石橋湛山の65日

著者 :
  • 東洋経済新報社
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  • Amazon.co.jp ・本 (336ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784492061923

作品紹介・あらすじ

石橋湛山は首相としての在任期間がわずか65日である。近代日本史の上では最短に近い。しかし私は、「最短の在任、最大の業績」と思っている。これに対峙するのは「最長の在任、最小の事績」という言い方をしている。
石橋はわずかの期間だったが、言論人の時の自らの信念が政治の年賦に刻まれていると思えば、宰相の意味も変わってくるし、その重みも他の総理とは異なっている。最長の首相がさしたる事績が残さなかったとするならば、そこに比較しても首相の格の違いが浮き彫りになるだけではないだろうか。
石橋はその短い在任期間に、首相というのは日頃から思想や哲学を明確にしておくことの重要性を教えた。首相が何を目指し、どのような方向に、この国を率いていくのか、そのことを国民は知りたい。それは首相を目指す政治家が日頃から信念を発信する姿勢を持たなければならないように思う。石橋を真似せよ、と強調しておきたいのである。
──〈おわりに〉より

太平洋戦争の終戦から10年余の時を経た昭和31年、国内政治の民主化と自主外交を旗印にした石橋湛山政権が誕生した。だが、わずか65日の短命で終わる――。そして、日本は自主性なき外交の道を歩み出した。戦前・戦中から一貫して小日本主義、反ファシズムを唱え続けた反骨の言論人が、戦後、政治家の道を歩み、首相の座を降りるまでの激動の保守政治の史実を克明に描き、短命に終わった〝まぼろしの政権〟が日本人に投げかけた謎に迫るノンフィクション。新型コロナウイルスの未曾有の危機が立ち去った後、日本の前途は洋々たりと歩むために立ち返るべき、もう一つの戦後史!

感想・レビュー・書評

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  • 戦後GHQの経済政策にたてついて後暗い所がないにも関わらず公職追放の憂き目にあった湛山。その時の軋轢から吉田と仲違いするが、政策的にはその後行動を共にする河野や鳩山よりも近かったそう。
    湛山でさえも血みどろの権力闘争をしなければならなかったのだなと感じたか、自分がジャーナリスト時代に批判した浜口のニの轍を踏まないようわずかな期間で退陣したのは湛山らしい。
    もっと長く政権を担えたら日本はもっと違っていただろうという論はそのとおりだと思ったし、岸や孫の安倍の姿を見るにつけ、残念だったと思うばかりである。

  • つまり、首相であった65日間にではなく、その前の民間の言論人であった時代、大臣になった時代になした言動から、評価されている人なんだな。
    この人がこんな短い期間ではなく、三年、あるいは安倍さんのように長期に渡って在任していたらどんな時代になっていたのだろうか。
    外交面でも本当にバランス感覚に長けていた人のようだから、今のロシアにどのように処するのだろう。
    ただ、今いない人のことをたらればでいくら論じて見ても現実は変わらないわけだから、次の石橋湛山を見つけまたは生み出さない限り、良くはならないのだろう。

  • 2023年3月27日読了

  • 石橋湛山は、かねてから高評価の悲劇の宰相である。
     この書で再認識したのは、その次の首相のこと。
     石井が、どのような政治家だったのかは、今となっては全く分からない。
     岸(その後の佐藤)については、書かずもがな。ただ、ある方が危惧したというのは、今まで知らなかった。この部分が本書で一番勉強になったことだ。
     
     

  • 55年体制に至るまでとその後の流れがどの様なものであったか、また、今までよくは知らなかった歴代首相の政治姿勢がよく分かり、勉強になる良書。

  • 石橋湛山がわずか65日の首相期間で成しえたこと。

  • 石橋湛山の人となりと歴史的位置付けをよく理解できる良書

  • 東2法経図・6F開架:312.1A/H91i//K

  • コロナ禍の混迷の中、石橋湛山氏がクローズアップされる。
    軍国主義の時代に合っても民主主義国家を主張。
    戦後GHQにも屈しなかった。
    その一貫した姿勢が、リーダーシップの強さとして求められている。
    ただ本書は石橋湛山氏の今日的価値を表すのに成功したとは思えなかった。
    本書の描くのは戦後日本政治の政争の歴史であって、政策の歴史ではない。それは戦後日本が、米国の傘の下、「小日本主義」でやってこれた結果である。まさに吉田茂総理が軽防衛・米国依存で「経済優先」の国家戦略の賜物である。
    戦後復興のときに、自立・自尊を国家戦略とするのは、理念としてはあっても現実的ではない。
    あのとき国民は飢えていた。
    高度成長を成し遂げ、成熟の停滞下にある日本が、コロナ禍という非常時を迎えた今、改めて「真の自立」を必要とする。それを本書で訴えるのが保阪正康氏の狙いであろう。

    石橋湛山氏の3つの柱
    ①小日本主義
    ②反ファシズム・平和主義
    ③論理主義(科学主義)

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著者プロフィール

1939年生まれ。同志社大学卒業。ノンフィクション作家。とくに昭和期の軍事主導体制についての論考が多い。

「2022年 『時代の反逆者たち』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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