村上春樹と私

  • 東洋経済新報社
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  • Amazon.co.jp ・本 (228ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784492062029

作品紹介・あらすじ

「私は完全に村上作品に魅了されたのだ。専門的な学者としてよりも一個人として、ただのファンとして、村上作品に夢中になった」――日本の近代文学の研究者であり、ハーバード大学教授であったジェイ・ルービン氏。ひょんなことから、当時話題になっていた村上春樹作品『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』を読んで、度肝を抜かれたという。それ以来、村上作品のファンとなり、村上作品を世界に紹介する翻訳者となっていく。
本書は、『1Q84』『ねじまき鳥クロニクル』をはじめとする村上春樹作品、夏目漱石『三四郎』、芥川龍之介『羅生門』など数多くの日本文学を翻訳し、その魅力を世界に紹介したジェイ・ルービン氏が、村上春樹さんとの出会いと交流、日本文学の翻訳の難しさ、そして愛する日本のことを綴る好著である。

感想・レビュー・書評

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  • 永年の大いなる疑問がある。
    もし私の母国語が英語だったとして、やっぱり今と同じように村上春樹が好きだったろうか?

    というのも、私は、村上春樹さんの書く日本語が本当に本当に好きだけど、物語の内容、つまり、ストーリーラインとかキャラクターとか結末とかは全然好きじゃないことの方が多いから。
    だから、違う言語になったら(=大好きな要素が取り除かれたら)好きじゃないかもしれない、という疑念がどうしてもぬぐえない。あるいは、「外国の人は村上春樹の何がいいと思っているんだろう?」とか。

    そういったことを考えていると「そもそもほんとに外国で受けてるのかしら・・・一部のマニア受けを日本人が大げさに言ってるだけじゃないのかしら」と疑い始めていたけど、この本を読んだら、実際に世界中の多くの人に愛されている証拠がいっぱい書かれていて、ビックリした。
    す、すいません。疑ったりして。
    でも、やっぱり、彼の何が受けているのかは、最後までよく分からなかったけど・・・。

    だけど、ジェイ・ルービンさんが、日本という国の文化と文学を本当に本当に、私などが足元にも及ばないくらい深く深く愛しておられるのは非常によく分かった。
    なんだか、その愛がまぶしくてクラクラした。
    日本人なのにロクに日本語の文学を読んでなくて、その真価も全くと言っていいほど理解してなくて、ほんとすいません・・・と言いたくなった。

    タイトルは「村上春樹と私」だけれど、前半よりも後半の、村上春樹さんとは関係のない話の方がおもしろかった。
    特に、翻訳の苦労の話(日本語は数をあんまり気にしないところ)と、検閲の話(同じ検閲でも、戦前と戦後では微妙に意味合いが違うところとか)。
    海外の編集者が世界の文学のトレンドにものすごく敏感なのにも驚いたし、編集者からルービンさんに本の企画の相談がくるところは、内容が素敵でわくわくした。もう出版されているんだけど。
    ほかにも、「MONKEY BUSINESS」がしぶとく生き残ることになった裏事情にもビックリした。すごく興味深かった。海外で継続されただなんて、驚きしかない。しかも私には思いもよらない理由で。なんだか隔世の感。

    息子さんの仕事についての話は明らかに蛇足で宣伝しすぎなような気がしたけど・・・父親として自慢でもあり、心配の種でもあるのかな。
    「日々の光」は、もともと興味あるテーマなので、ぜひ読んでみたいと思った。

  • 村上春樹の翻訳者として有名なルービン教授の翻訳夜話。
    この人のはノルウェイの森を読んだだけですが、春樹っぽい忠実な訳で良かったです。
    ネジマキ鳥は流石に長過ぎて読む気力が…

  • 日本文学、日本文化に対する熱量が半端なく、読んでいるこちらのハートが熱くなる。

    村上春樹がメインだが、芥川龍之介、能、そして、翻訳、自作の小説『日々の光』など、多岐にわたる。

    重複がいくつかあるが、微妙に異同があるので、まあ、よしとしよう。

    日本語が美しい。

  • 著者は村上春樹氏の翻訳者なので2015年に出版された小説と村上作品の雰囲気が似ているのはある意味当然、好ましく思っていた。
    ところが『日々の光』(初めての小説)は、村上春樹との交流が始まる前、既に完成していたと知り驚く。生まれも育ちも違う二人だけど出会うべくして出会ったのか。
    ほかにも運命の引き合わせのような数々の出会い、家族愛、友情などについて ルービン氏の誠実な人柄と仕事に対する真摯な姿が伝わるエッセイ。
    もともと漱石や芥川など、日本文学の研究と翻訳者だった著者と村上春樹の公私に渡る付き合いの深さは、村上作品にも少なからぬ影響を及ぼしたはず。息子さんと音楽の出会いも素晴らしい。感謝と尊敬の気持ちで読み終えた。

  • だれよりも村上春樹のファンであることがわかります。本当に心奪われてるよ。

    村上春樹にはいる前にそうとう日本文学を学んできた方で、日本文学や謡や能など日本芸能への造詣がふかく、その博識ぶりがわかる。とくによく語られるのは、夏目漱石と芥川龍之介への敬愛。江藤淳氏の研究室で夏目漱石の書に囲まれて声が降りてくるのを待つあたりとか、ルービン先生…となった。見ればなつかしや。

    『日々の光』も読んでみたい。

  • 村上春樹の海外での評価へ、翻訳に関する話しは面白かった。芥川に関する話しなんかも読んでて興味深かった。しかし、作家の個人的な日本の話しや、息子の話は残念ながら興味ない。残念ながら翻訳家であって本格的な
    作家でもエッセイストでもない。

  • 2016年67冊目。

    夏目漱石、芥川龍之介や村上春樹の翻訳を手掛けるハーバード大学名誉教授。
    村上春樹のインタビュー集によく出てくる名前なので気になっていた。
    村上作品と出会った時の衝撃からその後の追っかけっぷりまで、本当にこの人の作品が好きなのが伝わってくる。
    とても面白かったのが、翻訳時の単数・複数の使い分けの話。
    村上春樹の『1Q84』の、二つの月がタマルに見えているのか見えていないのかをめぐるシーンで、「今日は月がきれいだ」というセリフを「moon」と訳せば一つしか見えていないことになってしまい、「moons」にすれば二つ見えていることになり、どちらにしても解釈が限定されてしまう。
    結局ジェイ・ルービンが使ったのは「moon-viewing」(月見)問いう単語だった。

    「翻訳というものは一番強烈な読書方法だと言っても過言ではない。」
    「翻訳者はある程度発明家にならなければ、原作のムードやイメージを十分に読者に伝えられない。」

    一つひとつの言葉に、物凄い積極性を持って向き合い続ける翻訳者の姿勢にとても感銘を受けた。
    夏目漱石や芥川龍之介のように、現存しない作家には解釈を確認しようがないから、本当に大変なことだと思う。

    それにしても、初期三部作で出てくるバーの名前が「ジェイズバー」なのは、とても嬉しかっただろうな〜と思う。

  • 最近村上春樹の関連書物というか、エッセイとか翻訳とか色々読んでいて、なかなか村上春樹本体には取りかかれていないんだけど、なんとなくそんな感じで外堀を埋めている。
    著者はアメリカで村上春樹の著作を翻訳している翻訳家。
    翻訳家だから当たり前といえばそうなんだけど日本語に不自然な部分が全くなかった。
    『村上春樹と私』というタイトルだけれども春樹との話だけでなく、芥川など(もともと専門だったらしい)古典的な日本作家の話や、能の話なども出てきて、さすが専門家、日本に住んでいる自分なんかよりよほど日本文学に精通している。春樹とのエピソード以外の部分も楽しく読むことができた。
    著者の小説『日々の光』、少し話題になってたけど気になるな。

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著者プロフィール

ジェイ・ルービン
翻訳家、日本文学研究家、ハーバード大学名誉教授
1941年ワシントンD.C.生まれ。ハーバード大学名誉教授、翻訳家。芥川龍之介、夏目漱石などの日本を代表する作品の翻訳多数。特に『1Q84』『ノルウェイの森』『ねじまき鳥クロニクル』をはじめとする村上春樹作品の翻訳家として世界的に知られる。
著書に日米同時出版となった長編小説『日々の光』(柴田元幸、平塚隼介訳)や『ハルキ・ムラカミと言葉の音楽』(畔柳和代訳)など多数がある。
ジェイ&ゲン・ルービンHP(日本語):http://www.rubinclan.com

「2016年 『村上春樹と私』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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