日本人と経済―労働・生活の視点から

著者 :
  • 東洋経済新報社
3.33
  • (0)
  • (1)
  • (2)
  • (0)
  • (0)
本棚登録 : 34
感想 : 2
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (344ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784492396193

作品紹介・あらすじ

日本経済100年の見方が覆る! 通常のマクロ経済学ではなく、独自の視点から経済を語り続ける橘木経済学の集大成。
日本経済の姿をとらえる時には、筆者によって様々な視点があります。本書は、労働経済学・格差問題などの第一人者である筆者が、経済現場をフィールドワークし続けてきた立場から、日本経済の過去・現在・将来の姿を生活者を中核に据えてとらえた「日本経済」の入門書です。「私たちは、どのように働いて生活をしてきたのか」の問題意識を主軸に据えて、日本経済が様々に変遷する姿が描かれます。明治時代の小作・地主関係をスタートに、第一次産業、第二次産業、そして第三次産業へと働くウエートが移りゆく姿。第二次大戦前の女性も働き続けざるをえなかった貧しい日本経済の姿が、戦後はM字カーブを描く姿へと変容し、それがまた男女ともに働く姿へ移りつつある状況。戦前のきわめて大きな経済格差が、高度成長期を通じて縮小してきたものの、いままた拡大をしつつある問題点の追求。それらへの解決策としての教育問題や少子高齢問題への対応の処方箋の提案。財政問題・福祉国家像をふまえた日本のあるべき将来像の考え方。盛りだくさんの内容ですが、平易な筆致で描かれています。
「はしがき」より
日本経済に関する書物は、研究書から啓蒙書、そして入門書まで含めて無数にある。そこに橘木による日本経済論を世に問うには、何らかの特色を前面に出さないと無視されること必至である。
その特色を一言で要約すると、次のようになる。すなわち、第1に、経済活動の担い手として労働に励む人々の姿と、第2に、経済活動の成果で得た賃金や所得をどのように使い、そして労働以外の時間を何に使うのかの姿に、注目した。後者を生活者と理解すれば日本人はどのような生活者であったかの姿を分析するのである。労働者としてと、生活者としての日本人を幅広い視点から議論することが本書の目的である。
【日本経済を読み解く六つの視点】
1.明治時代以降の100年の歴史的な活動・行動を読み解く
2.教育・社会保障・働き方にまつわる制度について考察する
3.企業と労働者の行動様式の変化を解釈する
4.政府が日本社会で果たしてきた役割を客観的に評価する
5.女性にかんする労働と生活の両立の問題を考察する
6.格差問題を効率と公平のトレード・オフ関係から分析する

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 【メモ】
     難易度は、やさしめの岩波新書に相当する。高校生以上の年齢なら、大半の人は読めるはず。
     この本特色は、転載した「PR文」の通り。労働者の生活に多めに注目した、日本経済についての講義になっている。
     ところで本書下段のスペースと章扉の用語一覧(解説無し)は何だろう。ひょっとして、「注は読者が書き込んで作っていくのだ」という、暑苦しくて面倒だが、ためになる演習スペースなのか。
     よいではないか。


    【書誌情報+内容紹介】
    著者:橘木俊詔(たちばなき・としあき)
    2015年10月9日 発売
    定価: 1,944円(税込)
    ISBN:9784492396193
    サイズ:四六/並/344

    日本経済100年の見方が覆る! 通常のマクロ経済学ではなく、独自の視点から経済を語り続ける橘木経済学の集大成。
    日本経済の姿をとらえる時には、筆者によって様々な視点があります。本書は、労働経済学・格差問題などの第一人者である筆者が、経済現場をフィールドワークし続けてきた立場から、日本経済の過去・現在・将来の姿を生活者を中核に据えてとらえた「日本経済」の入門書です。「私たちは、どのように働いて生活をしてきたのか」の問題意識を主軸に据えて、日本経済が様々に変遷する姿が描かれます。明治時代の小作・地主関係をスタートに、第一次産業、第二次産業、そして第三次産業へと働くウエートが移りゆく姿。第二次大戦前の女性も働き続けざるをえなかった貧しい日本経済の姿が、戦後はM字カーブを描く姿へと変容し、それがまた男女ともに働く姿へ移りつつある状況。戦前のきわめて大きな経済格差が、高度成長期を通じて縮小してきたものの、いままた拡大をしつつある問題点の追求。それらへの解決策としての教育問題や少子高齢問題への対応の処方箋の提案。財政問題・福祉国家像をふまえた日本のあるべき将来像の考え方。盛りだくさんの内容ですが、平易な筆致で描かれています。

    ◆「はしがき」より
     “日本経済に関する書物は、研究書から啓蒙書、そして入門書まで含めて無数にある。そこに橘木による日本経済論を世に問うには、何らかの特色を前面に出さないと無視されること必至である。
     その特色を一言で要約すると、次のようになる。すなわち、第1に、経済活動の担い手として労働に励む人々の姿と、第2に、経済活動の成果で得た賃金や所得をどのように使い、そして労働以外の時間を何に使うのかの姿に、注目した。後者を生活者と理解すれば日本人はどのような生活者であったかの姿を分析するのである。労働者としてと、生活者としての日本人を幅広い視点から議論することが本書の目的である。"

    [日本経済を読み解く六つの視点]
    1.明治時代以降の100年の歴史的な活動・行動を読み解く
    2.教育・社会保障・働き方にまつわる制度について考察する
    3.企業と労働者の行動様式の変化を解釈する
    4.政府が日本社会で果たしてきた役割を客観的に評価する
    5.女性にかんする労働と生活の両立の問題を考察する
    6.格差問題を効率と公平のトレード・オフ関係から分析する
    https://str.toyokeizai.net/books/9784492396193/

    【目次】
    はしがき――日本経済を読み解く視点 [i-iv]
    目次 [v-xii]
    図表目次 [xiii-xiv]

    第1章 戦前における旧体制の日本経済 001
    1.1 どの産業で、どういう職業に就いていたか 003
    江戸時代の経済
    明治維新と殖産興業
    教育制度の普及
    農業従事者がほとんどであった
    1.2 戦前の過酷な所得格差はどのようにして発生したのか 016
    国民の生活は過酷なほど苦しかった
    経済学から見た地主・小作人関係
    農地改革が実現した格差の縮小

    第2章 日本経済の成功物語:高度成長期と安定成長期 025
    2.1 高度成長に至る日本経済の成功物語 027
    敗戦による経済破壊と立ち直り
    日本経済はなぜ高度成長を実現できたのか
    労働移動は産業間・地域間で進んだ
    2.2 日本経済はスタグフレーションからいち早く脱出した 040
    日本経済が一番輝いた安定成長期
    高度成長期と安定成長期における問題点

    第3章 バブル後に長期停滞に陥る 047
    3.1 バブルの発生と破裂が日本経済を痛めつけた 049
    国際収支の壁の大切さ
    黒字基調の定着と日本経済の国際性
    3.2 バブルに踊り、「失われた20年」にもがく日本経済 051
    バブル経済への突入とその破裂
    小泉構造改革の路線
    経済効率性と分配の公平性はトレード·オフの関係か
    3.3 経済の低迷が政権交代を引き起こす 061
    小泉内閣以降の経済低迷
    民主党政権の3年間の功罪
    アベノミクスの「三本の矢」はどのように評価できるか

    第4章 戦前から戦後において、人はどこで働いていたか 071
    4.1 戦後はどの産業で働き、どの職業に就いていたか 073
    日本経済の産業構造の変化
    産業構造の変化に伴う職業の変化
    4.2 男女の労働力比率はどのように変化したか 076
    戦前の男性のほとんどが働いていた
    戦前の女性の就業はM字型カーブを描いていない
    戦後の労働力率はどのように推移したのか

    第5章 日本企業の特色とコーポレート・ガバナンス 087
    5.1 高度成長期の日本企業 089
    高度成長を支えた日本企業の特色
    日本企業では長期取引が重視される
    大企業と中小企業との間の二重構造問題
    5.2 低成長時代の日本企業 098
    バブル経済を経験した日本企業はどう変化したか
    5.3 日本企業のコーポレート・ガバナンス 105
    企業を保有しているのは誰か
    エージェンシー問題
    労働者の経営参加とは何か
    労働の柔軟性とワーク・シェアリング

    第6章 自営業者が減少したにもかかわらず、一部は高所得者になる 117
    6.1 雇用者 vs. 自営業者 119
    企業で働く雇用者
    労働に対して支払われる種々の報酬
    自営業者という働き方
    雇用者になるのか自営業者になるのか、という選択
    戦後には自営業者は減少し続けた
    6.2 少数ながらも高い報酬を得ている自営業者がいる 131
    高額の報酬を得ているのは、どのような自営業者なのか
    極端に高い所得を得ているのはどのような人々か
    スーパースターの経済学
    トーナメント理論

    第7章 女性は生活者だったのか、それとも労働者だったのか 139
    7.1 女性の生き方の選択 141
    選択肢の多い女性は幸福か
    母性論はいかに生まれたのか
    生活者としての女性
    7.2 女性の働き方の選択 150
    女性にとっての働くということの選択
    女性は職場でどう扱われているのか
    7.3 男女のダイバーシティ社会を実現するために 157
    女性管理職が少ない背景
    どうすれば女性の管理職は増加するか
    女性は生活者だったのか、労働者だったのか

    第8章 政府は産業発展の牽引車だったのか、それとも生活者の味方だったのか 165
    8.1 政府は経済発展を最優先とした時代 167
    戦前の日本政府が果たした役割 
    戦後の高度成長期における政府の役割
    政府が定めた戦後の経済計画
    産業政策の功罪
    Too big to fail (大きすぎて潰せない)企業
    8.2 政府は生活者の味方であったのか 199
    安心のある福祉社会へとの声が強くなる
    政府の支出構成比から言えること
    政府は本当に生活者の支援に出動したのか――非正規労働者の処遇

    第9章 日本が福祉国家になることにおいて、財政赤字は支障となるのか 199
    9.1 日本は福祉国家ではない 201
    戦前は家族が福祉の担い手だった
    福祉への政府の登場
    戦争中に行われた社会保険改革の目的
    戦後に行われた社会保障制度改革
    「日本的福祉国家論」とは何か
    日本の福祉の現状をどう評価するか
    日本はどのような福祉国家へと向かうべきか
    9.2 日本経済の巨額の財政赤字をどう考えるべきか 215
    日本の財政赤字の規模
    財政支出と歳入の経済学
    福祉国家と財政赤字は両立するか

    第10章 不平等社会から平等社会へ、そして再び不平等社会へ 225
    10.1 戦前の日本は不平等社会だった 227
    華族・士族・平民という三つに分かれた身分社会
    所得・資産の格差は極端に大きかった
    巨額の資産保有家と高額所得者が存在した
    10.2 戦後の日本社会は平等社会へ向かって発展した 235
    日本社会の平等化を進めたGHQによる改革
    高度成長期と安定成長期に平等化がおし進められた
    10.3 再び不平等社会へと向かう日本経済 245
    1980年代以降に再び不平等化がはじまる
    貧困の深刻さが際立つ日本の格差社会
    経済の効率性と公平性の両立は可能か

    第11章 教育が日本経済と社会に与えた影響 255
    11.1 教育が経済成長に及ぼす効果 257
    経済成長理論の簡単なサーベイ
    教育は個人の所得にどのような影響を及ぼすのか
    11.2 教育が個人の所得や職業,地位に及ぼす効果 267
    日本社会における学歴主義
    日本は人々が考えるほど学歴社会ではない
    教育の機会平等が侵されている

    第12章 今後の日本経済の進路を占う 281
    12.1 少子化問題と経済成長はどのように関連しているのか 283
    深刻な少子化問題
    日本の出生率は、なぜ低下したのか
    少子化が経済成長に及ぼすマイナスの効果
    定常状態が必要である根拠
    12.2 少子化と社会保障問題 297
    少子化は、なぜ社会保障にとって問題なのか
    日本はどのような福祉国家を目指すべきか
    12.3 出生率を引き上げる政策 307
    出生率上昇政策に対する不要論
    出生率上昇のためにはどのような政策が考えられるか

    参考文献 [315-318]
    索引 [1-10]

  • 内容的に珍しいというわけではないが、日本の戦後からの経済の変遷と労働のあり方、労働力の推移など、バックデーターも多くわかりやすく書かれている。ボリュームもある。

    目次は自分メモに

全2件中 1 - 2件を表示

著者プロフィール

京都女子大学客員教授,京都大学名誉教授
1943年兵庫県生まれ。
小樽商科大学,大阪大学大学院を経て,ジョンズ・ホプキンス大学大学院博士課程修了(Ph.D.)。京都大学教授,同志社大学教授を歴任。元日本経済学会会長。
専門は経済学,特に労働経済学。フランス,アメリカ,イギリス,ドイツで研究職・教育職に従事するとともに,日本銀行,経済産業省などで客員研究員を経験。
和文,英文,仏文の著書・論文が多数ある。
〔主要近著〕
『日本の構造:50の統計データで読む国のかたち』(講談社,2021年)
『教育格差の経済学:何が子どもの将来を決めるのか』(NHK出版,2020年)
『“フランスかぶれ”ニッポン』(藤原書店,2019年)
『日本の経済学史』(法律文化社,2019年)
『21世紀日本の格差』(岩波書店,2016年)
『フランス産エリートはなぜ凄いのか』(中央公論新社,2015年)

「2021年 『フランス経済学史教養講義』 で使われていた紹介文から引用しています。」

橘木俊詔の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×