世界でいちばん貧しくて美しいオーケストラ: エル・システマの奇跡

  • 東洋経済新報社
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  • Amazon.co.jp ・本 (276ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784492443996

作品紹介・あらすじ

「100年に1人の天才」「クラシック界のスーパースター」と絶賛される若き天才指揮者、グスターボ・ドゥダメル。彼を育て世界に送り出したオーケストラは、ベネズエラの貧困層から生まれたシモン・ボリバル交響楽団である。
1975年、スラムの子どもたちに合奏や合唱を学ぶ場を提供することで貧困・暴力・犯罪から救い出そうと、経済学者ホセ・アントニオ・アブレウの主導ではじまった音楽教育プログラム「エル・システマ」。その取り組みは、やがてこの世に「世界でいちばん貧しい演奏家によるとてつもなく快活で美しいオーケストラ」出現させ、一流の音楽家を次々と輩出し、いまやその取り組みはベネズエラを飛び出し、日本を含む30か国に広がっている。
この秋に来日しミラノ「スカラ座」のタクトを振るドゥダメル、ノーベル平和賞候補ともされる“社会革命家”アブレウ、そして「エル・システマの奇跡」の全貌を知る一冊。全米でも激賞された好著です。

感想・レビュー・書評

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  • ぼくはもともとこの手の話に弱いのだけれど、気に入ったのはそのせいばかりではない。「音楽は人を救う力があります」みたいな、わかったようなわからないようなお題目ではなく、お涙頂戴の感動ポルノでもなく、なるほどそりゃそうだな、と思わせる説得力のためだ。

    子供たちに居場所を与え、音楽という目的を与え、目的を同じくする仲間を与え、練習すれば上手になるという努力と結果の因果関係を教え、さらに自分たちがほかの誰かに喜びを与えることができるという事実を知ること。そりゃがんばっちゃうよな、と思う。
    たぶん音楽でなくてもいいのだろう。スポーツでも、演劇でも、ほかの何かでもいい。そしてベネズエラの、ハードボイルドな状況の子供たちだけに必要なものでもない。こういうムーヴメントを教育と呼んでいいのかよくわからないが、ぼくに子供がいたら受けさせたい、ぼく自身が子供のときに受けたかったと思った。

    クラシックのコンサートは何度か行って、どうも性に合わないと思ったけれど、シモン・ボリバル交響楽団が来たら聴いてみようかな。

  • ドゥダメルの出身であるベネズエラの音楽教育の話。
    単なる教育ではなく、貧困世帯にこそ音楽・オーケストラや合唱のチャンスを与えて、「音楽を通して社会変革を促す」について米国人の著者が見たエピソードを交えて感動的に綴った本。偉大なのはアブレウですね。
    米国でもこのプログラムに参加すると成績があがるといったことだけでなく、子供がギャングにならずに済む、というのが日本では考えられない効果があるとのことで、日本は恵まれた国なのだ、と感慨深いものもありました。最後に福島にも復興対策としてのエル・システマがあるのを本書で初めて知りました。
    気になったフレーズ「互いを認め合いながら協働する」

  • ベネズエラの音楽教育プログラム「エル・システマ」を紹介した作品。

    エル・システマは単なる音楽教室ではなく、オーケストラでの演奏を通じて子供たちを貧困や非行から救い、コミュニティの一員として自立を促すという、創設者であるホセ・アントニオ・アブレウ氏の崇高な理念のもとに運営されている。

    システマという名前とは裏腹に、子供たちの演奏レベルや地域の特色に応じて柔軟に指導方法変えたり、創立から40年以上たった今でも変化を求め続ける姿勢に感銘を受けた。また人間教育を重視しながらも、グスターボ・ドゥダメルのような大スターを輩出していて、音楽指導の完成度の高さも世界レベルなのだ、ちなみに嵐の松潤はドゥダメルの大ファンらしい。

    クラシック音楽はエリートの物であるという固定観念を打ち破り、決して先進国ではないベネズエラから、全世界中にシステマ流プログラムが伝播しているという事実にも、教育としての大きな意義があるのだと思う。

  •  
    ── タンストール/原賀 真紀子・訳《世界でいちばん貧しくて
    美しいオーケストラ: エル・システマの奇跡 20130830 東洋経済新報社》
    http://booklog.jp/users/awalibrary/archives/1/4492443991
     
     Tunstall, Tricia 19‥‥‥ America /音楽教育・作家
     Dudamel, Gustavo 19810126 Venezuela /
    http://d.hatena.ne.jp/adlib/20090220
     駿才 ~ ムラヴィンスキーの精神をムーティの手から奪う男 ~
     
    (20160306)
     

  • いつだったか…6~7年前くらいかもしれない。
    あるオーケストラの録画を見て衝撃を受けました。
    踊る、叫ぶ、楽器を回す…など熱狂的なアンコールが繰り広げられていました!
    「心の底から音楽を楽しんでいる」
    それも圧倒的なレベルの高さで…見ているこちらまで巻き込まれていく感覚。

    シモン・ボリバル交響楽団…ベネズエラで発祥したエル・システマから出現したユースオーケストラ♪
    その創設者アブレウの理念と実行力に最初は11人からスタートしたオケが、今では国を挙げてのプロジェクトにまで発展。
    1つの音楽教室に3~4つのオーケストラ、そんな教室がベネズエラの国中にある。
    そして世界中にその理念は広がろうとしている。

    「貧しい人たちの文化が貧しい文化であってはならない」
    システマとは結びつき。
    演奏することと、音楽を奏でることの社会的意義。この2つが切り離されることはない。オーケストラというのはコミュニティーである。

    「存在するけど、まだかたちになっていない」
    なにかをシステムとして定義したら、その日からその命は消えてしまう…目的の一貫性と手段の柔軟性という2つが絶妙な均衡を保っているのがシステマである。

    この本は決してオーケストラの本に留まらない内容で、たくさんの人に読んでもらいたい1冊です!

  • エル・システマ。
    それはベネズエラの社会政策として始まった、オーケストラによる教育プログラム。

    貧富に関係なく、誰もが無料で一流の楽器と一流の食事、一流の指導者と伴にオーケストラに打ち込むことができる。

    演奏力も正解中で評価されている。
    ただそれだけでなくて、コミュニティーとして、教育として非常にレベルが高いと感じた。

    そんなエル・システマについてのドキュメンタリー本。

    オーケストラの知識が無くても理解できる内容になっているので色んな人に読んでみてほしいです。

  • ベネズエラの子どもたちを犯罪などから守り、自尊心を与え、将来の選択肢の希望を持たせることができるシステマ(システムのようなもの)について書かれた本。

    どの子にもいい面があり伸ばすように導く、やればできるという自信を与えるなど、音楽と子どもの人格成形にもスポットをあてているので、子どもの成長に携わる人に読んでもらうといいのかもしれない。

    指揮者のドゥダメルもシステマによって、才能を開花させた。
    「オーケストラの合奏には、他者への思いやりと協働という概念が必要なので、人として成長することにつながる」

    社会改革といえるシステマ、それを支えている人たちの猛烈な熱意と愛情が伝わります。

  • 芸術教育と社会教育は矛盾しない。

  • 以前から、シモン・ボリバル・ユース・オーケストラが好きだった!最初聴いた時の衝撃。エネルギーが溢れる演奏。洗練された理路整然とした音楽とは違ったパワーを感じた。「エル・システマ」というプログラムも興味をひかれた。これこそ、音楽が人の心を救う!じゃないかなぁ。国家プロジェクトになり世界に広がったこのプログラムをより知れた本だった。日本でも誕生した「エル・システマ・ジャパン」を応援したくなった。

  • 読売新聞(2013/11/10)の書評欄にて作家・エッセイストの石田千が紹介。

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著者プロフィール

トリシア タンストール
音楽教育者として活躍しながら、新聞や雑誌で記事や短編小説を精力的に発表している。著書にピアノを学び教わることの楽しさについて綴った「Note By Note」があり、ミュージカル楽曲の作詞を手がけた経験も持つ。ニューヨーク郊外の自宅でピアノ教室を主宰。イエール大学卒、コロンビア大学大学院修了。

「2013年 『世界でいちばん貧しくて美しいオーケストラ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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