昭和史(下)

著者 :
  • 東洋経済新報社
4.02
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感想 : 14
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  • Amazon.co.jp ・本 (464ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784492061879

作品紹介・あらすじ

武装を好まぬ「経済大国」はいかに育まれ、ピークを迎えたのか。敗戦後の息詰まる外交、めざましい経済復興、続く国際化の時代。政治・経済・社会・文化を複合的にとらえた現代史。第20回大佛次郎賞受賞。

感想・レビュー・書評

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  • 本書は上巻の続きとして太平洋戦争敗戦後の1945年から昭和天皇が崩御する1989年までの昭和後期を記述しています。上巻同様に全般的に平易な文言が使われているため一貫して読みやすいです。ただし著者自身も田中角栄内閣以後は政治がつまらない、と記述しているように、下巻の後半は特にクライマックスもなく淡々と消費税導入やリクルート事件などのイベントを説明している感はあります。
     その意味で下巻のクライマックスはむしろ前半で、日本がいかに戦後GHQの占領下で強引に既得権益の排除に努めたか、そして所得格差を急速に解消し、また朝鮮特需などの外需も幸いし1955年には戦前の経済水準まで戻し、また1960年代には「所得倍増計画」のもとベビーブーマーの就労なども追い風となって、一気に先進国に駆け上がった様が生き生きと記載されています。
     また上巻との違いは、下巻では経済と政治が中心で文化面の記述がほとんどないことです。若者が漫画・テレビなどに浸ってしまい、知的努力を放棄してしまったのではないか、と本書の中で嘆いているのが特徴的ですが、人によっては下巻に漫画、アニメーションの勃興を重要テーマとして書くと思いますね。昭和元年生まれの著者からするとそこは素直に受け入れられなかったのかな?とも感じました。しかし全体で共通しているのは、たくさんのデータの裏付けがあって、なるほどと思う点がたくさんあることです。できるかぎり客観的に、という姿勢がうかがえる良書だと思います。アジア情勢の緊迫化や沖縄問題など、今足下で沸騰している問題の根本が書かれているので、とても勉強になります。

  • 上巻が2度に渡る大戦を中心としていたのに対し、下巻の本書は、政治の季節を終えた日本がどうやって経済主体の国作りをしていくか、そんな内容である。従って、政治を描いていく言葉以上に、経済を語る言葉、経済学や経営学で使われるような言葉でもって国の形が描かれるようになる。つまり、日本の動向をあれこれ話そうという時、高度成長期やそれ以後のことは、経済の言葉が必要とされるのである。それだけ日本国民の意識や居場所は、経済活動に軸足を移していたのだろう。そう考えると、近年デジタル化が強力に推進されている点からも、ITの知識が国の形を語る上で欠かせなくなり、そのためのプログラミング教育必修ということだろうか。私は中年期に入るあたりから経済の学習に力を入れ、現実生活の維持・向上を図った面があるとはいえ、現実の流れはそれを上回るばかりに激しく変化し、そう思うと、恐ろしい気持ちになる。

  • http://www.byflow.com/item/asin/4492061851 に引き続き、ようやく読了、大部だが、時代が下ってくると自分が生きた時代に突入して、背景情報を取得する頑張り具合が減って、読むスピードが上がったか。とはいえ、著者も認めているように、高度成長期前半ぐらいまでが、面白く そのあとは、まあ記憶を新たにしても、日本の迷走ぶりが確認出来る感じ。2014/07/28

  • 下巻では、1945年から89年までの歴史が語られています。

    上巻と同様興味深く読みました。ただ、終戦を境に上巻と下巻に分かれているためにそうした印象を受けただけなのかもしれませんが、戦前および戦時期と戦後との連続性に関して、若干説明が手薄になっているような気がします。経済にかんしては、近年野口悠紀雄が『戦後日本経済史』(新潮選書)で戦時経済体制が戦後の日本経済におよぼした影響について立ち入った考察を展開していますし、科学史の分野では廣重徹が早くからそうした問題について鋭い分析をおこなっていたことはつとに知られているとおりです。

    また、朝鮮戦争やオイル・ショックなどの大きな振幅を孕みつつも順調に経済成長を遂げてきた戦後日本における文化や人びとの意識における大きな変化についても、もうすこし立ち入った説明がほしかったようにも思います。もっともこれは、ないものねだりに類する不満なのかもしれません。

  • 戦後の混乱期、もはや戦後ではない、そして、高度経済成長。その中で、自民党の長期政権の中に生じた序列化と田中角栄時代に顕著になった政治とカネの問題。地方と都市を行き来する政治家が資金調達するには当然癒着が生まれ、そしてその反動として三木内閣による潔癖政治へという流れ。中曽根、竹下、宮澤

  • リクルートてとんでもないことしといてよくまあ同じ業種でトップで君臨してるもんだと思うんですがどんな経緯でそうなっているのかしら。というのは戦後史で見ても末端の出来事で、ダイナミックな動きを見せているのはそれより前の話ですね。自民党内で緩やかに政権交代をしている、と書いたのは前都知事だったかしら、彼は前向きに捉えていましたが、本書では吉田から始まる米追従路線が内閣が変わっても不変であり、と見ており、果たして今後はどう推移していくんでしょうね。

  • 歴史は現代に近づくにつれて見えにくくなる。
    歴史的解釈がしにくくなるから。それは枝葉末節まで見えてしまうからなのか、単にグローバル化による主体の多層化、複雑化が見られるからだろうか。

    本書には、第一次大戦後から今日(1990年ごろ)までが、大変詳しいところまで収載されていた。高校日本史に穴のある私には難しかったのは紛れもない事実である。
    歴史ファンやこの時代に明るい人には網羅的でかなり有用な内容なのではなかろうか。

    戦後史が江戸時代に似ていると感じた。これは、前者が戦争の放棄のもとに、そして後者が鎖国という政策によって、内政メインの歴史記述になっていることによるものだろう。
    政治や経済の歴史というのはそれ以外の歴史よりも面白味に欠ける、というのは個人的な好み。ロマンの有無だろうか。

  • 11/21読了

  • 敗戦復興から高度経済まで。マッカーサー統治下での日米思惑の衝突と支持、「もはや戦後ではない」と55年体制成立というターニングポイントである1955年、その後の高度経済成長と沖縄返還。そして経済大国へ。

    本書の優れている点は、結果としての歴史だけではなく、そこに至る財界動向や与野党政局などにも詳述されている点であろう。一方、下巻の後半は急に学生運動や庶民生活、文学批評が登場し、上巻の硬派な内容からすると多少違和感はあった。

    吉田茂から脈流する池田内閣そして佐藤内閣。昭和中~後期の勃興を支えた政治家たちの強烈な思想に基づく個性を感じた。マスメディアでは田中角栄がよく取り上げられるが、オイルショックの対応に追われ、施策の肝であった日本列島改造はわずか9ヶ月程度しか着手できなかったのは意外だ。

    学校教育では、縄文弥生から始まり江戸幕府成立くらいまでで息切れ、逆に高校大学で政治経済として高度経済成長前後を授業するので、明治後期~昭和初期までがすっぽり抜けていることが多い。しかし歴史とは出来事の積み重ねと連続であることを考えると、こういう本はより多くの方に読んでいただきたいと思う。

  • 今はどうだか知らないが、ぼくが学生の頃は日本史の授業は縄文、弥生時代から始まり、奈良、平安時代を経て戦国時代、江戸時代と続き、明治時代の後半から昭和初期に入ると卒業が近くなり、なんだか浮き足立ってきてうやむやになってしまう、というパターンだった。戦国武将の名前はよく知っているのに、昭和の首相の名前も何をしたかも知らない。歴史に何か学ぶとしたら、千年前よりは百年前、十年前のほうが参考になりそうなのなのに。日本史の授業は現在から始まって順繰りに過去に遡っていくのが正しいんじゃないかと思ったりもした。

    そういう意味で昭和という時代は、日本史のどの時代より重要だし、とりわけ世界戦争を間に挟んで正反対ともいえる凄まじいパラダイムシフトを体験した稀有な時代でもある。この時代を知らないで、歴史に学べなんてが言えるはずがない。

    事件や世相、世界の動きだけでなく、思想史や経済の変遷もしっかりとフォローして昭和を書き出すこの本、名著だ。個別の事象を流れの中で捉えているため、大事件がごくあっさりと書かれていて拍子抜けすることもあるけれど、それはこれから別の本で追体験していくべきなのだろう。本を書き、読むことの重要さを今更ながら体験できる。これはいろいろな意味でネットでは無理だ。形はともかく、本でないと。

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著者プロフィール

中村 隆英
中村隆英:元東京大学名誉教授

「2015年 『明治大正史 下』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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