資本主義の次に来る世界

  • 東洋経済新報社
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  • Amazon.co.jp ・本 (326ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784492315491

作品紹介・あらすじ

「少ないほうが豊か」である!
「アニミズム対二元論」というかつてない視点で文明を読み解き、
成長を必要としない次なる社会を描く希望の書!

ケイト・ラワース(『ドーナツ経済学が世界を救う』著者)、
ダニー・ドーリング(『Slowdown 減速する素晴らしき世界』著者)ほか、
世界の知識人が大絶賛!

デカルトの二元論は「人間」と「自然」を分離した。
そして資本主義により、自然や身体は「外部化」され、
「ニーズ」や「欲求」が人為的に創出されるようになった。

資本主義の成長志向のシステムは、人間のニーズを満たすのではなく、
「満たさないようにすること」が目的なのだ。

それでは、人類や地球に不幸と破滅をもたらさない、
「成長に依存しない次なるシステム」とは何か?
経済人類学者が描く、かつてない文明論と未来論。

本書が語るのは破滅ではない。語りたいのは希望だ。
どうすれば、支配と搾取を軸とする経済から生物界との
互恵に根ざした経済へ移行できるかを語ろう。
(「はじめに 人新世と資本主義」より)

感想・レビュー・書評

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  • 自分、資本主義の世で産湯に浸かり、
    アメリカの豊かな生活に憧れる少年時代を
    過ごしましたんで、
    この本のように「資本主義にブレーキをかけなければ」
    と主張されましてもなかなか目が覚めません。

    でも一方では、
    長時間勤務、勤勉な勤務、自己啓発、周囲の雰囲気をこわさないために職場で文句は言わない、有給休暇をとらない等々、よいとされている働き方をしていては育児との両立が非常に困難な生活実態について、
    こんな社会は変だ、こんな社会を次世代に残すのはかわいそうだという気持ちは強いです。

    著者が一刀両断、「GDP成長率を追求し続ける資本主義はあかんねん、地球がもたないからな(意訳です)」
    「富の蓄積を解体して、新しい分配で世界を変えんとあかん(意訳)」
    「人間の幸福に関して言えば、収入をふやせば幸福なのではなく、福利購買力を高めることが肝要(これも意訳)」
    歯切れ良く主張している内容は確かに心地よいです。

    自分、不器用なんで今日はここまでです。

  • うんうん、納得。
    ・・・で、読み終わった今日から、私は何をしたらよい?
    今、朝の9時。寒い。
    今日も洗濯物乾きそうにないな、最初から乾燥機にかけようか、、、という思考は、OK?
    (世界の上位数パーセントの富裕層以外は、今のままの生活を続けてOK?)

    ・・・具体的に、どうしたら、未来を変えて、豊かな世界を取り戻せるのだろう?

    ・・・そこは、それぞれが考えて実行することで、本が教えてくれるわけじゃないのね、そりゃそうですね。

  • 図書館に他の本を借りに行って、特設コーナーで見かけてタイトルに興味を惹かれて借りた。結果、今年読んだ本の中で一番良かった本になりそうだ。

    「資本主義の次に何がくるのか?」という結論が知りたくて先を読み進めたいのだが、なかなか先に進めなかった。1日50ページくらいずつが限度だった。資本主義、物質主義の只中にある私にはヘビーで考えさせられる内容だったからだ。2週間の貸出期限を延長して、今朝やっと読み終えた。

    読んでいる途中で夫にも是非読んで感想を聞かせて欲しいと思った。自分の本棚にも1冊欲しいと思った。
    買おうとして、ベストセラーなのを知った。

    著者の描くポスト資本主義の世界にうっとりする。私たちのこれからの選択次第で、そんな世界もありうるのだ。私が今まで生きにくかった理由もなんとなくわかった気がした。

    とはいえ、ここは資本主義の中にある。折り合いをつけながら自分に出来ることを身の回りでやっていくしかない。声高に主義主張を叫ぶのではなく、自分にやれることを愚直にやるだけだ。

  • 私たちは経済成長をいいものだと思っているが、必ずしもそうではないのかもしれない。
    この本は今まで当たり前に思ってきた価値観が、資本主義によるものであり、それが環境問題や労働の搾取にもつながるもので、あらためて考え直してみる機会をくれた。

    資本主義は、限りなく成長を求めさせ続けるもので、財やサービスの生産は、それがどのように役にたつかという使用価値でなく、より利益になるようにと交換価値に重きをおくものになっている。
    そして、人為的に希少性をつくることで、あふれるほどの富がありながら、満たされることなく、より成長を求めて、自然や労働が搾取されていくような状況をつくっている。
    資本主義は、いい面もあったかもしれないが、餓鬼道(仏教でいう、欲が決して満たされず苦しむ世界)をこの世につくってきた面もあるな、と考えさせられた。

    最近、この本のように環境問題や格差など、資本主義の欠点を指摘する本が増えていて、マルクスが見直されたりもしている。
    ただ、富裕層叩きや権力者批判とか、陰謀論とかそんなものでは何も解決しない。
    この本もそのようなものではなく、社会全体的な構造に問題があり、個人では解決しない難しいところがある。
    少なくとも学ぶことには意味があると思うし、学ばなければ、正しい理解も行動も生まれないと思う。

  • 自分がしっかりと資本主義社会に浸透されていることを改めて自覚した。
    今は時代の流れに沿って頑張るけど、今の暮らしにも互恵関係を取り入れつつ生きてきたいな。
    自然や世の中から何かをもらい続けることがつまらなくなってきたっていうのもある。消費者なんよな常に。
    あと、将来海や緑の近くで古民家暮らしがしたいという思いがもっと強くなったな。

  • 帯にある「少ない方が豊か」とはどんなことなのか。膨大な資料、考察を経て最後にこれが語られる。資本主義の中では経済は成長していかなければならない。しかしその「成長」が地球全体を蝕むという理論は、これまで経済について深く考えてこなかった自分に対する警鐘でもあった。資本主義の歴史を遡り、植民地支配、資源の強奪、富める者と貧困者の格差が語られる。グラフは常に右肩上がりであるべきだ、という思い込みが覆される。アニミズムにまで考察が及ぶが、著者は決して原始的なものへの回帰を語っているのではない。自分自身でも「人為的稀少性」を念頭に消費に邁進してきたのだ。これに気づいただけでも収穫有りと言えるだろう。

  • まだ咀嚼しきれていないが、投資へのリターンのために常に成長を求められる現状の資本主義が環境破壊の要因だと、人間と自然を分離した二元論により自然は収奪対象になったこと、などなど。
    どこまで信用してよいのかもわからないが、少なくともいろいろなことを考えるキッカケにはなるはず。
    たくさんの人に読んでほしい一冊です。

  • 大量生産、大量消費。そうした世界にちょっとしんどさを感じていた今日この頃。資本主義のあり方について問う本書はなるほどなと思わされるところがいくつも。戦略会議で右肩上がりのグラフを見るたびに、本当にそうでないといけないんだろうかと疑問視していたので、脱成長が謳われているところに共感。はたして自分の仕事は使用価値を生み出しているのか、交換価値を助長しているのか、考えさせられる。自然回帰な暮らし。不便を楽しむくらいの暮らしが今こそ求められているのかもしれない。

  • この手の本はもういいかなと思っていたのだが、あにはからんやとても面白く覚えておきたい箇所が多すぎて覚えられない本だった。経済成長を目標とする限り、人為的に希少性を作り出し、搾取する対象を作り出し、環境問題も格差も収まることはない。ジェボンズのパラドックスはパラドックスじゃなく、資本主義の原理そのもの。変えるのはアニミズム的価値観、広い視野での公平性と謙虚さ。生態系の科学が価値観の変容を促している。納得感が高い。これをみんなが理解したら世界は変わるのではないだろうか。

  • 読後には世界が違って見えるすごい本である。

    脱経済成長を標榜するポスト資本主義社会を展望する壮大な文明論であり、経済成長について我々が抱いている幻想を粉々に打ち砕く。

    脱経済成長論などというと、「まーたお花畑の理想論かよ」と苦笑したくなる向きもあろう。
    だが、本書を読んだあとでは、「いまのまま、経済成長と環境保護は両立できるはずだ」と楽観視している「グリーン成長」論者のほうが、むしろお花畑に思えてくる。

    著者は地球生態系の破壊が今世紀中に人類の破局をもたらすことを予測する。序盤に描かれるのは、詳細なデータに基づく暗澹たる未来像だ。
    そして、テクノロジーの進歩による「持続可能な成長」を目指すのみでは、破局回避は不可能であることを、やはり冷徹に分析する。

    成長し続けることを目指す経済から、成長を必要としない経済への転換のみが、根本的解決につながると著者は言う。
    ただし、旧ソ連のような社会を目指せというのでも、原始的自給自足生活に戻れというのでもない。成長を必要としない経済へとシフトするだけで、快適で幸福な生活に変われるというのだ。

    第2部「少ないほうが豊か」では、「成長なき繁栄」を目指すために何が必要かが、具体的に提言されていく。それらの提言はお花畑的空論ではなく、実現可能と思えるものばかりである。

    暗澹たる未来予測から始まった本書は、終盤で、文明の方向転換による希望の未来を予測して幕を閉じるのだ。

    500年前の資本主義の始まりにまで遡って、“文明をリデザインする方途”を探る、壮大な一冊。

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著者プロフィール

ジェイソン・ヒッケル
経済人類学者。英国王立芸術家協会のフェローで、フルブライト・ヘイズ・プログラムから研究資金を提供されている。エスワティニ(旧スワジランド)出身で、数年間、南アフリカで出稼ぎ労働者と共に暮らし、アパルトヘイト後の搾取と政治的抵抗について研究してきた。近著The Divide: A Brief Guide to Global Inequality and its Solutions(『分断:グローバルな不平等とその解決策』、未訳)を含む3冊の著書がある。『ガーディアン』紙、アルジャジーラ、『フォーリン・ポリシー』誌に定期的に寄稿し、欧州グリーン・ニューディールの諮問委員を務め、「ランセット 賠償および再分配正義に関する委員会」のメンバーでもある。

「2023年 『資本主義の次に来る世界』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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