恐慌の黙示録: 資本主義は生き残ることができるのか

著者 :
  • 東洋経済新報社
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感想 : 7
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  • Amazon.co.jp ・本 (243ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784492395141

感想・レビュー・書評

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  • 地元の図書館で読む。正直期待していませんでした。しかし意外に面白い本でした。現実の経済はナイト流の不確実性に直面している。これは正しいと思います。経済学者はそれを無視しました。これも正しいと思います。ただし、経済学者は怠惰なので、無視したわけではありませんモデルを組むのか困難なのです。第一に、バイアスが存在すると仮定するのは簡単です。しかし、どちらの方向にバイアスがかかっているのでしょうか。それを仮定するのは容易ではないのです。つまり、モデルつくるのは無理なのです。言葉でナイト流の不確実性を説明するのは簡単です。しかし、数式で表現するのは簡単ではありません。僕もナイト流の論文を書いたのは一度だけです。ここら辺が、経済学部でないところです。ケインズを読んでみようかな。暇なんですから悪くないです。ミンスキもいいですね。

  • ケインズ、ミンスキー、シュンペーターら五人の経済学者の言説から、資本主義の不確実性による近年の金融市場の崩壊、社会の不安定化などの現状を説明。近年の日本の間違った新自由主義的経済政策に物申し、長期的な視野に経つことの重要性を示唆。

  • ミンスキー、ヴェブレン、ヒルファーディング、ケインズ、シュンペーターの理論を分析した上で、現在の資本主義のあり方に疑問を投げ掛けている。所有と経営の分離が上記5人が否定的だったところに驚いた。いかに自分がマネーマネージャー資本主義に毒されているかがわかる。そして共同体意識に重きをおく日本的経営こそあるべき経営であるとの主張には、嬉しくなる。しかし現在の日本がそれとは逆の道筋を辿っている。果たしてどちらが正しいのか。ヨーロッパ金融危機をみるにつけて本書の立場に賛同したくなる。

  • ベルリンの壁がなくなりソ連邦が崩壊して資本主義は共産主義に勝利したと見ることもできますが、資本主義が本当に優れたシステムなのでしょうか。

    日本ではデフレがもう10年以上も続いていて拡大成長を基本とする資本主義が本当に最適なのかと考えてしまうことがあります。この本は資本主義の未来について書かれています。このまま地球全体がどこまで成長するのか興味がありますが、貧富の格差がすくなく皆が幸せになるシステムは現れないでしょうか。

    以下は気になったポイントです。

    ・デフレを懸念しなければいけない時期に日本はデフレを促進するための政策を実行してしまった、橋本・小泉政権が構造改革を断行した結果、日本経済は深刻なデフレに陥った、ミンスキー仮説を実証した(p8,45)

    ・産業革命をイギリスは成し遂げたが、私有財産制度の長いイギリスでは所有と経営の分離ができずに重工業に拡大できなかった、これを成し遂げたアメリカが第二次産業革命の覇者となった(p13)

    ・金融が発達した現代資本主義は、産業経済の領域と金融経済の領域の二つから成り立っていて、それぞれの領域において価格メカニズムがある(p22)

    ・所有と経営の分離(=金融資本主義化)は、2つの問題点を引き起こした、1)企業所有者が経営の現場から離れてしまうことによること、2)産業と営利の対立(p54)

    ・不況に対する処方箋は、1)政府による有効需要の創出、2)独占的な企業連合による競争の抑制(p63)

    ・株式とは、将来の生産から上がる収入を得る権利で、株価とはその収入の見込みと利子率とを決定して決まる(p86)

    ・資本主義の自壊の原因として決定的なのは、中産階級の家族の解体、中産階級は自己利益の拡大のためでなく自分の家族のために働き貯蓄する、それが経済発展を促す(p167)

    ・人間が将来に向けて行動するためには、1)慣習、2)個人の能力、3)動機の3条件が必要であり、これらは共同体によって整えられる(p196)

    2011年11月13日作成

  • 狭義の経済学にとどまらない、社会や人間理解にまで及ぶ縦横無尽な思考。今後の経済システムの在り方を考える上での出発点に良いかと思います。

  • ミンスキーは勉強不足で良く知らなかったが、今回のサブプライム問題でウォールストリートが過去の経済学者を再考しているとは驚きだった。著者はミンスキー、ヴィブレン、ヒルファーディング、ケインズ、シュンペーターの5人の学者の考えを振り返っている。そしてその前に二人バーリー、ミーンズが共著した「現代企業と私有財産制」の中に書かれている「所有と経営の分離」から現在の資本主義の問題を浮き彫りにし、5人の経済学者がすでに資本主義の崩壊を予想していたと論じている。著者は本書の目的がヴィジョンの回復であると言い、世界的な経済危機の解決法は述べないと言っている。しかしヴィジョンが導く方向はすでに各国でとられている企業、銀行の国有化=ヒルファーディングの「組織化された資本主義」、シュンペーターの「酸素吸入器付の資本主義」となって現実化している。ではこの先シュンペーターの予言どうり社会主義に行くのか?、否、、、、、、私は自分が20年以上前に大学で勉強した経済学者の知恵が今も生きていることに、「学生時代に何を読んでいたのか」と著者の見識鋭さを感じる。私の中でヴィジョンは回復した。

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著者プロフィール

中野剛志(なかの・たけし)
一九七一年、神奈川県生まれ。評論家。元京都大学大学院工学研究科准教授。専門は政治思想。九六年、東京大学教養学部(国際関係論)卒業後、通商産業省(現・経済産業省)に入省。二〇〇〇年よりエディンバラ大学大学院に留学し、政治思想を専攻。〇一年に同大学院にて優等修士号、〇五年に博士号を取得。論文“Theorising Economic Nationalism”(Nations and Nationalism)でNations and Nationalism Prizeを受賞。主な著書に『日本思想史新論』(ちくま新書、山本七平賞奨励賞受賞)、『TPP亡国論』(集英社新書)、『日本の没落』(幻冬舎新書)、『目からウロコが落ちる 奇跡の経済教室【基礎知識編】』『全国民が読んだら歴史が変わる奇跡の経済教室【戦略編】』(ベストセラーズ)など多数。

「2021年 『あした、この国は崩壊する ポストコロナとMMT』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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