経済を見る眼

著者 :
  • 東洋経済新報社
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感想 : 10
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  • Amazon.co.jp ・本 (311ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784492314944

作品紹介・あらすじ

経営学第一人者が書き下ろした
実践的な経済入門書

本書では、難しい数式は一切出てきません。
「経済を見る眼」を養うための入門書です。

人間の行動やその動機、また多くの人間の間の相互作用を考えることを重視し、人間臭い「経済を見る眼」を提示しています。
著者・伊丹敬之氏は「経済学とは人間の学問である」と述べています。
加えて、「経営の営みは一種の経済現象である」とも述べています。

「原油安でなぜ景気が悪くなるのか」「なぜ機関投機家が企業に過剰な影響力を持つのか」「生産性が低い『おもてなし』サービス産業は発展するのか」など、ビジネスの現場で遭遇する疑問に答えつつ、実践的な経済の考え方や見方を解説しています。

感想・レビュー・書評

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  • 生々しく日本の過去と現在、そして未来について、定量的、且つ論理的に解説した一冊。
    人本主義の経済合理性追求のオーバーランの結果生ずる安定性の罠と、安定性の罠から生ずる国民の心理的エネルギー水準の低迷、そしてこれら一連の流れが日本型市場経済と企業システムを色濃く作り出している、という主張は首肯点頭。

    時期を置いて、改めて読み直したい1冊。

  • 著者の伊丹敬之先生は、高名な経営学者である。本書は、「経営学者が書いた、マクロ経済の本」だ。

    色々なトピックスを扱った本であるが、自分にとっては、バブル崩壊後の、いわゆる「失われた20年間」をマクロ経済データで振り返っている部分が面白かった。
    1996年の日本のGDPが516兆円。約20年後の2015年のGDPは500兆円と16兆円のマイナス。
    16兆円のマイナスの内訳。民間消費と政府支出の合計はプラス7兆円の微増。民間投資が18兆円のマイナス、輸出入差がマイナス5兆円。
    全体像を見れば、企業の設備投資や民間の住宅投資が大きく減っている。
    一方で、この間の資産の動きを見ると、家計の金融資産は1272兆円から1706兆円に増加、企業の純金融「負債」は652兆円から431兆円に減少。
    要するに、これだけの家計金融資産の積み増しがあるのに、消費は、さほど、増えていない。預貯金にお金がまわっている。また、企業もお金を設備投資ではなく、借金の返済に充てている。金を使わない、金を貯め込み、リスクを取らない日本の姿が浮かび上がる。
    「どうしてそうなっているの?」というところの分析までは、本書は扱っていないが、それでも、バブル崩壊以降、日本経済が陥っている苦境がどういう姿であるのかが、理解しやすくなる。
    示唆に富んだ面白い本。

  • 経営の専門家による経済の話。マクロ経済について簡単に説明しており、理解しやすく、よくまとまっていると思う。学術的な難しい理論の説明はなく、その点がやや物足りない。日本の経済構造や、高齢化の話など参考になる点があった。
    「日本語の壁という国際展開可能性の障害は、モノを売る産業にはあまり存在しない(サービス業では大きい)」p51
    「ケチ精神が強いのは、家計と企業、つまり民間であろう。消費や投資という形でカネを使おうとしない。逆に、経済規律が最も低いのは政府で、負債が積み上がっている」p92
    「日本の不平等拡大の主要要因は人口高齢化であり、同一年齢世帯内の所得格差はほとんど拡大していない。所得の多い高齢世帯の比重が大きくなっているとともに、もともと高齢世帯の所得格差は若年世帯の格差よりも大きいため、国全体では、不平等度は拡大しているという計算になる」p170
    「(日本のサービス産業発展の道)道は大別して2つあると思われる。1つは、苦手の生産性の向上を、おもてなしを維持しつつ実現する道。その際には、ITの活用が大きな鍵になるだろう。2つ目は、サービス産業の国際展開を図ること」p264
    「おもてなしの国日本は、その生産性の低さをなげくのではなく、おもてなしをますます磨き、かつ、おもてなしをモノとの協働で生かしていく。それが、国内外でサービス産業が発展する基本の道のようである」p267
    「シニア需要の特徴は「多品種、少量、便利、割高」」p277

  • 合成の誤謬とつじつま合わせが経済を導く。

    戦後、日銀は自動車は輸入すればいいと考えていた。
    産業観で、国単位の国際競争力に差がある。自動車とコンピュータ産業。技術蓄積の差、人件費の差、言語の壁などがある。

    神の見えざる手と神の隠す手。

    価格効果(やすければ売れる」と資産効果(金融資産が増えると消費が増える)

    1991年の株価大暴落、同じ年にソ連が崩壊。

    リーマンショックでは円高が進んだため、日本が一番被害を受けた。

    ビッグマック指数。一人あたりGDPでビックマックがいくつ買えるか。日本はかなり多い。所得に比して物価が安い。

    安定性の罠=冒険を阻害する。

    ポーランドの市場経済移行の混乱=市場インフラと守られる法律がない。
    日本の明治維新後の経済発展の基盤に責任ある行為を取るという社会的基盤があった。

    具体的な制度は環境が整わなければ機能しない。

    市場メカニズムは格差拡大のプロセスを内包する。勝者はより勝者になりやすい。敗者が育つまでの時間的余裕がない。必要な余裕がない。
    格差がもたらす順機能=競争がインセンティブになる。

    金融取引は規模の拡大が簡単なので、バブル化しやすい。素人の参加。金融商品は互換性があり波及しやすい。

    民事再生法と住宅ローンの証券化は、意図せざる結果につながる。

    日本のサービス業は生産性が低いイメージとサービスの質が高いというイメージ。このふたつは関連している。

    シニアは、経済的、健康、嗜好などばらつきが大きい。

    歴史は跳ばない。跳んだように見えても、蓄積が決壊しただけ。

  • ◎日本経済は、この20年間、ほとんど成長していない。
    この「成長しなささ」は、国際比較をすると衝撃的。
    アメリカは、この20年間でGDP2.2倍。日本は、”3%マイナス”

    ◎成長しなくなった今の日本の最大の問題は、国民の心理的エネルギー水準の低迷であろう。

  • 2017年はなかなかいい本と巡り合えているような感じが
    します。久しぶりの伊丹氏の本。今回は経済ではありますが
    経済学というよりも、教養としての経済。経営としての
    経済。哲学としての経済。人間学としての経済というところ
    がよくわかる内容だと思います。
    自己啓発系よりも仕事に対して非常に有意なTIPSを
    もらえる内容です。
    『神の隠す手』
    よく言われていた話ではありますが、『経済をなすもの
    としてカネ、情報、感情』

  • 読了

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著者プロフィール

国際大学学長、一橋大学名誉教授
1969年一橋大学大学院商学研究科修士課程修了。72年カーネギーメロン大学経営大学院博士課程修了・PhD。その後一橋大学商学部で教鞭をとり、85年教授。この間スタンフォード大学客員准教授等を務め、東京理科大学大学院イノベーション研究科教授を経て2017年9月より現職。

「2019年 『激動の平成 日経 平成三部作』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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