあり方に疑問を投げかけるもので、説得力も感じられ、とても興味深かった。こうした挑戦的な主張をするには、勇気もいることだろう。

    本当に財政政策を拡大させて良いものなのか、素人の僕にはよくわからないけど、それを脇においても、良い本だった。

    少し気になるのは、なんとなく主張が強引に感じられる箇所もあることと、同じような内容が何度も何度も繰り返されること。
    後者については、重複を排除すれば50Pくらいはページ数が減るかもしれないと思う一方で、これだけ丁寧に主張を繰り返してくれるので、筆者の主張したいことがわかりやすいので、むしろ良い方向に作用していると思う。

  • リチャード・クー氏の書籍は通読しているが、本書は、これまでの主張に加え、バランスシートがキレイになった後の状況についての解説が新たに加わったこと、更にその処方箋、そして貿易不均衡に関する資本移動の制約提言が加味された。バブル崩壊以降、各エコノミストの主張(構造改革派、リフレ論者など)を追っかけてきたが、結局クー氏の主張が一番正しかったと証明された。

  • マクロ経済学の現実への適用について理解できました。様々な識者の意見の正確性について評価できるようになったように思います。それが正しいかについては、生涯をかけて検証してまいります。

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著者プロフィール

リチャード・クー
野村総合研究所 主席研究員、チーフエコノミスト
1954年、神戸市生まれ。76年カリフォルニア大学バークレー校卒業。ピアノ・メーカーに勤務した後、ジョンズ・ホプキンス大学大学院で経済学を専攻し、FRBのドクター・フェローを経て、博士課程修了。81年、米国の中央銀行であるニューヨーク連邦準備銀行に入行。国際調査部、外国局などでエコノミストとして活躍し、84年、野村総合研究所に入社。現在、同研究所研究創発センター主席研究員。


「2019年 『「追われる国」の経済学』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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