日中韓を振り回すナショナリズムの正体

  • 東洋経済新報社
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  • Amazon.co.jp ・本 (252ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784492061930

作品紹介・あらすじ

昭和史の泰斗2人が、いま日中韓で燃え上がるナショナリズムの実体について分析。背景にある歴史問題を直視し、憎悪の連鎖に歯止めをかけるための提言を行う。そして、他国に振り回されず権力に踊らされない、健全な日本人のナショナリズムの在り方についても示す――。大好評『そして、メディアは日本を戦争に導いた』に続く迫真の対談。



◆前帯コピー

“憎悪の連鎖”をどうやって断ち切ればいいのか

“自虐史観”“居直り史観”を共に排して、歴史を直視すれば、
解決の道は見えてくる――。

「気づいたら戦争」にならないための“本物の愛国者”入門。



◆後帯コピー

●出版メディアは、嫌中、嫌韓を無責任に煽(あお)り商売にしている
●戦後の「イヤだイヤだ反戦」でナショナリズムが歪(ゆが)んだ
●昭和の戦争を検証せずに軍拡を叫ぶのは、本物のナショナリストではない
●韓国併合は、日本にとっては侵略というよりも国防だった
●自国の誇りが高く、他国への感情が変わりやすい韓国ナショナリズム
●中国人への蔑視は日清戦争から始まった
●中国共産党にとってナショナリズムは統治の手段にすぎない
●竹島や尖閣の問題は、日中韓の国家ナショナリズムに利用されている
●日本のタカ派的言動は中国軍部に利用されるだけ
●国家総動員法と集団的自衛権、歴史が教える白紙委任の危険
●復讐戦を放棄した戦後六九年こそ、誇るべきナショナリズム
●庶民の健全なナショナリズムこそが日本を救う
●大正の論客が教える、戦争を絶滅するための法律        
――本書より

感想・レビュー・書評

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  • 195

  • 留学時代、世界の色々な国の友人らと話していて、これまで自分は恥ずかしいほどに歴史を、特に近現代史学んでこなかったと自覚して以来、ずっといつかきちんと考えてみようと思っていた。

    半藤氏の昭和史などを読んでから、ついに気になっていたこの本を手にとった。

    一番印象に残ったのは「過去の戦争の直接の責任は自分にはない。しかし人間としてはあってはならない悲惨なことをしたことが悲しいし、かつての加害国の人間として歴史を繰り返さないよう努力をする」という趣旨の部分だ。
    自分がマジョリティ側、もしくは力を持つ側にいるあらゆる社会問題を考える時にも感じていたことだが、自分自身の行動でないことに対して過剰な罪悪感を持つと、突き詰めれば自分を消さなければいけなくなってしまう。それは健全な考え方ではないと常々思っていたので、この考えには共感した。


    私がこの国の態度として一番気になっているのは、過去のことをなかったこと、過ぎたことにしてしまおうとしているように見えるところだ。
    戦時中の非道な行為について贖罪は済んでいるという意見もあろうが、「私たちは忘れていない、今後も同じ過ちを繰り返さないよう全力を尽くす」という決意を表明することはずっと続けていくべきである。

    韓国人・中国人の友人を持つ者として、K-POPを始めとして隣国の文化に関心を持つ者として、相手の視点と自分の視点の双方で物を考え、この問題について引き続き考えていきたいと思った。

  • 今、日中韓の関係が悪化している。まるで戦争前のような状態である。ナショナリズムを振り回して関係悪化をアジっている者も多い。この本では本当のナショナリズム・愛国心とは何かについて書かれている。戦争は庶民を不幸にする。戦争を起こす指導者は死なない。狡いと思った。

  • ナショナリズム=愛国心は、愛郷心のようなかたちで本来誰にでもあるものだ。が、権力と結びついているナショナリズムというものがあり、それが意図的に前者のナショナリズムを扇動し、政治的に利用しようとする構図がある。それがタイトルにある、日中韓でいま相互不信をかりたてているナショナリズムの正体だ。それぞれの国がどのような歴史的な背景でナショナリズムを持ち得、それがどのような意図で利用されているのか。太平洋戦争時の軍部が誘導した日本のそれ、共産党・国民党の対立が元になっている中国の反日教育、韓国人の誇りの高い国民感情、本書は、それらの主たる理由を簡潔に紹介し、それを正しく知ることなく、悪感情をもって自国のナショナリズムを高める態度に警鐘を促す。日本は戦後代々の政権は、太平洋戦争時のファシズムへの忌避感からそれをあおることをずっとしてこなかったが、ここ最近、特に安倍内閣がさかんに煽るようになったと、その危機を指摘しているが、言われてみれば確かに少し前なら、口にしなかったようなことを平気で言うように時代が変わっていることは確かだ。

  • 引用省略。

  •  本書は、昭和史の大御所二人の対談である。「ナショナリズム」という妖怪を断罪する意見は、大いに説得力はあるが歴史の読み物としては、今ひとつ面白みに欠けるように思える。
     歴史書をある程度読んでいると、本書には新しい発見や知見は見いだせないように感じられて、物足りないのかもしれない。ちょっと、残念。

  • アメリカが何か言うと外務省の役人が走り回る、と後藤田さんが行っていた。きっと外務省は戦争のできない日本をずっと苦々しく思っていた。だから俺たちが走り回らされるんだと。
    太平洋戦争に負けたとき、日本人の心にあったのは生活の立て直しだけで、自分たちの本当の国民主義的なナショナリズムに思いを致す余裕がなかった。新しい国家づくり、どんな国家を創ったらいいかを追求するナショナリズム、その力も情熱もなかったのが事実、つまり虚脱していた。

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著者プロフィール

半藤 一利(はんどう・かずとし):1930年生まれ。作家。東京大学文学部卒業後、文藝春秋社入社。「文藝春秋」「週刊文春」の編集長を経て専務取締役。同社を退社後、昭和史を中心とした歴史関係、夏目漱石関連の著書を多数出版。主な著書に『昭和史』(平凡社 毎日出版文化賞特別賞受賞)、『漱石先生ぞな、もし』(文春文庫新田次郎文学賞受賞)、『聖断』(PHP文庫)、『決定版 日本のいちばん長い日』(文春文庫)、『幕末史』(新潮文庫)、『それからの海舟』(ちくま文庫)等がある。2015年、菊池寛賞受賞。2021年没。

「2024年 『安吾さんの太平洋戦争』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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