先生、どうか皆の前でほめないで下さい: いい子症候群の若者たち

著者 :
  • 東洋経済新報社
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  • Amazon.co.jp ・本 (259ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784492224021

作品紹介・あらすじ

ほめられたくない、目立ちたくない、埋もれていたい……。今、こんな若者が激増中!
・「成功した人もしない人も平等にしてください」
・選択の決め手はインフルエンサー
・「浮いたらどうしようといつも考えてます」
・LINEグループで育まれた世界観
・もう「意識高い系」とすら言わない
・上司からの質問を同期に相談する
・自分に自信はないけど社会貢献はしたい
令和の時代の重大異変を、イノベーションとモチベーションの研究家が徹底分析します!

感想・レビュー・書評

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  • 【感想】
    みなさんが仕事絡みで一番「嬉しい」と感じるときはなんだろうか。わたしは「自分がいない場(飲み会など)で自分をほめられること」だ。人前でほめられるよりも、陰でほめられる方が圧倒的に嬉しい。衆人の前でほめられるのは何となく気恥ずかしいし、嬉しいながらもリアクションに困ってしまう。奥手な日本人らしい贅沢な悩みだと言えるかもしれない。

    本書を読む前は、「今の若者も嬉しいより照れるが先に来るのかなあ」などと見当はずれなことを考えていた。しかし、読んでから、もはや事態はそのレベルに無いことを知る。「何となく気恥ずかしいから」「リアクションに困るから」という問題ではなく、「人前でほめられるのに恐怖する」のだ。

    いったい何故ほめられるのに恐怖するのか。
    それは自分の能力への自信の無さ、そして人と外れた行動をすることへの嫌悪があるからだ。
    現在の大学生の多くは、自己肯定感が低く、能力の面において基本的に自分はダメだと思っている。その心理状態のまま人前でほめられることは、ダメな自分に対する大きなプレッシャーにつながる。つまり、ほめられることはそのまま自分への「圧」となるのだ。
    また、ほめられた直後に、それを聞いた他人の中の自分像が変化したり、自分という存在の印象が強くなったりするのを、ものすごく怖がる。ほめられる嬉しさよりも、目立つことに対する抵抗感が勝るのだ。

    ここまで来ると「流石に被害妄想なのでは……」と感じてしまうかもしれない。しかし、これは全国の若者に共通した現象であり、事実として徹底的な横並びを好むことが、アンケートで分かっている。ナンバーワンよりオンリーワンという時代はとうに過ぎ、今好まれるのは「ありふれた一人」である。自信が無い、自分では決められない、外れたくない……。そうした同調的感情によって、自らの意志決定すら他人に合わせようとするのが、現代の若者なのである。
    ――――――――――――――――――――――――――――
    以上が本書の一部である。
    読んだ感想だが、ジェネレーションギャップだらけで眩暈がしそうだった。しかも、ジェネレーションは「二世代差」がついている。
    例えばメディア広告のありかた。かつてのCMのような一方的な広告から、SNSを使った双方向コミュニケーションに軸足が移った、というのはよく聞かれる。しかし、今ではそこからさらに変化している。SNSは依然広告の場として生きてはいるが、若者が好むのはインフルエンサーによる一方的なコミュニケーション(レコメンド)だ。その背景には「自分で決められない」といういい子症候群が関係している。好まれる広告のあり方が、一周して元に戻ってしまったのだ。

    本書には、「では今の若者はどう感じているだろうか」という問いがたくさんある。わたしは、「今は時代が進んでいるから、きっとこんな感じだろうな」とメタ的に考えて回答していた。しかし、実情はそこからもさらに外れ、二世代分のギャップが生じてしまっているのだ。

    わたしは「今の若者は~」論があまり好きではない。そもそも私もまだ20代だ。しかし、もう20代すら「2周遅れ」の時代が来ている。「今の若者は~」論を避けようなどと言ってられないと感じた。ぜひ積極的に論じるべきであり、その足掛かりとなる一冊である。
    ――――――――――――――――――――――――――――

    【まとめ】
    1 目立ちたくない――いい子症候群の若者たち
    今の若者(大学生から20代半ば)は「いい子」である。
    いい子には、「いい子症候群」と呼ばれる次のような行動原理がある。
    ・周りと仲良くでき、協調性がある
    ・一見、さわやかで若者らしさがある
    ・学校や職場などでは横並びが基本
    ・5人で順番を決めるときは3番目か4番目を狙う
    ・言われたことはやるけど、それ以上のことはやらない
    ・人の意見はよく聞くけど、自分の意見は言わない
    ・悪い報告はギリギリまでしない
    ・質問しない
    ・タテのつながりを怖がり、ヨコの空気を大事にする
    ・授業や会議では後方で気配を消し、集団と化す
    ・オンラインでも気配を消し、集団と化す
    ・自分を含むグループ全体に対する問いかけには反応しない
    ・ルールには従う
    ・一番嫌いな役割はリーダー
    ・自己肯定感が低い
    ・競争が嫌い
    ・特にやりたいことはない

    今の大学生が「一番嫌な授業」は、難しすぎる授業でも一限の授業でもない。「当てられる授業」だ。
    もし当てられて正解した学生をほめたとする。すると、「先生、どうか皆の前でほめないで下さい」と言うのだ。

    何故ほめられるのが嫌なのか?その理由は2つある。
    1つ目は、自分に自信がないこととのギャップだ。現在の大学生の多くは、自己肯定感が低く、能力の面において基本的に自分はダメだと思っている。その心理状態のまま人前でほめられることは、ダメな自分に対する大きなプレッシャーにつながる。つまり、ほめられることはそのまま自分への「圧」となるのだ。
    この「ほめ」=「圧」という図式は、いい子症候群の大きな特徴だ。
    2つ目は、ほめられた直後に、それを聞いた他人の中の自分像が変化したり、自分という存在の印象が強くなったりするのを、ものすごく怖がる。ほめられる嬉しさよりも、目立つことに対する抵抗感が勝るのだ。


    2 競争したくない――横並び主義
    次の4つの選択肢のうち、どれが「最も公正な分配」だと思うか?
    ①平等分配
    ②必要性分配
    ③実績に応じた分配
    ④努力に応じた分配
    このアンケートは実際に1998年に調査された。その時は、④の努力に応じた分配が半数以上を占めている。特に女性は④の割合が高く、男性はやや③にも寄っていた。

    ところが、2018年から2020年にかけて筆者が大学生に対して行った調査では、①が男女ともに50%近くを占めた。②の必要性分配は5%のみになり、③は15〜20%弱。④の努力分配は50%→25%に半減した。

    若者は横並び主義を好み、競争が嫌いなのだ。
    正確には、「自らの意思で競争に参加し、勝利したい」という意識が弱くなっている。負けたくないという気持ちはあるが、それ以上に「負けるのが怖い」という感情があり、それならば初めから競争しない、という結論に至るのだ。

    かつてのゆとり教育は、「競争環境を緩和する代わりに、個の経験や体験を重視し、自ら学び、考える意欲や態度を育む」ものだった。しかし、その課題として立ちはだかったのが、主体的な学びの基礎となる「思考力、判断力、表現力、技能」や「関心・意欲・態度」をいかに測定・評価するかだった。必要なのは客観的に測定できる指標だが、思考力や意欲は目に見えない。
    そこで、授業中に質問した回数や、自ら課外活動に取り組んだ回数など、行動としてわかりやすく表出するものをカウントすることになる。これが「競争環境を緩和する(他者と歩調を合わせる)」という協調路線と食い合わなかった。結果として残ったのは、「目立つ行為を控える」「仲良く振る舞う」という、同調のための演技だった。


    3 自分で決めない
    今の若者は、消費行動すら自分で決めない。
    マスメディアを中心とした従来のプロモーションは、一方通行の情報発信を基本としてきた。一般的には「双方向のやり取りができないという短所がある」と言われている。
    しかし筆者は、一方通行型メディアの問題点は「消費者が受け取った情報を自分で解釈しなければならない」ことだと考える。
    自分に合うのか合わないのか、好きなのか嫌いなのか、正しいのか正しくないのか。こんなごく簡単なことでさえも、いったん「球を持たされる」ことに現在の若者は抵抗を覚える。
    したがって、若い消費者にとってどんなに有益と思われる情報を提供したとしても、購買に結び付くとは限らない。むしろ、情報を提供すればするほど、意思決定からどんどん遠ざかる可能性すらある。

    今は、従来とは違う理由で一方通行の情報発信が好まれる。インフルエンサーがただ「おすすめ!」と言うだけの情報は、一旦持ち帰り、熟慮し、自分で意思決定せよ、のプロセスがない。自分で決めることは、もはやストレスなのだ。


    4 「安定している企業」の変容
    就活生の一番人気は「安定している会社」である。
    「安定している会社」とは「つぶれない会社」だと思っていないだろうか。その認識は今の大学生も共通しているが、これに加えてメンタル的な意味での「安定」も今では含まれている。
    周りがガシガシしてない感じ。上司とか先輩がガンガン来ない感じ。ルーチンな感じ。お前は何がしたいんだ、とか、まだ若いんだから、とか言われない感じ。つまり、安定したメンタルで働ける、というニュアンスを含めての「安定」なのである。

    一方で、企業が学生に求める資質・能力は、文系・理系学生ともに断トツで「主体性」となっている。次いで「実行力」、「課題設定・解決能力」と続く。
    両者のギャップは広がる一方だが、それは
    ・企業は「主体性」や「実行力」を備える学生を強く欲しながらも、それを備える学生に対し明確なインセンティブを設けていない
    ・学生は「主体的に動かれたし」というメッセージを企業からの搾取と感じ、むしろそのシグナルを発する企業を避ける傾向にある
    などの理由がある。

    今の若者の働き方の特徴としてよく耳にするのは次のような意見だ。「若者は積極的にワークライフバランスを取りに行っており、それぞれが好きなことを大事にする。働き方を考えるときも趣味の時間の確保が最優先であり、給料がそこそこでも残業が少ない会社を選ぶ」。しかし、これは誤解だ。
    いい子症候群の視座からは、積極的にワークライフバランスを取る時点で意識高い系なのだ。プライベートの時間を重視したい、私生活を豊かにしたい、といった「○○したい」という表現自体、意識が高い証拠であり、いい子症候群らしくない。いい子症候群の若者は、むしろ「○○したくない」というリスク回避思考が中心となる。
    そして、人に譲れない趣味を持っている人間は、いい子症候群にはほぼいない。特にやりたいことはなく、ただ何となく過ごすための時間を、とりあえず確保しようとしているだけなのだ。


    5 社会貢献に興味はあるけれど……
    若者の仕事観で良く聞かれるのが以下のようなものだ。
    ・とにかく人目は気になるし競争もしないけど、自分の能力を活かしたい
    ・そこそこの給料をもらい残業はしないけど、自分の能力で社会貢献したい
    ・自ら積極的に動くことはないけど、個性を活かした仕事で人から感謝されたい
    ・社会貢献といっても、見ず知らずの人に尽くすとかではなくて、とにかく「ありがとう」と言ってもらえるような仕事がしたい

    日本の若者は他国と比べて、「社会貢献意欲」が高いことが明らかになっている。しかしその社会貢献の意味は、
    ・誰かに「貢献する舞台」を整えてもらった上での貢献
    ・責任を取る誰かがいて、調整してくれて、意思決定もしてくれて、その上で自分らしさを発揮するお膳立てをしてもらってからする社会貢献。
    ・事後には「君がいてくれて本当に良かった。いつもありがとう」と言ってもらう社会貢献。
    つまり、社会貢献とは「誰かにやってくれと言われればやる」「感謝されればやる」ものであり、自発的にするものでは無くなっているのだ。


    6 なぜ、目立ちたくないのか?
    どうして今の若者は目立つことを嫌うのか。
    それは、自分に自信がないからだ。
    日本のアントレプレナーシップ・レベルを調査した結果によれば、日本の大学生には、「能力がない」「経験がない」という自分自身に関する不足感が、諸外国と比べて圧倒的に高い。しかも、日本だけの特徴として、「知識・能力・経験の自己認識が高い人たちのほうが、失敗への脅威を強く感じている」という結果が明らかになったのである。「備えあれば憂いなし」というが、「備えれば備えるほど憂う」のが日本人なのだ。


    7 今の若者に一言
    安定、平穏、普通……。今の若者が人生に望むことだ。
    しかし、「平穏」や「普通」なんて、今の日本で得られる最上級の待遇だ。誰しもが受けられるわけではなく、そんな幻想は今すぐ捨てたほうがいい。他人に自分の人生の決定権を委ねることは決してあってはならない。

    いい子症候群を増殖する空気を広く蔓延させているのは、実は若者であるあなた自身だ。人は空気の発生源を自分の外側にあると考える。だが、空気の源はあなた自身なのだ。
    確かに誰かの発言を笑う人はいる。ではあなたは、その笑いに続いたことはないと言えるか。ほんの少しの笑いの連鎖が、笑われた側の人生を生涯にわたって支配し得る。そこに年齢差があればなおさらだ。それが同調圧力となって、社会に根を張り続けるのだ。

  • まず、きちんとデータに基づいた論調ながら、堅苦しくなくギャグテイストな語り口で非常に読みやすかった。
    それでいて、大変お耳が痛い。
    まさに、この本で論じられし若者世代の私ですが、大学生あるあるなんて、もう思い当たりすぎて…。
    周りを見つつ、自分はそんなことない!って思って生きてきてましたが、思い当たるところ沢山あるなぁ…。いい子オーラ振りまくのだけ上手いとことか…。無自覚でやっているんだから恐ろしい。
    気が付けたことが財産です。

  • 軽い口調と著者が時間をかけて収集したデータベースの解説が心地よい本でした。現代の若者が見えている世界観を大人の感覚に落とし込んで、ハッと気付かされることの多い本でした。そんな若者たちの雰囲気を生んでしまったのもまた大人たち。挑戦し続ける大人として最前線に立っていたいものです。

  • 【内容紹介】
    ほめられたくない、目立ちたくない、埋もれていたい……。今、こんな若者が激増中!
    ・「成功した人もしない人も平等にしてください」
    ・選択の決め手はインフルエンサー
    ・「浮いたらどうしようといつも考えてます」
    ・LINEグループで育まれた世界観
    ・もう「意識高い系」とすら言わない
    ・上司からの質問を同期に相談する
    ・自分に自信はないけど社会貢献はしたい
    令和の時代の重大異変を、イノベーションとモチベーションの研究家が徹底分析します!

    ・‥…━━━☆・‥…━━━☆・‥…━━━☆

    タイトルと目次だけ一見すると、所謂「近頃の若者は」をデータと論理で分析して評価しているだけの本かと思いましたが、全然違いました。一気読みでした。私自身、我が子たちはこれから小学生、そして職場でもこれから若手の部下を持つか持たないか…というぐらいの今の年齢で、この本に出会えてよかったです。この本は、現代の若者の心理状態を少しでも理解することでにより、教育や子育ての舞台でも必ず役に立つ内容だと思います。

    まず、内容が非常にわかりやすく、かつ若者だけでなく自分自身にも心当たりがある部分があり、すごく心に突き刺さりました。筆者は「最近の若者にはいい子症候群が増えている」と述べていますが、それはおそらく他の世代にも一定数おり、世の多くの人(特に日本人)に当てはまる特徴だと思います。若者にマウント取ろうと思ってこの本を手にしたら、きっと痛いしっぺ返しを喰らうと思います。
    あと、最後の9章・10章での大人・若者それぞれへのメッセージの熱量にあてられてしまいました。筆者は金沢大で教鞭を取る現役の教授さんとのことで、学生たちへの溢れる愛と期待が痛いほど伝わってきました。きっととても大変だけどとても学べるゼミなんだろうな笑 私の大学時代の恩師も似たような感じだったので、自分自身の経験に置き換えて感じてしまったのかもしれません。あの頃を思い出して涙が出るかと思いました。私の恩師にも是非読んでもらいたい、そして「先生のお考えはどうです?」と、学生時代のように深夜まで意見を交わしてみたいと思いました。

    そして何より、最近の若者を批判的に捉えず、私たちの時代よりも繊細でバランスの取りにくい世界を生きてきているのだということを理解すること。そして、足りない部分を陰ながら補う…そんな大人になるのが私たちの世代の責務なのだと思いました。

  • 読んでみて、自分はこの本に書かれているいい子症候群の特徴にほとんど当てはまった。典型的な現代っ子でいい子症候群なんやと自覚した。
    と、同時に自分の嫌いなところ、自信の持てないところがいい子症候群の特徴そのものだったため、自分の普段からもやもやっとした気持ちに病名が見つかったようで、安心したし、自分の性格は少数派ではなくて多数派に入っていることに気づけて自分だけじゃないんやと勇気ももらえた。
    多数派やからと安心するだけではなく、変わってみたい、進んでみたいっていう気持ちも少し浮上した。
    10章は、いい子症候群の若者に向けて書いてくれていて、私の思考や気持ちを理解して同じ目線に立って話しかけてくれているようで、とても心が動いたし心強く感動する部分があった。『勉強する動機』については、学生時代の自分はどれに当てはまるか、社会人になって仕事や勉強をしているモチベーションはどれに当てはまるかを試してみた。すると、筆者が見つけて欲しいと述べている動機で今まで主体的に勉強や仕事に取り組んでいた自分に気づくことができた。また、『やりたいこと』についても、情報収集をしたり自分を見つめながら自分自身で選択して歩んで来れてたことに気づくことができた。
    この本を読んで、自分は自分に自信のない指示待ち人間で自分ではよう考えられない典型的ないい子症候群ではあるけど、自分の気持ちに耳を傾けて目標をもって主体的に物事に取り組んできた意識高い系でもあることに気づけて少し自分の自信に繋がったし、とても嬉しくなった。自分の歩んできた人生を誇りに思ってもいいのだと低い低い自己肯定感でどうやっても上がり切らなかったのに、肯定してもいいんやってことに気づけて自己肯定感が少し上がってこの本に出会えてほんとによかったなと感動している。
    この本を読んでの自分の課題も見つかった。それは、「自分の妄想に振り回されず、ポジティブな方へ転換すること」やなと思った。どうしても、悪い妄想をしてしまって体を硬直させ、挑戦せずに安定や安心、変わらないことを選んでしまう。この部分を変えていけるよう努力してみたいと思う。

  • 大学で面白い教授の講義を受けているような感覚で読めました!
    もうね、思春期の娘がまんまこの本の中の若者です。みんなの前で質問や発表なんてとんでもない。目立ちたくない。100人いたらその100人の中に埋もれていたいと…。
    思春期だけの問題かと思っていたけれど、大学生や就活生も。こりゃ日本の将来はどうなるんだと思いますが、そんな若者を作り出したのは私たち大人になんだよな〜。
    だから最後に筆者は、私たち大人が挑戦し、行動していかなければいけないと述べている。その通り!「昔はこうだったんだよ」なんて昔の栄光を語っても若者には響かない!
    思春期から大人まで幅広い層にぜひ読んでほしい一冊です。

  • おいぃぃぃ!と「普通の」社会人なら卒倒しそうな内容だ。
    新卒の子と関わらなくなって久しいので、どんな感じか、というのは肌で感じてはいない。
    でも、若者って一括りにしてしまうのは乱暴だよね!
    とは思うが。
    今の仕事は退職情報などを見る立場で、若手の退職理由を担当部署に聞くと「上司が見てくれない」「評価してくれない」という意見が結構多いそう。
    うんうん、気持ちわかる…私もさ、評価されてない気がするよ。でも見るべきは上司、じゃなくてお客さまだから。
    うん?貢献する舞台を整えてもらいたい?
    調整してくれて、お膳立てしてもらった上で君のおかげっていわれたい?
    それは、甘えてると言われても仕方ないよ……

    最近の若者は意味不明、甘い、いや、そう思いますとも。本書を読んでしばらく固まった。
    元若者で、もう少し下の世代を育てている立場としては「ダメだこりゃ」としか言いようがありません。昭和生まれなので。
    だが、それはすべて大人をなぞっているだけなのだとしたら。
    正直その責任は私の上の世代に押し付けたい(私は管理職や経営幹部じゃないので)。
    けれど、逃げてはいけない。それは上の世代である私たちのせい。
    子供は大人の背中を見て学ぶ。危機回避能力も。

    本書はバカで愚かな若者を笑う本ではない。
    悩んで、自信のない若者へ、自分らしく自信を持って生きるための方法を伝えている。
    そして、それは本当は自信もないし、成長を実感できない大人たちへも同様に。
    自分比較で成長を楽しめ。
    たまには立ち止まって信頼できる人に自分の状況を相談せよ。
    視野を広く持て。

    大人に足りていないことが、若者を通して目の前に現れる。
    それを受け入れ、変えていけるのならば日本のこれからを変える力になる。

    本書はどの世代にもきっと刺さる。
    そして誰にとっても、大事なアドバイスが詰まっている。

  • 新聞の著者インタビューを読んで手に取った。

    衝撃的で、考えさせられるタイトルだ。挑発的でもある。

    良いことをしたら、褒める。
    そうしたら、喜ばれるのではないか?

    大学の教員として青年たちに接する著者が、現場での実体験と、豊富な資料から、その理由をわかりやすく語りかける。

    講義では、後ろの方に並んで固まって座る。

    物事を決めるために「あみだくじアプリ」はスマホに必須。

    「成功した人も、しない人も、平等にして下さい」
    「自分の提案が、採用されるのが怖いです」
    「浮いたらどうしようと、いつも考えています」

    と、多くの若者がそう思っている。

    でも、著者は冒頭から断言する。

    「若者からは、本当に多くのことを教わる。そして、もし変わる必要があるとしたら、それは彼らではなく大人が作った社会のほうだと、強く感じさせられる」(「はじめに」より)

    「挑戦が成長につながることを実感できないのは大人であり、一度失敗すると這い上がれないと思っているのも大人であり、既得権信者もやはり大人である。
     大人たちがそう思っているからこそ、それが子どもたち、若者たちに空気感染する。
     私からすれば、そんな因果応報を棚に上げて、『まったく、今の若者は覇気がなくてダメだ』なんて言っているのは滑稽ですらある。何のことはない、若者たちはこの30年間、日本の大人たちがやってきたことをコピーしているにすぎない」(P198~9)

    「私が知る限り、若者は『現役選手』しか尊敬しない。(中略)若者が変化を好まず、挑戦を避け、守り一辺倒の内向き志向となっているのは、若者が育ってきた日本社会がそうだからだ」
    「したがって、本書の提言は1つ。大人のあなたがやるべきだ。まずはあなたが挑戦するべきだ」(P225~226)

    当事者である若者たちには、具体的な2つのアドバイスを送っている。

    「質問力を鍛えること」

    意見を述べるのではなく、単なる質問でいい。

    そして、質問のあとの感情を確かめる。

    すごく緊張したなら、その分だけ心が成長した証拠。

    なにも感じていなかったなら、それは質問する素質があるということ。


    「メモの取り方を変える」

    資料の気になったところに丸をつけて、横にクエスチョンマークを付けるだけでいい。

    話し手の言葉ではなく、自分の頭によぎったことをメモする。

    たったこれだけの行為だが、効果は大きい。


    読み進めていくと、急所を突かれすぎて痛みすら感じる。
    それは、本書の主張が正確なのだからだろう。

    まずは、自分自身がどうなのか。

    他人と比較するのではない。
    昨日の自分より、一歩でも成長しているのか。

    「われ以外みなわが師」(吉川英治)

    昭和の大文豪の言葉を思い出す。

    人生100年の時代。

    「生涯青年」の心意気で、死ぬまで学び続けなければならない。

  • 序盤はただただいい子症候群と名前を付けて若者を侮辱しているようにしか感じず、うるせぇ、ほっとけよ!!と腹がたった。というか、症候群とかふざけた名前付けてやれ自主性がないだ同調に弱いだ競争思考がないだ書いているがそんな風に若者を育てたのはてめえら大人世代なんだよ。主体性を身につけさせたいなら子供の頃から量の多い課題をさせたり、皆で手と手を繋いで同じことをさせて個性を殺すような腐った教育システムを壊して、生徒一人一人の学ぶ意思を尊重した教育をしてみろよ、先生様よぉ!(怒) という気分だ。だいたい平和主義で協調性があるいい子の何がいけないって言うんだ。素晴らしいじゃないか。
    まぁしかし、ここに書いてあることには若者として当てはまることは多く、いくつか賛同できないところも、少々、いや、多々あったが、少なくとも若者を頑張って研究したんですねぇ^^ と言いたくなる。やばい、ひねくれすぎてきた。
    この本はタイトルに惹かれて、若い人向けかな?と思い手に取ったが、逆で、むしろ若い世代を理解できない年上の世代のために書かれた本なのでは無いかと思う。なぜなら若者がこれを読んでも不快になるか自己肯定感が下がり気分悪くなるからだ。年上が読んで、やっぱり今の若者は…。俺が会社で感じているイライラは正解だったんだ!と己と彼らのジェネレーションギャップを正当化するための本のように感じる。
    まぁこんなこと書いたが、私は私だ。人がどう思おうが関係ない。若い世代はこの本に書かれているよりも主体性があり、夢があり、革命を起こそうという気持ちがあると私は信じている。上の世代との関わり方はこれから社会人として働く上での大きな課題になるため、上の世代からはこのように見られているんだなという知識にはなったし、自分を身を振り返るいい機会にもなった。私もいい子になりすぎずに、自分の意志を持って生きようと思う。
    そして、自分はもう十分幸せであるというところは同意できた。
    この本で改めて思ったことは、誰にどう思われようと、私は私の生活を大切に、自分のペースで生きていこうということ。


    仕事、楽しんで頑張ろう。

  • 昨今の若者心理を学術的かつシニカルに解読する。
    そのあまりにも異なる感性に驚きはするが、全く理解できないわけではない。
    『それ分かるなあ』と思う部分も『意味がわからん』と首を傾げたくなる部分もある。
    章を読み進めるほどに呆れてしまう箇所も増える。
    だけど、第9章を読むと考えを改めたくなるはず。
    現役選手しか尊敬しない、が最も刺さった。
    いろいろ思うところはあるけれど面白かった。

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著者プロフィール

金間 大介(カナマ ダイスケ)
金沢大学 融合研究域融合科学系 教授、東京大学 未来ビジョン研究 センター 客員教授
北海道札幌市生まれ。横浜国立大学大学院工学研究科物理情報工学専攻(博士)、バージニア工科大学大学院、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)、文部科学省科学技術・学術政策研究所、北海道情報大学経営情報学部准教授、 東京農業大学国際食料情報学部准教授、金沢大学人間社会研究域経済学経営学系准教授、2021年より現職。博士号取得までは応用物理学研究室に所属し、表面物性の研究に従事。博士後期課程中にバージニア工科大学大学院へ渡米し、新規開講科目だったイノベーション・マネジメントの分野に魅了され、それ以来イノベーション論、技術経営論、マーケティング論、産学連携等の研究を進める。また「イノベーションのためのモチベーション」研究も遂行しており、教育や人材育成の業界との連携も多数。主な著書に『イノベーションの動機づけ:アントレプレナーシップとチャレンジ精神の源』(丸善出版)、『イノベーション&マーケティングの経済学』(共著、中央経済社)など。

「2022年 『先生、どうか皆の前でほめないで下さい』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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