- Amazon.co.jp ・本 (255ページ)
- / ISBN・EAN: 9784492392393
感想・レビュー・書評
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前期的資本においては、利潤は偶発的な事情によって得られる。むしろ、経済の外側、つまり経済外から得られる。158
マルクスは「搾取」とは叫んだのではあるけれども、それは一種の術語としてそう呼んだだけのことで(…)経済の内部(生産過程)において、必然的に、余剰価値(利潤)を生産しているのである。160
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役人どもは、如何にして、これほどまでの前期資本的暴挙を実行しえたのか。
情報の独占。これこそ、前期的資本が、自由に横暴をきわめるための要諦である。170
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技術が進歩したから資本主義になったんだと思い込んでいる人は多い。また、産業革命における諸発見によって資本主義が成立したのだと誤解している人も多い。が、これ原因と結果の倒錯である。
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日本経済は純粋な資本主義ではない。所有権が保証されず市場原理(淘汰)が働かないからである。国家権力や既得権益層が所有者に介入してくる。
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マックス・ウェーバーの「プロテスタントの倫理と資本主義の精神」とその翻訳者でもある大塚久雄さんの説を下敷きに、小室直樹さんが「資本主義」について解説した本です。
つまり「資本主義とはなにか」と定義した本。言い換えると、前資本主義と資本主義を分けるものはなにか?と解き明かした本です。
ざっくりと結論を言えば、資本主義は「所有の絶対性」が確立されていること、そしてプレーヤーに「エートス」があることだ、と言われます。「エートス」とは倫理のことですが、行動だけを指すのではなく、内面のことも含まれます。
そして現代日本は「資本主義国家ではない」と看過されています。むろん、韓国も中国も資本主義国家ではない、と言い切られています。
この本は1997年に発売された本です。その時期から見れば、グローバル化の影響を受けて資本主義化が進んでいると考える人も多いと思いますがどうでしょか?
僕は小室先生の指摘はまだそのままだと思っています。いや、ある意味、後退しているのではないかと感じています。
いまでも十分に読む価値がある本です。文庫化などの形で復刻を期待します。 -
資本主義市場の機能
市場は,企業と労働者を淘汰によってつくる
完全競争市場とは
・財の同質性
・需要者・供給者の多数性
・完全情報
・参入と退出の自由
産業資本とは
資本家が労働者を目的合理的に分業と協働のシステムに組織して
利潤最大を目的に労働させるために使用する資金
資本主義は私的所有権から始まる
・絶対性
所有物の使用、収益及び処分
・抽象性
現実支配に関係なく、観念的・論理的な所有者が所有権を有する
日本の市場の問題点
・封建制と資本主義と社会主義の混雑経済
・株式会社を経営者・従業員のが私有化している → 論理的所有者は株主 -
小室直樹氏による資本主義論。資本主義のベースはキリスト教にあるとしたマックス・ウェーバーの説を分かりやすく解説している。所有の絶対性、禁欲的労働倫理、目的合理的経営等の資本主義の精神は現代でも日本には根付いたとは言えないだろう。現代に生きる自分がこの事実に納得できてしまうことに日本人のエートスの根深さを実感する。
小室氏は日本経済を資本主義、社会主義、封建主義の入り混じったスーパー鵺経済と呼ぶ。この本が書かれた1997年に比べると、企業活動についてはグローバル化の影響を受けて資本主義化が進んでいるとは思うが、政治や社会の実態は相変わらずかもしれない。
小室氏は市場の失敗や独占等のマイナス面を理解しつつも、基本的には資本主義の有効性を主張していたようだ。もし、御存命ならウォール街のデモやロンドンの暴動をどのようにご覧になるだろうか?資本主義は本当に持続可能な社会システムになるだろうか?
日本が鵺経済であるという現状は認めるとして、日本人のエートスを活かした社会システムはありえないだろうか?腐朽官僚制の弊害を脱却して、資本主義のダイナミズムを活かしつつ、公共性とのバランスをとる方法はないだろうか?やはり政治が鍵なのだろうが。 -
ちょっと古い気はするが、名著です。
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プロテスタンティズムと資本主義の話だっけかな。経済学に疎い人でも楽しめる内容。