- Amazon.co.jp ・本 (416ページ)
- / ISBN・EAN: 9784492223857
作品紹介・あらすじ
BBCが行ったイギリスの階級調査を複数の社会学者が分析した書。
従来の階級研究は、上流階級、中流階級、労働者階級の3つに分け、中流と労働者の間を明確に線引きすることが重視されてきたが、現代はそれほど単純ではない。
他から隔絶した最上層のエリートと、何も持たない最下層のプレカリアート(不安定な無産階級)という両極の間に、単純明快に分けることができない幅広い中流層が存在するという。著者らはこの中流を、経済資本(所得・貯蓄・住宅資産)・文化資本(学歴・趣味・教養)・社会関係資本(人脈)をどのようなバランスでどのくらい所有しているのかに着目して5つに分類し、7階級の存在を明らかにした。
1.エリート(elite)
2.確立した中流階級(established middle class)
3.技術系中流階級(technical middle class)
4.新富裕労働者(new affluent workers)
5.伝統的労働者階級(traditional working class)
6.新興サービス労働者(emerging service workers)
7.プレカリアート(precariat)
エリートを自覚しているくせに、自分は「普通」だと強調する現代的なエリートの姿、あからさまにはスノッブな態度はとらないが、自分の審美眼や知識をひけらかしたい豊富な文化資本の所有者など、英国階級調査参加者の偏りを補正するために行った追加的なインタビュー調査からは、現代のイギリスを生きる人々の生の声が知られ、非常に興味深い。
本書はイギリス特有の現象や慣例、考え方により叙述されるが、社会の上下両端の格差が著しいという状況は各国共通の現象であり、3つの資本が重なり合って格差が広がる実情は、私たち日本の現状にも当てはまる!
感想・レビュー・書評
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OPACへのリンク:https://op.lib.kobe-u.ac.jp/opac/opac_link/bibid/2002256474【推薦コメント:いづれ日本も…? (多分、もうすでにそう…)】
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貴族の存在等もあり、社会階層の格差は日本よりも大きいと考えていたが、想像以上に格差が大きいようだ。貴族は没落しつつあるが、それでもエリートととの差は大きく、格差が拡大しているようだ。
能力主義という言葉に騙されて、能力以外の資源の蓄積がじつは大きな要因であるが、そこは是正されないまま過度なエリート層への利益の蓄積が進む。
これは、今の世界共通の問題であり、これに対処しなければ、民主主義の終わりが現実のものとなる。 -
英国の根深い階級意識について理解。発音やイントネーションだけでなく、子どもの名前だけで階級がわかる、という件りが印象に残った。下層はより下層を敵視すること。海外に限らず日本でも起きていることだと思う。
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イギリスの階級調査報告書。全部で7つの階級に分けられ特徴を説明しているが、残念ながら自分はあまり興味をもてなかった。
面白かったのは、年収や資産、貯金額が全くちがうにも関わらず、人は自分が10段階中の真ん中ぐらいにいると思ってしまう事。この事実は頭に入れておきたい。 -
・toppointで読む
・橘さんの3つの資産と同じ。7つの違いはきちんと明確 -
P92
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イギリス国内で大々的なアンケート→イギリスの人々は経済資本、文化資本、社会資本の有無で7タイプに分けられそうである.
3つの資本は互いに関連しあい,また生まれた瞬間受け継がれるものが多い.
そのため,表面上は能力があるものが報われる制度になっている資本主義は必ずしもそうは言えない実態がある.経済資本を蓄積したものは,資本そのものの増殖機能によりどんどん他を圧倒できる.ピケティのr>gの話.
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本書の内容はタイトルの通り,例の代替定期な調査結果の掲載とその分析がかなりを占める.
イギリスと縁がない人にとっては数字や分析の羅列が続いて結構の読むのがしんどい
階級を表す言葉として,ブルーカラー,ホワイトカラーなどの2分,3分する捉え方は今の世の中,あまりにも粒度が荒すぎると感じた.今後こういう言葉の使い方は改めよう
アンケート結果をもとに"あなたの階級判定ツール"がリリースされた途端に文化資本を高めるとされる劇場のチケットが激売れしたのは人間っぽさがすごく出てて好き。
贅沢品の消費⇨中流階級のとって,上流階級に近づくこと,アイデンティティを保つための手段
⇨広告は贅沢品の消費を煽るが,人々がなぜそれに乗るのか,イマイチ腹落ちしてない部分があったが「アイデンティティを買っている」とも取れる分析を見つけ納得 -
東2法経図・6F開架:361.8A/Sa92n//K
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ウェブを活用した大規模な量的調査と、追加の質的調査から、従来の構図とは異なる英国の階級格差の実情を描き出す。文化資本格差まわりの記述がおもしろく、じつに見に覚えのある話であった。そして文化的な格差は、階級格差を見えにくいものにする。能力主義も格差を促進する。さまざまなファクターが相互作用して格差を生み出している現在、職業がベースとなるかつての労働者階級と中流階級の分裂に基づく政治は終焉を迎えていて、より解像度の高い階級の政治の構想が課題であると。
《裕福で高学歴な若年層はどんなジャンルの文化も受け入れる。しかし、それが自分の好みだと公言するには、その理由を説明できなければならない。そして、好みの幅は広いが同時に、逆説的になるならえり好みが非常に激しい。あらゆる文化的選択をするときには、さまざまな美学的原則に則り、その質や価値を注意深く評価しなくてはならないのだ(⋯)
重要なのは、彼らが評価する、あるいは好むポップカルチャーとはどういうものかという点ではなく、彼らの表現の仕方や態度の方なのだ。彼らはとことん厳密に検討している。ベネディクトは「どんな場合でもいいものを選べる人でいなきゃいけない」と言っている。「僕たちはファストフードが嫌いだ。でも、マクドナルドよりはバーガーキングの方がいいと思う。低い次元でも正しい選択をすることが大事なんだ」。》(p.108)
《上昇志向はあっても、その野心は限定的であることが浮かび上がった。イギリス社会の上層に達することは、自分の出身階級やその文化を裏切ることになると感じている人が多いのである。いずれにせよ、上層に階級を移動した回答者たちの多くが労働者階級のアイデンティティを強く保持しているという事実は、階級への義理といった感情的な力が、過去との密接なつながりの中で、さまざまな問題を複雑にもつれさせていることの証左であろう。政治は社会流動性拡大の必要を声高に訴えているが、必ずしも誰もが上層への階級移動を望んでいるわけではないのである。》(p.192)
《第9章と第10章では、こんにちの階級格差の形成に、専門技能や知識、自信が重要な役割を果たしていることを明らかにした。一方に、英国階級調査に興味を持った「普通の」富裕なエリートが大勢いることも確認した。彼らは豊富な文化資本を持ち、自信にあふれ、英国階級調査のような「科学的」な実験に関心を示す。その対極にあるプレカリアートの人々はほとんど英国階級調査に参加しない。その理由は、彼らが無知だからでも階級を意識していないからでもなく、おそらく階級分類という名前につきまとう、そこに込められているものに敏感だからだろう。否定的な判断を受けることをよくわかっているのだ。》(p.331)