寂しい生活

著者 :
  • 東洋経済新報社
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  • Amazon.co.jp ・本 (294ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784492046128

作品紹介・あらすじ

アフロの自由人・稲垣えみ子が語りかけるように描く、『魂の退社』に続く第2弾!

会社を辞め、大切なものと別れ、一人ぼっち・・・・。
それがどーした!

『魂の退社』は「退社」をメインにした内容だったが、今回の『寂しい生活』は「退社」以降、あらゆるしがらみと別れを告げた著者の日々の生活、日々の思いを歳時記的につづったもの。
アフロのイナガキさんの『魂の退社』その後の物語。

電気代は月150円、洋服は10着、質素な食事、最大の娯楽は2日に1度の銭湯・・・・。
そんな著者がいかにして家電製品たちと縁を切ってきたか。寒い冬、熱い夏をどうやって過ごしているか。
自然や季節を体感する暮らし、ものを捨てた後のスペースにこれまで気づかなかったいろいろなものが入り込んできて感じる豊かな気持ち、そういった著者にしか実感できない自由と充実感をシンプルな言葉でつづった稲垣哲学。

孤独を感じている人、チャレンジしたいけれど一歩踏み出せずにいる人、他人の評価に振り回されている人、何かわからないけれどもやもやと不安を抱えている人・・・・
そういう今を生きるすべての人の背中をやさしく押してくれる、すがすがしい1冊。

感想・レビュー・書評

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  • 「魂の退社」の稲垣さんのシンプル生活、いやはやここまでストイックに追求されるとは、見事としかいいようがない。ご本人はストイックでもなく、自然な流れとして実行されているだけだろうが

    東日本大震災をきっかけに始まった節電生活。節電ではなく電気はないものとした生活
    漫然と使っていたTV、掃除機、電子レンジなどの電化製品を見直し、廃棄

    まるで、次々と繰り出される禅問答のような含蓄のある言葉は、実践されて体得された言葉だけに一つ一つ私の胸に突き刺さる

    *自分の目で見て、自分の頭で考えて、自分の手足でやってみることを今の世の中は、『不便』と呼んでいるのではないか。だとすれば、不便って「生きる」こと。便利ってもしや、「死んでいる」ってことだったかもしれない

    *こんな程度のちょっとのモノで生きていけると分かったら、不安がなくなり、ストレスがなくなり、ストレスがなくなったら、欲もなくなった

    稲垣さんのシンプル生活は、ついに冷蔵庫の廃棄にまで至る。買いたい欲と食べたい欲がパンパンに詰まった冷蔵庫を廃棄したことで、いろんな欲がなくなったと

    しかし、こんなに災害が頻繁に襲ってくるとそうもいってられないと反論したくなるが、反省させられる部分も多い

    現代人が理想としている豊かさとは、「すべて自分の家の中で所有し、完結させる」こと
    それは、まるで要塞のようと表現される
    だから、他人と比較、競争が生まれ、人とのつながりや助け合う力・共感する力を失ってしまった

    もっと地域として考え、地域全体、お風呂屋さんも古本屋さんやカフェや魚屋さんもみんなが元気になるような考え方がてきないものか
    すると、お金の使い方も変わってくる。消費ではなく投資だと。より安くではなく、それに見合うだけの代価を支払う

    私が日頃考え、杞憂していることと全く同じだったので
    我が意を得たりと思った

    すべてアメリカ式の大型店に吸収されてしまって、町の本屋さんや魚屋さん、お肉屋さんがなくなってしまう
    対面し、料理の仕方を教えてもらいながら買う楽しみが奪われてしまう。どこか間違っているのではないか、どこを目指しているのだろうとかねがね思っていた

    読んでいると、なるほどと共感することが多く、付箋だらけになった。もちろん、稲垣さんの通り実践しようとは思わないし、できるとも思わない
    しかし、ちょっと立ち止まって、考えてみようと思う

    本当の自由とは、「なくてもやっていける」自分を発見すること。何も追いかけなくてもいいんだと知ること
    何と清々しい言葉ではないか

    タイトルは、「寂しい生活」だが、本の内容は、「本当の豊かな生活」だと思った










  • まさに理想の生活。見習いたい。

  • 震災をきっかけに始めた、徹底的な節電生活について、そしてそうすることで起きた価値観・人生観の大転換について、「アフロ記者」(元)が率直に綴っている。

    記者だった頃から著者の書くものには注目していて、これまで読んだ本もとても面白かった。でも、本書については、途中まではちょっと抵抗を感じながら読んでいたのだ。掃除機や電子レンジあたりはともかく、冷暖房や冷蔵庫もなしにする暮らし…。著者がいくら「思いの外容易で、それどころか楽しい」と言っても、まず多くの人には無理だよねえ。少なくとも私にはできない。

    「あなたは一人暮らしだから」「都会に住んでるから」などなど、心の中でツッコミながら読んでいたのだが、そのうちだんだん、いやまあそういうことは関係ないのでは、という気持ちになってきた。

    だって、稲垣さんは行動しているのである。自分の気持ちや考えたことに忠実に、自分ができることを行動に移しているのである。ここが一番大事なのだと思う。行動すれば、批判も受ける。何かしているわけでもない匿名の人間からも。そういうことを恐れない姿勢をすがすがしいと思う。

    著者は「家電」を手放すことで、この社会のありようを根本から考え直すことになる。「物を持てば幸せになる」という神話は、陰りを見せているようでなかなかにしぶとく、いまだに私たちの生活を隅々までおおっていると思う。本書で一番共感したのは次のくだりだ。

    「消費社会とは、モノを売ったり買ったりすることができる健康で強い人たちのためのサークル活動です。それは一方で、本当に救いを求めている人たちをはじき出していく会員制クラブに成り果てている」

    今ほど「老い」が恐怖である時代はないのでは、と思う。その根っこには、著者の言うとおり「消費社会からはじき出される」ことへの恐れが大きな要因としてあると思う。

    我が家の近所に大型のショッピングモールがある。たまに買い物に行くと、ふと、なんともいえない違和感がこみ上げてくる。きらびやかなものが無数に並び、たくさんの人が何を買おうかと楽しそうに歩いている。ここは私にはあまり縁のないところだなあと思う。「社会」が自分とは違うところでまわっている感じ。それは本書のタイトルの如く「寂しい」ものであり、同時に、これでいいのだという気もするのだ。

  • 文章が面白い。そうだそうだと思ってしまう。ほとんどの家電を捨て、会社を辞職する筆者。
    「人生の可能性を閉じて生きる。私はその可能性にかけてみようと思っている。」逆説的だけれど、いつか使うなんて思っているものを捨てて、いつかは来ないと観念して、欲を捨てて、生きる可能性を探るという意味。
    野菜は、干せないものはない。モヤシは、凄いらしい。干すとワラのような、糸のような、カラカラになるらしい。そして美味い!
    冷蔵庫は捨てられないけど、できるだけ物は持たないようにしたい。捨てたい物がいっぱい。連れ合いがいるので、自分勝手にできないけれど、できる限り物を増やしたくない。
    会社辞職編があるらしいから、読んでみたい。

  • 元アフロ新聞記者が電気を使わない生活を徹底した事を書いた本です。
    いわゆるロハスという言葉に代表されるおしゃれ感は無くひたすら朴訥な生活です。
    余った食べ物は干す、漬けるという超シンプルな対応。何しろ冷蔵庫が無い訳なので、物を腐らせない為にはと考えるとそれくらいしかない訳です。
    我が家の冷蔵庫も食べ物で一杯ですが、それでも必要なだけ買っているつもりです。でも生鮮食料品なんて冬以外は一日も保たないもの沢山あります。それは不要な物だと言われればなんとなく後ろめたい・・・。
    遠巻きに見ているだけで実践しようとは思わないのですが、自分も出来る部分はあるのかもと生活を振り返ったりしました。電気がある事に慣れ過ぎていて、どう考えても一日も生活できないような気がします。
    非常にストイックでここまでやるんかいという感じですが、本人が楽しんでやっているので読んでいて面白いです。

  • いやー、もう大好きです、稲垣さん!
    寂しいというタイトルですが、全然寂しくない。
    世間的にはストイックに見えるから「寂しい」のかもしれないけど、本人はめちゃくちゃ楽しんでる仙人的生活について。
    自分が一人暮らしだったら同じことしてたんじゃないかと思う。

    稲垣さんは、震災の原発事故をきっかけに節電生活を始めるのですね。
    で、テレビをやめ、掃除機をやめ、電子レンジをやめ、冷蔵庫をやめ、お風呂の湯沸器をやめ、やがてはエアコン(冷房どころか暖房まで)までやめてしまう。
    洋服はフランス人なみ(10着よ、あずきこさーん 笑)
    江戸時代的生活なのですが、生活の工夫、家事が楽しくてしょうがなくなる。

    こう書くと、「変な人ね、私にはできません」という感想で終わりそうですが、違うんですね。
    年老いていくご両親が物に埋まれて身動きが取れなくなる様子も書かれていますが、すごく奥が深い話です。

    これまでの
    昭和の経済成長期的価値観「買えばいい」(モノで家事から解放され、人生が豊かになる)→
     昨今もう必要なものは全部あるのに、資本主義的構造で、無理やり需要を生み出し、買わされている → 
    家事の時間は減っておらず、モノに埋もれて苦しんでいる →
    でも、そこから降りることができない
    これにひそかに苦しんでいる人、実はすごく多いのだと思います。

    ラットレースという言葉があります。
    金持ち父さん貧乏父さんで出てきた言葉です。
    どんなに一生懸命働いても、人に使われる身分であるサラリーマンはたいして豊かになれないよ、ラットが同じところをくるくる回るだけで、逃げられないよ、という文脈で使われていたと思います。
    資本主義的には、それは正しい。
    労働者は搾取される立場にありますからね。
    でも、私は昨今、自分も含め、ほとんどの人が「もっともっと」の思想からくる購買ラットレースにはまってるんじゃないか、と思う。
    つまり、もっと収入が増えれば、もっと大きな家に住めれば、もっと使い勝手のよい電化製品を持てば、人生は豊かになり、幸せになれるとおもわされているけど、実は同じところをぐるぐる回っているラットレース。
    稲垣さんはラットレースという言葉を使わないけれど、でも、その欲望には限りがない、いつまでたっても満足することはできないよ、どうするの?ということを書かれてます。
    ある年齢まで来たら、今度は「大きくすること」ではなく、「小さくしていくこと」「閉じていくこと」を考えなければならない。
    若くて体力があるうちはいいのだと思う。
    モノを使いこなせているうちは。
    でも、例えば稲垣さんのご両親のように、年齢が上がるともはや便利な家電は複雑になりすぎて、悩みの種でしかなくなる。
    使いこなせないから、面倒くさく家事をせずに寝たきりになっていく。
    それなのに、経済成長の発想に縛られているからまだ「じゃあ、別のものを買えばいい」と考える。

    でも、本当に必要なのは、高性能の掃除機ではなくて、ほうきと雑巾だったりする。
    それならば使いこなせる。体も動かすから、体力も養われる。
    生活を小さくしていくと、これまで見えなかったことが見えてくる。
    エアコンをやめると、風の流れや季節の移り目に敏感になる。
    湯沸し器をやめて銭湯に行くことで、ご近所との交流が生まれる。

    なぜこの「もっと大きく」「もっと収入を」をやめられないかといえば、背景には不安があるのだと思います。
    収入を増やさなければ、いずれ生活が立ち行かなくなるのではないか、
    貧困に陥るのではないか、みじめな生活が待ってるのではないか、他人と比較して劣等感や屈辱感を覚えるのではないか、などなど。

    ラットレースを降りるのって、二通りあるんだと思います。
    資本家になること。(大きくなること)
    生活を小さくすること。
    全員が資本家になることは資本家の構造上はできない。
    でも、生活を小さくすることは誰にでも可能ですからね。
    そしてラットレースを降りたいと思う究極の目的が幸せい生きることだとしたら、どちらを選びたいか、それは人それぞれですね。

    稲垣さんみたいに一度「大したお金がなくても、楽しく豊かに生きていけるんだな」とわかると、一気にその不安から解放される。
    たしか、ミニマリストのたっくさんだったかな、同じようなことを書かれていた記憶があります。
    月にX万あれば暮らせるんだ、とわかって一気に自由になったというようなこと。

  • これから質素な生活を迎えるにあたり参考になりましたが、冷蔵庫や洗濯機まで無くしてしまう実行力には脱帽です。

  • たまたま見ていたあさイチに出られていて
    面白いことを言われていたので買ったのがこの本。
    気付かされることが多く、自分と照らし合わせ考えながら読んでいたため時間がかかってしまった。

  • 同世代だからか、記者時代から、目に留まる印象的な記事を書かれていた方。そういえばいつ頃からかその記事を目にすることが無くなっていたのは、こんな進化を遂げられていたからとは。録画したあさイチを視聴後、早速図書館に予約して、あっという間に読み切ったのは「予約が入っているので、期限までにお返し下さい」と言われたことがきっかけだけど、「早く次の人にも読ませてあげなきゃ!」と思ったから。
    文庫本になったら、みんなにプレゼントしたい。
    ちょっと早めに出勤したり、休日のカフェタイムを延ばしてみたりで、エアコン稼働時間くらいしか減らせなくても、素敵な夏になりそう。

  • 節電をきっかけに、ここまでの境地に至るとは。すごい。「自分の心で感じて自分の頭で考え抜く」ことの大切さがわかる。実は自分が幸せに生きていくために必要なものって、そんなに多くはないと気づかせてもらえた。あまりに便利な生活に慣れてしまうことで、いろんな力を手に入れる機会を失い、すでに持っていた人間としての能力も失っているかもしれない。執着をひとつ手放すごとに、不安が消え、生きていく自信がつき、自由になれるのかもしれない。これから自分を見つめ直していく作業が楽しみになった。文章の書き方もおもしろくて、ぐいぐい引き込まれた一冊!

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著者プロフィール

一九六五年、愛知県生まれ。一橋大学社会学部卒。朝日新聞社で大阪本社社会部、週刊朝日編集部などを経て論説委員、編集委員を務め、二〇一六年に五〇歳で退社。以来、都内で夫なし、子なし、冷蔵庫なし、ガス契約なしのフリーランス生活を送る。『魂の退社』『もうレシピ本はいらない』(第五回料理レシピ本大賞料理部門エッセイ賞受賞)、『一人飲みで生きていく』『老後とピアノ』など著書多数。


「2023年 『家事か地獄か』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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