- Amazon.co.jp ・本 (412ページ)
- / ISBN・EAN: 9784492396520
作品紹介・あらすじ
伝説のアナリスト×世界のエコノミスト174人、渾身の提言!
日本企業の「根本問題」を突き止め、人口減少時代の「最強経営」を明らかにする。
■本書の主な内容■
実力はあるのに「結果」が出せない日本企業
「沈みゆく先進国」の企業には共通の課題がある
日本企業の生産性が低いのは、規模が小さすぎるからだ
「中小企業を守る政策」が日本企業の首を絞めている
「低すぎる最低賃金」が企業の競争を歪めている
日本の「経営者の質」が低いのは制度の弊害だ
人口減少で「企業の優遇政策」は激変する
人口減少時代の日本企業の勝算
■著者のメッセージ■
今の日本企業は、人口が増加していた時代にできた制度に過剰適応しています。人口減少時代に変わった以上、根本から変革するしか選択肢はありません。
これからの日本企業が進むべき道を見極めるには、冷静な分析が不可欠です。本書の最大の目的は、日本企業のあるべき姿を見極め、日本経済の新しい時代をつくることに役立つ提言を行うことです。これは私のこの国に対する恩返しでもあるのです。
感想・レビュー・書評
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相変わらず著者の分析は素晴らしく、視点も面白い。
対策も具体的で説得力がある。
・企業の大きさと1人あたり生産量は比例関係がある。
・国としては中小企業を守る政策ではなく、規模拡大を促進する政策をするべき。
・最低賃金を上げるべき。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
monopsony、一つの買い手の解消
イノベーションを起こせない企業に補助金を支給しても、効果は出ない。
商工会議所は中小企業の労働者の団体ではなく、中小企業の経営者の団体。
人件費の上昇や非効率的企業の撤退について、どのように考えるか。
現状でデータに基づいて、説明しても現場では感情論となる。教育についてと同じかな。
エビデンスベースよりエピソード従来の中小企業戦略
経験と勘と度胸、年長者がリーダーとなる。
これからの人口減少によって労働人口も減少し、monopsony の力が弱くなり、労働集約型の企業は大きな影響を受ける。何もせずにいても、減っていくのは間違いない。 -
デービッド・アトキンソン氏の「日本の生産性」の低さについての考察は一冊の著書に留まらず、複数の書に多数の視点で纏められているが、別著で述べられていた働き方原因論よりも、本作の主論となる中小企業原因論は、随分しっくり来る内容で、これが答えだと確信を得たような感じがある。
従業員数が少ない中小企業の数が多ければ、大企業が牽引する構造よりも、自ずと生産性は低くなる。日本は先進国の中でも圧倒的に中小企業が多い。これは、中小企業基本法による保護政策や中小企業によって雇用が維持されているという側面もある。
しかし、他方で女性活躍が進んでいないのも、この構造が一因。中小企業には産休や育休の余裕が無いからだ。製造業は比較的生産性が高く、生産性が低いのはサービス業の方だが、これも、中小企業基本法で定める基準で、製造業は従業員数300人未満、小売業・サービス業は50人未満が理由という説明にも説得力がある。最低賃金を中々上げない事も中小企業支援に繋がる。そして、この大きな票田に期待して政治家が中小企業を優遇するのだから、構造は変わらない。それでも至近は、生産性向上のためなど、単に中小企業だからというだけではなく、その投資に対し補助金支援する方向に向き始めたのは良い事だ。
中小企業の淘汰が進まないと、賃金も生産性も上がらない。しかし、中小企業の経営者は節税と現状維持が目的で、拡大やリスクは望まず、創業者家族の既得権益、利権のためのトンネル企業、税金対策等で、健全な事業拡大を目指さぬ会社も多い。また、偏差値教育に落ちこぼれた人間は、大企業への就職が難しく、起業した方が一発逆転まである。しかし、日本社会の多数派は中小企業労働者であるから、票田を冷遇は出来ない。民主主義において力を持っているからだ。これも合成の誤謬だろうか。
問題点は見えている気がする。それに対して、どこから、どうやって手をつけられるのか、だ。 -
非効率な産業構造が生産性を下げている
大学教育が弱い、ロジカルシンキングができない
規制緩和で中小企業が多すぎる
経営者高齢化
非正規雇用のために社員教育が進んでいない
1億円以上の規模の中堅企業が必要 -
低迷を続ける日本経済。私たち(一般市民)の生活が一向に豊かにならない原因は、monopsony(モノプソニー、買い手独占)が強く働いている、いまの労働市場にある。
遡ること1964年、OECD(経済協力開発機構)の加入条件である資本の自由化。この課題(当時の懸念ともいえるが)を払拭するために制定された中小企業基本法。企業の育成を後押しするための優遇措置が、本来市場から退場するべき生産性の低い中小企業をも救済し、延命させることにも繋がってしまったのは皮肉な話し。
人口の減少、少子高齢化社会のフェーズに本格的に突入したいま、再びこの国の経済に活力を取り戻し、豊かな生活を手にするためには、企業の規模を大きくし、労働生産性を向上される以外に道は残されていないと著者は切実に訴える。
本書の中で幾度となく槍玉に挙げられる中小企業の経営者の感想(ホンネ)をお聞きしたいところ。
ただし彼らは合理的に判断し、経済活動をしてきた(いる)のであり、全ての責任は時の権力者である政治家にあることは強く申し上げておきたい。
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デービット・アトキンソンの最新本ということでさっそく購入。
買う本減らしてるんだけど、まあたまにはいいよね。
とりあえず日本企業の生産性が低いのは企業規模が小さいからという議論に終始しているんだが、若干飽きるというか繰り返しの内容が多かった気がする。
まあとりあえず日本はオワコンってことは改めて良くわかる内容だった。 -
目から鱗
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ゴールドマン・サックス元マネージング・ディレクターで、日本在住歴30年以上の経営者、デービッド・アトキンソンさんの著書。
女性や高齢者などの労働参加率を高めることによる生産性向上を行ってきたが、これ以上は厳しいから労働生産性そのものを上げざるを得ない、
99.7%の中小企業を生きながらえさせるための補助金を減らして、中堅以上の会社が規模拡大(→生産性向上)に繋げられるような投資をすべき、
最低賃金をもっと上げるべき、最低賃金が低すぎるが故に雇用主側が強く、流動性が低くなり、企業側は新たな人材確保が難しくなる(結果的に生産性が高まらない)
などの指摘はまぁごもっとも。
ただ、結局は言うはやすし行うは難しで、
実行するのが、現実的に難しく変わるの大変。 -
産業構造が非効率であることが、日本を低迷させているさまざまな問題の根幹にある。この仮説を唱えている人を、私は寡聞にして知りません。私のオリジナルの仮説だと考えています。
イノベーションが進まない理由、働き方改革が進まない理由も、この産業構造の非効率性に原因があると思っています。日本経済が30年間伸びていない理由も、「産業構造の非効率性」にあると思っています。
■「monopsony」が強い国の特徴
生産性が低い
大企業の規模が小さい
大企業の数が少ない
中堅企業が少ない
小規模事業者が多い
高成長企業が少ない
イノベーションが少ない
輸出が少ない
女性活躍度が低い
格差が大きい
貧困率が高い
最低賃金で働く比率が高い
外国人労働者はスキルの低い比率が高い
労働市場の流動性が低い
労働者の専門性が低い
会社に対する忠誠心が高い
総括すると、日本は教育水準が高く、忍耐力が強い労働市場を有し、輸出入も少なく、言葉の壁があって外資系企業の参入も少なく、かつ「monopsony」の力が強い国です。このような日本で、その「monopsony」の力を緩和してくれるはずの最低賃金が低く設定されると、非常に小さい企業が増えすぎるのです。
■日本企業に対する4つの教訓
ここまで紹介した海外の例を、日本に当てはめて考えてみましょう。これらの分析結果には、 日本の経営と産業構造を考えるにあたって、4つの大切な指摘がありました。
①企業が増えるほど平均的な経営者の質が下がる
1つ目は、どの国でも経営者に向いている人材は無尽蔵ではなく、企業の数が増えれば増えるほど経営者の質の全体平均が下がること。これは必然です。
別の見方をすれば、非常に小さい企業が数多くできてしまう優遇策を設けると、優れた経営ができる人以外にも、経営者になる機会を与えてしまうことになります。経営者としての資質に欠けた人が起業しても、会社を大きく成長させることはできません。結果的に生産性の低い産業構造ができ上がってしまうのです。
②賃金が低いほど経営者になるインセンティブが高まる
2つ目は、先述した論文のとおり、賃金が低い国ほど経営者になるインセンティブが高まるいうことです。
ここには2つの要因が働きます。まず、賃金が低いほど人を雇うコストが低いので、経営者なろうとする人が増えます。さらに、賃金が低ければ既存の企業で働くメリットが相対的に暑くなるので、経営者になる道を選ぶ人が増えます。逆に既存企業の給与水準が高ければ、リスクと労力がともなう起業の道を選ぶインセンティブは低下します。
日本のように起業するハードルが低く、かつ既存企業の賃金が低い国では、向き不向きは関係なく、起業して経営者になろうとする人が増えると考えられます。1964年以降の日本でこのとおりのことが起こったのは、実際のデータで確認したとおりです。
所得水準は、最低賃金に大きく左右されます。最低賃金が低く設定され所得水準が低くなると、経営者にならないと自分の希望する額の賃金を手にできません。だから優れた経営ができなくても、無理をして会社をつくろうとする人が増えます。能力が低いので、その人がつくる企業は規模が小さく、生産性も低くなります。こういう企業が増えれば増えるほど、日本という国全体の生産性が低下するのです。
製造業は工場などに多額の設備投資が必要なので、新規参入のハードルが高くなります。ですから、日本でも製造業では構造問題は起こりにくいと考えられます。このことはデータでも確認できます。
日本では規制と優遇策の影響で、サービス業の企業の平均規模が著しく小さくなった上、経営者になる人も激増したため経営のレベルが低くなってしまっています。そのため、他国のサービス業と比較しても非常に低い生産性しかあげられず、また、国内の製造業にも大きく差を開けられているのが実態です。
このように産業構造を見れば、経済学の理論から予想されることが、実際の世界でもまったくそのとおりに起きていることが判明するのです。
③企業規模は経営者の能力を映す鏡
3つ目は、企業の規模が小さいこと自体が、経営者の質の低さの証拠だとされていることです。
質の高い経営者は本人に強い意欲があるだけではなく、優秀な労働者などの経営資源が自然と集まってきます。結果として質の高い経営者が経営する企業は成長し、規模が大きくなるのです。
日本では、規制と優遇によって企業の数を大きく増加させた結果、規模の非常に小さい企業が多くなってしまいました。企業の規模が小さいということは、1つひとつの企業の経営者の能力が低いことの証拠であることを看過するべきではありません。
④大学教育の質が経営者のレベルを左右する
最後のポイントとして、先進国では経営者層に大学卒業者の占める割合が高い傾向が確認できることが挙げられます。当然それぞれの国の大学教育の質が、経営者層のレベルに大きな影響を及ぼしています。
日本の場合、大学教育に対してはかなり厳しい評価が下されています。第1章で紹介したとおり、特に文科系の教育では欠かすことのできない論理的思考に関して、日本の評価は非常に低くなってしまっています。このことは経営者の質が低く、生産性を下げている要因の1つとなっています。